カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Bachchan】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2013/04/21 14:51   >>

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 サンダルウッドで集客の期待できるスターといえば、今ではプニート、ダルシャン、スディープということになるが、なかんずくスディープはテルグ映画【Eega】(12)での成功により、スターとして、演技者として、一段厚みを増したかのようである。
 そんな彼の気になる新作が本作【Bachchan】。題名は明らかにアミターブ・バッチャンを意識したもので、スディープが若き日のアミターブが体現していたような「Angry Young Man」を演じるとの噂だった。果たしてスディープはビッグBと肩を並べるヒーローになれるか?(身長は同じぐらいだが。)
 監督はシャシャーンクだが、この人は【Moggina Manasu】(08)と【Krishnan Love Story】(10)が有名で、それからすると、恋愛映画を得意としているように思われる。そんな彼がヒーロー中心のアクション映画に挑むというのも注目。
 ヒロインは3人もいるが、私のお目当てはもちろんケーララ娘のバーヴァナちゃん!

【Bachchan】 (2013 : Kannada)
物語・脚本・監督 : Shashank
出演 : Sudeep, Bhavana Menon, Parul Yadav, Tulip Joshi, Jagapathi Babu, Nasser, Ashish Vidyarthi, Ravishankar, Pradeep Rawat, Bullet Prakash, Jai Jagadish, Ramakrishna, Sudha Belawadi, Padmaja Rao, Achyuth Kumar, Shruthi, Sadhu Kokila, Arun Sagar, Yethiraj, Daisy Shah
音楽 : V. Harikrishna
撮影 : Shekar Chandru
編集 : Sri Crazy Minds
制作 : Uday K. Mehta

題名の意味 : (主人公の通称)
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : アクション
公 開 日 : 4月11日(木)
上映時間 : 2時間25分

◆ あらすじ
 2011年4月13日、バンガロールである男が警官のマヘーシュ・デーシュパーンデー(Ashish Vidyarthi)と医師のシュリーニワーサ・アイヤンガール(Nasser)を殺害する。男は逃走過程で逮捕されるが、それは不動産業を営むバラト(Sudeep)という人物だった。バラトは取り調べに当たった警官ヴィジャイクマール(Jagapathi Babu)に対し、犯行に至った動機を詳しく語り始める、、、。
 ・・・
 不正が赦せず、自ら「バッチャン」を名乗るバラトは、不動産業においても誠実に顧客と相対していた。彼にはアンジャリ(Parul Yadav)という秘書がいたが、二人は愛し合っており、結婚も決まっていた。
 バラトの顧客にジョンソン夫妻という老夫婦がいたが、ヤクザのジャヤラージ(Ravishankar)がジョンソン夫妻の土地を横領しようと、脅迫を始める。バラトはこの件で警察に訴えに行くが、応対した警官がマヘーシュ・デーシュパーンデーで、彼はバラトの訴えを真剣に聞こうとしなかった。この時、バラトはたまたま手に怪我をしてしまい、病院に行くが、診察に当たったのがシュリーニワーサ・アイヤンガールで、「甘い物は食べるな」というとんちんかんな診断を下す。それだけでなく、シュリーニワーサ医師は度々バラトの前に姿を現し、「甘い物は食べるな!」と警告する。それに苛立ったバラトはシュリーニワーサに暴力を振るってしまい、入院させてしまう。
 一方、警官マヘーシュ・デーシュパーンデーのほうも度々バラトの前に現れ、ジョンソン夫妻の娘モニカ(Tulip Joshi)とバラトが恋仲にあると吹聴し、証拠のビデオまで見せる。この件で絶望したアンジャリは自殺を図り、瀕死状態で病院に運ばれる。しかし、そこはたまたまシュリーニワーサ医師が入院していた病院で、彼が治療を妨害したため、アンジャリは死亡してしまう。
 この一連の出来事でバラトは二人に恨みを抱き、殺害したという訳であった。
 ・・・
 警官ヴィジャイクマールはバラトの供述の裏付け捜査を開始する。ところが、マヘーシュ・デーシュパーンデーの許にバラトが訴えに来たという記録はなく、シュリーニワーサ・アイヤンガールがバラトを診察したという事実もなかった。さらに、ジョンソン夫妻の娘モニカも海外滞在中だったし、死んだはずのアンジャリも生きていた。バラトの家族とアンジャリはヴィジャイクマールに、実はバラトは精神分裂病(妄想型統合失調症)患者だと供述する。バラトは警察病院に送られ、診察を受ける。
 だが、バラトは警察病院を脱走する。ヴィジャイクマールは、バラトの次のターゲットはヤクザのジャヤラージだと見当付け、彼に警告を発するが、果たしてその推測どおり、バラトはジャヤラージを誘拐し、姿をくらます。
 事態の暗転に焦るヴィジャイクマールだが、彼はひょんなことから、バラトが精神分裂病だというのは嘘ではないかとの疑問を抱く、、、。

・その他の登場人物 : アンジャリの姉アシュウィニ(Bhavana),バッラーリのマフィア(Pradeep Rawat),バッラーリの村に暮らす夫婦(Achyuth Kumar & Shruthi),プットゥスワーミ(Bullet Prakash),ヴィジャイクマールの部下(Arun Sagar)

◆ アナリシス
・【Moggina Manasu】を観たとき、「おお、こんなカンナダ映画が観たかった」と涙したものだが、シャシャーンク監督は私を感涙させてくれるお方らしく、本作でも「こんなカンナダ・アクションを待っていたんだ!」と瀑泣した。

・何かと素晴らしく、「Bachchan」というタイトルに恥じないビッグな作品だった。【Eega】(または【Makkhi】)のヒット以来、カンナダ映画に馴染みのない方から「スディープのお勧め作品は何ですか?」と聞かれ、はたと困ることの多かった私だが、やっとスディープのお勧め作品が出た感じだ。

・かといって、本作が何か画期的な傑作だというわけではなく、要はテルグ映画などが10年前から作っていたスピーディーでパンチ力のあるアクション映画をやっとカンナダ映画でも作ってくれた、ということだ。カンナダ映画界でもアクション映画は盛んだが、たいていはテルグ、タミルの真似事(あるいは、リメイク)で、出来も野暮ったいものがほとんどだった。そんな中で唯一スーリ監督がオリジナル・テイストのあるアクション物を撮っていたぐらいだが、ここにもう一人、有望な娯楽映画の作り手が現れて、私はうれしい(それが【Moggina Manasu】の監督だったというのが驚きだが)。

・前置きで記したとおり、本作は若き日のアミターブ・バッチャンが体現していた「Angry Young Man」をモチーフとしており、物語中でバラト(Sudeep)がはっきりと「オレは『ダーダー・ギーリー』でも『ガーンディー・ギーリー』でもない。『バッチャン・ギーリー』だぜ!」と悪漢に向かって見えを切り、なぎ倒すシーンがある。「ダーダー・ギーリー」と「ガーンディー・ギーリー」の説明についてはこちらを参照していただくとして、「バッチャン・ギーリー」については、おそらく本作での造語で、要は「悪に対抗するためには怒りの鉄拳も辞さない」ということをアミターブ・バッチャンの名に託して表現したものだろう。これはもちろん、現実社会で暴力が肯定されるという意味ではなく、インド映画のヒーローとはこういうものだ(または、こうあるべし)という主張なのだと思う。

・だからといって、本作は単純にアミターブ・バッチャン時代の映画を再現しようとしているわけでもなさそうだ。本作は「怒れるヒーロー」を描くというより、もっと直截に、観ている観客に「怒れ!」と促しているようだからである。私の観察では、インドも経済発展が進み、ある程度豊かになったせいか、どうも人々に以前ほどのハングリー精神がなく、怒りを露わにしなくとも日々暮らしていける時代になったかのようである。しかし、実社会には問題が山積で、本来なら怒るべきところでも、怒りの感覚を忘れてしまったかのようである。それでいいのか? 本作で扱われたテーマはバッラーリの違法採掘とそれによる大気・土壌・水質汚染の問題で、これは映画でも度々取り上げられるほど南インド(殊にカルナータカ州とAP州)では大きな問題である。それに対して「怒れ!」と言っているのが本作の主張だったと思う。そういう意味では、本作はウペンドラの【Super】(10)に非常に近い。

・しかし、いかに涙腺の弱い私だとはいえ、私が涙した理由は上に書いたことだけではない。本作は非常にモラルが効いており、それがうれしかったのである。カンナダ映画というのは、ラージクマール作品に代表されるように、娯楽の中にも高いモラル性を重視してきた伝統があるが、本作はその伝統にぴったり即しているのである。そう言った意味で、これはアミターブ・バッチャン映画だけでなく、ラージクマール映画の再現だとも言える。本作を観た私のカンナダ人の友人が「テルグ映画っぽくって、嫌だ」と評していたが、テルグの監督で今どきこんな生真面目なアクション映画を撮っている奴がいるか!?(クリシュ監督を除いて。)

◆ パフォーマンス面
・カンナダ映画ではネガティブ・ロールなどしなかったスディープだが、【Eega】で悪役という新生面を見せ、評価された。その影響あってか、本作でも善玉か悪玉か分かりにくい微妙な役(まぁ、善玉に決まっているが)を熱演していた。
 ちなみに、本作の趣旨とは関係ないが、スディープはヒンディー映画の【Rann】(10)でアミターブ・バッチャンと共演している。

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・期待のバーヴァナちゃんは、物語終盤30分だけの登場だったが、十分ヒロインと言える美しいプレゼンスだった。バッラーリで医学を学ぶ医大生の役で、白衣も爽やかだったが、こんな天使のような娘さんが悪漢の手にかかってブルドーザーで、、、これが泣かずしていられようか!

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・バラトの秘書アンジャリを演じたのは、【Govindaya Namaha】(12)で注目されたパルル・ヤーダヴ。ストーリー内での演技は問題なかったが、やはりダンスができないので、音楽シーンではダメ。しかも、この人はやや老け顔で実際に年齢も高いのだが、それがバーヴァナちゃん(童顔)の妹役という設定はまずかった。

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・もう一人のきれいどころはモニカ役のチューリップ・ジョーシ。演技もダンスもあったもんじゃないが、クリスチャンのNRIという設定には向いていた。

・ジャガパティ・バーブが捜査官の役で渋く登場している。一応テルグの主役級俳優なので、敬意を表してクレジットでかなり持ち上げていたが、実際には大したパフォーマンスはしていなかった。

・ナーサル、アーシーシュ・ヴィディヤールティ、ラヴィ・シャンカル、プラディープ・ラーワトが四位一体の悪役を演じている。プラディープ・ラーワトは、出番は短かったが、十分残酷。あとの3人はコミカルな悪役像で、良かった。

◆ テクニカル面・その他
・本作は概ね良くできているが、評価できない点はハリクリシュナの音楽と音楽シーン。
 音楽シーンは、なにせスディープもパルル・ヤーダヴもチューリップ・ジョーシも踊れないので仕方ないとも言えるが、それならそれで、美術面やカメラワーク、デジタル処理などでカッコよく決めてほしかった。
 音楽シーンは出来が悪かっただけでなく、挿入の仕方も、バーヴァナの登場ソングを除いて、まずかった。

◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★★★☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 4月13日(土),公開第1週目
・映画館 : Gopalan Cinemas (RR Nagar),10:00のショー
・満席率 : 5割
 

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
やっと見ることができました。
すごくエネルギッシュな作品でした。
まだ興奮冷めやらぬ感じです。

EEGAの次の作品、ということで、スディープも満を持しての作品だったのでしょうか。
EEGAと並び、まぎれもなくスディープ代表作の1本になりますね。

カーヴェリ川さんのお好みのバーヴァナちゃん、可愛かったですね。
こんなにかわいい子が、なんてむごい!と涙しました。



やっほー
2013/11/20 23:10
レス遅れて、どうもすみません。
このブログのトラックバックやコメントのメール通知機能が作動していないようで、気付きませんでした。

Bachchan、良いですよね。私も昨日、DVDを買いました。

>こんなにかわいい子が、なんてむごい!と涙しました。

はい、涙しました!
 
カーヴェリ
2013/11/22 02:43

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