カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Vathikuchi】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2013/04/03 10:15   >>

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 コリウッドのヒットメーカー、A・R・ムルガダース監督は「Fox Star Studios」と共同で【Engaeyum Eppothum】(11)をプロデュースし、ヒットさせた。その同じ制作グループによる第2弾が本作【Vathikuchi】。
 監督はP・キンスリンという人。【Engaeyum Eppothum】と同様、やはり新人監督の起用となったが、どうやらこの人はムルガダースの弟子らしい。
 さらに、主役のディリーバンという人も新人だが、この人はムルガダースの弟らしい。
 ムルガダースが弟と弟子のためにお膳立てした映画、と思うと観る気が半減するが、ヒロインは今が旬のアンジャリちゃんだし、まぁ、観てやるか。

【Vathikuchi】 (2013 : Tamil)
物語・脚本・台詞・監督 : P. Kinslin
出演 : Deliban, Anjali, Sampath Raj, Jayaprakash, Jegan, Saranya Ponvannan, Raja, Sriranjini, V.C.R
音楽 : M. Ghibran
撮影 : R.B. Gurudhev
編集 : Praveen K.L, N.B. Srikanth
制作 : A.R. Murugadoss, Fox Star Studios

題名の意味 : マッチ棒
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : スリラー
公 開 日 : 3月15日(金)
上映時間 : 約2時間20分

◆ あらすじ
 チェンナイの郊外に暮らすシャクティ(Deliban)は乗合オート三輪タクシーの運転手。金こそないが、曲がったことの嫌いな好青年だった。彼は近所に住むリーナー(Anjali)に首ったけだった。リーナーはミドルクラスの娘だが、リッチでモダンな生活に憧れ、友達と英会話のクラスに通ったり、高級ショッピングモールに入り浸ったりしていた。シャクティはそんなリーナーを日々目的地まで運び、彼女に自分の気持ちもはっきり伝えていた。だが、実はリーナーもシャクティを意識していたものの、表向きは無関心を装っていた。
 ところで、シャクティの正義心が災いして、彼は3組の悪漢から命を狙われることになる。
 まず、ヤクザのベンニー(Sampath Raj)だが、シャクティはある時ベンニーの手下に現金を奪われる。それで、シャクティは手下の前でベンニーをこてんぱんに叩きのめし、お金を奪い返す。ヤクザとしての面子を失い、仕事も来なくなったベンニーは、シャクティに対する復讐の機会を窺っていた。
 次に、阿漕な貴金属商のガンガーリヤ(Jayaprakash)はうるさい税務局の捜査官を殺害しようとしていたが、その計画はたまたまそれを知ったシャクティにより阻止され、ガンガーリヤとその息子は逮捕される。それで、彼らはシャクティに恨みを晴らそうとしていた。
 最後に、保険外交員のワーナラージ(Jegan)は、手っ取り早く大金を得ようと、実業家ダクシナムールティの子供の誘拐を企んでいた。だが、その計画にはシャクティ(ダクシナムールティと懇意の間柄)が邪魔者だった。ワーナラージはまずシャクティを始末しようと、拳銃を手に入れる。
 そうとは知らず、呑気にリーナーとの甘い妄想に耽るシャクティに対して、ワーナラージが銃口を向ける、、、。

・その他の登場人物 : シャクティの両親(Raja & Saranya Ponvannan),リーナーの母(Seetha)

◆ アナリシス
・【Engaeyum Eppothum】ほどの新趣向もドラマティックさもなく、やや物足りない感じはしたが、それでも新しいと言える要素はいくつかあり、娯楽映画としてもまずまず面白かった。

・まず、「ストーリー構成」の新しさだが、「シャクティ&リーナー」のロマンス・パートと「シャクティ&3組の悪漢」のスリラー・パートがまったく絡まない。シャクティはリーナーに自分が悪漢に襲われた話をするのだが、彼女はそれを自分の気を惹くための作り話だと思い込んでいる。しかし、この並行して進むロマンス・パートとスリラー・パートが好コントラストをなしていて、平凡な庶民もいつどんな災厄に巻き込まれるか分からない都市生活の危うさを描き出している。

・また、通常のアクション映画だと、ヒーローと悪役は1対1の対決になるのが定形だが、本作でシャクティが相手にするのは3組の悪漢(ベンニー/ガンガーリヤ/ワーナラージ)。しかも、「シャクティ対それぞれの悪漢」のパートも本質的に絡むことなく、別個に展開する。これは珍しい構成だと思うが、しかし悪役が3組もいるせいで、クライマックスの収まりが悪くなったように感じられた。

・次に目を引くのは、「場所」の新しさ。物語の舞台となったのはチェンナイから20キロほど南に行ったヴァンダルール(Vandaloor)にある町だが、そこに「Samathuvapuram」があるらしく、シャクティとリーナーはその一画に暮らしている。「Samathuvapuram」というのは政府が開発したニュータウンのことで、宗教やカーストのしがらみを排したコンセプトで町作りがされている。

・「Samathuvapuram」を持ってきたことも本作のアイデアだが、私的にはチェンナイの「郊外」に目が向けられたことに注目したい。これまでのタミル・ニューウェーブ映画といえば、もっぱら「田舎」か「チェンナイ」だったが、本作ではその中間とも言える「郊外」が取り上げられている。周知のとおり、インドの大都市はどんどん拡張し、それまで畑かココナッツ林しかなかった周辺の村落に産業団地やニュータウンが建設され、高級アパートや高級ショッピングモールも出現し、急速に衛星都市化している。「郊外」というのは、「田舎」と「近代的都市」との間にある「過渡的空間」として、興味深い。

・そんな「郊外」の人々が通勤・通学の足として利用しているのが「乗合オート三輪タクシー」で、本作の主人公(シャクティ)がその運転手であるというのは単なる思い付きではない。

・最後に、「登場人物」の新しさだが、上で述べたとおり、「郊外」が過渡的な性格を呈している分、そこに暮らす人々も田舎人から都会人へと変容する過渡的な人種になる。リーナーはその典型で、彼女はどちらかというとおつむの弱い、平凡なミドルクラスの女の子だが、モダンな生活に憧れ、英会話を習い、さほど似合わないブランド物の服を身に着ける。彼女の本名は「ミーナー」だが、野暮ったいということで、「リーナー」に勝手改名している。
 (参考動画)


・さらに、登場人物の新しさは悪役にも表れている。ヤクザのベンニーと貴金属商のガンガーリヤは従来のインド映画の悪者像を踏襲しているが、保険外交員のワーナラージは異色だ。保険というビジネスもその外交員という職種も比較的新しいもので、都市的な仕事だとも言えるが、ソフトウェア業界などに比べると待遇は全然悪い。そんな中から、負け組として鬱屈感をため込み、ニヒリスティックに犯罪に走る者が現れたとしても不思議ではない。ワーナラージはその一人で、彼はインド映画が従来描いてきた「巨悪」ではなく、小市民的な「小悪党」になるが、それが却って性質が悪く、不気味に感じられた。

◆ パフォーマンス面
・主役のディリーバンについては、顔はいかついが、笑顔に愛嬌があったりして、思ったより悪くなかった。しかし、ムルガダースには悪いが、このむさ苦しい男がスターダムを駆け上がるとはとても思えなかった。

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・リーナー役のアンジャリについては、【Engaeyum Eppothum】のマニメガライとほぼ同一路線。あれを好むファンなら楽しめるだろうし、事実、私も満足した。セリフも彼女自身がダビングしている。

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・悪役のサンパット・ラージとジャヤプラカーシュは特に新鮮味はなかったが、上に述べたとおり、保険外交員ワーナラージ役のジェーガンは目を引いた。【Ayan】(09)や【Paiyaa】(10)を見る限り、コメディー路線で行くのかなと思っていたが、かなり違う側面を見せていた。

・その他、シャクティの母親役のサランニャ・ポンワンナンがいかにも「タミル映画の母」といった感じで、良かった。

◆ テクニカル面・その他
・音楽は【Vaagai Sooda Vaa】(11)でデビューして注目されたM・ギブラーンの担当。【Vaagai Sooda Vaa】の音楽は良かったので、本作も楽しみだったが、曲そのものはそれほど良いとは思わなかった。ただし、BGMは良かった。

◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★★☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 3月24日(日),公開第2週目(バンガロールで1週目)
・映画館 : Gopalan Cinemas (RR Nagar),17:30のショー
・満席率 : 3割
 

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