カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Daivathinte Swantham Cleetus】 (Malayalam)

<<   作成日時 : 2013/09/20 02:35   >>

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 この週末は某カンナダ映画を観るつもりだったが、マンムーティ主演のマラヤーラム映画【Daivathinte Swantham Cleetus】が公開されたので、急遽こちらを観ることにした。というのも、マンムーティが「イエス・キリスト」の役を演じるという前情報だったからである。
 (写真下:マンムーティ扮するキリスト。「ゴルゴタの丘」の場面。)

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 キリストを演じるといっても、劇中劇の形、つまり、本作のマンムーティは舞台役者として設定されており、ストーリー中の「芝居」の場面でキリストに扮するということなので、彼がダイレクトにキリストを演じるわけではない。しかし、イスラーム教徒のマンムーティがずばり「イエス・キリスト」に扮し、「磔刑」のシーンまであるというのだから、、、これはやっぱり観ずばなるまい。

【Daivathinte Swantham Cleetus】 (2013 : Malayalam)
物語・脚本・台詞 : Benny P. Nayarambalam
監督 : Marthandan
出演 : Mammootty, Honey Rose, Siddique, P. Balachandran, Suraj Venjaramoodu, Aju Varghese, Sanam Shetty, Rejith Menon, Thesni Khan, Vijayaraghavan, Kailash, Kottayam Nazeer, Saju Kodiyan, Abu Salim, Anoop Chandran, Mini Arun, Maya Moushmi, その他
音楽 : Bijibal
撮影 : Pradeep Nair
編集 : Abhilash Narayana
制作 : Faizal Latheef

題名の意味 : 神ご自身のクリートゥス
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ドラマ
公 開 日 : 9月12日(木)
上映時間 : 2時間6分

◆ あらすじ
 ケーララ州のとある山間の村。キリスト教司祭のサニー(Siddique)は、病気で苦しむ老人たちの福祉のために、イエス・キリストの受難をテーマとした芝居のチャリティー公演を発案し、劇団座長の兄ラファエル(P. Balachandran)に相談する。話はまとまり、芝居の準備が始まるが、肝心の「キリスト役」の役者がいない。しかし、サニー司祭はある日、外見といい、立ち居振る舞いといい、貫録といい、キリストにそっくりの男を発見し、感動する。それはクリートゥス(Mammootty)という男だったが、サニーはさっそく芝居出演の交渉をし、村まで連れて来る。
 だが、芝居のリハーサルが始まるや否や、とんでもないことが発覚する。実はクリートゥスはぱりっぱりのヤクザだったのである。当然これは大問題となるが、それでもサニーは、クリートゥスがキリストの役を演じることにより、更生させることができると信じ、彼を起用することにする。
 座員や村人たちはクリートゥスを怖がり、毛嫌いするが、ある日、ラファエルの息子クンジャッチャン(Suraj Venjaramoodu)の娘が川に溺れたとき、クリートゥスが助けたため、一同も彼に対する評価を変える。また、クリートゥスの行動は相変わらず粗暴だったが、良いところもあった。ラファエルの身内にアンナ(Sanam Shetty)という娘がいたが、彼女はアレックス(Rejith Menon)と恋仲にあった。しかし、アレックスの警官の父(Vijayaraghavan)は二人の仲を引き裂こうとする。それをクリートゥスが、仲間のヤクザにも手伝ってもらって、二人を結び付けたというわけであった。
 ところで、この村にはラクシュミ(Honey Rose)という女がいたが、彼女は未婚の母だったため、淫らな女だと誤解されることが多かった。ある日、一部の村人たちが彼女に投石し、迫害する事件が起きるが、そこはクリートゥスが救う。だが、今度はそのクリートゥスが晩にラクシュミの家に入り込み、刃物を持った彼女に抵抗されるという騒動が起きる。これで村人やサニー司祭のクリートゥスに対する信頼が失墜する。
 しかし、翌日、クリートゥスはサニー司祭に会い、ラクシュミとの間に起きた罪深い過去を告白し、懺悔する。
 芝居はクリートゥス主演のまま準備が進められ、いよいよ本番となるが、ここで思いがけない出来事が起きる、、、。

・その他の登場人物 : クリートゥスの子分(Aju Varghese),劇団の中年女優(Thesni Khan),ハリクリシュナン(Kailash)

◆ アナリシス
・筋金入りのヤクザが芝居で「イエス・キリスト」の生涯をなぞることにより、改心・更生するという、ユニークな筋立ての作品だった。質的には全然異なるが、ヒンディー映画の【Rang De Basanti】(06)や【Lage Raho Munnabhai】(06)などと発想は似ている。

・しかも、主人公のクリートゥスが単にキリストの役を演じるだけでなく、『新約聖書』に書かれているキリストのエピソードが実際にクリートゥスの身の上に起こり、それが彼に覚醒を促す契機となっている。この辺の展開は作為的すぎるように思えたが、狙いがはっきりしていて、分かりやすかった。(ちなみに、主人公のクリートゥスは当然キリスト教徒。)

・各レビューの評価はそれほど良くない。確かに、ヤクザがイエス・キリストを演じることになる、しかもその役をマンムーティがやる、ということから期待される期待値にはミートしていないと思うが、私的にはけっこう楽しく鑑賞できた。第一、田舎のクリスチャン・コミュニティーを舞台にした作品ということだけで、さすがマラヤーラム映画、バンガロール在住の私の目には十分フレッシュに見えた。

・「キリスト者の改心の物語」と聞くと、抹香くさいものを想像されるかもしれないが、実際には本作はコメディー調で、アクションやセンチメンタルなシーンも盛り込まれた、マサラ仕立ての娯楽映画となっている。

・それで、「nowrunning」のレビューでVeeyenという批評家は(あまり他人の評を引用してまでとやかく言いたくはないが)“Marthandan's directorial debut 'Deivathinte Swantham Cleetus' is a superhero film masquerading under the guise of a metaphoric experiment in mythology.”と指摘し、勿体ぶってミソロジーみたいな顔をしていても、なんだ、ありがちなスーパーヒーロー映画じゃないか、みたいな書き方をしているが、これはどうかなぁ? 私の目には、そもそもインド映画のヒーロー物というのは、多かれ少なかれ「ズボンをはいたミソロジー」みたいなものに見えるのだが、、、(もっとも、マンムーティの場合は「ドーティ」だが)。

・逆に、キリストの物語をインド・ヒーロー映画のフォーマットにねじ込んだところに本作の面白さがあるのだと思う。イエス・キリストといえば非暴力的なイメージがあるが、意外にも本作に登場する(サニー司祭のイメージする)イエスは暴力的な(暴力も辞さない)ものとして描かれている。例えば、「エルサレムの入城」のシーンで、イエスは商人たちを「鞭で」打って追い出している。これと同じことをクライマックスでクリートゥスもやるのだが、ここでの暴力の意味に注目。つまり、元々ヤクザで人を傷付けるために暴力を振るっていたクリートゥスが、ここでは良くない者を懲らしめる意図で暴力を行使したわけで、この転換は「悔い改め」のインド娯楽映画的解釈かなと。

・同じく、Veeyenさんは本作に真の悪役がいないことを問題視しているが、それも違う。本作に悪役がいないのは当然で、実はクリートゥス自身が悪役なのだ。で、クリートゥスが自己の内面の悪(罪深い過去)と戦い、昇華するのが本作のテーマだったのだと思う。(もっとも、そのテーマが過不足なく効果的に脚本化されていたかどうかは疑問。)

・話変わって、本作は当然『新約聖書』からいくつかエピソードが取り込まれているが、ほとんどがイエス伝の後半部からだった。例えば、「エルサレム入城」、「最後の晩餐」、「裏切り」、「十字架を担ぐイエス」、「ゴルゴタの丘での磔刑」、「復活」など。本作はキリスト教の信者や研究者にしか分からないというレベルでは全然ないが、『新約聖書』の知識はあったほうが楽しめると思う。

・ストーリー上、キーとなっていたのは「罪深き女」(または「マグダラのマリア」)のエピソードで、これは「未婚の母」という設定でハニー・ローズが演じていた。また、「エルサレム入城」のシーンがいやに入念に描かれていたので、鑑賞しながら、ふと、ケーララのシリアン・クリスチャンにとっては、エルサレムはムンバイやデリーよりも重要地?と思った。

◆ パフォーマンス面
・クリートゥス役のマンムーティについては、「笑たで」という言葉がまず口をつく(笑っちゃいかんのだが)。芝居としてはそんなに難しくもなかったと思うが、外見的にはとにかく見もの。キリストにしては肉付きが良すぎる。プリトヴィラージやファハド・ファーシルがやったら、もっと「十字架映え」したと思うが、やっぱり天下のイエス様、マンムーティぐらいカリスマ性がないとね。
 (写真下:むしろ、蘇った70年代のハードロッカー、という感じだったが。)

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・ハニー・ローズが未婚の母親を手堅く演じている。けっこう好印象。

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・鑑賞前に注目点の一つに挙げていたのがアンナ役のサナム・シェッティ。この人がヒロインかと思ったが、実際にはハニー・ローズさんほど重要な役回りではなかった。劇中劇では「聖女ヴェロニカ」に当たる役をもらっていた。
 ちょっと可愛いが、あまり好きなタイプじゃない。それでも応援したいのは、彼女がバンガロール出身の元ソフトウェア技術者で、(おそらく)バント族だから。(最近、これに類したパターンが多いなぁ。)

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・(写真下:なんかほっこりできるお二方。)

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◆ テクニカル面・その他
・舞台となった村の名前は分からなかった。Wikipediaによると、撮影はイドゥッキ県のトドゥプラ(Thodupuzha)で行われたというから、ケーララ州中部の山側の村と設定されているのだろう。何であれ、のどかな情景だった。

◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★★★☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 9月15日(日),公開第1週目
・映画館 : Sangeeth,11:30のショー
・満席率 : 1割

 (オマケ画像:おお、またしても「男でも萌えるぜ!」なマンムーティの脛が!)

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