カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Billion Dollar Baby】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2014/06/12 21:53   >>

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 先日、インドのマーラーヴァト・プールナという13歳の少女がエヴェレスト登頂に成功し、女性登頂最年少記録を更新したということで話題となったが(こちら)、インドではこうした大人顔負けの能力、精神力をもった子供が時おり現れる。
 インド映画界ではどうかというと、よく知らないのだが、少なくともカンナダ映画界ではキシャン少年が10歳で【Care of Footpath】(06)を監督し、当時の最年少映画監督としてギネスブックに登録された例がある。
 そして今度はインドの最年少女性映画監督である。やはりカンナダ映画界で、シュリヤー・ディナカルというバンガロール在住の19歳の女の子が、自ら監督・主演し、宇宙飛行士として火星まで行ってしまうという映画を発表した。

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 実はこの映画、シュリヤーが14歳のころから製作が開始され、当時その記事を読んだ私は「えらいハッタリをかますなぁ」と一笑し、そのまま忘れていた(記事はこちらこちら)。ところが、それが本当に完成・公開されたと知り、驚いた。観に行くかどうか迷ったが、インドという国家が宇宙開発に力を入れている割にインド映画には宇宙物が出ないので、「話のネタに」ぐらいの気持ちで観に行ったら、、、のけ反った。
 特殊な作品になるので、まずはこちらのオフィシャル・トレイラーを見て、イメージをつかんでおいたほうがいいと思う。



【Billion Dollar Baby】 (2014 : Kannada)
監督 : Shriya Dinakar
出演 : Shriya Dinakar, Suresh Hublikar, Shivadwaj, Sangeetha, Yamuna Murthy, Bank Janardhan, Pushpa Swamy, Mohan Juneja, その他
音楽 : Vijay Srinivas
撮影 : Veenus Murthy
編集 : Sanjeev Reddy
制作 : G. Dinakar

題名の意味 : 10億ドルの娘
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ドラマ
公 開 日 : 6月6日(金)
上映時間 : 2時間17分

◆ あらすじ
 バンガロールに暮らすシュリヤー(Shriya Dinakar)は絵を描くのが得意な想像力豊かな少女。彼女は勉学だけでなく、古典ダンスにも秀で、さらに地球の環境問題にも関心を持っていた。
 同級生のモーニシャはそんなシュリヤーに嫉妬し、意地悪をする。実業家のモーニシャの父は、郊外の森を伐採して遊園地を作る計画を立てていた。それを知ったシュリヤーは、父(Shivadwaj)と共同で政府に嘆願書を提出し、遊園地建設計画をストップさせる。さらにシュリヤーの描いた「緑の地球」の絵が、スロヴェニアで行われた絵画コンクールで最優秀作品に選ばれる。
 シュリヤーは教官ラーダークリシュナ(Suresh Hublikar)の宇宙とロケットに関する講義を聞き、自分が宇宙飛行士として火星に降り立つことを夢想する。彼女は宇宙飛行士になる決意をし、パイロットの訓練を受けようとする。しかし、遊園地計画の件で恨みを持つモーニシャの父の妨害に合い、訓練を受けられなくなる。
 落胆するシュリヤーだが、両親らのサポートを得、ロシアで宇宙飛行士になるための訓練を受けることになる。訓練終了後、彼女はロシア軍からオファーを受けるが、祖国インドに尽くす道を選択する。
 インドに戻ったシュリヤーに対し、モーニシャが嫌がらせをしようとする。ところが、その際にモーニシャがアクシデントで大怪我をしてしまう。病院に運ぼうにも渋滞で車が動かない。そこでシュリヤーが小型飛行機でモーニシャを運んだため、彼女の命は助かる。感謝したモーニシャの父は遊園地計画を完全に撤回する。
 この一件で、バンガロールの交通渋滞を問題視したシュリヤーは、「Human Flying Machine」の開発に着手し、2年後にプレゼンを行う。これで彼女は「Queen Elizabeth Exceptional Achievement Award」を得る。
 こうした功績が認められ、シュリヤーはアメリカ・NASAの「火星ミッション」のメンバーに選ばれ、訓練を受けることになる。そして、無事訓練を終えたシュリヤーは、他の5人のメンバーと共に、火星を目指すことになる、、、。

◆ ざっくりしたコメント
・「インドが好き」と公言している人には「変なもの好き」、つまり、摩訶不思議なるインドの物事を見つけては喜んでいる人が多く、私もその域を出ないのだが、せっかくなので日本などではお目にかかれないものと出会いたいと思っている。その点では本作は大満足だった。何しろ、少女の夢想(というより妄想)、自信(むしろ思い込み)、個人の持ち上げ、倫理的気高さ、祖国愛のレベルが半端じゃなく、たじろいでしまうほどなのである。こういう規格外の映画に出会うと、最近観て「良い」と評した【Apur Panchali】や【Manam】や【Bangalore Days】も、まだまだ限度まで達していないようで、甘く見えた。「やられた」と感じた。

・上のあらすじを読むと、荒唐無稽さに笑ってしまうかもしれないが、驚くなかれ、映画の半分以上は事実に基づくセミ・ドキュメンタリーなのである。大きくフィクションに傾くのは後半のシュリヤーが宇宙飛行士を目指して努力し、火星へ行く展開だけなのである。こちらの記事によると、彼女は実際に450以上の賞(うち19はゴールド・メダル)を獲得し、スロヴェニアの絵画コンクールで最優秀作品に選ばれたことも、「Queen Elizabeth Exceptional Achievement Award」を取ったことも、小型飛行機の操縦ができることも、事実のようなのである。別の記事には、古典ダンサーとして514のダンス・プログラムに参加したとの記述もある(こちら)。
 (写真下:夥しい数の盾、トロフィー、メダルで飾られたシュリヤーの部屋。)

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 普通、こういうのを見せられると白けるものだが、ここまで遠慮も慎みもなくだと、かえって天晴れなものを感じた(もっとも、これにアレルギーを感じる鑑賞者もいるだろうとは思う)。

・本作のテーマ、モチーフは盛りだくさんだが、「環境問題」と「子供の育成の問題」が柱になっている。前者は、「地球を救え」というメッセージがインド的、宇宙的視点から描かれていて、稚拙な表現スタイルとはいえ、面白い。

・より重要なのは後者のほうで、子供の夢というのは親の適切なサポート次第で実現できる、という話になっている。どうもシュリヤーはこの夢の実現という考えをインドの元大統領A・P・J・アブドゥル・カラームから得たようで、映画の始めではっきりと「アブドゥル・カラームさんが本作のロールモデルだ」と述べており、そのメッセージを多くの人に伝えたくて、映画製作を思い立ったようだ。
 (写真下:アブドゥル・カラームとシュリヤーのツー・ショット。)

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・映画作品としての完成度を言うならば、特に褒めたい点はない。一応作られたストーリーは他愛のないものだし、演技者の演技レベルも平凡だし、特撮などの技術レベルも素朴なものだ。これを観て、通常の映画的な感動を求めることはできない。

・ただ、本作は「子供ならでは」の強みを活かしたストレートな訴えが効いている。例えば、「反喫煙」を言うのに、タバコを吸っているスクールバスの運転手にシュリヤーが「ちょっとタバコの箱見せて、、、ここに何と書いてあるの?」、「いや、癌になると書いてあるよ」、「癌になると分かってて吸うのは間違いだわ」と来るのだが、こういう「説教」も子供にされるなら、一旦はタバコの火を消そうという気にもなる。「環境破壊」を言うのに、地球の模型のドアが開いて、中で泣き苦しんでいる女神を見せる。こういうのも大人の映画なら単純すぎるが、子供にとっては直感的で理解しやすく、より教育的だ。

・「火星ミッション」にしても、インドの火星探査機マンガルヤーンがまだ火星の軌道に乗ってもいないのに、バンガロールの女の子が一足お先に着陸しちゃったというのはずいぶんな飛躍だ。

・ところが、この飛躍感が本作の魅力なのだ。何かをしたい、訴えたい、夢を形に変えたいという「情熱」をバネに、どんどんジャンプしてしまうところに圧倒される。この音楽シーンにも「火星に立ちたい」という情熱が強く表れている。



 映画を作って見せるというのは、コンセプトや技術も重要だけれど、まずは情熱だということを、改めてこの子に教えてもらったよ。

◆ 演技陣へのコメント
・シュリヤー・ディナカル(シュリヤー役) ★★★★☆
 一応、インドの最年少女流監督ということになったシュリヤーだが、どれだけ本格的な監督業をこなしたのかは知らない。ただ、映画中のシュリヤーを見る限り、この子は相手が誰であれ、自分のやりたいことを伝えたり、一緒に考えたりできるタイプに見えたので、それなりにスタッフ等に指示は出していたのだろうと思う。
 この子が今後どういう進路を取るのかは分からないが、たぶん専業の女優にはならないだろう。むしろ、本当に火星まで行ってしまうか、逆に、汚濁に満ちたバンガロールで大臣にでもなり、街の大掃除をしてほしい。
 古典ダンサーとしては、際立って上手いという印象もなかったが、こちらの音楽シーンは大画面で見たら楽しめた。



◆ テクニカル面・その他(覚書)
・音楽 : ヴィジャイ・シュリーニワース ★★★☆☆

・火星の場面の撮影はカルナータカ州南東端にあるコーラール金採掘地(Kolar Gold Fields)で行われたらしい。

◆ 完成度 : ★★☆☆☆
◆ 仰天度 : ★★★★★
◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★☆☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 6月8日(日),公開第1週目
・映画館 : Gopalan Cinamas (RR Nagar),14:45のショー
・満席率 : 3割
 

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