カーヴェリ川長治の南インド映画日記

アクセスカウンタ

zoom RSS 【Ugramm】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2014/03/05 02:42   >>

ナイス ブログ気持玉 1 / トラックバック 6 / コメント 2

画像

 カンナダ映画も変りつつあることを実感させてくれるギャング映画が現れた。監督はプラシャーント・ニールという聞いたことのなかった人だし(新人)、主演はフロップ続きで良いところのなかったムラリ(シュリームラリ)なので、ノーマークだったが、各方面からの評判が良かったので、観に行くことにした。
 ヒロインは私が勝手に「ハリピー」と呼んでいるハリプリヤー。こっちにも注目したい。

【Ugramm】 (2014 : Kannada)
脚本 : Prashanth Neel, K. Ram ShriLaxman
監督 : Prashanth Neel
出演 : Sri Murali, Haripriya, Tilak Shekar, Atul Kulkarni, Avinash, Jai Jagadish, Padmaja Rao, Mitra, その他
音楽 : Ravi Basrur
撮影 : Ravi Varman
編集 : Srikanth
制作 : Inkfinite Pictures

題名の意味 : 怒り
映倫認証 : A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : アクション
公 開 日 : 2月21日(金)
上映時間 : 2時間10分

◆ あらすじ
 オーストラリア在住のプラバーカル(Jai Jagadish)の娘ニティヤ(Haripriya)が母の墓参りのためにバンガロールにやって来たところ、誘拐されてしまう。誘拐したのはシラー在住の政治家兼マフィアであるシヴァルドラ・リンガイヤ(Avinash)の一味。実はシヴァルドラは、20年前の密輸ビジネスに絡む怨念から、プラバーカルに対して復讐を果たす機会を窺っていたのである。しかし、ニティヤ誘拐のニュースは友人を介してアガスティヤ(Sri Murali)という男に知らされる。アガスティヤは早速シヴァルドラの一味からニティヤを奪還し、コーラールにある自分の家に保護する。そうとは知らず、プラバーカルがインドへやって来るが、彼はそのままシヴァルドラの一味に監禁される。
 その後、ニティヤを狙って次々と悪漢がやって来るが、アガスティヤはその度に彼らをはね返していた。その過程でニティヤはアガスティヤを愛するようになる。
 ある日、ニティヤは隣家の住人から、アガスティヤが実は恐ろしいヤクザだと聞かされ、恐怖を抱く。だが、アガスティヤの友人がニティヤに対し、彼の過去を語って聞かせる。
 ・・・
 アガスティヤはかつて北カルナータカのムゴールという地方の小さな村に住んでいた。ムゴールはギャングのはびこる無法地帯で、アガスティヤも少年時代に父を殺されていた。
 近村にアガスティヤの友人バーラー(Tilak)がいた。バーラーの家族もギャングだったが、父の死後、勢力が縮小していた。そこでバーラーはアガスティヤに協力を仰ぎ、勢力を回復しようと図る。アガスティヤはその要請を断ろうとするが、ムゴールのギャングたちの極悪非道ぶりを目撃して義憤を感じ、バーラーと共に戦う決意をする。アガスティヤとバーラーはライバルのギャングたちを次々に掃討し、広い地域を勢力範囲とする。だが、その過程でアガスティヤはバーラーの弟も殺してしまい、やむなく母(Padmaja Rao)と共に故郷を離れ、コーラールに移り住んだ、というわけであった。
 ・・・
 シヴァルドラは次期総選挙の候補者だったが、息子のディーラージ(Atul Kulkarni)は選挙活動よりニティヤとアガスティヤの殺害を優先する父に業を煮やし、父を殺害する。さらにアガスティヤを始末するために、ムゴールのギャングと手を結ぶ。
 シヴァルドラの一味に監禁されていたプラバーカルは監禁所を抜け出し、娘ニティヤと再会する。そして二人はオーストラリアに戻ろうとするが、空港へ行く途上でギャングに捕まり、ムゴールまで連れて行かれる、、、。

◆ アナリシス
・間違いなくカンナダのギャング映画の里程標となる作品だ。単刀直入に面白い、力強い、スリリングなだけでなく、インド映画的に興味深い点もあった。

・私が「カンナダ・ノワール」と呼んでいる一連のアンダーワールド映画にもいくつかの類型があり、まずP・N・サティヤ監督の【Majestic】(02)や【Gooli】(08)、プレーム監督の【Kariya】(03)や【Jogi】(05)のように、本来無辜であるはずの主人公が暗黒街で辛苦を嘗める様が情念たっぷりに描かれるタイプのものや、ラヴィ・シュリーワトサ監督の【Deadly Soma】(05)や【Deadly-2】(10)、スマナ・キットゥール監督の【Slum Bala】(08)や【Edegarike】(12)のように、実録タッチで、裏社会の問題を社会問題として告発しようとするタイプのもの、さらにはK・M・チャイタニヤ監督の【Aa Dinagalu】(07)、スーリ監督の【Duniya】(07)や【Kaddipudi】(13)のように、やや引いたクールな視線で、ドラマ性を重視して暗黒街に関わる人物たちを描こうとするタイプのものがある。しかし、本作【Ugramm】はそのいずれとも言えない。

・それで、多くのレビューでは簡単にラーム・ゴーパール・ヴァルマ監督やタランティーノ監督の作品との類似性を挙げているが、私にはそうは感じられなかった。まずもって、タランティーノでは全然ない。(私は、タランティーノ監督の軽さ/洒落っ気は今のところインド人の感性とは無縁であると信じる。)

・RGV監督については、確かに【Company】(02)や【Rakta Charitra 1】(10)などを思わせるムードはあるが、似ているのはBGMがうるさいということだけで、本質的なところでは大きく隔たっている。むしろ、ボリウッド作品で挙げるなら、アヌラーグ・カシヤプ監督の【Gangs of Wasseypur】(12)に近いかもしれない(スケールは違うが)。

・だいたい、RGV監督の作品は「非情」というか、血も涙もないクールさがあって、そこが無責任さを感じてしまうところなのだが、本作にはちゃんと血も涙もあるし、コメディー・シーンも音楽シーンもある。「二度と姿を現すな」とヒーローが背を向けて去ろうとするところを、ヒロインが「待って!」みたいな大衆芝居的なくささもあり、ヤクザ映画はこうでなくっちゃ!といった面白みがあった。

・本作は教養層の喜びそうなメッセージ性はなく、物語の舞台となった「ムゴール(Mughor)」も架空の村ということなので、内容的には薄っぺらいものなのかもしれない。しかし、私が本作をインド映画的に興味深いと感じ、高く評価するのは、主人公のアガスティヤ(Sri Murali)を半神的なヒーローとして確立することに成功しているからだ。

・本作の主人公アガスティヤはヴィシュヌ神のアヴァターラの一つ、ナラシンハのイメージで描かれている(左腕にばっちりナラシンハの刺青をしている)。題名の「Ugramm」もたぶんナラシンハを讃える祈祷句の「Ugram Veeram Mahaa Vishnum」から取ったものなのだろう(下の動画参照)。



 この宗教儀礼で詠われるナラシンハに対する素朴な讃美も、本作では下のような力動的なイメージとして表現されるのである(挿入歌「Ugramm Veeram」より)。



・私は、ウペンドラの【Om】(95)やテルグ映画【Krishnam Vande Jagadgurum】(12)の鑑賞記でも似たことを書いておいたが、インドのアクション映画の存在意義は古の叙事詩(神話)が本来内包している活力を現代的に蘇生させることだと思っている(神話からモチーフを拝借するってことだけでなく)。そうした観点では本作はよくできているし、監督の意図もぶれていなかった。

・技術的にも鋭いものがあった。バイオレンス・シーンは「おお、これは『力への意志』か『悪の祭典』か!」と思うほど激しいものなのに、それを一瞬でひっくり返してイメージを変えてしまう脚本、カメラ、編集には感心した。

・ただ、新人監督らしい粗削りな点もあった。BGMがうるさいのは我慢できるとして、登場人物が多くて分かりづらい、ムゴールでのアガスティヤらの成り上がりの過程(ギャング同士の抗争)の描写が長すぎる、地名等を表示する字幕(カンナダ語)の消えるが早すぎる、といった不満点はある。

◆ パフォーマンス面
・シュリームラリ(アガスティヤ役) ★★★★☆
 ラージクマールの甥っ子(つまり、シヴァラージクマールらのいとこ)でありながら、デビュー作【Chandra Chakori】(03)以来大したヒットのないムラリだったが、やっと俳優としての会心作ができたようだ。ヒーローとしての集中力を身に付けたのか、これまでとは人が変ったようだった。これも【Sri Kshetra Aadichunchanagiri】(12)で頭を丸めた功徳か?
 (写真下:やっぱり持つべきものは、、、ナタ。)

画像

・ハリプリヤー(ニティヤ役) ★★★☆☆
 【Kallara Santhe】(09)が公開されたときは期待を抱かせ、ちょうど酒井法子の覚醒剤事件がニュースとなっていた時期だったので、「ハリピーで〜す。でも、覚醒剤はやってませ〜ん」というキャッチコピーまで用意してこのブログでも紹介したかったハリプリヤーだが、その後カンナダではさっぱり。テルグの【Thakita Thakita】(10)やタミルの【Muran】(11)ではまずまずの仕事をしていたのに、ブレイクには及ばず、現在に至る。本作では、外国帰りでインド生活に戸惑うボケっぷりはわざとらしかったが、物語が進むにつれ良くなり、エンディングはけっこう感動的だった。アフレコも自分でやっているらしい。ちなみに、彼女は「バラタナティヤムのダンサー」とよく言及されているが、スクリーン上ではその片鱗をまだ見せてくれていない。

画像

・ティラク(バーラー役) ★★★☆☆
 この人も、本当に俳優なんだろうかと疑問を抱かせるほど影が薄かったが、ムラリ同様、本作では気合いの入ったパフォーマンスを見せている。

画像

・アトゥル・クルカルニー(ディーラージ役) ★★★☆☆
 特に際立った芝居を見せていたわけではないが、カルナータカ州ベラガーウィ出身のボリウッド俳優のカンナダ映画出演ということなので、スチルを上げておく。

画像

◆ テクニカル面・その他
・音楽 : Ravi Basrur ★★★★☆
 この人の名前も初めて聞いた。特に凄い音楽だったわけではないが、なぜか気に入ったので、4ツ星。

・撮影 : ラヴィ・ヴァルマン ★★★★★
 本作の話題の一つは、ボリウッドやタミル、テルグで活躍し、名カメラマンの誉れ高いラヴィ・ヴァルマンが初めてカンナダ映画の撮影を担当するということだった。さすが、という言い方はしたくないが、さすがに見事な映像で、カンナダ映画界の撮影監督諸氏も焦りを感じたことだろう。

◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★★★★

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 3月2日(日),公開第2週目
・映画館 : Kamakya,11:15のショー
・満席率 : 7割
 

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
ナイス

トラックバック(6件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
【Rana Vikrama】 (Kannada)
 プニート・ラージクマールの話題の新作は【Rana Vikrama】。  プニートの作品はすべて観ていたが、2014年の2作(【Ninnindale】と【Power***】)はお休みし、先日観た【Mythri】はやや変則な役柄だったので、プニートの本格的主演作を観るのは1年半ぶりになる。  もちろん、プニートが楽しみということではなく、私の目当てはアンジャリとアダー・シャルマーなのだが、それは脇に置くとして、今回は監督のパワン・ウォデヤルに注目したい。ヒット作【Govindaya ... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2015/04/15 21:18
【Vajrakaya】 (Kannada)
 ファラー・カーンやプラブデーワが監督として名を上げて以来、「振付師の撮る映画は面白い」という声をよく聞くようになったが、その実例となる人物がもう一人いる。 ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2015/07/01 21:36
【Rathaavara】 (Kannada)
 【Ugramm】(14)の成功はカンナダ映画界にとって画期的なことだったと思う。カンナダの娯楽アクション映画といえば、テルグやタミルの真似事、というより、多くはリメイクという状況の中で、テルグやタミルとは非常に違った、スタイリッシュで、地方色豊かなアクション映画の可能性を示したからである。ただ、これも単発で終わっては意味がなく、スタイルとして定着するためには、後に続く作品がなければならない。そこで、この【Rathaavara】である。主演も【Ugramm】と同じシュリームラリで、ポス... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2015/12/10 21:43
【Ricky】 (Kannada)
 スタイルが古くさいと言われるカンナダ映画にあって、【Lucia】(13)と【Ulidavaru Kandante】(14)は特筆すべき新趣向映画の秀作だが、その両作品に表向き地味に参画していた人物がリシャブ・シェッティだ。この度そのリシャブ氏が監督デビューする運びとなり、友達でもないのに妙に感慨深いものを感じる。  主演は【Ulidavaru Kandante】、【Simpallag Ond Love Story】(13)のラクシト・シェッティ。日本でも【Vaastu Prakaa... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2016/02/09 21:28
【Karvva】 (Kannada)
 今年に入ってサンダルウッドは好調で、【Killing Veerappan】、【Last Bus】、【Ricky】、【Kiragoorina Gayyaligalu】、【Thithi】、【U Turn】、【Godhi Banna Sadharana Mykattu】などの良作が連続し、批評家からもファンからも「カンナダ映画は変わった」との声がしばしば上がっている。これらがすべて凄い映画かと聞かれると、私は口を閉ざすが、しかしこれらが批評家受けしただけでなく、興業的にもヒットしている事実は注... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2016/06/28 22:06
【Neerdose】 (Kannada)
 カンナダ女優のハリプリヤーはなぜか早くから、2009年の【Male Barali Manju Irali】辺りから「ハリピー」と呼んで注目してきたが、長い鳴かず飛ばず期を経て、【Ugramm】(14)、【Ricky】(16)と、やっと主演級女優の座を獲得してくれて、うれしい。 ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2016/09/22 20:44

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
おすすめいただいてからずっと気になっていましたが、やっと見ることができました。

悪い方の人たちが多すぎて混乱しましたが、興奮しました。
こういう映画もあるんですね、カンナダ。
アクションがカッコ良かったです。
それと、太鼓をバタバタ叩くミュージックシーンも好きです。

この主演のシュリームラリという人は踊れる人なのでしょうか。
女子とは一切踊らないのも新鮮、かつ好印象でした。

あの刺青はナラシンハという神様なのですね。
ライオン?とか思いながら見てました。

やっほー
2014/11/25 21:57
ネットでご覧になったんですね。
シュリームラリはカンナダでは踊れるほうだと思います。本作ではちらっとしか見せませんでしたが。
やっぱ、「Oggarane」じゃなく、こっちを日本でやってほしかったです。
 
カーヴェリ
2014/11/26 21:22

コメントする help

ニックネーム
本 文
【Ugramm】 (Kannada) カーヴェリ川長治の南インド映画日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる