カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Topiwaala】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2013/03/28 23:30   >>

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 ファンとして、ウペンドラの新作は映画館まで観に行くことにしているが、本作はド派手なポスターが目を引いたし(上)、何よりストーリーと脚本をウッピが書いているということで、なおさら期するところがあった。
 さらに私を惹き付けた点は、ヒロインのバーヴァナちゃん。彼女が拳銃を構えるスチルが公開されていたが(下)、このタレ目のカワイコ子ちゃんがガンにどんな用があるのか、しかと見届けさせていただこう。

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【Topiwaala】 (2013 : Kannada)
物語・脚本 : Upendra
台詞・監督 : M.G. Srinivas
出演 : Upendra, Bhavana, Rangayana Raghu, Ravishankar, Sudhakar, Biradar, Raju Talikote, Achyuth Kumar, Maithreya, N. Omprakash Rao, Mohan Juneja, Mukti Mohan
音楽 : V. Harikrishna
撮影 : Shreesha Kuduvalli
編集 : Carzymindz Sri
制作 : Kanakapura Sreenivas, K.P. Srikanth

題名の意味 : 帽子をかぶせた人
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : コメディー
公 開 日 : 3月15日(金)
上映時間 : 約2時間30分

◆ あらすじ
 バサク(Upendra)は盗賊のリーダー。警官のラーマーヤナ・ラグ(Rangayana Raghu)はこの性質の悪い盗賊を捉えようと躍起になっていた。
 時に、インドの政治家や実業家のブラックマネーを管理していた政治家が急死する。スイスの銀行に預け入れられていたブラックマネーを引き出すためには、この政治家のみ知る「コード」が必要であったが、彼が死んだとあっては、預金は眠ったままになってしまう。ところが、その政治家は死ぬ直前にミスター・インディアという名の乞食(Biradar)にコードを教えていたことが分かる。死んだ政治家の息子(Sudhakar)はその乞食を捉え、コードを聞き出そうとするが、その時受けた暴力のせいで、乞食は記憶を失ってしまう。
 バサクもこのブラックマネーを狙い、政治家の息子から乞食を誘拐する。この作戦にはバサンティ(Bhavana)という女も加わる。バサンティは大部屋女優と称していたが、実はスマン・ベーディーという名のCBIオフィサーだった。彼女はサルカル(Ravishankar)という名のポリス・オフィサーと連携していたが、実はサルカルは死んだ政治家と結託してブラックマネーの管理に一役買っていた悪徳警官で、彼自身も政治家の残した「コード」を知ろうとしていた。
 バサクとその一味はあの手この手を尽くして乞食の記憶を蘇らせ、ついにコードを手に入れることに成功する。それは3片に切られた1ルピー札に書かれた文字で、3片を繋ぎ合せると「STUPID/INDIANS/TAX」となり、それが預金を引き出すためのコードだった。
 バサクたちは早速スイスの銀行から預金を出す。コンテナーに入れらた巨額のブラックマネーがインドに上陸する。だが、バサクは現金を手にすることができなかった。そのコンテナーを開けて、現金を出すためには、さらなる「キー・コード」が必要だったからである、、、。

・その他の登場人物 : マーラーシュリー(Maithreya),仲介屋(Raju Talikote),ローカユクタ・ローキ(Achyuth Kumar)

◆ アナリシス
・その「キー・コード」とは何か? それを知っているのは誰か? 最後に笑うのは誰か? それは本編を観てのお楽しみ、、、と言いたいところだが、どうせ本作を日本人が観ることもないだろうから、ばんばんネタをばらすと、キー・コードは「VOTE」で、それを知っていたのは記憶喪失のふりをしていたミスター・インディア(乞食)であり、さらにブラックマネー争奪戦に勝利を収めるのは主人公のバサクではなく、悪徳警官のサルカルだった。

・上のあらすじは単純化して書いたが、本編のストーリーは意地悪なぐらい複雑に入り組んでいて、頭痛がするほどだった。ウペンドラの作品らしいと言えなくもないが、ここまで分かりづらいと、失敗作と言わざるを得ない。監督したのはM・G・シュリーニワースという人だが、本作の出来の悪さをこの若い新人のせいにするのは気の毒だ。やはりウッピの脚本が悪い。

・見かけの複雑さとは裏腹に、言っていることは単純明快で、インドの政治家等の汚職やブラックマネーはけしからん、というもの。これがウペンドラ一流のパロディー調風刺コメディーに仕立てられている。テーマはシリアスだが、ウッピの表現スタイルはとことんバカバカしく、正気を疑うほどだった。反汚職の活動家として有名なアンナー・ハザーレーやバーバー・ラームデーヴも、本作では茶化しの対象として扱われている。

・パロディー・ネタとして、ヒンディー映画の【Sholay】(75)やウペンドラ自身の【A】(98)、【Upendra】(99)などが使われている。小ネタとしては、ウッピ演じる主人公の名前「バサク」は、昨年処刑されたテロリストのアジマル・カサーブの「Kasab」を逆に綴ったもの。バサクの手下のセクシー女泥棒の名前は「マーラーシュリー」だし、バーヴァナ演じるCBIオフィサーの「スマン・ベーディー」は「Kiran Bedi」をもじったものだろう。「乞食」の名前が「ミスター・インディア」となっているのも面白い。

・映画全編を通して、ウペンドラらしい逆説的な表現に満ちている。まず冒頭で、ヤクザが警官を追いかけ、逮捕するシーンがあり、唖然とするが、これはヤクザに変装した警官が警官に変装したヤクザ(盗賊)を逮捕するというもの。このシーンだけでウペンドラは「善玉と悪玉の対立」というインド娯楽映画の定形を一気に無化している。それもそのはず、本作には善玉は登場せず、すべて悪者だからである。

・題名の「トーピワーラ」は「帽子をかぶっている人」という意味だが、現地人の説明では慣用句的な意味があるらしく、例えば、甲が乙を騙してお金を盗るなどした場合、甲は乙に「帽子をかぶせた」と言い、騙した甲のことを「トーピワーラ」と言うらしい。つまり「他人を騙す者」という意味があるらしく、本作では「真のトーピワーラ(最も悪い奴)は誰か?」がテーマとなっている。

・その答えは、盗賊のリーダー・バサクでも、ちゃっかり乞食のミスター・インディアでも、ブラックマネーをごっそりせしめたサルカルでもなく、腐敗した政治家を選挙で選んだ「君たち市民が最も悪い」というオチになっている。(ブラックマネーを奪ったのが「サルカル(=政府)」で、キー・コードが「VOTE(=投票)」というのに注目。)

・ウペンドラという人物が際立ってユニークなのは、彼が「性悪説」を奉じる克己の人という点だろう。インド人というのは(100パーセントそうだとは言わないが)概ね「現状肯定型」であり、ごりごりに変革や向上を謳わない「これでいいのだ」な国民性だと思うが、これが映画表現にも反映されていて、インド映画というのはどこか人の善性を信じているところがある。ところが、ウッピの考えは逆で、人間というのはエゴイスティックで欺瞞に傾くものであり、そうした人間が作る社会も悪に満ちたものである。で、「これじゃ、いかんのだ!」と、観客(市民)に猛省を促そうというのが、本作のオチなのだろう。

・以上、本作はコンセプト的にはなかなか面白いが、上手く作品化できていない。カンナダ語の分かる人、ウペンドラのファン、インドの映画や時事問題に通じている人ならある程度楽しめるだろうが、そうでなければ、鑑賞は苦しい。汚職をテーマにした作品なら、ウペンドラ自身も過去に【Operation Antha】(95)と【Super】(10)という秀作を撮っているので、そちらを鑑賞しておけばいい。

◆ パフォーマンス面
・さて、ストーリー&脚本は上手くなかったが、演技者としてのウペンドラは【A】、【Upendra】、【Budhivanta】(08)、【Super】などと同系列のパフォーマンスで、なかなか面白かった。ファンにはアピールするだろう。

・ウペンドラと初共演のバーヴァナちゃんは、期待したぐらいの可愛らしさで満足できたが、ストーリー内で十分活かされていたとは言えない。「実はCBIオフィサーだった」という展開もどんでん返しにはなっておらず、無意味だった。峰不二子みたいな、バサク(ウッピ)を出し抜く役割を期待したのだが、、、。
 (写真下:ウッピとバーヴァナ嬢。この公園の木陰のシーンは【Upendra】からのパロディー。)

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・サルカル役のラヴィシャンカルとローカユクタ・ローキ役のアチュユタ・クマールが【Sholay】のパロディーを担当していた(サルカルが「ガッバル・シン」、ローキが「タークル」)。私は面白いと思ったが、評価しない人も多いだろう。

・ランガーヤナ・ラグ(警官ラーマーヤナ・ラグ役)とスダーカル(死んだ政治家の息子役)がかなり頻繁に登場していたが、確実に映画の足を引っ張っていた。

・乞食のミスター・インディアを演じたのはビラーダル。いや、まったく、インド俳優の中でも、彼ほど乞食の似合う役者は珍しいだろう。

◆ テクニカル面・その他
・音楽シーンはギラギラした感じの作りで面白かったが、ハリクリシュナの曲自体は平凡。ムクティ・モーハンを起用したアイテム・ナンバーは、カンナダ映画にしてはエッチな出来栄え。

◆ 満足度 : ★★☆☆☆
◆ 必見度 : ★☆☆☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 3月23日(土),公開第2週目
・映画館 : PVR Classic,10:10のショー
・満席率 : 2割
 

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
私は表面的な面白い作品としてしか見られなかったのですが、さすがカーヴェリ川さん。
こんな奥深いものを含む作品だったのですね。
とにかく訳が分からなくて鑑賞が終わってしまうことが多いカンナダ語作品を、こんなに詳しく書いてくださってありがとうございます。

ウペンドラの意図するところを理解できるかどうかは別として、この人のすごさ、感じます。
やっほー
2013/12/02 14:18
私、字幕なしでこのややこしい映画見たので、何かと間違っているかもしれませんね。DVD買って、もう一度見なくちゃと思います。

ウペンドラは、彼の若いころ(90年代)の監督作品はすごいですよ。かなり変わった映画を撮る人なので、やっほーさんが馴染めるかどうかは分かりませんが。
 
カーヴェリ
2013/12/03 08:33

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