カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Masala】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2013/11/28 22:40   >>

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 世界を駆け巡るインド映画に「日本ロケ」がほとんどなく、多くの日本人インド映画ファンは物足りない気持ちだったと思うが、それも風向きが少し変わってきたようだ。周知のとおり、今年は富山県で音楽シーン・ロケが行われたタミル映画【Theeya Velai Seiyyanum Kumaru】がヒットし、それが呼び水となったのか、日本で撮影を敢行した、または調査/準備中の映画(主に南インド映画)が続き、ちょっとしたブームになっているようにも見える。

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 このテルグ映画【Masala】もその一つで、‘ヴィクトリー’ウェンカテーシュとアンジャリが北海道の富良野でダンスをしたということで、日本のファンの間でささやかな話題となっていた。
 実は、本作はローヒト・シェッティ監督のブロックバスター・ヒンディー映画【Bol Bachchan】(12)の公式リメイクで、その【Bol Bachchan】自体が1979年公開の傑作コメディー映画【Gol Maal】のリメイクなので、本作は【Gol Maal】から見て孫リメイクと言えるのかもしれない。【Bol Bachchan】のアジャイ・デーヴガンとアビシェーク・バッチャンのツイン・ヒーローは、本作ではウェンカテーシュとラームが演じている。
 監督はK・ヴィジャヤ・バースカル。穏当なロマンス物やファミリー物を得意とする人で、ヒット作も多い(かつ、リメイクも多い)。ウェンカテーシュとは相性が良く、【Nuvvu Naaku Nachav】(01)と【Malliswari】(04)でコンビを組み、ヒットさせている。(参考に、【Malliswari】はまだ駆け出しのカトリーナ・カイフがヒロインについている。)ボリウッドとのコネクションもあるようで、【Tujhe Meri Kasam】(03)というヒンディー映画も撮っている。しかし、この作品が作られなかったなら、ジェニーがリテーシュなんぞに嫁ぐこともなかったかも、と思うと、ムカつかないこともない。
 本音を言えば、この週末は本作じゃなく、タミル映画の【Villa (Pizza II)】か【Irandaam Ulagam】、またはマラヤーラム映画の【Thira】を観たいと思ったが、やっぱり日本ロケは押さえておくべき、と思い直した。

【Masala】 (2013 : Telugu)
脚本・監督 : K. Vijaya Bhaskar
出演 : Venkatesh, Ram, Anjali, Shazahn Padamsee, Jayaprakash Reddy, M.S. Narayana, Kovai Sarala, Ali, Posani Krishna Murali, Bharath, Venu Madhav, その他
音楽 : S.S. Thaman
撮影 : I. Andrew
編集 : M.R. Varma
制作 : Daggubati Suresh Babu, Sravanthi Ravi Kishore

題名の意味 : マサーラー(ミックス・スパイス・パウダー)
映倫認証 : U
タ イ プ : リメイク
ジャンル : アクション・コメディー
公 開 日 : 11月14日(木)
上映時間 : 2時間20分

◆ あらすじ
 イスラーム教徒のラフマーン(Ram)は両親はおらず、姉のサニヤ(Anjali)とハイダラーバードに暮らしていた。彼らは財産を巡る親類との裁判に負け、父から譲り受けた家だけでなく、ラフマーンは職も失ってしまう。やけになるラフマーンに対し、父の親友だったナーラーヤナ(M.S. Narayana)が、彼らの故郷ビーマラージャプラム村に行き、そこの地主であるバララーム(Venkatesh)を頼れば、仕事が得られるだろうとアドバイスする。早速ラフマーンとサニヤは、ナーラーヤナと共にビーマラージャプラムへ赴く。
 バララームは腕っ節が強く、村人の人望も集める好人物だったが、下手な英語を使いたがるという悪癖があった。また、彼は嘘が嫌いで、嘘を付く者に対しては、たとえそれが些細なものであっても、容赦しなかった。さらに彼は妹のミーナークシ(Shazahn Padamsee)を溺愛していたが、隣村に住む従兄弟で敵対者のナーガラージュ(Posani Krishna Murali)が彼女に惚れており、自分のものにせんと狙っていた。
 村に着いてほどなく、ラフマーンはヒンドゥー寺院の溜池に落ちた子供を救う。しかしその際、訳あって閉じられていた門扉の鍵を壊してしまったため、騒動となる。ラフマーンとバララームが出会ったのはこの時で、名前を尋ねるバララームに対し、ラフマーンの友人スーリ(Ali)はとっさに「ラーム」だと答えてしまう。イスラーム教徒がヒンドゥー寺院の鍵を破壊したなどとは、とてもバララームに言えなかったからである。
 ラーム(ラフマーン)のことを気に入ったバララームは彼を雇うことにする。だが、ラームの心は穏やかでなかった。嘘が大嫌いなバララームの下で、名前と宗教を偽って働かねばならぬからである。しかも、初めの嘘をごまかすために、ラームとその仲間たちはバララームに対し、次から次へと嘘を作り上げねばならぬ羽目に陥る、、、。

・その他の登場人物 : バララームの片腕イェッドゥ(Jayaprakash Reddy),レコードダンサーのチンターマニ/アンジャリ・デーヴィ(Kovai Sarala)

◆ アナリシス
・あらすじと称しながら、上ではほんの物語の導入部までしか書かなかった。ここからラフマーンらの嘘が雪だるま式に大きくなり、いよいよ面白くなるのだが、基本的には【Bol Bachchan】と同じ、同作品を鑑賞済みの方にはあらすじは不要だろう。未見のお方は『これでインディア』の同作品評をご参照のこと。下に【Bol Bachchan】と本作【Masala】の登場人物名等の対照表を載せておく。(「⇒」の左が【Bol Bachchan】、右が【Masala】。カッコ内は俳優名。)

〈登場人物〉
 ・Prithviraj Raghuvanshi (Ajay Devgn) ⇒ Balaram (Venkatesh)
 ・Abbas Ali / Abhishek Bachchan (Abhishek Bachchan) ⇒ Rahman / Ram (Ram)
 ・Sania Ali / Sania Bachchan / Apeksha (Asin) ⇒ Sania / Sarita / Savithri (Anjali)
 ・Radhika Raghuvanshi (Prachi Desai) ⇒ Meenakshi (Shazahn Padamsee)
 ・Shastri (Asrani) ⇒ Narayana (M.S. Narayana)
 ・Ravi Shastri (Krishna Abhishek) ⇒ Suri (Ali)
 ・Maakhan (Neeraj Vora) ⇒ Eddulodu (Jayaprakash Reddy)
 ・Vikrant Raghuvanshi (Jeetu Verma) ⇒ Nagaraju (Posani Krishna Murali)
 ・Zohra / Madhumati (Archana Puran Singh) ⇒ Chintamani / Anjali Devi (Kovai Sarala)
〈物語の舞台となった地名〉
 ・Delhi / Ranakpur ⇒ Hyderabad / Bhimarajapuram

・本作を観る前に、元ネタの【Gol Maal】(79)と【Bol Bachchan】も(幸運にもDVDが手に入ったので)観ておいた。結果、【Masala】は【Bol Bachchan】をほぼぴったりなぞった、省エネ(手抜き)リメイクだということが分かった。両者の違いといえば(細かい点はさておき)、「地主」(オリジナルではアジャイ・デーヴガン、リメイクではウェンカテーシュ演じる)のライバルになる「従兄弟」が、リメイク版では地主の妹(ミーナークシ)にぞっこん惚れているという設定になっていたことと、クライマックスの断崖絶壁と車のシーンで、プロタゴニストたちのやり取りが違っていた。

・【Masala】と【Bol Bachchan】の比較はさほど面白いものではなかったが、むしろ【Gol Maal】と【Bol Bachchan】の差異は非常に興味深いものだった。大体、【Gol Maal】はお気楽コメディーというより、セリフの鋭い「風刺喜劇」で、30年以上も前に作られた作品でありながら、現在のインドの世相から見ても「ごもっとも」と言えるようなセリフが多く、感服した。それが【Bol Bachchan】ではかなり能天気なマサラ・アクション・コメディーに変容していた。映画の品格という点ではがくっと落ちるものを感じたが、しかしローヒト・シェッティ監督のこのコンセプトそのものが問題だとは思わない。

・【Gol Maal】のテーマとなっていたのは「旧世代」と「新世代」のギャップで、それが保守的で頑固な「会社経営者」とその娘、「ラーム」と「ラクシュマン」という2人格(実は同一人物)によって象徴されていた。対して、【Bol Bachchan】では、ジェネレーション・ギャップは大きく扱われず、代わって「都市」と「地方」、及び、宗教(ヒンドゥー教徒とイスラーム教)のギャップが扱われ、より今日的になっている。この点、【Bol Bachchan】は古典的傑作を単に骨抜きしたおバカ・コメディーというわけではなく、なかなかよく考えられたリメイク作品だと言える。

・【Bol Bachchan】で、「地主」の片腕が「アビシェーク・バッチャン」の本性に疑いを抱く場面で【Gol Maal】の映像が使われているが、あれはテルグ版ではどう処理するのだろうと思っていたら、なんと、【Gol Maal】にはラジニカーント主演のタミル版リメイク【Thillu Mullu】(81)があり、それ(のテルグ語ダビング版)が使われていた。この辺、インド映画というのはよくしたものだ。

・さて、【Bol Bachchan】と【Masala】で、どちらが面白かったかというと、私のジャッジでは【Bol Bachchan】に軍配を上げざるを得ない。大体、【Bol Bachchan】では、【Gol Maal】にカメオ出演していたアミターブ・バッチャンを再びカメオ出演させ、それを題名の「Bol Bachchan(口から出まかせ)」に引っ掛けるなど、映画的関連付けが上手く整っている。登場人物名も、アビシェーク・バッチャン演じるアッバースの偽名が「アビシェーク・バッチャン」で、テルグ語版もラーム演じるラフマーンの偽名が「ラーム」と、両者はきちんとパラレルになっているのだが、面白さという点では、「ラーム」という名前は普通なので、「アビシェーク・バッチャン」という名前が飛び出したときほどのインパクトはない。

・俳優の演技面でも、「地主」を演じたアジャイ・デーヴガンとウェンカテーシュはどっこいどっこいだったが、剛直で嘘が嫌いなのに、それでいて簡単に騙される「田舎男」という点では、アジャイ・デーヴガンのほうがそれらしかった。それよりも、何と言ってもアビシェーク・バッチャンが効いている。テルグ版のラームも健闘していたが、大柄で長い手足を駆使し、キモくオカマのふりをしていたアビシェークのほうに破壊力のある笑いを感じた。

・【Bol Bachchan】と本作で強調されていた「嘘が嫌い」とか「男の勇気」とかいった徳目は、個人的には大好き。【Chennai Express】(13)にも通じるものを感じた。

◆ パフォーマンス面
・このところヴィクトリーの作品は飛ばし飛ばしにしか観ていないので、何とも言えないが、こういう徹頭徹尾コメディーという役柄も珍しいのではないだろうか。リメイク・キャラだとは言え、評価できる。それにしても、デビュー当時はかなりカッコよかったのに、年を取るにつれて、ますます田舎くさくなるなぁ、このオヤジ。

・ラームのパフォーマンスも良い。お気楽コメディーといっても、一人二役、コメディーセンスが試される役柄なので、ラームにしてみれば、かなり気を遣った1本だったに違いない。髭を剃っての熱演だが、剃っても青々した髭剃り跡が瞼に焼き付く。
 (写真下:活きの良かったツイン・ヒーロー。)

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・本作はツイン・ヒーローと脇役陣は総じて好パフォーマンスで、それが本作の面白さの保証となっている。しかし、ツイン・ヒロイン(アンジャリとシャザーン・パダムシー)がいただけなかった。
 まずラフマーンの姉サニヤ役のアンジャリだが、可愛く見えなかった上に、いかにも「やる気なし」といった様子だった。その理由は分からないが、ちょうど本作の撮影期間中に例の「アンジャリ失踪事件」が起きたこともあり、絶不調だった可能性はある。

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・ミーナークシ役のシャザーン・パダムシーは、こんなものだとは思うが、オリジナルのプラーチー・デーサーイーのほうが良かった。大体、ウェンカテーシュの妹にはどうしても見えなかったぞ。この娘も【Orange】(10)で見たときは可愛いと感じたが、時を経て、相好が歪みつつあるような気が、、、。

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・ジャヤプラカーシュ・レッディ、M・S・ナーラーヤナ、アリーの3コメディアンが頑張っており、楽しかった。「前世の業によりマーダヴァンになりそこねた」バーラトくんもOK。

・レコードダンサーのチンターマニ(偽ってアンジャリ・デーヴィ)役のコーヴァイ・サララも迫力。本作の見どころの一つかもしれない。

◆ テクニカル面・その他
・音楽はぶタマンくんの担当。まさに大衆音楽といった感じだった。曲調は心なしかレトロに聞こえたが、意図的に狙ったものだろう。

・注目の日本ロケ(@北海道富良野)は‘Ninu Choodani’という曲だった。絵的にはかなり美しかった。ところが、私はこの音楽シーンの終わりかけになるまでこれが日本だとは気付かず、ヨーロッパのどこかだと思っていた。そんな訳で、「インド映画に日本を見た!」という感動が全く沸かなかった。(やっぱ北海道のお花畑は、今の私には西ガーツ山脈の森より心理的に遠い所だわ。)

・物語の舞台となった村は「ビーマラージャプラム(Bhimarajapuram)」という名前だったが、AP州のどこを想定しているのか分からなかった。

◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★☆☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 11月23日(土),公開第2週目
・映画館 : Chandrodaya,18:15のショー
・満席率 : 7割
 

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【Jilla】 (Tamil)
 ポンガル公開のタミル/テルグの話題作は、結局この【Jilla】しか観られなかった。他の3作は、残念だけど、DVD鑑賞に回そう。 ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2014/02/08 07:55

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