カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Bhajaranghi】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2013/12/18 01:54   >>

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 本作は、2ヶ月ほど前に予告編を映画館で見て、それがカンナダ映画にはあり得ないほど気張った感じだったので、期待の1作となった。絵面から黒魔術か何かをモチーフにしたファンタジー物らしいということは察しがついたが、主演がシヴァラージクマールというのだから、傑作・駄作どちらに転んでも、突っ込みどころ満載なのには違いなかった。
 しかも、公開前になって、本作でシヴァンナが筋トレを断行して「シックスパック」になっているということが分かり、期待感は一気に怖いもの見たさのゾーンに突入。「男シヴァンナ・51歳」、まったく、よくやってくれるよ。

 監督はハルシャ。この人はイムラーン・サルダリヤと並ぶサンダルウッドの人気振付師なのであるが、【Geleya】(07)で監督としてもデビューし、本作が4本目。監督としてはまだそれほど画期的な仕事はしていないが、ダルシャンを主演に起用した【Chingari】(12)はヒットした。

【Bhajaranghi】 (2013 : Kannada)
物語・振付・監督 : Harsha
出演 : Shivarajkumar, Aindrita Ray, Rukmini Vijayakumar, Madhu Guruswamy, Lokesh, Chetan, K.S. Sridhar, Harini, Girija Lokesh, Shivaramanna, Shruthi, Lakshmi Devi, Tabla Nani, Bullet Prakash, Sadhu Kokila, M.S. Umesh
音楽 : Arjun Janya
撮影 : Jai Anand
編集 : Deepu S. Kumar
制作 : Nataraj Gowda, Manjunath Gowda

題名の意味 : バジャランギ(主人公の名前)
映倫認証 : A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ファンタジー
公 開 日 : 12月12日(木)
上映時間 : 2時間55分

◆ あらすじ
 北カルナータカのラーマドゥルガー村はすっかり荒廃していた。というのも、黒魔術師のラクタクシャ(Madhu Guruswamy)が村女を誘拐し、生贄としてラーナー(Lokesh)の魂に捧げるという所業を繰り返していたからである。弱り果てた村人たちは救世主の出現を待ちわびていた。
 一方、バンガロールにはお気楽な若者のジーワ(Shivarajkumar)がいた。ある時、ジーワはジャーナリズムを学ぶ女子大生のギーター(Aindrita Ray)と出会い、一目惚れする。だが、ギーターはジーワのことを毛嫌いしていた。
 ある日、ジーワとその家族がハヌマーン寺院をお参りした際に、見知らぬ聖者(K.S. Sridhar)から、ジーワがある宿命を背負うべき星の下に生まれた人物だと聞かされる。それを聞いたジーワの祖父(Shivaramanna)も、実はジーワは捨て子で、出身地はラーマドゥルガーだと明かす。
 ジーワは自分の出生を確かめるべく、叔父(Tabla Nani)と共にラーマドゥルガー村へ向かう。また、偶然ギーターも黒魔術の調査のために、ラーマドゥルガー村へ行くことになる。一同は同じ列車で移動する。
 ジーワたちが村に到着するや否や、ラクタクシャとラーナーの手下がやりたい放題している様を目にする。ジーワは彼らを叩きのめすが、その活躍を見た村人が、この男こそが英雄「バジャランギ」の生まれ変わりだと信じる。そして、バンガロールのハヌマーン寺院で出会った聖者が再び現れ、バジャランギの話をジーワたちに語って聞かせる。
 ・・・
 数十年前のラーマドゥルガー村。バジャランギ(Shivarajkumarの二役)は強運の星の下に生まれ、自ら死を決意しない限り、不死身であった。ときに、その村では、ラクタクシャが強力な短剣「ワジラユダ」を作るために、妊娠している村女の誘拐を繰り返していた。バジャランギはラクタクシャの襲撃から村を守護していたため、村人から英雄と崇められていた。そしてある時、バジャランギは遂にラクタクシャを殺害する。
 しかし、復活したラクタクシャはバジャランギへの復讐に動く。バジャランギの妻(Harini)が男児を出産した際に、ラクタクシャは村を襲撃する。産婆はバジャランギの息子を密かに通りがかりの旅人に託す。バジャランギの息子が死んだと確信したラクタクシャは、自分の血から作った赤子をバジャランギの妻の横に置く。バジャランギと妻は、その赤子をすっかり自分の息子だと信じ、ラーナーと名付け、大切に育てる。
 しかし、少年に育ったラーナーは、罠を仕掛けて、バジャランギをワジラユダで刺す。息子に刺されたバジャランギは、自ら死を決意し、果てる。復讐を遂げたラクタクシャは、ワジラユダをラーナーに託し、ヒマーラヤに隠棲する。その後、強欲・好色な男に成長したラーナーは、村で悪事の限りを尽くす。
 ある日、ラーナーは近村にいたクリシュネ(Rukmini Vijayakumar)という女性に一目惚れし、レイプしようとする。しかしクリシュネは、強運の星の下に生まれ、クリシュナ神のパワーを持つ女性であった。彼女は村を救うため、自らクリシュナの神像を抱いて、焼死する。その時、ラーナーに「お前は死んでも成仏できない」と呪いをかける。
 果たしてその呪いどおりに、ラーナーは危篤状態となるが、魂が成仏できないことを恐れ、ヒマーラヤからラクタクシャを呼び寄せる。ラクタクシャはラーナーのミイラを作り、若い女を誘拐してはラーナーの魂に捧げる。ラーナーにかけられた呪いを解くためには、クリシュネの生まれ変わりの女性を見つける必要があったからである。
 ・・・
 そのバジャランギの孫で、ラクタクシャとラーナーを討伐する宿命を背負っていたのがジーワであった。ジーワはこの宿命を重荷に感じ、村を去ろうとするが、ギーターに引き留められる。しかし、そのギーターがラクタクシャの手下に誘拐されてしまう。実は、ギーターこそがクリシュネの生まれ変わりの女性だったのである、、、。

◆ アナリシス
【Bachchan】(13)の鑑賞記の中で、カンナダ映画界もやっとテルグ映画並みのアクション映画が撮れるようになったか、みたいな慶びのコメントを寄せておいたが、本作でも同じ気持ち。やっとテルグ並みのファンタジー映画が作れるようになったか!(うれしくて、涙が、、。)

・作品の系統としてはテルグ映画の【Shakti】(11)や【Arundhati】(09)を想像していただければいい。悪魔的な存在(黒魔術師のラクタクシャとラーナー)と神的なパワーを持つ存在(バジャランギ/ジーワとクリシュネ)の戦いを描いたもので、血みどろ、首チョパ、ごてごてアクション満載、2時間55分の長尺でありながら、長いという感じはしなかった。

・予想どおり、かなり突っ込みどころがあって、面白い。まず、不死身のヒーローを演じたシヴァラージクマールが、やっぱりくさくて笑える。次に、悪役の3体(ラクタクシャとラーナーともう1人)がかなりエグくて、インパクトがあった。しかも、ヒロインはアインドリタ・レーだけだと思っていたら、突然後半で凄いパワーを持つ聖女クリシュネ(Rukmini Vijayakumar)が登場し、それがラーナーと「マングースとキングコブラ」みたいな闘いを始めるものだから、のけぞった。

・カンナダ映画のスタンダードからすれば、あっぱれと言えるので、評価として大サービスの4つ星を付けておいた。しかし、ふと我に返ってみると、これがテルグ映画なら、2つ星半か3つ星かな?と思わないこともない。

・まず、なんでハルシャ監督が突然変異的にこういうファンタジー物を撮ろうとしたのか、意図が分からなかった。マーケット戦略として、テルグじゃ普通だけどカンナダじゃ手薄のジャンルの映画を作ってみたかった? または、何らかのメッセージみたいなものも伝えたかった?

・確かに、黒魔術師のラクタクシャとラーナーは「私利私欲に走る腐敗政治家」とか、見えないところで計略をめぐらす「テロリスト」とかに見えないこともなかった。女性を誘拐・レイプするというのも、最近インドで大きな問題になっているレイプ事件を念頭に置いているとも思える。このようにどんよりとインドを覆う悪を、ヒーロー(神的存在)が「浄化」してくれる爽快感を狙った映画だと言える。ただ、そんなことよりも、シヴァンナの演技やアクション、コメディーなど、娯楽的ガジェットを気楽に楽しめばいいのだと思う。

・バジャランギの特性は、ホロスコープ(生まれたときの天体の位置)が根拠となって、自分が死を決意しない限り、神でも殺せない存在とされている。そして、この一族はハヌマーン神の熱烈な帰依者とされている(「バジャランギ」はハヌマーンの別名)。同様に、クリシュネもホロスコープからクリシュナ神のパワーを持つとされ、「神の生娘(Daiva Kanye)」と呼ばれている。

・ラクタクシャとラーナーが大切にしていた武器の「ワジラユダ(Vajrayudha)」は、こちらの記述によれば「聖人の背骨から作った短剣」で、アスラを殺すために使われたとされる。しかし、本作では「妊婦の背骨」から作るとされていた。(【Arundhati】でも背骨から作る短剣が重要なモチーフとなっていた。)ところで、本作のワジラユダは「神をも殺すことができる」ほどのパワーを持つとされていたが、バジャランギはそれに刺されても死なない。何となれば、彼は自分で死を決意しない限り、神でさえ殺せないからである。そこで、ラクタクシャは「息子」を使った罠を考案するわけである。(なんか、インドの神様って弱すぎるような気が、、。)

・脚本上の不備かな、と思えるのは、3時間近くも続く物語でありながら、ジーワとギーター(Aindrita Ray)の展開が十分ではなかったこと。ギーターはクリシュネの生まれ変わり(または、同じ特性を持つ女性)とされながら、それが後半の土壇場で取って付けたように明かされるだけだった。

◆ パフォーマンス面
・シヴァラージクマールについては、祖父と孫の二役を気合い十分に演じ、良かったと言える。本作はヒットしそうな気配だから、おめでとうと言ってやりたい。
 しかし、祖父バジャランギのような役ならそれなりに映えるのだが(下)、

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 孫ジーワのような20代の役をやると、やっぱりくさいよなぁ(下)。

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 相変わらずキモい人たちと記念撮影してるし。

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 しかし、50歳を過ぎても、役作りのために肉体改造に挑戦するとは、プロじゃないですか!
 (写真下:ウェートトレーニングに励むシヴァラージクマール氏。)

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 そして、シックスパックの出来上がり!(お父ちゃんは48歳からヨーガを始めたのね。私も頑張らなくっちゃ。)

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・ギーター役のアインドリタ・レーは、通常のアイドル型ヒロインで、あまり面白みがなかった。実は重要な役回りだっただけに、脚本の不備が悔やまれる。ちなみに、シヴァンナとは【Kaddipudi】(13)でも共演している。

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・悪役の黒魔術師たちを演じたのはマドゥ・グルスワーミ、ローケーシュ、チェータンという名前の人たちらしい。3人とも初めて見た。分けてもラーナー役のローケーシュがインパクトが強かった。(下)

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・そのラーナーと戦うクリシュネを演じたのはルクミニ・ヴィジャヤクマールというお方で、こちらも初めて見た。古典舞踊の素養があるようで、体が柔らかく、足が本当に頭の位置まで上がるようだった。

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・ブレット・プラカーシュ、サードゥ・コーキラ、タブラ・ナーニのコメディー陣も健闘していた。

・ついでに、ギーターの女友達として登場したのが素晴らしい胴回りのおデブちゃんで、ヒロイン(アインドリタ)の引き立て役として出て来たはずなのに、私はアインドリタよりもこちらに目が行った。タミルのヴィデュレーカー女史に匹敵するボディーで、私の「インド脇役女優・デブコレ」にいきなり上位ランクインだ。

◆ テクニカル面・その他
・音楽はアルジュン・ジャニヤーの担当で、歌もBGMも良い。
 音楽シーンの1曲目‘Bossu Namma Bossu’は、ヴィジャヤ・ラーガヴェンドラ、シュリー・ムラリ、アーディティヤ、キッティ、ヨーゲーシュ、サティーシュなどのスターと、アルジュン・ジャニヤー自身がカメオ出演する楽しいもの。しかし、彼らの顔と名前と出演作が一致しない限り、楽しむのはむずかしいだろう。

◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★★★☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 12月14日(土),公開第1週目
・映画館 : Gopalan Cinemas (RR Nagar),10:00のショー
・満席率 : 1割

 (オマケ画像:マジェスティックのTriveni劇場に集まるファンたち。)

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