カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Kaddipudi】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2013/06/28 01:30   >>

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 シヴァラージクマールは、サンダルウッドのトップ俳優にランクされていながら、【Mylari】(10)以降ヒット作がないという悩めるスターである、という趣旨のことは本ブログでも何度か述べてきたが、本作【Kaddipudi】はシヴァンナにとって久々の「当たり」となったようだ。
 監督はスーリ。プニート・ラージクマール主演の【Jackie】(10)はブロックバスターとなっただけに、お兄ちゃんも恥ずかしい結果は残せない。また、スーリ監督にしても、前作【Anna Bond】(12)はいささか精彩を欠いただけに、汚名挽回と行きたいところだ。
 ヒロインはラーディカー・パンディット。加えて、アインドリタ・レーもカメオ出演しており、ちょっとお得。

【Kaddipudi】 (2013 : Kannada)
物語・脚本・台詞・監督 : Suri
出演 : Shivarajkumar, Radhika Pandit, Anant Nag, Rangayana Raghu, Rajesh, Renuka Prasad, Sharath Lohitashwa, Balu Nagendra, Avinash, Girija Lokesh, M. Chandru, Aindrita Ray(特別出演), その他
音楽 : V. Harikrishna
撮影 : S. Krishna
編集 : Deepu S. Kumar
制作 : M. Chandru

題名の意味 : 噛みタバコ(主人公のニックネーム)
映倫認証 : A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ドラマ
公 開 日 : 6月7日(金)
上映時間 : 2時間25分

◆ あらすじ
 「カッディプディ」こと、アーナンダ(Shivarajkumar)はバンガロールのローカル・ギャングのリーダー。彼は政治家レーヌカージー(Renuka Prasad)のために動いており、その息子ガーリ(Rajesh)とは親友の間柄だった。レーヌカージーは政治家シャンカラッパ(Sharath Lohitashwa)とライバル関係にあったため、アーナンダもシャンカラッパに付いているギャングと抗争を繰り返していた。その抗争の過程で、シャンカラッパ側のマンジャが牢獄に送り込まれる。マンジャはアーナンダに対して強い恨みを抱く。
 ある日、レーヌカージーが主催した集団結婚式の会場で、アーナンダはウマー(Radhika Pandit)を目撃する。貧しいスラム暮らしのウマーは映画の大部屋女優をしていたため、映画撮影に首を突っ込んだアーナンダと再会することになる。これを機に二人は親しい間柄となる。ところが、ウマーの母(Girija Lokesh)が急病で入院し、危篤状態となった際に、母のたっての願いが、死ぬ前に娘の結婚した姿を見たいということだったため、アーナンダはウマーの夫の役を演じる羽目になる。
 そんなこんなの過程で、ひょんなことから、行方不明になっていたウマーの友達ラターが実はレイプ殺人されており、その犯人がアーナンダのシマで悪さをしていた3人組の不良であったことが分かる。アーナンダは警察に通報し、その3人組を牢獄に送り込む。3人組は刑務所でマンジャと知り合う。
 そうこうしているうちに、アーナンダとウマーの仲が進展し、二人は結婚する。これを機にアーナンダはヤクザ稼業から足を洗い、堅気の生活を送る決意をし、懇意にしていた警官(ACP)サティヤ・ムールティ(Anant Nag)にそのことを伝える。
 しかし、現実は甘くは回ってくれない。共にアーナンダに対して恨みを抱くマンジャと不良3人組が次々と出所し、アーナンダに復讐しようとする、、、。

・その他の登場人物 : ジンケ(Rangayana Raghu),娼婦デイジー(Aindrita Ray),サティヤ・ムールティの後任のACP(Avinash)

◆ アナリシス
・題名の「カッディプディ」というのはアーナンダ(Shivarajkumar)の暗黒街での通称だが、意味は「噛みタバコ」。通常の「紙巻きタバコ」と違って、タバコの葉を何らかの葉っぱに包んで口中で噛み、唾液を吐き出すというもの。バンガロールの市内ではほとんど見かけないが、田舎では今でも嗜まれている。これがどうしてアーナンダのニックネームになったかというと、彼の家族の家業がカッディプディ売りだったからで、それからすると、彼の通称は「噛みタバコ」というより「タバコ屋」といったニュアンスになるだろう。ところで、「カッディプディ屋」に高カースト、高所得の者はいないはずで、こうした主人公の設定を見るだけで、スーリ監督がどういう世界を描こうとしたかがはっきり分かる。

・スーリ監督の意図は物語の舞台にもよく表れている。舞台となった町はバープージナガル(Bapuji Nagar)で、バンガロール南西部にある下町。ここはカラーシパーリヤムやシュリーラームプラム(シュリランプラム)と同様、スラムも多く、ごちゃごちゃっとした町並みにローワークラスの人々がひしめき、必然、ヤクザもたむろして、ひょっこり殺人事件が起きても不思議ではないようなエリアだ。こういう土地勘があって、本作を観ると、面白い。(ちなみに、私のうちから近かったりする。)

・ヤクザが堅気の生活を送ろうと決心し、苦闘するという物語。テーマとしてはありふれており、私が「カンナダ・ノワール」と名付けるカンナダ映画のアンダーワールド物でも【Om】(95)、【Deadly Soma】(05)、【Masti】(07)、【Gooli】(08)など、類作が多い(【Majestic】(02)と【Kariya】(03)も近い)。こうした作品はたいてい、主人公の真面目な決意とは裏腹に、状況が悪いほうへと転び、最終的に主人公自身または重要な関係者の身に悲劇が起こり、「これだから暗黒街に身を落としてはいかんのだ」という教訓で閉じられる。しかし、本作は違った結末になっている。

・作品のタッチは非常にリアルで、ディテールにも現実感があり、実在したヤクザの実録物かと思ったほどだ。ぶっきらぼうな語り口で、ストーリーが追いにくいところもあるが、作品世界の殺伐とした雰囲気はよく表れている。しかし、終盤のストーリー展開は非現実的な方へ傾き、やや急いだ感も。前半がゆっくりしていたので、前半をもっと詰めて、終盤を丁寧に描くべきだったと思う。

・口コミ評価は概ね高く、私も良い映画だと思うのだが、満足度がやや低い理由は、やはりエンディングのコンセプトにある。暴力(復讐)の連鎖には終わりがない、従ってアーナンダも結局は悲劇的最期を迎えるであろう、ということを示唆する形で終わるのだが、これはタミル映画【Pattiyal】(06)やヒンディー等映画【Rakta Charitra 2】(10)と同じようなアイデア。それそのものが悪いわけではないが、こういう「観客に考えさせる」型の終わり方はスカッとせず、個人的には好きではない。

・もう一つの不満点は、娼婦デイジー(Aindrita Ray)のエピソード。彼女はバラタナーティヤムのダンサーだが、よんどころない事情で娼館暮らしだったところをアーナンダに救われる、という役回り。登場の仕方(音楽シーン)は非常にドラマティックで、期待したが、後の展開ではお粗末な扱いだった。

◆ パフォーマンス面
・本作のシヴァラージクマールは素晴らしい。見直した。彼の評価については私は揺れており、目を覆いたくなるほど臭く感じるときもあれば、感服するときもある。ただ、はっきり言えるのは、彼には「カリスマ性」がないということ(幼い頃よりラージクマールの映画に親しんでいるカンナダ人には違って見えるかもしれないが)。なので、カリスマ性が必要とされるような作品でない限り、シヴァンナの実直な人柄が滲み出て、光ったりする。【Om】や【Jogi】(05)はそういう作品であり、本作も然り。

・ヒロイン、ウマー役のラーディカー・パンディットがこれまた素晴らしい。スラムに暮らす地味な女性の役だが、「イノセント」を絵に描いたようなキャラで、しみじみと感動できた。
 (写真下:こういう下町の市場のシーンは【Jackie】にもあった。)

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・アーナンダのグループでは、ガーリ役のラージェーシュが良い。「ジンケ(鹿)」役のランガーヤナ・ラグもまずまず。本作プロデューサーのM・チャンドルもアーナンダの子分役で出演しており、意外に味を出していた。 

・ベテラン脇役陣では、善玉ACP役のアナント・ナーグ、悪玉ACPのアヴィナーシュ、レーヌカージー役のレーヌカー・プラサード、シャンカラッパ役のシャラット・ローヒッタシュワなど、それぞれ十分な演技を見せていた。

・3人組の不良は特にコメントもないが、1人だけ、リーダー格の長髪の男だけ名前(Balu Nagendra)が分かったので、メモ代わりに記しておく。

・娼婦デイジー役のアインドリタ・レーは、上で触れたとおり、非常に印象的だった。しばらく不振だったアンディ―だが、これで上昇気流に乗るか?

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◆ テクニカル面・その他
・音楽はハリクリシュナの担当。私は彼の音楽には食傷気味で、本作でもまた同じような曲が来るんだろうと見くびっていたら、なかなかどうして、非常に良い出来だった。

・本作の音楽シーンは、振付師は使わず、ダンスや所作はすべて出演者のアイデアに任される、というものだったらしい。音楽シーンの一つでシヴァンナのダンスがいやにナチュラルだったので驚いたが、こういうカラクリがあったのか。

・S・クリシュナのカメラも切れがあって良かった。
 撮影は当然バンガロールの下町での屋外ロケがほとんどで、音楽シーンでも海外ロケなんかにてんから興味がなさそうなのが潔い。

・本作は外国人にとって興味深い場面がいくつかあったが、その一つは「集団結婚式」。これは「サームーヒカ・ヴィヴァーハ(Saamuhika Vivaha)」というもので、結婚する意志はあるが何らかの事情により式を挙げられないカップルのために、有力宗教団体や有力政治家が執り行うソーシャル・サービス。(カルナータカ州ではダルマスタラ寺院でよく実施される。)

◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★★★☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 6月22日(土),公開第3週目
・映画館 : Santosh,10:30のショー
・満席率 : 1割
 

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