カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Aryan】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2014/08/26 21:09   >>

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 本作をここで紹介したかった理由は3つ。1つ目は、本作が「スポーツ物」であること。2つ目は、カンナダのベテラン監督だったD・ラージェンドラ・バーブの遺作であること。3つ目は、政治活動と女優業の間で揺れるラミャのとにかく純正ヒロイン作品であること。

 スポーツを題材としたインド映画は近年では1ジャンルとして確立した感があり、来月にはプリヤンカー・チョープラー主演の凄そうな【Mary Kom】が控えており、さらに勢いを増しそうである。その傾向は南インド映画界にもあることは本ブログでも報告してきたが、その流れの1つとして本カンナダ作品もチェックしておくべきだと思った。本作で取り上げられたスポーツは陸上のトラック競技。いかにも地味そうだが、ボリウッド作品では【Paan Singh Tomar】(10)と【Bhaag Milkha Bhaag】(13)の秀作がある。なお、ヒンディー映画に同名の【Aryan】(06)というボクシング物があるが、それと本作は全く関係がない。
 (写真上:カルナータカの名を胸に、パーで疾走するラミャさん。)

 D・ラージェンドラ・バーブは、80年代後半から90年代を通してカンナダ映画界のエース監督だった人。さすがに21世紀に入ってからは古風な映画の作り手と認識されるようになってしまったが、私も【Preethse】(00)や【Bindaas】(08)、【Bombaat】(08)など、いくつか映画館で鑑賞しているので、亡くなったとあっては名残り惜しい。なお、ラージェンドラ・バーブは本作を半分ぐらい撮ったところで他界してしまったようだが、その後は俳優兼監督のグルダットが引き継いで、完成まで漕ぎ着けている。
 (写真下:故ラージェンドラ・バーブ監督。)

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【Aryan】 (2014 : Kannada)
物語・脚本・台詞・監督 : D. Rajendra Babu & Chi Guru Dutt
出演 : Shivarajkumar, Ramya, Raghu Mukherjee, Sarath Babu, Archana Gupta, Sumithra, Bullet Prakash
音楽 : Jassie Gift
撮影 : Chandrashekar
編集 : P.R. Soundar Raj
制作 : Dhruv Das

題名の意味 : (主人公の名前)
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ドラマ(スポーツ)
公 開 日 : 8月1日(金)
上映時間 : 1時間58分

◆ あらすじ
 陸上競技コーチのアーリヤン(Shivarajkumar)は、シンガポールのスレンドラ・パーティル(Raghu Mukherjee)が経営するスポーツ学校で働くため、当地に赴任する。
 アーリヤンには忘れようにも忘れられない痛恨の過去があった。それはシュウェータ(Ramya)との一件であった。シュウェータはアーリヤンの教え子であると同時に、結婚を前提として交際する仲でもあった。彼女はインド国体・2007年大会の400メートル走で金メダルを獲得する。だが、その後のドーピング検査で「アナボリック・ステロイド」の使用が判明し、メダル剥奪と2年間の競技活動停止処分が下される。シュウェータは身に覚えのないことだと抗議するが、アーリヤンは何もできない。それで、大会で2位だったハムサ(Archana Gupta)に金メダルが行くことになるが、かねてよりアーリヤンとハムサの仲を疑っていたシュウェータは憤り、アーリヤンと別れることにする。
 アーリヤンはシンガポールのヒンドゥー寺院でシュウェータを目撃する。さらに、スレンドラ・パーティルの家に招待され、驚くことになる。シュウェータはスレンドラの妻だったからである。シュウェータは今もアーリヤンのことを憎んでいたが、アーリヤンは彼女に、ドーピングの一件は実はシュウェータの父(Sarath Babu)がアーリヤンとシュウェータの仲を引き裂くための策略だったことを告げる。
 その後、アーリヤンはスレンドラと酒を酌み交わし、スレンドラからシュウェータとの結婚生活が特に愛情のないものだったと告げられる。それからほどなく、スレンドラは交通事故死してしまう。
 アーリヤンは寡婦となったシュウェータに対し、ドーピング事件の汚名を晴らすためにもう一度競技生活に戻り、金メダルを目指すことを提案する。シュウェータはそれを受け入れ、インドに戻る、、、。

◆ ざっくりしたコメント
・一時代築いた監督の遺作とあって、悪くは言いたくないが、心を鬼にして言うと、出来はかなり悪い。脚本的には「?」の山だし、数場面を除いて、良い部分はほとんどなかった。ラニングタイムが2時間しかないことも考え併せると、途中から監督が変わった悪影響が出ているのかもしれない。

・とにかく、何を言いたい/見せたいのかがよく分からなかった。物語開始時は「スポーツ・ドーピング」の問題を扱ったものかと期待したが、そうではなかった(大体、シュウェータはドーピングをしていない)。シュウェータへの陰謀が社会的な圧力(カースト差別や性差別等)によるものなら、一つのメッセージとなるが、それもそうではなく、単に父親の私的な思惑によるものだった。終盤はスポ根的展開になるのだが、それも大きく盛り上げることなく、あっさり終えている。クライマックスの陸上大会でパキスタン人のライバルが登場し、ここで「インド万歳!」になるのかと思いきや、そんなこともなかった。

・じゃあ、何が残るのかと言えば、結局「師弟愛」の美しさを描きたかったのかな、ということになる。アーリヤンとシュウェータは師弟関係にあると同時に恋愛関係にもあったが、一度その関係が壊れた後に、再び師弟愛で結び付けている。この師弟愛は恋愛感情抜きの一段昇華された形になっており、物語の結末で(シュウェータの夫のスレンドラが死亡したにもかかわらず)アーリヤンとシュウェータを結婚という形で結び付けなかったのは正解だろう。おかげで、どこか清々しい雰囲気のうちに映画を終えることができている(これは本作の救い)。

・インド映画は「突然歌って踊り出す」とよく言われるが、本作には「突然アクションが始まる」というのが加わる。映画全体は割とシリアスなタッチのドラマだっただけに、この無理からアクションは興ざめした。ただし、マウンテンバイクを使ったアクション・シーンは視覚的には面白かった。

・アーリヤンがシンガポールのゲストハウスの朝食にイドゥリ・ワダが出されたのを見て、「おお、外国でイドゥリ・ワダが食べられるとは思わなかった!」と感動するシーンがあったが、今どきこんなシーンを入れるか。

・エンディング・ロールはメイキング映像を流すというありがちなものだったが、本作の場合は故ラージェンドラ・バーブ監督を偲ぶという意味も加わり、良かった。

◆ 演技陣へのコメント
・シヴァラージクマール(アーリヤン役) ★★★☆☆
 堅実に演じているが、どうもこの人はどんな役をやっても「良いオジサン」になってしまうのが辛いところだ。たかだか地方映画スターのシヴァンナより元国会議員のラミャのほうが貫録があるように見えてしまったのはいかがなものかと。

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・ラミャ(シュウェータ役) ★★★☆☆
 ラミャはかつて「寒ブリ」のようにパンパンに脂肪が乗っていた時期があり、その印象から彼女に陸上ランナーの役ができるのか疑問だったが、ある程度まで体を絞っていた。しかも、昔スポーツをやっていたらしく、走る姿は確かに不細工ではなかった。今や政治のほうに重心を置いているが、演技は好きなようで、楽しそうに演じているのが分かった。女優を続けるべきだと思う。今回は自分でアフレコもしている。

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・ラグ・ムカルジー(スレンドラ・パーティル役) ★★★☆☆
 カンナダ映画界には珍しいタイプの長身・男前俳優ということで期待もされたが、この程度の脇役が精一杯か。

・アルチャナー・グプター(ハムサ役)
 気の毒としか言いようのない役だった。

・故ラージェンドラ・バーブ監督の奥さんスミトラがアーリヤンの母親役で出ている。あと、サラット・バーブも出ていたが、名優にはふさわしくない役回りだった。

・スディープが声の出演をしているらしいが、気付かなかった。ちなみに、クレジットでは「Abhinaya Chakravarthy, Kiccha Sudeepa」と、主演のシヴァラージクマールより長い冠タイトルが付いていた。

◆ テクニカル面・その他(覚書)
・音楽 : ジェシー・ギフト ★★★☆☆
 割と良かったが、1曲目ではクイーンの‘We Will Rock You’をあっさりパクッていた。

・撮影 : チャンドラシェーカル ★★★☆☆

◆ 完成度 : ★★☆☆☆
◆ 満足度 : ★★☆☆☆
◆ 必見度 : ★★☆☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 8月23日(土),公開第4週目
・映画館 : Menaka,10:30のショー
・満席率 : 1割以下

 (オマケ画像:写真下左が監督を引き継いだグルダット氏。)

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