カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Soodhu Kavvum】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2013/05/24 22:42   >>

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 こんなふうにせっせと南インド映画を鑑賞し、僭越ながら皆さまに情報提供してはいるものの、いかんせん鑑賞本数に限りがあるので、細かな状況把握やトレンド分析には至らないことを告白せざるを得ない。ひと昔前までは十年一日と思われた南インド映画シーンも、近年では何かと変遷があり、人気スターや著名監督を中心に追い駆けているだけでは「周回遅れのランナー」になりかねない。
 こと変化が激しいのがタミル映画界で、去年までは「ニューウェーブ」といった動きを注視していたが、そのトレンドも終焉したようで、最近ではもっと娯楽性を前面に押し出した「新娯楽主義」とでも呼べそうな作品群が目に付く。
 そうした動きの中で注目すべき人物の一人がプロデューサーのC・V・クマールだろう。彼は昨年【Attakathi】(未見)と【Pizza】の2本を送り出し、ヒットさせた。共に新人監督、スター不在、超低予算の作品である。その彼の第3作が本作【Soodhu Kavvum】で、やはり新人のナラン・クマラサーミという人が監督をしている。主演は【Sundarapandian】(12)、【Pizza】、【Naduvula Konjam Pakkatha Kaanom】(12)とヒット作が連発しているヴィジャイ・セードゥパーティ(カタカナ表記は当てずっぽう)。この人も要注目の新進俳優だと言えるだろう。

【Soodhu Kavvum】 (2013 : Tamil)
脚本・監督 : Nalan Kumarasamy
出演 : Vijay Sethupathi, Sanchita Shetty, Ashok Selvan, RJ Ramesh Thilak, Simhaa, Karuna Karan, M.S. Bhaskar, Radha, Yog Japee, Aruldass, Radha Ravi
音楽 : Santhosh Narayanan
撮影 : Dinesh Krishnan
編集 : Leo John Paul
制作 : C.V. Kumar

題名の意味 : (???)
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : クライム・コメディー
公 開 日 : 5月1日(水)
上映時間 : 2時間17分

◆ あらすじ
 ケーサヴァン(Ashok Selvan)とセーカル(RJ Ramesh Thilak)はチェンナイの安アパートに暮らすルームメイト。ケーサヴァンはIT企業に勤めるエンジニアだが、セーカルは失業者。この部屋にケーサヴァンの友人パガラヴァン(Simhaa)が転がり込む。パガラヴァンもまた無職だった。3人はなるべくして呑み仲間となる。
 ダース(Vijay Sethupathi)はケチな誘拐犯。彼は恋人のシャールー(Sanchita Shetty)と組んで誘拐を試みるが、しくじることが多かった。
 ある夜、ダースは安酒場でケーサヴァン、セーカル、パガラヴァンと出会い、誘拐の道へと誘う。ケーサヴァンも会社をクビになり、収入のなかった3人はこの誘いに乗る。ここにダースをリーダーとする5人組が結成され、小規模な身代金目当ての誘拐を次々と成功させる。
 タミル・ナードゥ州財務大臣のニャーノーダヤム(M.S. Bhaskar)は賄賂を一切取らない清廉潔白な政治家だったが、ある日、ある建築請負業者が賄賂を渡そうとしたため、警察に逮捕させる。その建築請負業者の弟ナンビッケー・カンナンは、復讐のためにダースに連絡を入れ、大臣ニャーノーダヤムの息子アルマイ・プラガーサン(Karuna Karan)を誘拐するよう依頼する。実は、ナンビッケー・カンナンの息子が以前にダース一味に誘拐されたことがあり、彼らの手腕を認識していたからである。
 ところが、ダースはこの依頼を断る。というのも、彼は誘拐のルールとして「VIPの子弟には手を出さない」と定めていたからである。しかし、ケーサヴァンら3人に押されて、ダースはこの依頼を引き受けることにする。
 5人組はさっそく作戦に取り掛かり、アルマイ・プラガーサンを誘拐することに成功する。しかし、このアルマイ・プラガーサンという男は食わせ者で、ビジネスを始める資金を父から搾り取るために自ら狂言誘拐事件を計画・実行している最中に、ひょいとダースらの手に落ちた、というわけであった。アルマイ・プラガーサンはダースらと交渉し、身代金を山分けすることで決着する。
 ニャーノーダヤムは州首相(Radha Ravi)に掛け合い、身代金を工面してもらう。身代金受け渡し場所には警察が張り込みを掛けていたが、ダースらは見事に身代金を奪取する。ところが、逃走中の車の中でアルマイ・プラガーサンが暴れたため、車は事故に遭い、シャールーは死亡、どさくさの中でアルマイ・プラガーサンは現金を独り占めして逃げてしまう。
 大臣ニャーノーダヤムはエンカウンター・スペシャリストの警官ブランマー(Yog Japee)に誘拐事件の片を付けるよう依頼する。身の危険を感じたダースら4人は、医者兼ヤクザのダースの兄(Aruldass)に援助を仰ぐ。そして、裏切ったアルマイ・プラガーサンを再び捕えようと動く、、、。

・その他の登場人物 : アルマイ・プラガーサンの母(Radha)

◆ アナリシス
・各州各言語映画産業は基本的に別個の動きをしているはずだが、時おり申し合わせたかのように、似たコンセプト、テイストの作品が現れることがある。本作も先日紹介したテルグ映画の【Swamy Ra Ra】と何かと類似点があった。

・両作品とも犯罪コメディーだが、【Swamy Ra Ra】はスリ、本作は誘拐を事とするグループが登場する。彼らは共に大きな野心はなく、日銭目当てでせこいスリ/誘拐を繰り返すのだが、ある日、ひょんなことから、大きなヤマに巻き込まれる。

・ストーリー面だけでなく、形式やタッチも似ている。例えば、音楽シーンの入れ方や、非インド的な(例えば、アメリカ大陸的な)楽曲を用いた音楽など。共にコメディー映画だが、専門的なコメディアンはほぼ活躍しない。

・どちらも主役グループである犯罪者が良い目を見、罰せられないという結末も共通。彼らは一応「業」のようなものは味わうのだが、「天罰」が下るというほどのことはない。両作に共通するこうした楽天的なムードは、今のインドの時代の空気を反映していると見るべきか。

・映画は非常に面白く、ぜひお勧めしたい。ストーリーもヒネリがあって面白かったが、それ以上に、主要登場人物のキャラが活きていて、映画の世界に自ずと引き込まれる。

・といって、何かグレートでカッコいいキャラクターが登場するわけではなく、ダースを始めとする誘拐グループのメンバーと大臣の息子アルマイ・プラガーサンは、ウェンカット・プラブ監督作品の登場人物に連なるような所謂「わ゙か者」。このバカな連中の描かれ方がリアルなものなので、ヒンディー映画【3 Idiots】(09)の「3バカ」が白々しく思えるほどだった。

・また、後半に入って、マッドなエンカウンター・スペシャリストのブランマーとダースの兄(医者兼ヤクザ)という強面の2人が登場し、好き放題やる辺りから、映画は俄然アホくささを増す。

・先日の【Udhayam NH4】の鑑賞記でも言及したことだが、南インド映画でも近ごろは「飲酒」に対する自戒ムードが薄れてきたようで、本作でもまさに「酒呑みの世界」が展開されていた。特に、セーカルとパガラヴァンが出会って初めて一緒に呑むシーンや、ケーサヴァン、セーカル、パガラヴァンの3人が殴り合いの喧嘩を始めそうになったとき、パッと安バーに場面が写り、「まぁまぁ、こういう諍いごとは酒でも呑んで・・・」となるシーンなどは、微妙に面白かった。

・本作はまた、非常に風刺性の強い映画でもあった。これほど政治家と警察をバカにしくさった映画も珍しいのではないか。

・そんな中で、清廉潔白なタミル・ナードゥ州財務大臣のニャーノーダヤム(M.S. Bhaskar)は、表向きは茶化しの対象として描かれていたが、それが却って清々しい存在に見える結果となった。

・面白いアイデアだったのは、ダースの恋人シャールー(Sanchita Shetty)の設定。実は彼女は実体として存在せず、ダースの空想内にのみ存在するイリュージョン(従って、正確に言えば、ダースの誘拐グループは男のみの4人組)。この種の犯罪物の犯罪グループにはなぜか美女が1人いるのが常套だが、本作はそれに変化を付けたものだろう。

◆ パフォーマンス面
・主役のヴィジャイ・セードゥパーティについては、【Pizza】で見たときは「なんでこんな眉毛3センチの毛深田舎顔が人気あるんだ?」と思ったが、本作ではなかなか押しのあるパフォーマンスを見せている。実年齢より年上の、40代の男を演じている。

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・紅一点のシャールー役はサンチタ・シェッティ。初めて見た女優。私はこの手の顔に全く惹かれないし、客観的に見ても女優として大成しそうにないが、カンナダ人でバント族なので、応援したい気はある。(ちなみに、前回紹介した【Udhayam NH4】のアシュリター・シェッティもバント族のはず。)

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・ダースの3人の仲間を演じたアショーク・セルワン(ケーサヴァン役)ラメーシュ・ティラク(セーカル役)、シンハー(パガラヴァン役)も、上手く設定されたキャラクターの中で活きていた。この中から次代のスターが現れるとは考えられないが、飄々としたラメーシュ・ティラクとどこか調子はずれのシンハーはあと1,2回は使えそう。

・それに輪をかけてキャラが立っていたのが大臣のバカ息子、アルマイ・プラガーサン役のカルナー・カラン。こいつはどこかで見たように思うが、思い出せない。性格俳優として意外に活躍しそうだ。(下)

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・M・S・バースカル、ラーダー・ラヴィ、ヨーグ・ジェーピー、アルルダースのオッサン連中も「わ゙か者」に負けず奮闘していた。

◆ テクニカル面・その他
・音楽を担当したのは【Pizza】と同じサントーシュ・ナーラーヤン。【Pizza】では非インド系の音楽を巧みに取り入れていたが、本作もそうだった。なかなか良い。

・編集を担当したのも【Pizza】と同じレオ・ジョン・ポール。編集の仕事の評価はしにくいが、この人はかなり腕が良いと思う。

◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★★★☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 5月18日(土),公開第3週目
・映画館 : INOX (Jayanagar),16:05のショー
・満席率 : ほぼ満席
 

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