カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Govindudu Andarivadele】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2014/10/08 21:10   >>

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 トリウッドのクリシュナ・ヴァムシー監督は好きな監督だし、評価もしているので、いろいろ観ているつもりだったが、フィルモグラフィーをチェックしたら、あまり観ておらず、しかも最後に観たのが5年前の【Sasirekha Parinayam】だというのに気付いて、ショックだった。クリシュナ・ヴァムシー監督の作品というのは、アクション物にしても家族物にしても神様物にしても、一風変わったところがあり、哲学的な深みも感じるので、気に入っているのだが、この新作も「おお、ラーム・チャランと農村の取り合わせとは、さすがクリシュナ・ヴァムシー!」とか思いながら観に行った。

【Govindudu Andarivadele】 (2014 : Telugu)
物語・脚本・監督 : Krishna Vamsi
出演 : Ram Charan, Prakash Raj, Kajal Aggarwal, Srikanth, Kamalinee Mukherjee, Jayasudha, Rahman, Rao Ramesh, Kota Srinivasa Rao, Adarsh Balakrishna, Posani Krishna Murali, Pragathi, Satya Krishnan, Vennela Kishore, M.S. Narayana, Paruchuri Venkateswara Rao, Harsha Vardhan, Ravi Prakash, Srinivas Avasarala, Bhanu Sri Mehra, その他
音楽 : Yuvan Shankar Raja
撮影 : Sameer Reddy
編集 : Naveen Nuli
制作 : Bandla Ganesh

題名の意味 : ゴーヴィンダはみんなのために
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ドラマ
公 開 日 : 10月1日(水)
上映時間 : 2時間40分

◆ あらすじ
 チャンドラシェーカル(Rahman)はロンドン在住の著名な医師で、折りしも大学の学部長に選ばれんとするところだったが、ライバルに出し抜かれてしまう。落胆したチャンドラシェーカルは、これも若いときに犯した罪の報いと、息子のアビラーム(Ram Charan)に過去を話す。
 ・・・
 時は25年前。バララージュ(Prakash Raj)は田舎の名士で、チャンドラシェーカルとバンガーリの2人の息子がいた。バララージュは、勉強嫌いで遊び呆けているバンガーリを諦め、優秀な兄のチャンドラシェーカルに医者になるよう教育を受けさせていた。バララージュは村人のために病院を建設し、息子をそこで働かせるつもりだったが、当のチャンドラシェーカルは外国でのキャリアアップを望み、父の意向に背く。激怒したバララージュはチャンドラシェーカルを勘当し、以来、二人は連絡を取ることさえなかった。
 ・・・
 この話を聞いたアビラームは、父と祖父を和解させようと、即座にインドに飛ぶ。
 アビラームは一族の住む田舎に赴き、素性は隠して、農業の実習をしたいという理由でバララージュに近付く。彼は祖母のベイビー(Jayasudha)や不良おじのバンガーリ(Srikanth)、いとこのチトラ(Kamalinee Mukherjee)らと対面し、すぐに家族の面々に気に入られるようになる。
 この村にバララージュの孫娘サティヤ(Kajal Aggarwal)が帰省して来る。実はアビラームは偶然ハイダラーバードのクラブで泥酔して踊っていたサティヤを目撃しており、スマホで写真も撮っていた。彼はその写真をネタにして、サティヤをいじり倒す。
 そんなある日、バララージュはチトラの結婚式を執り行おうとする。それを知ったバンガーリがチトラを誘拐しようとするが、アビラームがそれを阻止し、バンガーリは警察に逮捕される。この時の騒動でバララージュが倒れ、入院してしまう。またアビラームもスマホをサティヤに奪われ、彼女にバララージュの孫だという素性がばれてしまい、逆にいじられる。しかも悪いことに、チトラとバンガーリは実は愛し合っている仲で、二人の結婚を阻んでいたのは祖父だったという事実も知る。
 アビラームは退院したバララージュに村の病院を再建し、医師としてロンドンにいる自分の父を招きたいと提案する。バララージュもそれを受け入れる。
 ところで、この村にはバララージュの義兄(Kota Srinivasa Rao)とその息子のラージェンドラ(Rao Ramesh)および孫のバーチ(Adarsh Balakrishna)も住んでおり、バララージュを鬱陶しく思っていた。邪な彼らは村にビール工場を建設する計画を持ち掛けるが、バララージュに却下されていた。彼らはバララージュと相性の悪いバンガーリに目を付け、逮捕されていた彼を保釈させ、自分たちの味方に付ける。
 病院の再建計画が進み、チャンドラシェーカルはロンドンから医療設備や医薬品をインドに送る。しかし、その荷物がバンガーリに横取りされてしまう。アビラームはなんとかそれを取り戻すが、この時、バンガーリに自分の素性を明かすことになる。
 さて、アビラームとサティヤは相思相愛の仲になっていたが、バララージュはサティヤにお見合いをさせ、結婚相手を決めてしまう。これを知ったバンガーリが乱入し、サティヤとアビラームを結婚させるようバララージュに迫る。この時、バララージュにもアビラームの素性が知れてしまう。激怒したバララージュはアビラームを屋敷から追い出す。
 失意のうちに屋敷を去るアビラームだが、皮肉なことに、それは父チャンドラシェーカルがインドに到着し、村に向かうところだった。さらに悪いことに、かねてから敵対心を抱いていたバーチがアビラームに襲い掛かる、、、。

◆ ざっくりしたコメント
・上でクリシュナ・ヴァムシー監督のことを一風変わった映画の作り手みたいな言い方をしたが、本作はむしろオーソドックスな作りの家族映画で、それがかえって新鮮に感じられた。

・日本人がインド映画のある部分を分かりにくく感じたり、理解に躓いたりするのは、つまりはインド人が日本人とは違った感性や価値観を持っているからであるが、インド人が大切にしている観念で、今の日本人には感情移入しにくいものの一つに「家族の紐帯」というのがある。ここで改めて言う必要もないほどだが、インド人は本当に家族の結び付きを大切にする。もちろん日本人にとっても家族は大切なものだが、インド人のその意識は桁違いで、重い。たんに「家族は仲違いせず、愛し合うべきだ」といった道徳的な次元ではない。この理由には、社会保障制度が未発達なインドにあっては、頼るべきは結局家族(身内)しかいないというのもあるだろうが、やはりコミュニティー(カースト)を維持する最小単位としての家族の役割が重要視されているというのもあるだろう。カーストの問題となると、インド人(ヒンドゥー教徒のみとは言わない)にとってそれは世界の理法と関係していることなので、家族/一族の中に不和が起きているという事態は、彼らにとっては宇宙の天体の運行が正しく進んでいない(極端な話、明日の朝になっても陽が昇らないかもしれない)というぐらいの、あってはならぬものと感じられているのかもしれない。

・もちろん、都市部では核家族というのも珍しくなくなっているが、しかし日本の家族観とはずいぶん様子が違い、インドの場合は、一時的に親と子の家族が別々に暮らしていても、将来的には同居する(子が田舎に帰るか、親を自分の所に呼び寄せるかする)希望を持っている人が多い。こうした守旧的な家族の在り方はまだ当分続くと私は見ている。

・そんなわけで、インドでは家族/一族の紐帯を大切にする映画がコンスタントに作られる。昔はもっとよく作られたと思うが、今でも、テルグ映画に限っても、【Brindaavanam】(10)や【Attarintiki Daaredi】(13)、【Konchem Istam Konchem Kastam】(09)、【Mirchi】(13)などが作られ、やや変則的になるが【Manam】(14)も加えてもいいだろう。内容やスタイルはずいぶん違っても、心に感じる情緒は昔の作品も今の作品もほとんど変わらない。本作も【Seetharamaiah Gari Manavaralu】(91)の翻案だと言われているので、YouTubeでチェックしてみたが、受ける印象は両作品ともほとんど同じだった。つまりは、過去の類作と同様、本作もインド人にとって本質的で濃密な価値観を描いた、重要な作品であることが分かる。

・ただ、作品の完成度を考えてしまうと、ストーリー展開はかなり無理があったし、ほのぼのとした気分でファミリー・ドラマを楽しんでいたら、一転して流血アクション映画風になったりと、ムラがあったし、音楽シーンの挿入も良かったとは言えない。

・それでも、農村の情景を徹底して明るく、カラフルに捉えたタッチはフレッシュだったし、クリシュナ・ヴァムシー監督の腕の良さか、ありがちなセンチメンタルなシーンでもいくつかは泣けた。近ごろ珍しく結婚式の場面で終わっているというのも良い。テルグの大衆は間違いなく好みそうなので、興業的には成功するだろう。

◆ 演技陣へのコメント
・ラーム・チャラン(アビラーム役) ★★★★☆
 私はラーム・チャランがいまいち苦手で、これまでも辛口のコメントをしてきたが、本作で初めて感銘を受けた。いや、本作でも芝居に深みはないし、セリフは言えないし、ダンスも上手そうに見えてその実微妙にリズムに合っていなかったりするのだが、何と言うか、初めてスターとしてのカリスマ性を感じた。これがチャランの得意としそうなアクション物ではなく、比較的地味な家族物で感じられたというのは意外だった。
 例えば、目など透き通って、キラキラ輝いているのだが、それが特に心理的な意味があるわけでなく、単純に人間離れした美しさで、喩えて言うとラーマやアルジュナなどの英雄神の目のよう。私は常々インド映画の「スター」(インド映画に限る)というのは、カッコいいとか、演技が上手いとか、存在感があるとか、そういったことだけではダメで、もう一要素が必要だと思っている。その一要素とは「目出度い」ということで、寺院のダルシャンでチラッと神様を見たときに感じる気持ちと同じく、一瞬で銀幕を明るくしてくれる「目出度さ」がインド映画スターのカリスマ性だと思っている。こういったものは頭で考えたり練習したりして身に付くものではなく、また天性の「素質」といったものとも違うようだ(分かりにくいので例示すると、例えばボリウッド俳優のイルファーン・カーンは、俳優としての素質を備え、鍛え上げられた演技スキルもあるのだが、彼の芝居を見て、感心こそすれ、目出度さを感じるかどうか、ということ)。
 本作で初めてラーム・チャランに「目出度さ」を感じたわけが、これもクリシュナ・ヴァムシー監督のマジックかな。

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・プラカーシュ・ラージ(バララージュ役) ★★★☆☆
 得意とする村の名士の頑固家長の役だが、石頭度はやや低く、お茶目なところもあった。伝統武術の棒術(Karrasamuというらしい)も無難にこなしていた。参考に、2人の息子を演じたラフマーン、シュリーカーントとはだいたい同世代なのだが。

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・カージャル・アガルワール(サティヤ役) ★★★☆☆
 どこかのレビューに「ちょっと太った」と書いてあったが、確かに脂肪はさらに付いていて、アビラーム(Ram Charan)にいいように摘まれていた。数年後はナミターだろう。

・カマリニー・ムカルジー(チトラ役) ★★☆☆☆
 結局はそんなに印象に残る役でもなく、ファンとしては残念だった。
 (写真下:カージャルとカマリン。)

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・シュリーカーント(バンガーリ役) ★★★☆☆
 前半が終わった時点では、どうしてこの人がこんなつまらん役をやっているのか不思議だったが、後半である程度納得した。
 (写真下:なぜか女児にもてもてのバンガーリおじさん。)

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・ジャヤスダー(ベイビー役) ★★★☆☆
 エレガントだった。なぜかプラカーシュ・ラージと相性が良い。

◆ テクニカル面・その他(覚書)
・音楽 : ユワン・シャンカル・ラージャー ★★★★☆
 意外なことに、ヒマだったのか、タミルのユワンくんが音楽を担当している。しかも、かなり良かった。

・撮影 : サミール・レッディ ★★★★☆
 カラフルで、美しい映像だった。
 物語の舞台になった村がどこか分からなかったが、撮影は南タミルの各所(ポッラーチ、ラーメーシュワラム、ナーガルコーイル、カライクディなど)で行われた模様。一族の住む屋敷はハイダラーバード郊外に建てられたセットの模様。冒頭のロンドンのシーンはロンドンで、音楽シーンの1つにヨルダンのペトラ遺跡が使われていた。

・前回紹介したタミル映画【Madras】では主人公(カールティ演じる)はサッカー選手で、サッカーがアクションのモチーフになっていたが、本作のアビラームはラグビー。同じくそれがアクションにも使われていた。偶然だろうけど、インド映画人の発想が分かって、面白い。

・本作の題名「Govindudu Andarivadele」は、チランジーヴィ主演の【Andarivaadu】(05)の挿入歌の1節から取られたらしいが、当方は未確認。

◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★★★☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 10月4日(土),公開第1週目
・映画館 : Gopalan Cinemas (RR Nagar),16:00のショー
・満席率 : 満席
 

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