カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Drishyam】 (Malayalam)

<<   作成日時 : 2014/02/06 06:59   >>

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 1ヶ月インドを離れていたせいで、未見の話題作が山積! ポンガル公開の作品は、タミルの【Jilla】と【Veeram】、テルグの【1 Nenokkadine】と【Yevadu】がいずれも面白いという評判の上に、大ヒット。加えて、年末公開されたカンナダ映画【Shravani Subramanya】もガネーシュ久々のスーパーヒットとなったようで、押さえておく必要がある。こりゃあ、分身の術を使うか、あるいは会社をずる休みでもしない限り、はけないな。

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 と言いながら、この週末は上に挙げた5作品ではなく、モーハンラール主演のマラヤーラム映画【Drishyam】を観て来た。本作の公開は去年の12月19日で、公開直後から高く評価する声が聞こえていたので、観ておきたかったが、一時帰国前のどたばたで叶わなかった。幸い、記録的なブロックバスターとなり、バンガロールでもまだやっていたので、まずは本作を優先することにした。
 なお、本作は今月15日に埼玉県川口市で1ショー限りの上映が行われる予定となっている。関心のある方はお見逃しなく!

【Drishyam】 (2013 : Malayalam)
脚本・監督 : Jeethu Joseph
出演 : Mohanlal, Meena, Ansiba Hassan, Baby Ester, Asha Sarath, Kalabhavan Shajon, Siddique, Kozhikode Narayanan Nair, Neeraj Madhav, Roshan Basheer, Aneesh G. Menon, P. Sreekumar, Shobha Mohan, Irshad, Kunchan, その他
音楽 : Anil Johnson, Vinu Thomas
撮影 : Sujith Vaassudev
編集 : Ayoob Khan
制作 : Antony Perumbavoor

題名の意味 : 見えるもの
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : スリラー
公 開 日 : 12月19日(木)
上映時間 : 2時間44分

◆ あらすじ
 イドゥッキ県トドゥプラ近郊の小村に暮らすジョージ・クッティ(Mohanlal)は、妻のラーニー(Meena)と2人の娘――高校生のアンジュ(Ansiba Hassan)と中学生のアヌー(Baby Ester)――と共に平凡ながら平和な家庭を築いていた。彼は農業の傍らケーブルテレビの事業所を営んでいた。孤児として育ったため、学問はなかったが、無類の映画好きで、生活に必要なすべての知恵は映画から学んでいた。好人物だが、吝嗇なのが珠に瑕。しかし、家族や村人から信頼を失うことはなかった。

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 そんなジョージ・クッティの家庭の平穏が、ある夜、俄かに暗転する。長女アンジュが野外キャンプに行ったとき、シャワーを浴びているところをスマートフォンで盗撮されてしまったのである。撮ったのは女警官ギーター・プラバーカル(Asha Sarath)の息子のワルン(Roshan Basheer)。このビデオ映像をネタにワルンが脅迫したため、アンジュは誤ってワルンを殺害してしまう。アンジュと母ラーニーはワルンの死体を庭に埋める。その様子を次女のアヌーも目撃する。
 翌朝、妻と娘たちから事情を聞いたジョージ・クッティは、家族を守るために、早速証拠隠滅に取りかかる。まず、ワルンのスマートフォンを始末するが、警察を攪乱するために、SIMカードは別の携帯電話に入れ、長距離トラックの荷台に捨てる。次に、ワルンの自動車を郊外の湖に沈める。だが、ジョージ・クッティがその車で移動する際、警官のサハデーヴァン(Kalabhavan Shajon)に目撃されてしまう。ジョージ・クッティはさらにアリバイ工作をし、妻と娘たちには、もし警察に聞かれたら、その日は家族揃ってトドゥプラへ行き、教会で礼拝した後、映画を観、レストランでビリヤーニを食べたと証言するように、と言い含める。
 警官のギーター・プラバーカルは、突如息子が行方不明となったため、捜査を開始する。だが、ワルンの所在に関する手掛かりは得られない。やがて湖に沈めたワルンの車が発見され、警官サハデーヴァンの目撃証言から、ジョージ・クッティに容疑が向けられる。警察は早速ジョージ・クッティとその家族から事情聴取するが、彼らにはしっかりとしたアリバイがあった、、、。

・その他の登場人物 : ギーター・プラバーカルの夫(Siddique),ラーニーの父(P. Sreekumar),ラーニーの母(Shobha Mohan),安食堂のオヤジ(Kozhikode Narayanan Nair),モーニッチャン(Neeraj Madhav)

◆ アナリシス
・評判どおり、観て納得の映画だった。私が観たショーでは客が1割程度の入りだったが、それでもエンディングはスタンディング・オベーション状態で、観客の満足度が窺えた。

・ジャンルとしてはスリラーになると思うが、前半の1時間強は何事も起こらず、ただただジョージ・クッティと家族、村人との交流がほのぼのタッチで描かれる。しかし、突如として事件が起こり、作品の様相ががらりと変わる。奇異にも感じられるが、あれぐらいのほのぼの感を描いておかないと、後半のジョージ・クッティの家族を守るための「執念」(法的には犯罪行為になるのだが)が浮かび上がってこないだろう。

・インドのスリラー映画なんて、と上から目線で見てしまうことが多いが、本作は違うぞ、、、と言いたいけれど、実はやっぱりインドのスリラーだったりする。ミステリーとして見ると、アリバイのトリックなどは単純なほうで、犯人側(ジョージ・クッティ)と捜査側(女警官ギーター・プラバーカル)の執拗な頭脳戦があるわけでもない。

・それでも、映画の語り口、特に後半の緊張感と独特の雰囲気は、これまでのインド映画では感じたことのないものだった。ジートゥ・ジョーセフ監督の作品では【Mummy And Me】(10)しか観ておらず、同作品を観た限り、それほど才能のある監督/脚本家とも思わなかったが、私の目が節穴だったということだろう。

・もちろん、緊迫感という感性的なものだけでなく、メッセージ性もある。詳述しないが、アッパークラスの甘やかされて育った子の不良問題、スマートフォンなどの電子機器が容易に犯罪に結び付く問題、警察と警官の横暴などが手際よく盛り込まれている。前者はタミル映画【Vazhakku Enn 18/9】(12)と重なるテーマ。後者については、本作全体が警察機構への辛辣な風刺になっているとも言える。

・ところで、Wikipediaの記述(2014年2月4日現在)によると、本作には「盗作疑惑」が持ち上がったようだ。元ネタとして、東野圭吾原作の小説/映画の【容疑者Xの献身】と、ハリウッド映画の【Before and After】(96)の名が挙げられているが、ジートゥ・ジョーセフ監督はその疑惑を否定している。

・ただ、私のジャッジでは、【Before and After】は観ていないので何とも言えないが、【容疑者Xの献身】については「クロ」、すなわち、監督は同作品のDVD(または小説)を観たのではないか、と推測させる節がある。

・そう推測する根拠は本作の題名だ。「Drishyam」の意味について、私の友人の日本語が堪能なケーララ人(本作鑑賞済み)に尋ねたところ、「価値ある光景」/「sightworthy」だと日本語と英語で教えてくれた。しかし、これはどうだろう? 「Drishyam」というのはサンスクリット起源の語で、「見る」という作用に対して「見られるもの」、「見えているもの」を表す言葉だったと思う。本作の副題も「Visuals can be deceiving」(見えているものは欺き得る)とあり、この「Visuals」が「Drishyam」に当たると思う。そして、私の聞き間違いでなかったら、本作でこの言葉が使われたのは、女警官(かつ、ワルンの母親)のギーターがジョージ・クッティのアリバイ・トリックを見破ったときだったので、そこで「価値ある光景」と言うのはおかしい。つまり、ギーターは「見えているものに騙されるな」と言ったのだと思う。で、このタイミングが、【容疑者Xの献身】で湯川が石神のアリバイ・トリックに気付いたときに「見方を変えるだけで、、、」と言うのとぴったり対応しているので、これは偶然の一致とは考えにくい、と判断したわけである。

・ただし、本作と【容疑者Xの献身】は、総体として見れば全然違っている。作品の背景もメッセージ性も、アリバイのトリックも本質的には違っている。なので、仮に【容疑者Xの献身】からヒントを得たとしても、「パクリ」とか「手抜き」といった否定的な評価は当たらず、むしろ、あれだけのヒントから本作を練り上げたジートゥ・ジョーセフ監督の創造性のほうを評価したい。

・ジョージ・クッティは無学であるにもかかわらず、映画狂で、生活に必要な知恵は映画から習得している、というキャラクター付けが面白かった。彼が見る映画はマラヤーラム映画だけでなく、ハリウッド映画やヒンディー映画、タミル映画など、多言語に亘っている。そうしたわけで、過去の映画からの引用も散見され、映画通ならネタ当てで面白いことだろう。しかし、私にはほとんど分からなかった。ストーリーの展開に絡んだ引用にはタミル映画の【Udhayam NH4】(13)があった。

◆ パフォーマンス面
・モーハンラール(ジョージ・クッティ役) ★★★★☆
 平凡な農夫、お茶目な亭主、娘思いの親父、世話好きな村男、風変わりな映画オタクと、様々な相をさすがに上手く演じている。しかし、犯罪行為は承知の上で、家族を守ろうとする気持ちの強さをここまで確かに演じられる俳優は、そうざらにはいない。
 (写真:「鍬を持つのがそんなにうれしいか!」なラルさん。)

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・ミーナー(ラーニー役) ★★★☆☆
 特に際立った芝居をしているわけではなかったが、母親役として完成されたミーナーが見られて、満足。皮下脂肪度もいよいよ理想の「インド・オバサマ女優」のレベルに。まったく、ミーナー、ロージャー、ローヒニが引退したら、私、インド映画を見る意欲、なくしちゃうな。

・アーシャ・シャラット(警官ギーター・プラバーカル役) ★★★☆☆
 美貌の鋭さそのままに、ジョージ・クッティを追い詰める警官を熱演している。いやぁ、警官としての職務というより、子を想う母親の執念は怖かった。

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・2人の娘、盗撮されてしまったアンジュ役のアンシバ・ハーサン(写真下左)とアヌー役のベビー・エステル(下右)もまずまず。特にベビー・エステルの恐怖に慄く表情は、本当に怖いものを見せて撮ったのでは、と思わせるほどリアルだった。

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・カラーバワン・シャージョーン(警官サハデーヴァン役) ★★★☆☆
 各レビューではこぞって高評価を得ている。通常はコメディー的役回りの彼がネガティブ・ロールをやっているというのが評価ポイントらしい。しかし、私的にはよく分からなかった。カンナダ映画だと、サードゥ・コーキラが悪役に挑戦するようなものか?

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・その他、警官役のクンジャンとイルシャード、安食堂のオヤジ役のコーリコード・ナーラーヤナン・ナーイルなど、実に味わいのあるオヤジ顔が並んでいた。

◆ テクニカル面・その他
・音楽 : アニル・ジョンソンとヴィヌ・トーマス ★★★☆☆
 当然、派手な音楽シーンなどないが、どこか琴線に触れるメロディーだった。誰の担当か分からないが、効果音も良い。

・撮影 : スジート・ヴァースデーヴ ★★★★☆
 いろいろ美しいショットはあったが、クライマックスのどんでん返し的カメラワークが記憶に残る。

◆ 完成度 : ★★★★☆
◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★★★☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 2月1日(土),公開第7週目
・映画館 : Sangeeth,14:45のショー
・満席率 : 1割
 

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