カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Director's Special】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2013/06/06 23:44   >>

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 カンナダ映画界のグルプラサード監督といえば、まだ【Mata】(06)と【Eddelu Manjunatha】(09)の2本しか撮っていないにもかかわらず、批評家からの評判が良く、あるレビューワーなどは「サンダルウッドには、グルプラサード以外、ろくな映画を撮る監督がいない」と言っているほどである。会ったことがないので人物像は分からないが、顔写真(下)を見る限り、いかにもインテリの皮肉屋といった風貌で、上の2作も手痛い風刺コメディーである。だからといって、彼の作品が批評家とインテリ鑑賞者にしか受けないというわけではなく、上記2作は大衆からも支持され、ヒットした。

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 そんなグルプラサードの新作がこの【Director's Special】。過去2作で主演したジャッゲーシュは今回出ておらず、知られた顔といえばランガーヤナ・ラグと特別出演のプージャー・ガーンディだけという、いかにも地味そうな作品である。
 題名の「Director's Special」はグルプラサード自身が書いたエッセイの題名と同じだが、読んだ人の話によると、その本とこの映画は内容的に関係がないらしい。

【Director's Special】 (2013 : Kannada)
物語・脚本・監督 : Guruprasad
出演 : Dhananjay, Rangayana Raghu, Vatsala Mohan, Sumitra Devi, Ram, Guruprasad, Pooja Gandhi(特別出演)
音楽 : Anoop Seelin
撮影 : P.L. Ravi
編集 : Kemparaju
制作 : Govindu

題名の意味 : 監督スペシャル
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : コメディー
公 開 日 : 5月31日(金)
上映時間 : 2時間5分

◆ あらすじ
 孤児として育ったダナンジャヤ(Dhananjay)は、家族の生活が味わいたくて、模擬家族を作ろうとする。彼はまず火葬場にいたシャーストリーに声をかけ、ラーマチャンドラ(Rangayana Raghu)と名付け、父親役になってもらう。次に、養老施設にいた中年女性を呼び、母親のシータンマ(Vatsala Mohan)になってもらう。さらに、精神障害の男に兄のハヌマ(Ram)、失職中の女に妹のガヤトリ(Sumitra Devi)になってもらう。5人はちっぽけな家で家族として共同生活を始める。当初はぎこちなかった5人も、次第に打ち解け合うようになる。
 そんな時に、ダナンジャヤが520万ルピーもの大金を家に持って帰り、金庫に保管する。心の中に貪欲さが芽生えたラーマチャンドラとシータンマとガヤトリは、このお金を我が物にしたいと考える。さらに、精神障害者と思われたハヌマも実は健常者だったことが分かり、この輪に加わる。4人はダナンジャヤを殺し、大金を山分けして逃げる計画を考える、、、。

◆ アナリシス
・グルプラサード監督の作品といえば、一にも二にも脚本本位、台詞本位で、ストーリーはシンプル、登場人物も少なければ、物語が展開する場所も限られているという、いわば娯楽的要素に乏しいものなのだが、それでも大衆に支持されるというのは、溢れ出るセリフが観客を惹き付けているということだろう。【Simpallag Ond Love Story】(13)の鑑賞記の中で、「どうもカンナダ映画界にはセリフ主体の『饒舌映画』といった伝統があるようだ」と書き、グルプラサードの名前も挙げておいたが、この【Director's Special】もまさにそういった映画だった。

・しかし、グルプラサードの過去2作に比べると、本作は面白さが一段落ちると見た。内容面でもやや大胆さを欠くが、やはりジャッゲーシュの不在というのが大きいだろう。過去2作の面白さは、彼のブルドーザーのように押しの強いセリフ回しによるものだということがよく分かった。

・テーマとしては、家族の紐帯が貪欲(お金に対する)によっていかに壊れるかということを、実験的な、変則的な脚本で見せたもの。ラーマチャンドラ(Rangayana Raghu)ら4人組がダナンジャヤ(Dhananjay)を殺そうとした場面で、突然監督のグルプラサード自身が登場し、登場人物とミーティングをして、結末をハッピーで教訓的なものに作り変えるというオチはユニークだった。

・ただ、家族といっても、本作の場合は血のつながった本物の家族ではなく、それぞれクセのある独り者を寄せ集めただけの「疑似家族」なので、それが金銭を理由に崩壊しかけたとしても、特に不思議はない。本作の設定は、家族問題を考える上であまり効果的ではないように思われた。

・ストーリーやテーマはさておき、セリフはやはり面白く、映画館内は概ね爆笑モードだった。際どいダブルミーニングや著名人への当てこすりも多く、家族コメディーでも「U/A」の認証が付いている。

◆ パフォーマンス面
・本作の収穫は、ダナンジャヤ役をやったダナンジャイ氏だろう(下)。本作では髭ぼうぼうのむさ苦しい役作りだったが、なかなかのハンサムで、体格も良い。ぶさいく軍団のサンダルウッドにあって、ぜひ活躍を期待したい新人だ。彼はいわゆる「脱サラ俳優」で、以前はインフォシス社でソフトウェア技術者をやっていたらしい。(参考に、監督のグルプラサードも映画監督になる前は化学会社のサラリーマンだったそうだ。)

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・でっぷり太ったいんちきシャーストリ―を演じたランガーヤナ・ラグは、役柄にぴったり合っていたし、さすがに上手かった。本作の見どころと言える。しかし、やはりセリフ回しにジャッゲーシュのようなキレがないのが残念だった。

・先月のカルナータカ州議会選挙に出馬して、落選したプージャー・ガーンディがひょっこりアイテム・ナンバーに出演している。下のスチルを見て分かるとおり、なかなか見事な腹の脂肪で、感動した(この映画が選挙前に公開されていたなら、おそらく票の動きも変わったであろう)。なんでこの音楽シーンが必要なのか分からなかったが、他の部分ではまったく色気のない作品なので、日頃「無意味な音楽シーンは要らん」と言っている気難しい批評家でさえ、このシーンがなかったなら文句を言っていたところであろう。

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◆ テクニカル面・その他
・音楽はアヌープ・シーリンの担当。サンダルウッドでも比較的地味な音楽監督だが、本作のBGMは良かった。

◆ 満足度 : ★★☆☆☆
◆ 必見度 : ★★☆☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 6月2日(日),公開第1週目
・映画館 : Kamakya,11:15のショー
・満席率 : 3割
 

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