カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Oggarane】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2014/07/09 20:29   >>

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 マルチタレントのプラカーシュ・ラージは、俳優はもちろん、プロデューサーとしても目を引く活動をしているが、監督となると地味に見える。監督デビュー作のカンナダ映画【Naanu Nanna Kanasu】(10)はヒットしたが、第2作のテルグ映画【Dhoni】(12)はおそらくフロップだろう。両作品ともリメイクで、スケール的には小さな映画だった。
 で、3作目にして最新作の本作【Oggarane】もリメイクで、オリジナルはマラヤーラム映画のヒット作【Salt N' Pepper】(11)。プラカーシュ・ラージ監督・主演の【Salt N' Pepper】というのも合いすぎで、驚きはないのだが、業界を驚かせたのは、本作が(周知のとおり)カンナダ語版【Oggarane】、タミル語版【Un Samayal Arayil】、テルグ語版【Ulavacharu Biryani】のトリリンガル作品として製作されたことだ。だから素晴らしい映画だと言うことはできないが、こういう芸当ができるのもプラカーシュ・ラージの活動範囲の広さゆえだろう。
 本作は1ヶ月前に公開されたもので、私自身もう観る機会はないかと思っていたが、巡り合わせで観ることになった。観るなら観るで、いろいろ注目点が思い浮かんだが、まずはカンナダ女優のサムユクタ・ホラナードに注目したい。

【Oggarane】 (2014 : Kannada)
脚本・監督 : Prakash Raj
出演 : Prakash Raj, Sneha, Tejus, Samyuktha Hornad, Achyuth Kumar, Mandya Ramesh, Urvashi, Aishwarya, その他
音楽 : Ilaiyaraaja
撮影 : Preetha
編集 : JO NI Harsha
制作 : Prakash Raj

題名の意味 : オッガラネ
映倫認証 : U
タ イ プ : リメイク
ジャンル : ロマンティック・コメディー
公 開 日 : 6月6日(金)
上映時間 : 2時間2分

◆ あらすじ
 政府の考古学局に勤めるカーリダーサ(Prakash Raj)は45歳になっても独身だったが、大の食通で、お見合いに行っても、花嫁ではなくその家の料理人(Achyuth Kumar)を連れて帰る有様。彼の家に甥のナヴィーン(Tejus)がやって来、しばらく滞在することになる。
 ガウリ(Sneha)も36歳になっても独身で、結婚に焦りを感じていた。映画の声優として生計を立てていたが、趣味はやはり料理を作ること・食べることだった。彼女は妹のメーガナ(Samyuktha Hornad)と一緒に美容師(Urvashi)の家に住んでいた。
 ある時、ガウリは子供のころ母が作ってくれたドーサを思い出し、衝動的にそれが食べたくなって、レストランに電話で配達を頼む。ところが、その電話は間違ってカーリダーサの携帯にかかってしまう。カーリダーサは適当にあしらうが、こうした電話のやり取りの後、二人の趣味が料理だということが分かり、意気投合する。カーリダーサは電話越しにガウリに「ジョアンのレインボー・ケーキ」の作り方を教え、それぞれ作り始めることにする。そのケーキは完成までに4日を要するものだが、それが出来上がる頃には、お互いが気に掛かる存在になっていた。
 カーリダーサとガウリは一度会う約束をする。ところが、家を出る段になって、カーリダーサは自分の容姿に自信が持てなくなり、甥のナヴィーンを待ち合わせ場所へ行かせる。一方、ガウリのほうも同じことを考え、メーガナを行かせる。喫茶店でナヴィーンとメーガナはそれぞれカーリダーサとガウリのふりをして会う。ところが、この時点で二人は惹かれるものを感じてしまい、家に帰ったナヴィーンはカーリダーサにガウリのことを忘れさせようと彼女のことを否定的に伝え、他方、メーガナもガウリに同じようなことを伝える。
 カーリダーサとガウリはそれぞれがっかりする。同時に仕事面でも良くない出来事が起こり、両者は鬱々とした日々を送る。他方、若いナヴィーンとメーガナの関係は順調に進展する。
 ところが、どんよりとした日も長くは続かないもので、カーリダーサは同僚のアーシャ(Aishwarya)に励まされ、気持ちが晴れる。彼は今度こそ本当にガウリに会う決意をし、彼女に電話して会う約束をする。それを知ったナヴィーンは叔父を裏切った罪悪感から家を出ることにする。メーガナのほうもガウリに対する後ろめたさから家を出ることにする。ところが、カーリダーサがナヴィーンを駅まで送る途上で、二人はメーガナと、さらにはガウリと鉢合わせしてしまう、、、。

◆ ざっくりしたコメント
・南インド映画ファンの方ならご存知だと思うが、本3言語作品は、タミル語版とテルグ語版で評価が芳しくなく、興行的にも苦戦したのに対し、カンナダ語版のみ評価が高く、ヒットしているという珍現象が起きている。私も、公開5週目なので映画館はがらがらだろうと高をくくっていたら、満席で、一番前の席しか空いていなかった。

・見比べてはいないのだが、本3言語作は内容的にはほぼ同じはずなので、作品としての巧拙が評価・興行成績に結び付いたわけではないだろう。おそらく、群として存在する観客の好み・期待という点で、タミル人とテルグ人の場合は微妙に合っておらず、逆にカンナダ人の場合はフィットしたのだろうと思う。この辺を分析したら面白いと思うが、困難なことなので、やめておく。

・ただ、私の経験による直感から言わせてもらうと、カンナダ版の【Oggarane】は確かにカンナダ人の好むテイストで、ヒットしても不思議ではない。

・そう断言する理由は、1つは本作の「カワユさ」だ。オリジナルの【Salt N' Pepper】は渋さの立った作品で、主役ペア(ラールとシュウェータ・メーノーン演じる)の人物像もやや偏屈なほうに傾いていたが、カンナダ版はより他愛のない、ほのぼのとしたドラマに仕立てられている。「カンナダ人は『カワユい』のがお好き」というのはよく感じることだが、本作でもこのテイストが受けたのかもしれない。

・もう1点は、本作の音楽的流麗さだ。マエストロによる音楽・BGMは素晴らしいのだが、これがカンナダ人をターゲットにして作曲したのでは?と思えるものなのだ(これも他言語版を見ていないので、確言はできないが)。私は、テルグ人はビジュアルを好む「目」派、カンナダ人は台詞とメロディアスな音楽を好む「耳」派だと思っているのだが、
【Mungaru Male】(06)や【Aa Dinagalu】(07)、【Sanju Weds Geetha】(11)など、作品全体としてはどうかなぁと思えるものでも、音楽が良い映画はヒットしている。本作も耳からヒットした可能性はある。

・なんであれ、プラカーシュ・ラージが挑戦した3言語版のうち、カンナダ版のみヒットしたということで、やっぱり彼はカンナダ人なんだなと再認識した。

・本作はストーリー的にはオリジナルに忠実にリメイクされている。違いはといえば、若い二人(テージャスとサムユクタ・ホラナード演じる)の展開がオリジナルに比べて簡略化されているのがある。これは、プラカーシュ・ラージ監督がオリジナルのシーンを冗長だと感じたというより、経験の浅いテージャスとサムユクタに「3言語」の台詞を言わせる負担を軽減する狙いがあったのかもしれない。

・【Salt N' Pepper】では、せっかくの「グルメ」のテーマが後半ですっかり消えているという批判があったが、本作でも同じことだった。この点、プラカーシュ・ラージ監督にはひと工夫してほしかったのだが、、、。

・【Salt N' Pepper】で登場人物たちが美味そうに食べていた割には、日本人鑑賞者から「まずそ〜」と甚だ評判の悪かった「ジョアンのレインボー・ケーキ」は、本作でもしっかり取り上げられていた。こうなると一度は食ってみたいぞ。

・また、【Salt N' Pepper】にあった部族民のエピソードは本作でも維持されている。オリジナルを見たときは意図が分からなかったが、本作を見て、不必要なエピソードでもないことが分かった。

・3言語版を比較すれば、何か面白いことが発見できそうだが、とにかく観ていないので、ノーコメント。

・ヒロインのガウリとその周辺の人物(メーガナや美容師)はケーララ系の人と設定されていたようで、カンナダ語にマラヤーラム語を交えて喋っていたし、ガウリは母が作ってくれたドーサ(クッティ・ドーサ)を思い出し、ケーララ料理のレストランに電話している。どうしてそう設定したかは分からないが、ケーララ系の人がカンナダ映画の声優を職業とするのは不自然だと思った。

・題名の「Oggarane」というのは、レモンライスなどのライス物やカリーを作る際に、始めに料理に応じて玉ネギやチリ、マスタードシードなどを油で炒めるが、その炒めた素材をカンナダ語ではオッガラネと言うらしい(例えば、写真下のようなもの)。ちなみに、カンナダ語のテレビチャンネルで「Oggarane Dabbi」という料理番組をやっているので、インド料理に関心のある方は覗いてみてください(YouTubeにも上がっている)。

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◆ 演技陣へのコメント
・プラカーシュ・ラージ(カーリダーサ役) ★★★★☆
 コメント省略。
 (写真下:マンムーティが乗るとカッコよく見えるロイヤルエンフィールドも、プラカっさんが乗ると、業務用バイクに見えるぞ。)

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・スネーハ(ガウリ役) ★★★★☆
 36歳のハイミスをやるにはスネーハはちょっと若すぎたかな。この役は初めにタッブーにお声が掛かったらしいが、タッブーのほうが適役だったに違いない。しかし、スネーハも非常に上手く、可愛く演じていたので、4つ星贈呈。

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・テージャス(ナヴィーン役) ★★★☆☆
 素性がよく分からない俳優だが、Wikipediaにリンク付けされているバンガロール出身の人物ではない。こちらのインタビュー記事によると、ハイダラーバード出身の新人のようだ。本作での印象は悪くない。マルチプレックス向けの映画に使われそうだ。

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・サムユクタ・ホラナード(メーガナ役) ★★★☆☆
 この人はお母さま女優としてカンナダ映画によく出演しているスダー・ベラワーディの娘。特に目を引く美女というわけでもないのに私が注目しているわけは、以前、【Puttakkana Highway】(11)を観に行った際に、映画館で私と同じ列に彼女が両親と座っており、びっくりして「あっ」と声を上げてしまったら、向こうもまさかこんな所にモンゴロイドが現れると思わなかったらしく、「あっ」と返してしまい、次の瞬間、気まずい笑いに変わった、という出来事があって以来、彼女のことを支持することにしている。あまり出演作もないが、デビュー作の【Lifeu Ishtene】(11)は地味にヒットした。
 (写真下:サムユクタと母のスダー・ベラワーディ。左はお婆ちゃんらしい。)

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・アチュート・クマール(料理人)、マンディヤ・ラメーシュ(カーリダーサの友人)、ウールワシ(美容師)、アイシュワリヤー(カーリダーサの同僚)ら脇役たちも良かった。美容院のスタッフにオカマちゃんがいて、妙に存在感があった。

◆ テクニカル面・その他(覚書)
・音楽 : イライヤラージャー ★★★★☆
 ことカンナダ版に関する限り、マエストロの音楽はうまくムード作りをしていた。

・撮影 : プリータ ★★★☆☆
 撮影は良かったと思う。このプリータというカメラマンも知らない人だが、新人で、どうも女性らしい。

・意表だったのは、物語中、何度か飲酒シーンがあったのだが、現れるはずの警告が出てこなかった。

◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★★☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 7月6日(日),公開第5週目
・映画館 : INOX (Jayanagar),15:20のショー
・満席率 : 満席
 

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