カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Jagadguru Adi Sankara】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2013/09/07 10:07   >>

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 今回紹介する【Jagadguru Adi Sankara】は、中世インドの大思想家「シャンカラ」の生涯を描いたもの。シャンカラの生没年は例によって定かではないが、「西暦788年〜820年」が有力とされている。生地はケーララ州エルナクラム県のカーラディだと伝えられている。彼の最大の功績は「アドヴァイタ」(不二一元論)の思想的立場を確立し、ヒンドゥー教の教義を整理・強化した点にあるだろう。「アドヴァイタ」が如何なる思想かは、ご存知の方には私の説明など必要ないだろうし、ご存じでない方に手短に分かりやすく説明するのは私の手に余る事柄なので、下にWikipediaの記述(2013年9月5日現在)の一部をコピペしておく(この記述がどのくらい適切かは各自で判断されたし)。

 「ヴェーダーンタ哲学の不二一元論の立場を確立したインド最大の哲学者シャンカラは、原因を必要とせず存立するところのブラフマンと、個人の本体であるアートマンは本来同一であると主張した。上述のように、仏教思想からの影響を強く受け、「仮面の仏教徒」と称されることがある。シャンカラが目ざしたものは輪廻からの解脱であり、その手段は、バラモン教の経典『ヴェーダ』の注釈書(奥義書)である『ウパニシャッド』の説く宇宙の根本原理であるブラフマン(梵)と個体の本質であるアートマン(我)とは本来は同一であるという知識である。現実の日常経験がこの真理と矛盾しているのは、この知識を会得しない無知(無明)によるとし、肉体をも含めた一切の現象世界は無明によってブラフマンに付託されたものにすぎないものであって、本来実在しないと説いて幻影主義的な一元論(不二一元論)を唱えた。不二一元論は現代にいたるもインド思想界の主流をなす教説として知られている。」

 シャンカラはまたインド各地にアドヴァイタ・ヴェーダーンタ派の「マタ」(僧院)を創設したとも伝えられ、その総本山はカルナータカ州シュリンゲーリにある「シュリンゲーリ・シャーラダ・ピータ」である。この僧院にはシャンカラの教えを受け継ぐアーチャーリヤが代々「シャンカラ」を名乗っており、それ故、創始者のシャンカラは通常「アーディ(初代)・シャンカラ」と呼ばれている(現地人は「アーディ・シャンカラーチャーリヤ」と呼んでいるが)。
 ちなみに、シュリンゲーリのこの寺院コンプレックスは本当に良い所なので、インドの宗教/寺院に関心のあるお方なら、ぜひ一度は訪れていただきたい。(寺飯が美味い!)
 (画像下:アーディ・シャンカラーチャーリヤ。)

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 さて、映画の話であるが、本作【Jagadguru Adi Sankara】の監督はJ・K・バーラヴィで、【Annamayya】(97)、【Sri Manjunatha】(01)、【Sri Ramadasu】(06)など、傑作デヴォーショナル映画の脚本を書いた人。監督は本作が初めてのようだ。
 シャンカラを演じるのはカウシク・バーブという人で、上の画像にそっくりに扮している。(下)

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 もっとも、本作はナーガールジュナやモーハン・バーブ、スマン、シュリーハリ、サーイ・クマールなどの著名俳優が脇を固めており、ちょっとしたマルチスター映画となっている。女優もカマリニー・ムカルジーに加え、ミーナー、ロージャー、ローヒニといった私の好きなオバサマたちが並び、公開前から「5回は見るな」と豪語してしまった。

 参考に、本作は娯楽映画仕立てになっているが、「アーディ・シャンカラ」の生涯を描いた映画作品にはG・V・アイヤル監督のカンナダ映画【Adi Shankaracharya】(83)があり、こちらは言語がサンスクリット語!(なので、カンナダ映画とは言えない。)一体誰が観たんだろうという疑問はあるが、観られるものなら私も観たい。

【Jagadguru Adi Sankara】 (2013 : Telugu)
脚本・監督 : J.K. Bharavi
出演 : Kaushik Babu, Nagarjuna, Srihari, Sai Kumar, Suman, Tanikella Bharani, Mohan Babu, Rohini, Meena, Roja, Kamalinee Mukherjee, Mynampati Sreerama Chandra, Kamna Jethmalani, Nagendra Babu, Kaikala Satyanarayana, Posani Krishna Murali, Sana, L.B. Sriram, Thulasi Shivamani, Jeeva
音楽 : Nag Srivatsa
撮影 : P.K.H. Doss, S. Gopal Reddy
編集 : Gowtham Raju
制作 : Nara Jaya Sri Devi, Global Sai Financiers

題名の意味 : 至高の師・初代シャンカラ
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : 聖者伝
公 開 日 : 8月15日(木)
上映時間 : 約2時間

◆ あらすじ
 時は起源8世紀、南インドのとあるバラモン家に赤子が生まれる。その子はシヴァ神の恵みにより誕生したため、シャンカラと名付けられる。シャンカラはすでに幼児期より読み書きができ、ヴェーダの学習に秀で、アグニ神(Tanikella Bharani)からも祝福を受ける。しかし、そんな天才的能力と引き換えに、彼は短命を運命付けられていた。ルドラークシャ仙(Mohan Babu)はシャンカラの寿命を延ばすために、自分の寿命を割いて彼に与える。
 シャンカラが少年のときに父が亡くなる。当時、インドは無知がはびこる思想的混迷期で、僧侶や学者は宗派・学派ごとに対立し、無意味な論争を続けていた。8歳のシャンカラ少年はその有様を見て憂い、出家して遊行僧となる決意をする。これに母(Rohini)は反対するが、シャンカラはどうにか母の許可を得、インド全土を知識を求めて行脚する。
 成人したシャンカラ(Kaushik Babu)はゴーヴィンダ・バガヴァトパーダ(Srihari)という導師に出会い、師事する。その後、本格的に剃髪して僧侶となり、カーシーへと赴く。
 当時のカーシーはさらに百家争鳴の有様で、シャンカラは早速カーパーラ派の指導者(Suman)から論争を仕掛けられる。また、「火葬場守り(チャンダーラ)」の男(Nagarjuna)がシャンカラの前に立ちはだかる。シャンカラは初めこの男を嫌悪するが、言葉を交わすうちに、この男がシヴァ神の化身であることを見抜き、ひれ伏す。
 シャンカラはウパニシャッド哲学の注釈書を著していたが、それはカーパーラ派によってガンジス河に捨てられる。落胆するシャンカラの前にガンガー女神(Meena)が現れ、書物を返してもらい、勇気付けられる。
 次にシャンカラはミーマーンサー派のマンダナ・ミシュラ(Sai Kumar)に会い、論争する。この論争はシャンカラの勝利に終わりそうに見えたが、論争の判定者を務めていたマンダナ・ミシュラの妻ウバヤ・バーラティ(Kamalinee Mukherjee)が、シャンカラは「夫婦生活」に関しては如何なる知識も持っていないと指摘し、勝負は一時お預けとなる。そこでシャンカラは幽体離脱の術を用い、たまたま猛獣に襲われ死亡した王(Mynampati Sreerama Chandra)の遺体に入り込む。シャンカラ(蘇った王)は王妃(Kamna Jethmalani)と交流を持ち、その後、元の自分の身体に戻る。こうして「夫婦生活」についても知識を得たシャンカラは論争に勝利し、以後、マンダナ・ミシュラはシャンカラの弟子となる。
 カーパーラ派はシャンカラの命を奪おうとするが、諸神・諸仙に護られた彼を滅することはできず、結局、カーパーラ派の指導者もシャンカラにひれ伏す。
 その後、シャンカラは精力的にインド各地を行脚し、論争し、著作を著し、マタ(僧院)を創設する。しかし、そんなシャンカラにも神が定めた寿命の時がやって来る。彼は火葬場守りの男に見守られ、ヒマーラヤを登って行く。

◆ アナリシス
【Shiridi Sai】(12)を観たとき、落胆したし、つまらないとも思った。本作【Jagadguru Adi Sankara】はそれより作品の質、完成度は落ちるはずだが、私的にはこちらのほうが楽しく鑑賞できたし、ストレスも少なかった。といっても、特に興奮することもない、フラットなデヴォーショナル映画だった。「5回は見る」と豪語したが、あと1回見たら十分。

・あるレビューには本作の上映時間が2時間28分と記されていたが、私が観たのは2時間5分程度だった。今回鑑賞した映画館(Chandrodaya)は以前にも【Magadheera】を15分も「自主カット」したという前科があるので、今回ももしかしたら20分ぐらい私の「未見」の部分があるのかもしれない。

・物語の構成は、シャンカラの生涯を誕生から入滅まで継時的にまとめている。生涯といっても、真偽のはっきりしない中世人の伝承なので、本作を見てシャンカラ「その人」を知ったと言うことはできないだろう。しかし、現代のヒンドゥー教がシャンカラというアイコンに何を託したいのかは、おぼろげながらつかめた。

・映画の題名に「for Youth」というタグが付いていたが、これはどうかと思った。つまり、この「若者」というのがどういう連中を想定しているのか? 非教養層の若者たちが中世の学匠の映画を観て面白がるとは想像できない。おそらく、バーラヴィ監督は都市部の教養層の若者、アメリカかぶれしてヒンドゥー教の真髄など忘れかけている連中をターゲットにしたかったのではないかと思われるが、もしそうなら、本作の演出法はあまりにも古くさく、彼らにアピールするとはとても思われなかった。

・子供の頃、【ブラザー・サン シスター・ムーン】(72)や【ジーザス・クライスト・スーパースター】(73:映画版)を観て、こんなふうに聖人を描くこともできるんだと、いたく感動した記憶がある。本作も「for Youth」というタグから、現代的な全く違った視点でシャンカラが捉えられているのでは?と、ちらっと期待したが、さすがテルグ映画、そんなことは全然なかった。

・本作がいまいち映えない理由は、主人公(シャンカラ)を演じたカウシク・バーブの力量不足ということになるだろう。かなり健闘はしていたので、エールを送ってやりたいが、やはりナグさんやチルさんが聖者/神格を演じた宗教映画ほどの迫力は出ない。

・映画の盛り上がり点といえば、シャンカラとマンダナ・ミシュラ(Sai Kumar)の論争が比較的丁寧に描かれており、良かった。対して、シャンカラとカーパーラ派の対決は、終盤のヤマ場としてもっと凄みのあるものにすべきだったろう。(スマンの力量が活用されていなかった。)

・私的にイチオシしたいのは、そのシャンカラとマンダナ・ミシュラの論争シーンの中で、マンダナ・ミシュラの妻ウバヤ・バーラティ(実はサラスワティの化身)を演じたカマリニー・ムカルジーだ。ここはちょっとしたコメディー・シーンとなっている。

・似非聖者の例として、バーバー・ラームデーヴと思しき人物が風刺の対象となっている。

・意外だったのは、シャンカラの母(Rohini)がクリシュナ神の帰依者として描かれ、その母のいまわの際にシャンカラがクリシュナのアヴァターをとって母の前に現れるというシーン。シャンカラといえばシヴァ神の生まれ変わりとされ、シヴァ派と関連付けられていると思っていたが、そういうわけでもないのかな? それとも、これはテルグ語圏ならではの解釈?

・本作の冒頭でナレーターを務めていたのは実はチランジーヴィだった。鑑賞後にレビューを読んで知り、びっくり。(声を聞いただけでは分からなかった。)さらに、チルさんは声だけでなく、ダンスをするシヴァ神の役でも登場する。何のことはない、【Sri Manjunatha】から取ってきた映像なのだが、チルさんを大画面で見るのも久しぶりだったので、感動した。

◆ パフォーマンス面
・畏れ多くも初代シャンカラーチャーリヤを演じたカウシク・バーブは、どうやら本作がデビューのようだ。プレッシャーはあったろうが、上に書いたとおり、それなりに熱演している。しかし、声はちょっと弱かったように思う。
 (写真下:素顔はなかなかハンサムな好青年。)

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・ナーガールジュナが演じたのは不可触民のチャンダーラ(死体処理人、火葬場守り)で、実はシヴァ神の化身という役。短い出番だったが、インパクトはあった。
 (写真下:黒装束がワイルドだった。)

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・シャンカラの師、ゴーヴィンダを演じたのはシュリーハリ。これもなかなか見応えがあった。
 (写真下:なんか可愛らしいシュリーハリ版ゴーヴィンダ。)

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・マンダナ・ミシュラ役のサーイ・クマールは落ち着いたセリフ回しでかなり良かった。対して、カーパーラ派の指導者を演じたスマンは、登場するなり火を噴いたりして期待が持てたが、大きな展開はなかった。

・タニケッラ・バラニはアグニ神の役だったが、あの平べったい顔にヴェーダの神は似合わないように感じた。モーハン・バーブ(ルドラークシャ仙役)はよく分からない役回りだったが、自分の寿命を割いてまでシャンカラの寿命を延ばしてやるという、親切なリシの役だった(写真下)。

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・女優陣では、上で言及したとおり、カマリニー・ムカルジーが短い出番ながら上手いところを見せていた。

・ロージャーはラクシュミ女神の役で、音楽シーンの一つに登場するのみ。ミーナーはガンガー女神の役で、結婚してますます丸みを帯びたケツが瞼に焼き付いて離れない。ローヒニ(シャンカラの母親役)は地味に、無難に演じていた。

・王と王妃の役はMynampati Sreerama ChandraとKamna Jethmalani。Mynampati Sreerama Chandraについては全く知らなかったが、実は人気歌手らしい。
 (写真下:左がMynampati Sreerama Chandra、右がKamna Jethmalani。)

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・本作はカンナダのリアルスター、ウペンドラも出るという前情報だったが、出ていなかった(のか、気付かなかったのか、とにかく主要登場人物には入っていなかった)。

◆ テクニカル面・その他
・(省略)

◆ 満足度 : ★★☆☆☆
◆ 必見度 : ★★☆☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 8月25日(日),公開第2週目
・映画館 : Chandrodaya,11:30のショー
・満席率 : 1割
 

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