カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Maryan】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2013/07/25 21:26   >>

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 この週末はテルグ映画の【Sahasam】を観るかタミル映画の【Maryan】を観るかでずいぶん迷った。監督と主演俳優は、前者がチャンドラ・シェーカル・イェーレーティにゴーピチャンド、後者がバラト・バーラーという人にダヌシュなので、この比較だけなら【Sahasam】ということになるのだが、ヒロインは前者がタープシー、後者がパールヴァティ・メーノーンなので、ぐっと【Maryan】に傾く(タープシーが嫌と言うより、久々にパールヴァティが見たかった)。加えて、【Maryan】はA・R・ラフマーンが音楽を担当しているということなので、やっぱりこちらかなと。

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 監督のバラト・バーラーという人については全く知らなかったのだが、調べてみると、有名な『Vande Mataram』『Jana Gana Mana』のビデオを制作した人だということが分かった。これらのビデオはインド好きのお方ならどこかで一度は目にしていることと思う。このアルバム/ビデオ企画以来の縁で、ラフマーンが音楽監督に就いたのかもしれない。本作はバラト・バーラーにとっておそらく劇場用長編娯楽映画でのデビュー作になると思う。(デビュー監督といっても、お若い方ではなく、すでに齢50のオジサマ。)
 主演は、【Aadukalam】(11)で国家映画賞を獲得し、【3】(12)の‘Why This Kolaveri Di’が全国的規模でヒットし、ボリウッドに進出しては【Raanjhanaa】が大当たりするという、もはや貫録十分な実績のはずなのに、相変わらず貧相に見えるダヌシュ。
 ヒロインは、私は好きなのだが、あまり作品に恵まれず、人気・注目度もいまいちなパールヴァティ・メーノーン嬢。本作が彼女にとって幸運の1作となることを願う。

【Maryan】 (2013 : Tamil)
物語・監督 : Bharat Bala
出演 : Dhanush, Parvathi Menon, Salim Kumar, Appukutty, Jegan, Vinayakan,
Uma Riyaz Khan, Imman Annachi, Dagbeth Tweh, Christopher Minie, その他
音楽 : A.R. Rahman
撮影 : Marc Koninckx
編集 : Vivek Harshan
制作 : V. Ravichandran

題名の意味 : 不死の人
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ドラマ/ロマンス
公 開 日 : 7月19日(金)
上映時間 : 2時間31分

◆ あらすじ
 マリヤーン(Dhanush)はタミル・ナードゥ州南部の漁村に暮らす若者。漁師の彼にとって海はすべてであり、彼は自分のことを「海の王子」だと称していた。
 同じ村にパニ(パニマラル:Parvathi Menon)という娘がおり、マリヤーンにぞっこんだった。しかし、粗野なマリヤーンはパニの気持ちに報いない。パニはマリヤーンの親友サッカライ(Appukutty)に頼んで、マリヤーンとの仲を取り持ってもらおうとする。この作戦はなかなかうまく行かないが、いくつかの過程を経て、マリヤーンもパニのことを強く愛するようになる。
 この村にティークリッシ(Vinayakan)という高利貸しがおり、パニと結婚したいと望んでいた。パニの父トーマイヤ(Salim Kumar)はこのティークリッシから多額の借金をしていた。そこでティークリッシは借金を帳消しする代わりに、パニと結婚させてくれるよう申し出る。マリヤーンはそれを知り、ティークリッシを叩きのめす。
 マリヤーンはパニの父の借金問題を片付けるために、海外出稼ぎに出る決意をする。彼は出稼ぎ斡旋事務所に赴き、スーダンの建設現場で2年間働く仕事の契約書にサインする。
 ・・・
 スーダンでの2年間の契約期間を満了したマリヤーンは、現地で知り合ったタミル人のサーミ(Jegan)ともう一人の北インド人と共に、意気揚々と帰路に就く。しかし、彼らを乗せたタクシーは途中でスーダン人武装グループに襲われ、3人は拉致されてしまう。
 武装グループの狙いは現金だった。彼らは逃亡を試みた北インド人を射殺する。さらにマリヤーンに、契約会社に電話をして現金を持って来させるようにと命令する。しかしマリヤーンはその電話機で故郷のパニに電話をかける。
 拉致から21日後、マリヤーンとサーミは夜中になんとか監禁所を抜け出し、トラックにしがみついて逃走する。トラックを降りて後、マリヤーンはサーミともはぐれる。武装グループの追跡に怯える中、マリヤーンは足を頼りに砂漠を突き抜けなければならなくなる、、、。

◆ アナリシス
・マニ・ラトナム監督の【Raavanan】(10)を観たとき、「作った側にのみ大きな満足感のある映画」と書いたか、それと似たような印象を得た。物語は前半が主にタミルの漁村、後半がスーダンということで、海中での撮影、広大な砂漠地帯でのロケ、果ては猛獣のチーターまで登場し、撮影は困難だったろうし、スタッフにも俳優にも忘れがたい体験となったに違いない。しかし、実のところ、映画としては退屈なものだった。

【Kanthaswamy】(09)や【Nootrenbadhu】(11)や【3】など、タミル映画(に限らないが)には新人監督がある程度の予算を持たされ、凝りに凝った異色作を発表して失敗するというケースがまま見られるが、本作もそのリストに連なるものだろう。思惑(アイデア)的には面白い映画になるはずだったのに、思惑どおりに行かなかったというのは、やっぱり監督の「経験」の差か?

・最も鼻に付いたのは、本作が醸し出している「アート」な空気だ。監督のバラト・バーラー自体が「ワシはアーチストだ」みたいな顔しているし、A・R・ラフマーンやマーク・コニンクス(撮影監督)などによるアーチスト集団で「幼稚なタミル娯楽映画」とは一線を画した映画を撮ったつもりなのだろうが、スンダル・C監督のアホくさい【Theeya Velai Seiyyanum Kumaru】のほうがよっぽど満足度が高い。様々な意見はあれど、個人的には、インド映画というのは「勿体ぶった」ものではなく、「率直」、「ざっくばらん」、「気取りのない」ものであってほしい。実は、本作の批評家のレビューは好意的なものだが、あれはインテリの観点。退屈な映画でも、2時間30分根気強く座れるよう躾けられた観客ならOKかもしれないが、私はどうもこの手のアート風娯楽映画は苦手だ。

・実は、物語の前半、漁村でのマリヤーン(Dhanush)とパニ(Parvathi Menon)の展開は非常に良かった。マニ・ラトナム監督の【Kadal】(13)もそうだったが、なにせ漁村のクリスチャン・コミュニティーを描いた娯楽インド映画というのは外国人の目にはフレッシュだし、マリヤーンとパニのやり取りもデリケートに描かれていたし(例えば、愛情表現としてマリヤーンがパニの家の玄関に魚を置く場面など)、時おり出て来る魚のカレーとかアッパムとかも美味そうだった。リアリティーがあったし、かつ、程よく臭みが抜かれていて、外国人には取っ付きやすい作り。と、ここまでは秀作の予感。

・しかし、後半のスーダンの部がいただけない。武装グループによる誘拐に脱出と、本来ならスリリングな展開になるはずなのに、かえってスローダウンしていた。「チーター」のシーンも(話題の一つだったが)中途半端。いくらでも面白くする工夫はあったと思うが、よくストーリー/脚本が練られていなかった。(このスーダンでのインド人労働者誘拐というプロットは、実際に起きた事件に想を得ているらしい。)

・しかも、前半の漁村の部に比べて、スーダンの部は急にリアリティーがなくなる。せっかく前半でリアルに描けていたのに、後半では虚構性が強くなり、「世界のどこの、どんな人々の話?」という感じだった。これは本作だけの問題ではなく、インド映画はあちこち海外を舞台にしている割には、異郷の地の描き方が雑だったり、ステレオタイプ的だったりする。

・とは言っても、異色作ではあるし、気の利いた表現もいくつかあったし、製作スタッフや俳優陣の仕事も高水準だったので、凡作という印象はない。

・本作の題名、または主人公の名前である「マリヤーン」は「不死の人」という意味らしい。実際にこういうインド人名があるのか、ニックネームなのかは分からない。漁師という危険な仕事をしていても(実際に親友のサッカライを含む漁師たちが溺死するシーンもあるのだが)、マリヤーンは死なない。アフリカの砂漠でも、死なない。それはパニへの強い愛があるゆえ、死なない(死ねない)という、「愛の力」への讃歌となっているのだが、武田鉄也の「ボクは死にません!」を思い出した(←古っ!)。

・マリヤーンのやっていた漁というのは、釣竿や網を使うものではなく、素潜りで銛を使ってサメのような比較的大型魚を獲るというもの。これは凄かった。(ダヌシュくん、本当に潜っていたよ。)

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◆ パフォーマンス面
・ダヌシュのパフォーマンスは申し分なかった。否、パフォーマンスの巧拙というより、とにかくダヌシュ向けの役柄だった。下のスチルのように、「ガリガリ」、「ボロボロ」、「ヨレヨレ」になってまで、というのはダヌシュの真骨頂だろう。また何かの映画賞の候補になると思う。

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・同じく映画賞の候補になりそうなのがパニ役のパールヴァティ・メーノーン。漁村の娘という地味キャラだったが、情感たっぷりの芝居をしていたし、程よい色気も出ていた。タミル映画では【Poo】(08)に出演して高い評価を得たのだが、人気獲得には至らず(まぁ、あの太眉なら仕方ないか)。彼女を商業的に最もうまく使ったのはカンナダ映画界だろう。【Milana】(07)と【Prithvi】(10)のヒット作がある。テルグ映画やタミル映画にはキャラクターが合わないようだが、故郷のマラヤーラム映画界で重用されないのはなぜ?

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・パニの父親役として、マラヤーラム映画界からサリーム・クマールが出演している。コメディーではなく、ごくごく真面目な役柄だった。出番も多くなく、なんでわざわざこの国家映画賞受賞者を、、、という疑問はある。自信はないが、セリフは吹き替えが付いているようだった。

・脇役陣ではジェーガン(サーミ役)、アップクッティ(サッカライ役)、ヴィナーヤカン(高利貸し役)はそれぞれOK。ウマー・リヤーズ・カーンはよく分からない役回りだった。

・バラト・バーラー監督はフランス/リベリア映画の【Johnny Mad Dog】(08)という作品から本作の着想を得ているということだが、それに出演しているらしいDagbeth TwehとChristopher Minieという人が本作のネガティブロール(武装グループのメンバー)として出演している。
 (写真下:この人がDagbeth Tweh?)

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◆ テクニカル面・その他
・マニ・ラトナム監督作品だと力が入るのか、存在感のありすぎる曲を書いてしまうA・R・ラフマーンだが、本作では地味な曲を提供しており、言われないとラフマーンだと気付かないかもしれない。その分、物足りない感もあるが、不思議とリラックスできる良い曲を書いている。BGMはかなり良い。

・本作は「Auro 3D」という音響システムを用いているらしいが、例によって私の耳に念仏(というより、私が観た映画館ではこの技術を採用していなかったと思う。)

・撮影監督はマーク・コニンクスという人だが、ベルギー人で、おもにフランス映画界で活躍しているカメラマンらしい。上で言及した【Johnny Mad Dog】で撮影を担当しており、それがバラト・バーラーの目に留まったか?

・ロケ地は、スーダンの部は実際にスーダンで撮影されたわけではなく、リベリアやナミビアで撮影されたようだ。漁村の部はカンニャークマーリの「Mandaikadu」という所で撮影されたらしい。劇中では「Neerodi」と表示されていたが、とにかく、タミル・ナードゥ州といってもほとんどケーララ州境にあるクリスチャンが暮らす漁村のようだ。

◆ 満足度 : ★★☆☆☆
◆ 必見度 : ★★★☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 7月20日(土),公開第1週目
・映画館 : INOX, JP Nagar,10:10のショー
・満席率 : 3割

 (写真下:右より監督、音楽監督、主役ペアの皆さま。)

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