カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Arrambam】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2013/11/06 20:52   >>

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 「テルグ映画・お祭りシーズン・話題作シリーズ」第X弾、、と行きたいところだったが、あろうことかディーパーワリだというのにテルグに話題作が公開されず、代わりにヴィシュヌヴァルダン監督、アジット主演のタミルの話題作【Arrambam】を観て来た。
 ヴィシュヌヴァルダン監督とアジットのコンビには大ヒット作【Billa】(07)がある。しかしその後、アジット主演50本記念作品をヴィシュヌヴァルダンが撮りたがったとき、アジットはそれを袖にしてウェンカト・プラブ監督の【Mankatha】(11)に付いたし、逆にヴィシュヌヴァルダンは、パワン・カリヤーン主演のテルグ映画【Panjaa】(11)を優先して、【Billa II】(12)の監督をさっさと降板してしまうなど、ご両人の関係は必ずしも良好ではないと私は見ていた。しかし、こうやって一緒に仕事をしているところを見ると、それは私の杞憂だということが分かった。
 さて、全く下調べせずに観に行ったら、アジットの他にアーリヤやテルグのラーナー・ダッグバーティ、カンナダのキショールなども出演しており、ヒロインもナヤンターラーとタープシーのツインだということが分かり、豪華なマルチスター映画だった。

【Arrambam】 (2013 : Tamil)
物語 : Subha, Vishnuvardhan
脚本・台詞・監督 : Vishnuvardhan
出演 : Ajith, Arya, Nayantara, Taapsee, Kishore, Mahesh Manjrekar, Atul Kulkarni, Suman Ranganath, Krishna, Akshara Gowda, Aadukalam Naren, Murali Sharma, Rana Daggubati(特別出演), その他
音楽 : Yuvan Shankar Raja
撮影 : Om Prakash
編集 : Sreekar Prasad
制作 : A. Raghuram, A.M. Rathnam

題名の意味 : 始まり
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : アクション・スリラー
公 開 日 : 10月31日(木)
上映時間 : 2時間37分

◆ あらすじ
 ムンバイで3件の同時爆弾テロが起きる。犯人はアショーク・クマール(Ajith)という男だが、彼は事前に匿名で警察に爆破場所と時刻を伝えていた。州内務大臣のマハーデーヴ・ラーネー(Mahesh Manjrekar)と警視副総監のミラン(Atul Kulkarni)はテロ担当の警官プラカーシュ(Kishore)に捜査に当たらせる。プラカーシュは以前に逮捕していたイスラーム系テロリストのドゥラーニ(Murali Sharma)を拷問するが、手掛かりは全く得られなかった。
 アルジュン(Arya)は優れたハッキングのスキルを持つソフトウェア技術者。彼は就職面接のためにムンバイへ向かう際、偶然、チェンナイの空港で大学同級生のマーヤー(Nayantara)に再会する。アルジュンはムンバイで大学時代から惚れていたニュース・キャスターのアニター(Taapsee)とも会う予定だった。
 ところが、ムンバイに着くなり、アルジュンとマーヤーはアショーク・クマールに誘拐されてしまう。アショークはアルジュンのハッキング・スキルを承知しており、彼にテレビ局「フラッシュ・ネットワーク」のシステムに侵入して、その放送システムを破壊するよう指示する。アショークがマーヤーを殺すと脅迫したため、アルジュンは仕方なく作業をする。ところが、作業完了後、実はマーヤーはアショークとぐるで、アルジュンをアショークのミッションに引き込むための罠だったと分かる。さらに、アショークはアニターも監視しており、いつでも命を奪える状態だったため、アルジュンはアショークに従うしかなかった。
 アショークは次にアルジュンを会計士シュリーラーム・ラーガヴァン(Aadukalam Naren)の家に連れて行き、彼に金庫を開けさせ、シュリーラームのノートパソコンを盗む。その際、アショークはシュリーラームを射殺する。さすがに理不尽なものを感じたアルジュンは、現場にわざと自分の自動車のキーを残して行く。
 アルジュンは、アショーク、マーヤー、アニターと車で移動している際、パトカーが病院に入って行くのを目撃する。そこで彼はわざとナイフで自分の手を切り、その病院へ行かせる。そこに来ていた警官はたまたまプラカーシュだった。しかし、アルジュンはプラカーシュに何も伝えられずに終わる。
 だが、アルジュンが現場に残した車のキーとシュリーラーム・ラーガヴァンの妻の目撃証言から、アショークとアルジュンの身元が割れ、さらにアルジュンと一緒にいた女性がテレビ局「QTV」のキャスター、アニターだということも判明する。プラカーシュは彼らの所在の特定を急ぐ。
 アショークとマーヤーはある実業家を誘拐し、アジトに連れ帰る。そこへプラカーシュの警官隊が急襲する。アショークはその実業家を爆死させるが、逃走過程でプラカーシュに逮捕されてしまう。
 アニターと合流したアルジュンの前にマーヤーが現れる。非難するアルジュンに対し、マーヤーは、アショークの非情とも言える行動には動機があると語る。それは自分の兄で、アショークともテロ対策部隊の同僚かつ親友であったサンジャイ(Rana Daggubati)が、粗悪な防弾ジャケットで殉死した事件が背景にあった。マーヤーの長い回想を聞いたアルジュンは、自分もアショークのミッションに協力すると約束する、、、。

・その他の登場人物 : マンゴー(Krishna),「フラッシュ・ネットワーク」のキャスター、ラミャ・ラーダークリシュナン(Suman Ranganath),内務大臣の娘、ディークシャー・ラーネー(Akshara Gowda)

◆ アナリシス
・ストーリー的に凝っているし、アクション・シーンの作りもスリークで、お祭りシーズンにふさわしいリッチな面白さのある映画だった。しかし、この映画の本当の面白さを支えているのは、ひとえにアジットの魅力だろう。【Billa】でも感じたが、ヴィシュヌヴァルダン監督はアジットをカッコよく撮るのが上手い。

・ストーリは凝っていると言っても、ちょっとややこしい感じがした。本作のプロットは2本。メイン・プロットは、粗悪な防弾ジャケットを容認し、サンジャイ(Rana Daggubati)を死に至らしめた内務大臣とその共謀者に対するアショーク(Ajith)とマーヤー(Nayantara)の復讐。サブ・プロットが、ムンバイを襲うムスリム系爆弾テロリストの暗躍なのであるが、このムスリム・テロの比率が必要以上に大きいように感じた。

・政治家が何らかの動機(例えば、私服を肥やすとか)で国家の安全を蔑ろにし、そのために尊い命が犠牲となり、その家族や友人たちが復讐に立ち上がるというのは、ヒンディー映画【Rang De Basanti】(06)と同じようなテーマ。しかし、【Rang De Basanti】が語り口の斬新さから傑作とされたのに対し、この【Arrambam】は「結局、普通の復讐ドラマに終わっている」と、かなり評価が低い(ちょっと不公平な気もするが)。

・サブ・プロットの爆弾テロの比率が大きく扱われているのが分からないと書いたが、例えば、本作を観終わってから、なぜアショークが冒頭でムンバイのビルを3つも吹き飛ばす必要があったのか、今もって分からない。それでいろいろ考えてみた結果、ヴィシュヌヴァルダン監督は【Vishwaroopam】(13)のように、続編を始めから考えていたのではないか、という結論に至った。パート1で復讐を果たしたアショークとその仲間は、パート2でテロ殲滅チームとして活躍するのかもしれない。(本作の題名「Arrambam」は「始まり」という意味で、映画のエンディングでアショークはアルジュンに「これで終わりじゃないぜ、これが始まりだせ」と言っている。)

・アショークの行動で面白かったのは、元「テロ対策部隊」のエキスパートとして、爆弾の作り方や使用法、銃器類の使用法などを熟知しており、テロリストがやっているのと全く同じ手法で復讐を果たしていることだ。毒を以って毒を制す、ということか。しかし、アショークはかなり景気良くビルを壊すやら人を殺すやらしていたので、これは相当な「映画的自由」を容認しない限り、受け入れがたい。パート2(もしあれば)でアショークたちがよっぽど善行をしないと、補償されないだろう。

・本作も【Billa II】や【Thuppakki】(12)、【Thalaivaa】(13)と同じく、ムンバイを舞台とした「ムンバイ物」だった。昨今のタミル映画のトレンドは、ニューウェーブの作品群がタミルの地方小都市や村落、またはチェンナイのスラムなどのように、ミクロな地域を舞台としているのに対し、新娯楽派と呼べる作品群は、タミル・ナードゥ州だけでは狭いとばかりに、他州の大都市を舞台とし、製作的にも、マルチリンガル作品だったり、複数の映画産業界からのマルチスターだったりと、タミル語やタミルの地があまり重要でないような作品となっている。この並行関係はしばらく続くだろう。

◆ パフォーマンス面
・アジットは【Mankatha】、【Billa II】と同様、単純な善玉とは言えないグレーな役柄。それが彼の若白髪とマッチしている。私的には渋くて好きだが、もういなせな兄ちゃんの役はできないのかもしれない。
 パフォーマンス的には良かった。しかし、シックス・パックになれとは言わないが、もう少し体を絞ったほうがいいだろう。ラーナー・ダッグバーティと並んだときに、オッサンくさく感じられた。
 スピード狂のタラは本作でも「ドゥカティ」のスーパーバイクを乗り回し、カッコよかった。あんなバイク、私も欲しいが、絶対に買えない(&乗れない)ので、せめて同じ型のヘルメットだけでも買っとこう!

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・アーリヤは自らが主演級の俳優でありながら、大スターと共演したときは、見事に「三歩下がって」的なバランス感覚の良いパフォーマンスを見せる。本作はヴァディヴェール型のコメディー・トラックは一切ないが、ナヤンターラーやタープシーとコミカルな役回りを担っていた。

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・先日紹介した【Raja Rani】に続いて、またもアーリヤと共演することになったナヤンターラーだが、あれほど深みのある演技は見せていない(作品が作品だし)。しかし、それでもかっちり決めるところはさすが。

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・タープシーは、可愛いが、ちょっと勘違いしていそうな駆け出しキャスターの役。上で書いたとおり、コメディー的な役回りだったが、しかし、終盤ではしっかり悪役の人質となり、鼻血を流すシーンも。
 彼女のダンススキルをチェックしたかったが、その点では収穫なし。

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・テルグ俳優のラーナー・ダッグバーティは、特別出演みたいな紹介のされ方だったが、なんのなんの、後半で立派に存在感を見せていた。

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・警官プラカーシュ役のキショールについては、瞠目すべきだろう。前回紹介した【Jatta】でも只ならぬパフォーマンスを見せていたが、本作のクライマックスではアジットではなく、キショールが観客の拍手を掻っ攫っていた。

・悪役はマヘーシュ・マーンジュレーカルとアトゥル・クルカルニーの、主に北インドで活躍している俳優のセット(ただし、アトゥル・クルカルニーの出身はカルナータカ州)。
 (写真下:左よりAtul Kulkarni、Mahesh Manjrekar、Kishore。)

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・スマン・ランガナートがネガティブロールで出演している。

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・また、内務大臣の娘役で、アイテムダンスも見せていたのはアクシャラ・ガウダ。この2人にキショールを加えた3人は、すべてバンガロール出身のカンナディガ。
 (写真下:Akshara Gowda。エッチな感じが良いが、アイテムダンスをやるにはもっとダンスを練習しなければならないだろう。スチルは本作のものではありません。)

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◆ テクニカル面・その他
・音楽とBGMはユワンくんの担当だが、「おい、ユワンくん、どうした!?」と言いたくなるほど、平凡な出来だった。

・アクションは、この間から何度か言及しているタイ人スタント師のケーチャと、インド映画では【Vishwaroopam】を担当したLee Whittakerが担当しているようだ。どのアクション・シーンを誰が作ったか知らないが、何であれ良い出来だった。

◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★★★☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 11月2日(土),公開第1週目
・映画館 : Gopalan Cinemas (RR Nagar),10:15のショー
・満席率 : 2割
 

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