カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Jatta】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2013/11/01 02:12   >>

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 「テルグ映画・お祭りシーズン・話題作シリーズ」第4弾は、ナーガールジュナ主演の【Bhai】!、、、と行く予定だったが、テルグ映画は一回お休み、代わって、批評家から高い評価を得ているカンナダ映画【Jatta】を観て来た。

【Jatta】 (2013 : Kannada)
脚本・監督 : B.M. Giriraja
出演 : Kishore, Sukrutha Wagle, Pavana, Premkumar, B. Suresha, その他
音楽 : Ashle-Abilash
撮影 : Kiran Hampapura
制作 : Raajkumar NS

題名の意味 : ジャッタ(主人公の名前)
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : アート
公 開 日 : 10月11日(金)
上映時間 : 2時間15分

◆ あらすじ
 ジャッタ(Kishore)は西ガーツ山脈の森を守る臨時の森林保護官。彼には愛妻のベッリ(Pavana)がいたが、彼女は最近バンガロールからトレッキングにやって来た青年と駆け落ちしていた。地元の占い師(B. Suresha)はジャッタに、妻に過度に自由を与えたが故に、こういう事態になったのだ、と告げる。この言葉にジャッタは女性に対する憎悪を募らせることになる。
 そんな折に、ジャッタは林道で事故に遭った車を発見する。運転者は若い女性(Sukrutha Wagle)で、飲酒の上に麻薬もやっていた。ジャッタは一目で現代的と分かるその女性を自宅に連れ帰り、鎖で繋いで監禁する。ジャッタの意図は、このモダンな女性を伝統的なインド女性に教化することだった。しかし、その女性はアンベードカルの思想の影響を受けたフェミニストで、逆にジャッタに口撃を仕掛ける。女性は自分を性的に犯そうとしないジャッタに対し、「シカンディン(男の形をした女)」と馬鹿にする。

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 翌日、この森にその女性を捜しに警官がやって来る。警官の口から女性の名前はサーガリカーだということが分かる。もちろん、ジャッタは自分の部屋にサーガリカーを監禁していることを秘密にする。
 そうこうしているうちに、ジャッタの妻ベッリが帰って来る。彼女はバンガロールでの生活に馴染めず、森に戻って来たのであった。しかしベッリは、ジャッタが自分に性的満足を与えてくれないという嘆きを切々と訴える。ジャッタは仕事に出るとき、サーガリカーだけでなく、ベッリも鎖に繋ぐ。
 ジャッタの上司である森林保護事務所の所長ビーマクマール(Premkumar)は好人物で、ジャッタのことを気に入っていた。ビーマクマールは管轄の森でサーガリカーが失踪した事件の責任を取って所長職を辞任しようとしており、ジャッタを正式な保護官に登用しようとしていた。それを知り、ジャッタは良心の呵責を感じる。
 サーガリカーやベッリ、ビーマクマールの言動は次第にジャッタの気持ちを変える。そんな時にベッリと駆け落ちした青年ラージェーシュが再び森にやって来、ジャッタの前でベッリに対する愛を表明する。ジャッタはベッリを解放し、ラージェーシュと共に行かせることにする。
 警官は指紋を手掛かりに、サーガリカー失踪にはジャッタが絡んでいることをビーマクマールに伝える。ビーマクマールはジャッタに会いに行こうとするが、生憎と深夜だったため、その日は断念する。ちょうどその頃、ジャッタは森の女神を祀った古木を切ろうとしたならず者たちを叩き殺しているところだった。そして家に帰り、サーガリカーと交わろうとする。しかし、この機を捉え、サーガリカーはジャッタを焼き殺す。
 翌朝、ジャッタの家を訪ねたビーマクマールは、ジャッタの焼死体を発見し、ショックを受ける。そして、サーガリカーを保護し、病院に入院させる、、、。

◆ アナリシス
・本作はもしかしたら、一応商業映画を意識して作られたものかもしれないが、取り上げられたテーマとその表現手法からして、アートフィルムに分類するのが適当だろう(分類の必要があるならば)。

・以前、マラヤーラム映画の【Kutty Srank】(10)を観たとき、さっぱり分からなかったのに、名状しがたい感動があったので、難儀しながら鑑賞記を書いた。今回もそれと同じような苦労を味わっている。本作も言葉が分からないと苦しい作品なのだが、分からないなりに、強いショックと意外に晴れ晴れした感覚が残ったので、鑑賞記として残さないわけにはいかない。

・【Kutty Srank】はその後英語字幕付きDVDで再鑑賞したが、それでもよく理解できなかった。しかし、この【Jatta】のほうは、言葉が分かれば、内容の理解はそれほど難しくなさそうである。

・テーマとして、一本の太い幹となっているのは「インドの伝統と近代化」という二項対立だろう。この基幹的対立の具体的項目として、「インドの伝統的男女関係と近代的フェミニズム」、「信仰と不信仰」、「環境保護(維持)と開発」などの対立が盛り込まれている。

・あらすじを読んで分かるとおり、ジャッタ(Kishore)が「伝統」の側を象徴している。彼は森林保護官として森を守るだけでなく、「モラル(伝統的価値観)の守り手」として、モダンや開発といったことと強く対峙する。他方、「モダン」の側を象徴するのがサーガリカー(Sukrutha Wagle)で、彼女は露出度の高い洋風ドレスを着、酒・麻薬をやる上、フェミニズムの信奉者で、女は常に男に都合よく利用されていると考えている。その他、ベッリ(Pavana)とラージェーシュは、伝統とモダンの間で(ほぼ無自覚に)揺れ動く一般的な若者の姿だろう。また、ジャッタの上司ビーマクマール(Premkumar)は、「善き市民」を体現しているかのような保守中道教養層の象徴だろう。

・監督のギリラージャは、モダンの立場からインドの伝統的価値観の後進性を糾弾するでもなく、伝統の立場から急進的な近代化に疑問を呈するでもなく、どちらからも等距離に立っている。そして、本作の面白い点は、伝統とモダンを静的に対置するのではなく、両者の激しいぶつかり合い、軋轢、葛藤を見せている点で、その衝突から新しい価値が創造されるのを期待しているかのようである。
 (写真下:本作の「創造性」を象徴する森の土着女神。なんと、股間から赤子が生まれる瞬間が偶像化されている。)

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・サーガリカーはジャッタの「調教」に屈することなく、逆に確信犯的にジャッタに反撃を仕掛ける。意固地だったジャッタはサーガリカーなど周囲の人々に影響され、サーガリカーに歩み寄ろうとするが、その時点で彼女に焼き殺されてしまう。この時、伝統のほうが敗北したかに見えるが、実際にはサーガリカーの心の中にも変化が起きている、ということを示唆して映画は終わっている。この後、サーガリカーやベッリ&ラージェーシュ、またはビーマクマールがどうなるか(つまり、インドが将来的にどういう姿となるか)は全く観客の考えに委ねられている。

・娯楽映画として見ればさほど面白くないが、アートフィルムとして見れば、コンセプトが面白いため、カンナダのインテリが好みそうである。しかし、日本人インド映画ファンにはあまり用のない作品だろう。私的には、伝統とモダンの火花散る衝突という点で、ウペンドラの【A】(98)や【Upendra】(99)に繋がるものを感じ、非常に興味深く鑑賞した。

◆ パフォーマンス面
・ジャッタ役のキショールがまた印象深いパフォーマンスを見せてくれた。過激でエキセントリックな反面、正しいとも言える複雑な人物を上手く演じている。どうやらこの人は「カンナダ映画界のナーナー・パーテーカル」と呼ばれているようだが、最近の彼の仕事を見る限り、「なんちゃって」とも言えない。ただし、本作のジャッタが両腕を振らないで走るという特徴付けは、タミル映画【Pithamagan】(03)のヴィクラムのパクリだろう。

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・サーガリカーを演じたのはスクルタ・ワーグレー(カタカナ表記は当てずっぽう)という人で、舞台の女優らしい。尋常ではない役柄を懸命に演じていたが、しかし演技はそんなに上手くもなさそうだ。顔の作りは個性的で、「インドにもこんな変な顔の女がいたんだなぁ」と思いながら見ていたが、しかし、彼女なら世界のどこへ行っても風変わりな顔に見えるだろう。

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 こんな刺激的なシーンもあり。

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・サーガリカーとは正反対の女性ベッリを演じたのはパーヴァナという女優らしい。かなり平凡な顔立ちで、素人かと思ったが、セリフ回しは悪くなかった。

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・ジャッタの上司ビーマクマールを演じたのはプレームクマールという人。初めて見た俳優だと思うが、本作での印象はなかなか良かった。

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◆ テクニカル面・その他
・物語の舞台となった場所はどこか聞き取れなかったが、レビューにはゲールソッパ(Gersoppa)とホンナーワラ(Honnavara)の地名が挙がっていた。とすると、カルナータカ州西部、ウッタラ・カンナダ県の、西ガーツ山脈の海側のほとりということになる。

◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★☆☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 10月27日(日),公開第3週目
・映画館 : Sapna,10:30のショー
・満席率 : 1割
 

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