カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Aadhalaal Kadhal Seiveer】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2013/09/12 02:11   >>

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 8月30日から9月1日の週末は、サリーム・アフメド監督の【Kunjananthante Kada】、ブレッシー監督の【Kalimannu】、シャーマプラサード監督の【Artist】といったマラヤーラム映画の話題作がバンガロールで一挙に公開され、どれか1つは観たかった。特に【Kalimannu】は女優シュウェータ・メーノーンのリアル出産シーンが見られるという前情報だったので、ぜひにと思っていたのだが、物理的理由で3作とも不可。マラヤーラム映画では先日はラール・ジョース監督の【Pullipulikalum Aattinkuttiyum】とランジット監督の【Kadal Kadannu Oru Maathukutty】も観逃がし、痛い状況が続いている。
 代わって、第2候補になるが、現地での評判の良いスシンディラン監督のタミル映画【Aadhalaal Kadhal Seiveer】がバンガロールでも2週間遅れで公開されたので、こちらを観ることにした。

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 スシンディラン監督といえば、【Vennila Kabaddi Kuzhu】(09)と【Azhagarsamiyin Kudhirai】(11)では田舎の情景を詩的に描く反面、【Naan Mahaan Alla】(10)ではチェンナイの若者の腐敗した姿を描き、いずれも小品ではあるが、高い評価を得た。一方、前作の【Rajapattai】(11)では、スターのヴィクラムを主演に起用し、娯楽大作を狙ったが、失敗している。
 本作【Aadhalaal Kadhal Seiveer】は再びスター不在の小品路線で、チェンナイの大学生の「生態」を描いたものらしい。

【Aadhalaal Kadhal Seiveer】 (2013 : Tamil)
脚本・監督 : Suseenthiran
出演 : Santhosh Ramesh, Manisha Yadav, Jayaprakash, Thulasi Shivamani, Ramnath Shetty, Poornima Jayaram, Arjun, Archana Raja, Durga, その他
音楽 : Yuvan Shankar Raja
撮影 : Soorya A.R
編集 : Anthony
制作 : Saravanan

題名の意味 : それが故に愛せ
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ドラマ
公 開 日 : 8月15日(金)
上映時間 : 1時間40分

◆ あらすじ (ネタバレ注意!)
 ミドルクラスのカールティク(Santhosh Ramesh)はチェンナイの工業大学に通う学生。同じくミドルクラスのシュウェータ(Manisha Yadav)は大学の友達。カールティクはシュウェータが好きだったが、なかなか告白できない。そこで友人のジャイ(Arjun)が、友達一同で食事しているときに、それを暴露する。その時シュウェータはカールティクの気持ちを拒否する。しかし、カールティクがバスから落ちて怪我をしたとき、彼に対する気持ちに気付き、彼と付き合うことにする。
 シュウェータにはジェニー(Archana Raja)という幼馴染みの友達がいたが、彼女はシュウェータがカールティクと交際していることを知り、忠告する。というのも、ジェニーは最近男に振られて苦い経験をしていたからである。しかし、カールティクとの交際に夢中のシュウェータは真面目に聞き入れない。そこでジェニーはそのことをシュウェータの母(Thulasi Shivamani)に告げ口する。母は娘を問い質すが、シュウェータは適当にごまかす。
 二人の仲は進展する。シュウェータは、家族が留守のときに、カールティクを家に呼び入れる。しかし、その時は突然叔母がやって来たため、二人の初エッチは未遂に終わる。その後、友人たちとマーマッラプラムに旅行した際に、二人は遂に肉体関係を持つ。
 その後、シュウェータは生理が来ないことに気付き、検査してみたところ、妊娠していることが分かる。シュウェータはカールティクに打ち明ける。そして、他の友人たちとも相談した結果、中絶することに決め、他の町の病院に行く。そこで、尻込みするカールティクに代わって、ジャイとシュウェータが夫婦ということにして、彼女は診察を受けようとする。しかし、その嘘はすぐにばれ、病院から追い出される。
 その後、手術を請け負ってくれる中絶医が見つかる。しかし、まさに手術の日に、シュウェータはつわりで嘔吐しているところを母に見られる。母は、最近シュウェータがナプキンを使用していないことなどから、直感で娘が妊娠していることに気付き、問い詰める。そして、とうとうカールティクとの関係が明るみに出る。
 これは両家族で大問題となり、早速カールティクの父(Ramnath Shetty)とシュウェータの父(Jayaprakash)が会って相談する。シュウェータの家族は二人を結婚させることを提案するが、カールティクの父は認めない。
 それで、カールティクとシュウェータは駆け落ちを企て、友人たちに手伝ってもらって、車で出発する。しかし、途中で家族を裏切れないと言って、シュウェータは家に戻ってしまう。
 この状況の中で絶望したカールティクは、家族の前で手首を切る。それは大過なきを得るが、しかし、このショックで妊娠中のカールティクの姉(Durga)が流産してしまう。
 こうしたゴタゴタの中で、カールティクの家族も折れ、シュウェータがお腹の子を中絶するなら、結婚を認める、と申し出る。しかし、今度はシュウェータ自身が生むことを主張し、その申し出を拒む。これでカールティクとシュウェータの関係にもひびが入る。
 再び両家による会談が持たれるが、カールティクの家族側に口の悪い男がおり、シュウェータのことを売春婦となじる。この件でシュウェータの母はカールティクの家族に抗議するが、もはやカールティク自身がこの結婚への意思をなくしていることが分かる。失望したシュウェータはカールティクと断交する決意を母に伝える。
 数ヶ月後、シュウェータはティルチラパッリで出産する。しかし、赤子はすぐさま孤児院へと預けられる。
 それから2年後、シュウェータは何事もなかったかのように他の男と結婚する。カールティクも新しいガールフレンドと交際していた。もちろん、孤児院にいる子供はそんな両親のことは何も知らない。

◆ アナリシス
・物語の冒頭で現在のチェンナイの「カレッジ・ラブ事情」といったものがパノラマ的に映し出され、そうした一群の中から良くない例としてカールティクとシュウェータのケースに焦点が当てられる。

・鑑賞前はロマンティックな純愛物を予想したが、さすがにタミル映画(というより、スシンディラン監督)はそれを許してくれない。まだ親になるべく決意も責任感もない大学生が婚前交渉を持ち、妊娠・出産し、結局、罪のない子供が孤児になる運命を負わされるという、痛々しい物語だった。

・インド映画の主人公とヒロインというのは、一定の正しい姿を観客に示して終わることが多いが、本作のカールティクとシュウェータの場合は完全に反面教師として存在する。エンディングの5分はまるまる孤児院の子供をカメラで捉えたものだが、その姿は若者の無責任さに対する強烈な告発となっている。

・カールティクとシュウェータのうち、シュウェータのほうは、カールティクをエッチ目的で家に呼び入れたり、母に対する嘘やごまかしを厭わなかったりと、決して褒められる人物ではないが、両親を裏切れないと言って駆け落ちを思い留まるなど、まだ筋を通しているところがあった。しかし、カールティクのほうは全くの無責任、無計画、自己中心的で、箸にも棒にもかからない青年像だった。

・【Naan Mahaan Alla】を観たときにも思ったが、スシンディラン監督はどうも今のインドの都市部に暮らす青年の退廃ぶりに危機感を抱いているようで、彼らに対して手厳しく批判の眼差しを向けたのが【Naan Mahaan Alla】であり、本作であるのだと思う。

・しかし、ここで見落としてならないのは、スシンディラン監督は若者側の無責任さだけでなく、親の側にも問題はなかったか?と問うている点だ。シュウェータの家族が二人の結婚を解決策として提案したときに、もしカールティクの父がすんなりそれを受け入れていたら、こんな結末にはならなかったわけだ。また、親族内に必ず1人や2人、性格の悪い親類がいるというのはほとんどインド映画の「公理」となっているが、そのとおり、カールティクの親類がシュウェータのことを「売春婦」扱いしなければ、ここまで問題はこじれなかったはずだ。

・ここには「対面(家名)を保つ」というインド古来よりの頑迷さが見られるし、また、インドでは結婚は個人的な愛のイベントというより、両家族間のビジネス取引といった性質を持つが、本作でもそうした親レベルの打算(正確には、打算の狂いによる焦り)が見られるし、それよりも、そもそもこうした出来事(子の結婚前の妊娠)が起きたときの対処法に関して、親が無知であることによるパニックが見られ、もしかしたら、カールティクとシュウェータが結婚して平均的な家庭を持てたかもしれない芽を親たちが摘み取ってしまったかもしれないのである。

・ま、日本のドラマみたいに、未婚の親になっちゃった子供たちを周囲が温かい目で見守るというのも一つの行き方だろうけど、本作ではスシンディラン監督ははっきりと「これはノー」という立場を取っている。本作は上映時間も1時間40分と短かったが、エンディングのメッセージまで寄り道なし、スシンディラン監督「怒りの直球一本勝負」といった作品だった。

◆ パフォーマンス面
・主人公のカールティクを演じたのは新人のサントーシュ・ラメーシュという人。演技も何もあったもんじゃなく、見ていて腹が立ったが、そもそも「カールティク」という人物が見ていて腹の立つものなので、監督の狙いは当たったのかもしれない。
 ところで、このサントーシュ・ラメーシュに関しては何も知らないのだが、どこかのレビューに「son of film producer Ramesh Babu」とあり、このラメーシュ・バーブなる人物がもしテルグ映画界のあのプロデューサーのことなら、サントーシュはマヘーシュ・バーブの甥ということになるのだが、そりゃウソや〜!
 (写真下:強面のスシンディラン監督から指示を受けるサントーシュくん。)

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・シュウェータ役のマニシャー・ヤーダヴは【Vazhakku Enn 18/9】(12)で裸を盗撮されるセカンド・ヒロインを演じた人。「隙だらけの女子学生」を演じさせれば今南インドでは一番かもしれない。特に美人というわけではないが、色気はあり、カールティクくんが一発やりたいと思った気持ちも理解できないわけではない。今回は思いのほか演技面でも健闘していた。ちなみに、彼女はバンガロール出身なので、私はちょっと応援している。

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・ベテラン脇役陣では、シュウェータの父母を演じたジャヤプラカーシュとトゥラシ・シヴァマニが良かった。特に娘の妊娠に気付いたときのトゥラシの演技は迫真ものだった。

・カールティクの親友ジャイを演じたのは、【Kadhalil Sodhappuvadhu Yeppadi】(12)でも良い味を出していたアルジュンくん。「主人公の友人役」というピンポイントでは重宝しそうなコマだ。

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◆ テクニカル面・その他
・音楽はユワンくんの担当。どうしたわけか彼の音楽を聴くのも久々だし、最近は不振だったようにも思うが、本作はなかなか良かった。エンディングの曲はバーラー監督の作品かと思わせるほど、情念たっぷりのものだった。

◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★★☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 9月1日(日),公開第3週目(バンガロールで1週目)
・映画館 : Poornima,13:30のショー
・満席率 : 6割
 

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