カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【December-1】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2014/05/01 09:24   >>

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 カンナダのP・シェーシャードリ監督といえば、ギリーシュ・カーサラワッリ監督に並ぶカンナダ・アートフィルムの作り手だが、とにかくこれまで発表した作品(7作)がすべて国家映画賞の何らかの賞を獲得している。アートフィルムといっても、彼の場合、退屈ということもなく、ユーモアと風刺感覚に冴えがあり、私はけっこう好きである(本ブログでは【Bettada Jeeva】(11)を紹介した)。

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 そんなシェーシャードリ監督の新作【December-1】がまたまた国家映画賞を戴くことになった。今回(第61回)は最優秀脚本賞と最優秀カンナダ語長編映画賞である。そして、例によって凱旋公開となったので、観て来た。
 (写真下:P・シェーシャードリ監督近影。)

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【December-1】 (2014 : Kannada)
物語・脚本・監督 : P. Sheshadri
出演 : Niveditha, Santosh Uppina, H.G. Dattatreya, Shanthabai Joshi, Shashikumar, Master Manjunath Mathapati, Veeresh, Basavaraja Tirlapura, Nataraj S. Bhat
音楽 : V. Manohar
撮影 : Ashok V. Raman
編集 : B.S. Kemparaju
制作 : Basantkumar Patil

題名の意味 : 12月1日
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : アート
公 開 日 : 4月25日(金)
上映時間 : 1時間37分

◆ あらすじ
 北カルナータカのバサープラという小村にマーデーワッパ(Santosh Uppina)とデーワッカ(Niveditha)という夫婦が暮らしていた。マーデーワッパはかつてトラックの運転手をしていたが、事故で左足が不自由となり、現在は粉挽き屋で働いていた。デーワッカはロッティ(ローティー)を焼いて、近隣の町へ売りに出ていた。夫婦には小学生の息子キラン(Master Manjunath Mathapati)と赤子のジョーティがいた。また、マーデーワッパの半盲の母(Shanthabai Joshi)も同居していた。一家の生活は爪に火を灯すようなものだったが、なんとか平和に暮らしていた。
 そんな彼らの生活に思いがけない出来事が起きる。ある日、マーデーワッパが地方行政副長官のクマール(Shashikumar)に呼び出され、12月1日にカルナータカ州首相がマーデーワッパの家を訪問し、夕食を共にし、一泊する、という通達を受けたのである。
 早速準備が始まり、マーデーワッパの家は有無を言わさず改装され、トイレが作られ、家具や電気製品も置かれる。村の道も整備される。村人たちはマーデーワッパやデーワッカに愛想よく接近し、それぞれ「個人的な」お願いを託すようになる。また、ジャーナリストもスクープを得ようと接近して来る。そんな中で、マーデーワッパ夫妻も、どん底の生活から抜け出せることを夢見るようになる。
 果たして州首相(H.G. Dattatreya)がものものしい警護の中、やって来る。州首相は愛想よく夫婦に接し、デーワッカの焼いたジョーワル・ロッティを1枚食べる。しかし就寝の際は、ホストであるはずのマーデーワッパ夫妻は家の外で寝るよう命じられる。
 翌朝、州首相一行は予定どおり辞去する。しかし、マーデーワッパとデーワッカは、朝刊に載っていた州首相訪問の記事を読み、ショックを受ける、、、。

◆ ざっくりしたコメント
・単刀直入なメッセージを持つ、分かりやすい、簡潔な作品だった。アートフィルムらしいと言えばらしいが、真のアートフィルムと呼ぶためには、もう少し難解さ(メッセージを読み解く楽しさ)があったほうがよかったと思う。

・しかし、こういう作品はおそらくインテリ層に観てもらうだけでなく、村落部のお百姓たちを啓蒙/鼓舞する狙いもあると思われるので、これぐらい分かりやすいほうがいいのかな、と思わないこともない。本作は映画祭や都市部のマルチプレックスだけでなく、インドの村々でも上映会が行われるべきだ。

・上のあらすじでは肝心な点、つまり「なぜ州首相は小村の貧民宅を訪問することにしたのか」を書かなかった。これを書かないと、本作についてまともに論じることは不可能なのだが、しかし、ここは本作のサスペンス・ポイントとなっているので、本ブログでは伏せることにした。関心のある方は、英語字幕付きDVDが出た暁に(たぶん出る)ご覧いただきたい。(ネット上のレビューかブログで明記されているかもしれないが、あまり詮索しないほうが賢明だ。)

・州首相(もしくは大物政治家)が「Common Man」の家を訪問し、食事を共にするとか、宿泊するとかいうことは、政治的ギミックのために実際に行われていることらしい。ただし、本作の物語が実際にあった出来事を基にしているかどうかは知らない。

・物語の舞台はバサープラという村だったが、実在する村かどうか知らない。カルナータカ州北部という設定で、それを象徴するかのように、冒頭にエッランマ女神の帰依者が登場していた。この村の様子(痩せた土地、貧困なインフラなど)やマーデーワッパの家の様子(裸電球がぶら下がっているだけで、家具や電気製品は一切なく、トイレもない)が手際よく描写され、そこは上手いと言えば上手い。

・風刺ポイントとして、貧民を救済するどころか、政治的に利用しようとする政治家や、スクープを得るために手段を選ばない非人情なジャーナリスト、状況によってマーデーワッパ一家に対して態度をころころ変える村人など、人間のエゴが槍玉に上がっている。この辺の扱いも堅実で良い。

・一番面白いのは、ある種の偏見を取り除くという意図が、生半可な、その偏見の被害を被る者の身になって真剣に考えるというものでない限り、かえってその偏見を助長してしまうという危険性を突いている点だ。ここは考えさせられるポイント。

・アートフィルムらしいテクニックが窺えるのは、マーデーワッパの母(Shanthabai Joshi)を半盲と設定したことだろう。見えていない者が発する、見えていないがゆえにとんちんかんな言葉の中に、意外に真実が含まれていたりする。

・ユーモア・ポイントはいろいろあったが、一番笑ったのは、州首相の護衛がデーワッカ(Niveditha)の焼いたロッティを一枚一枚金属探知機でチェックしていたところ。

・台詞は北カルナータカの方言らしく、私が聞いても、バンガロールで聞くカンナダ語とはかなり違うということが分かった。

・物語中、デーワッカが焼いていたロッティは、普通に日本人がイメージするタイプのものではなく、北カルナータカで普通に食されるジョーラダ・ロッティ(Jolada Rotti)またはジョーワル・ロッティ(Jowar Rotti)と呼ばれるもの(インドで食されるこの種の無発酵パンは、ヒンディー語だと「ローティー」と発音されると思うが、カンナダ語圏では表記も発音も「ロッティ」なので、こちらのカナ表記にした)。これはジョーワルという雑穀から作られるものらしく、特徴は(私が知っているタイプのものは)とにかくせんべいのようにカチカチに硬く、とても片手でちぎっておかず(palya)を挟んで食うなんてことはできない(材料と製法からこのようになってしまうのか、保存性を高めるためにあえて水気を飛ばしているのかは、知らない)。食べ方もいろいろあると思うが、私が推奨されたのは、両手で細かく砕き、サンバルをかけて食べるというもので、要はパン食品というよりシリアル食品に近い。カードと一緒に食べても旨い。味はいたって淡泊。見てくれといい、食感といい、味といい、北カルナータカらしい食べ物で、バンガロールではあまり見かけないが、北カルナータカ系の食堂などでメニューに入れている所もある。
 (写真下:うちの近所の安食堂で出しているジョーラダ・ロッティ。)

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◆ 演技陣へのコメント
・ニウェーディター(デーワッカ役) ★★★☆☆
 貧しい村の2児の母を熱演している。国家映画賞は無理だったが、カルナータカ州の主演女優賞なら獲っても不思議はないだろう。彼女はおそらくすでに30歳絡みだと思われるが、女優としてはかなり苦しいキャリアを歩んでいる。以前は「Smitha」(本名がSmitha Jagadishらしい)という名で出演していたが、今のところ特に改名の効果も現れていない。ただ、これまでの作品や本作を見る限り、アート系では使い勝手が良さそうだ。
 回顧:【Mathad Mathadu Mallige】(07),【Avva】(08),【Aakaasha Gange】(08),【Yaarre Koogaadali】(12)

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・サントーシュ・ウッピナ(マーデーワッパ役) ★★★☆☆
 この人本当に役者さん?といった感じだった。しかし、泣きの演技を見る限り、素人ではなさそうだった。

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・H・G・ダッタートレーヤ(州首相役) ★★☆☆☆
 シェーシャードリ監督作品には欠かせない名優だが、本作ではカメオ出演みたいなものだったので、特に見せ場はなし。

・シャーンターバーイ・ジョーシ(マーデーワッパの母役) ★★★★☆
 このお婆さんも、どこから見つけて来たんだ?といった感じだった。いるんだなぁ、こういう「女優」も。最初はうるさい感じで不快だったが、映画が終わってみれば、最もアートフィルムらしいキャラだった。

◆ テクニカル面・その他(覚書)
・音楽 : V・マノーハル ★★☆☆☆
 V・マノーハルの音楽とあって、期待したが、ほとんど印象に残っていない。

・撮影 : アショーク・V・ラーマン ★★★☆☆
 堅実なカメラだった。

◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★★☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 4月27日(日),公開第1週目
・映画館 : Gopalan Cinemas (RR Nagar),14:50のショー
・満席率 : 3割
・備 考 : 英語字幕付き
 

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