カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Anukshanam】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2014/09/16 21:40   >>

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 嫌な話だと思わないでいただきたいが、南インドで日常的に野菜主体の食生活を(意に反して)続けていると、血の滴り落ちるような肉料理を食べたくなることがある。それは映画に対する欲求にも反映され、時おり、駄作でもいいから、肉の匂い、血の香りのする作品を無性に観たくなるときがある。幸い南インド映画の場合、アクション物やホラー物、ソシオファンタジー物など、噴血肉塊累累な作品に事欠かないので、適度に欲求を充たせてはいる。

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 最近もそんな気分でいたら、うってつけの映画が公開された。
 ラーム・ゴーパール・ヴァルマ監督のクライム・スリラー、、、と来れば、背徳の「血のかほり」を感じません?

【Anukshanam】 (2014 : Telugu)
監督 : Ram Gopal Varma
出演 : Manchu Vishnu, Revathi, Surya, Madhu Shalini, Tejaswi Madivada, Supreet, Shravan, Kota Srinivasa Rao, Brahmanandam, Navadeep, Sana
撮影 : Nani Chamidisetty
編集 : Kamal R, Santosh Bammidi
制作 : Manchu Vishnu

題名の意味 : 止むことなく
映倫認証 : A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : スリラー
公 開 日 : 9月13日(土)
上映時間 : 1時間44分

◆ あらすじ
 ハイダラーバードのとある夜更けに一人の若い女性がタクシーに乗り込む。運転手のシーターラーム(Surya)は辺鄙な所で車を停め、その女を殺害する。
 この殺人事件の捜査には警視副総監のガウタム(Vishnu)が当たることになる。まず被害者の携帯通話記録から恋人のワルンが拘束されるが、さらに似た手口による女性の惨殺体が発見され、それにはワルンは無関係だったため、警察は別の犯人による連続殺人と断定する。
 若い女性を狙った殺人事件はその後も続け様に起きたため、テレビレポーターのアーシャー(Madhu Shalini)は番組内で警察とガウタムを激しく非難する。ここにアメリカでサイコキラーの行動科学を修めた心理学者のシャイラージャー(Revathi)が現れ、ガウタムを補佐することになる。シャイラージャーは、犯人は愉しみのために殺人を繰り返していると指摘する。
 そのとおり、犯人のシーターラームは死体発見現場で警官やマスコミ、市民が騒いでいるのを見て愉しみ、事件を報道するニュースや新聞は残さず見ていた。エスカレートしたシーターラームは殺害した女の切断頭部を警察署のガウタム宛てに宅配便で送り付ける。しかし、この件はシャイラージャーの提言でマスコミには秘匿にされる。この一件が全く報道されないのに苛ついたシーターラームは、生首切断動画をユーチューブに公開する。
 シーターラームの魔の手は内務大臣(Kota Srinivasa Rao)の娘やテレビレポーターのアーシャーにまで及ぶ。誘拐されたアーシャーは殺されてしまうが、彼女の携帯シグナルから警察はシーターラームの居場所を特定し、一旦は拘束することに成功する。しかし、ガウタムのへまで取り逃がしてしまう、、、。

・その他の登場人物 : ガウタムの妻サティヤ(Tejaswi Madivada),シーターラームの母(Sana),シャイラージャーの兄(Brahmanandam)

◆ ざっくりしたコメント
・愉しみのために若い女性を次々と殺害し、それでパニックに陥る人々を見て悦ぶという、身の毛もよだつようなサイコキラーの話だった。殺しの方法も様々なら、そのために道具を選ぶ金属音も冷たい。しかも、犯人はその様子を録画するのだが、ビデオカメラが故障すれば、殺しの作業を中断してまでわざわざ新しいのを買いに行く執着心。この辺はRGV監督、切れていた。

・「血のかほり」云々は冗談として、RGV監督作品にしては久々にレビューの評価が良かったので、観ることにした。しかし、私が見たところ、本作の出来は良くない。レビューのレビューはしたくないが、高評価を与えている評者は、本作が通常のテルグ・マサラ映画ではなく、ハリウッド映画ふうに作られている点を評価している。確かに本作は、取り上げたテーマ、描き方など、ハリウッド映画っぽいが、それで「良い映画」となるなら、テルグ映画100年の歴史が泣くというものだ。

・インド映画の評者は、いい加減「歌も踊りもない映画」を良い映画とする幻想から解放されてほしい。なるほど、「ストーリーもメッセージもなく、あるのは歌と踊りとアクションとコメディーの連鎖」という映画に苦言を呈するのは分からなくもないが、しかし本作の場合、歌も踊りもアクションもコメディーもない上に、ストーリーもないぞ(つまり、何もない)。メッセージそのものは悪くないが、提示の仕方に映画的な工夫がない。そんな映画を良い映画と言うお方は、もうインド映画を観なくてもよろしい。

・ただ、RGV監督が感性的に描き出そうとした「怖さ」の感覚は評価したい。本作はスタイル的にアメリカ映画の真似事をしているかもしれないが、内容的には海の彼方で起き得る出来事と済ますことはできず、今やインドでも実際にあり得ると思えるほど現実味がある。インドでもスリンダル・コーリーオート・シャンカルモーハン・クマールラーマン・ラーガヴウメーシュ・レッディなど、サイコキラー、連続殺人鬼、連続レイプ殺人鬼が実在し、今後も現れない保証は全くないからである。

・そうした恐怖に対してRGV監督は、生活様式の変化の問題(例えば、夜更けに女性が一人歩きするようになった)、治安当局の認識・理解の低さ、また、こうしたサイコキラーには犯行へと駆る背景(例えば、幼少期に受けた心的外傷)があり、科学的な対処の道がないわけではないことを指摘している。しかし、そうした主張も台詞の形でさらりと述べられただけで、映画としての面白さがなかった。この点、類作のタミル映画【Nadunisi Naaygal】(11)のほうが良くできている。

・RGV監督の作品はたいていそうだが、本作も前半は面白いのに、後半で失速する。前半では実在しそうで不気味に見えた犯人シーターラームが、後半では内務大臣の娘やテレビレポーターや高位警官の妻などに次々と害を及ぼすスーパー悪役になってしまい、せっかくのリアリティーが飛んでしまったのが残念だ。

・ところで、本作は配給者をウェブサイト上のオークションで決めるというシステムを採り、それが話題の1つになっていた。どうしてこういう手法を採ったのかは知らないが、このことが作品の内容や完成度に影響を及ぼしているということはなさそう。

・ラーム・ゴーパール・ヴァルマといえば、90年代には確かにクリエイティブな映画を作るエース監督だったはずだが、近ごろでは実験的な作品を撮っているように見えて、しかしギャング物でもテロ物でもホラー物でも時代遅れになっている感が否めない。観客動員も悪く、本作でも私が観たショーは客が6人しかいなかった。ただ、こういう客の来そうにない実験的映画を堂々と一番館でかけられるのもRGVのネームバリューがあったればこそで、同監督の存在価値はなおあるようだ。

◆ 演技陣へのコメント
・ヴィシュヌ(ガウタム役) ★★★☆☆
 警官髭をたくわえ、気合いを入れて演じていたが、贔屓目に見てもDCPには見えなかった(まさか「DCPがこれだからハイダラーバードの治安が保たれんのだ」という風刺ではあるまい)。この人は俳優とプロデューサーの二刀流はやめて、どちらか一方に専念したほうがいいと思う。
 (写真下:スプリートとシュラーヴァンが部下の警官役だった。)

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・レーヴァティ(シャイラージャー役) ★★★☆☆
 レーヴァティとRGV監督の関係はよく知らないが、過去に何度か一緒に仕事をしているので(【Gaayam】(93)や【Nishabd】(07)など)、信頼関係はあるのだろう。アメリカ帰りの心理学者の役を全く問題なく演じているが、ノーメイクでやる必要はなかったと思う。

・スーリヤ(シーターラーム役) ★★★☆☆
 スーリヤといっても、当然タミル・スターのスーリヤのことではなく、無名の新人。サイコキラーの役をそれらしく上手く演じていたが、おそらく本作限定になるだろう。

・マドゥ・シャリニ(アーシャー役) ★★★☆☆
 テレビレポーターの役を好演している。タミル映画【Avan - Ivan】(11)やカンナダ映画【Naagavalli】(12)よりかは思い切った演技をしている。「ラーム・サーの映画に出られて光栄です。頑張りますっ!」といった喜びがひしひし伝わるものだったが、結局は「被害者」役だった。
 (写真下:こうして見ると、ヴィシュヌって、背が高かったんだ。)

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・テージャスウィ・マディワーダ(サティヤ役)
 どこかで見た顔だと思っていたら、【Seethamma Vakitlo Sirimalle Chettu】(13)と【Manam】(14)に出ていたらしい(しかし、具体的に思い出せない)。ほとんどカメオ出演だった(【Ice Cream】で共演したナワディープもカメオ出演している)。
 (写真下:本作のスチルではありません。)

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◆ テクニカル面・その他(覚書)
・音楽 : ★★☆☆☆
 音楽シーンは1つもない(よって、ダンスもない)。そのせいか、音楽監督の名前が挙がっていない。ただし、BGMはしっかりあって、やっぱりうるさ気味だったので、もう少しボリュームを下げてほしかった。

・撮影 : Nani Chamidisetty ★★★☆☆
 カメラワークは良かったが、映像の画質はあまり良くなかった。もしかして、これも一眼デジカメで撮った?

◆ 完成度 : ★★☆☆☆
◆ 満足度 : ★★☆☆☆
◆ 必見度 : ★★☆☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 9月13日(土),公開第1週目
・映画館 : Vision Cinemas,12:30のショー
・満席率 : 1割以下
 

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