カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Karthikeya】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2014/10/29 22:39   >>

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 去年、新人監督スディール・ヴァルマの手になる【Swamy Ra Ra】(13)が好評を博し、トリウッドに新風を吹き込んだ。私的には、映画自体も面白かったが、ニキルとスワーティという中途半端な二人の主演で成功したことにフレッシュなものを感じた。そのお二方が再び主役ペアを組むということで、かなり前から話題となっていたのがこの【Karthikeya】。やっと公開となった。
 監督はチャンドゥー・モンデーティ(カナ表記は当てずっぽう)という人で、やはり新人らしい。ニキルとスワーティの他に、同じく【Swamy Ra Ra】に出ていたプラヴィーンとサティヤも名を連ねているので、同作品のパート2かとも噂されたが、そういうことではない。ただ、トレイラーを見る限り、同じくヒンドゥー寺院を巡る事柄がモチーフとなっているようだった。
 題名の「Karthikeya」はヒンドゥー教の軍神として知られるスカンダの別名だが、南インドでは「スブラマニヤ」や「ムルガン」という名前で呼ばれることも多い。
 (写真下:本作に出てきたカールティケーヤ神像。)

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【Karthikeya】 (2014 : Telugu)
物語・脚本・台詞・監督 : Chandoo Mondeti
出演 : Nikhil, Swathi, Praveen, Rao Ramesh, Tanikella Bharani, Kishore, Thulasi, Jayaprakash, Satya, Jogi Naidu, Raja Ravindra, Melkote, その他
音楽 : Sekhar Chandra
撮影 : Karthik Ghattamaneni
編集 : Karthika Srinivas
制作 : Venkata Srinivas Boggaram

題名の意味 : カールティケーヤ(ヒンドゥー教の神の名前)
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : スリラー
公 開 日 : 10月24日(金)
上映時間 : 2時間4分

◆ あらすじ
 スブラマニヤプラムにあるスブラマニヤスワーミ寺院は、不吉な死亡事件が相次ぎ、1年前から閉鎖されていた。その事件の謎を調査していた宗教遺産管理局の役人シャンカル(Raja Ravindra)もコブラに噛まれて死亡する。
 ハイダラーバードの医科大学で学ぶカールティク・クマーラスワーミ(Nikhil)は、神も迷信も信じない合理主義者で、友人たちが怪奇現象として恐れていた出来事を科学的に解明していた。彼はある日、同じ大学で学ぶ歯科学部生のワッリ(Swathi)と出会い、一目惚れする。しかしワッリはカールティクにすげない態度を取る。またカールティクは、実習中のいたずらが教授を怒らせ、罰として友人たちと医療キャンプでのボランティア活動に送られる。行き先はスブラマニヤプラムだった。
 スブラマニヤプラムに着いたカールティクたちは、村の人々から不吉な寺院の死亡事件のことを知らされる。また、カールティクたちのゲストハウスは以前に死亡したシャンカルが宿泊していた所で、彼らはここで気味の悪い出来事を体験することになる。
 しかし、カールティクにとってありがたいことに、ワッリもこの医療キャンプに参加していた。彼女は実はこの村の出身で、父(Tanikella Bharani)はスブラマニヤスワーミ寺院の僧侶の一人だった。カールティクはここでワッリの気を惹くことに成功する。
 警官のラージェーシュ(Kishore)も寺院を巡る事件を捜査していた。彼は宗教遺産管理局の局長プリトヴィラージ(Rao Ramesh)から許可をもらった上で捜査を進め、シャンカルの友人から話を聞く。その人物からはシャンカルが書いた本を渡される。ところが、そのラージェーシュも自動車事故で死亡してしまう。カールティクはたまたまその事故現場にいたため、シャンカルの書いた本を手にすることになる。寺院の謎に関心のあった彼はそれを読む。しかし、それは寺院建立の経緯を書いたものだったが、途中で絶筆となっていた。
 キャンプやゲストハウスでの奇妙な出来事は続くが、カールティクは1匹のコブラが身近に出没することに気付く。彼は運良くそのコブラを捕獲することに成功し、それを爬虫類学者(Jayaprakash)に調べてもらう。そこで意外な事実が明らかになる。学者の話では、そのコブラは特定の人間、つまりカールティクを襲うように訓練されたものだと言うのだ。
 カールティクは本の未完の部分を知るために、ワッリの父と共にタンジャーウールの高僧に会いに行き、スブラマニヤスワーミ寺院にまつわるさらに詳しい情報を得る。
 カールティクは友人が撮りためていた写真やビデオを詳しく調べ、その結果、奇妙な出来事のいくつかにこのゲストハウスの管理人(Jogi Naidu)が関与していることを突き止める。だが、逃走しようとしたこの管理人も死んでしまう。
 カールティクはいよいよ寺院ミステリーのトリックを暴くため、閉鎖された寺院内に侵入する決意をする。それはこの寺院の本尊カールティケーヤ神が神威を発現するとされるカールティカ月の満月の晩だった、、、。

◆ ざっくりしたコメント
・【Swamy Ra Ra】が軽妙なタッチの世俗的クライム・コメディーだったのに対し、本作はもやもやっとした不透明感の残る宗教的ホラー・サスペンスだった。

・ヒンドゥー教の宗教的要素を下敷きにサスペンスを組み立てるという、脚本のアイデアは面白い。新人監督らしく、伝統的なマサラ映画のスタイルには付かず、音楽はあってもミュージカルはなし、仰々しいコメディーもアクションもなし、明らかにマルチプレックスの観客をターゲットとした作品だった。ホラー・サスペンスという内容自体テルグ映画では珍しいし、語り口も新鮮だったりするので、レビューの評価は高めになっている。

・しかし、どうかなぁ、映画作品としての出来を問うと、割とつまらなかったりする。日本人が観たなら、映画というよりは結局テレビのサスペンス・ドラマと同じじゃないか、で終わりそうな気がする。

・クライマックスの「謎」の解明がちゃちなのが致命的だ。それより、「謎」を作り出した犯人の動機や手口がそもそも単純だった。クライマックスまではけっこううまく緊張感を繋いでいたので、最後で「あれっ?」となってしまうのが残念だ。

・しかし、映画的にはつまらなくとも、監督がサスペンス映画の形を借りて言わんとしたテーマは興味深い。それは「宗教と科学」、「迷信と宗教的真理」の関係ということだと思う。私の観察だと、インドの若者は理系の大学で学ぶような人でも素朴に各自の宗教を信じている人がほとんどだが、中には西洋的な科学主義の影響で無神論を表明する人もいるし、その反動でゴリゴリの宗教至上主義者になっている人もいる。ちょっとした精神的混乱期にあるとも言えるが、それに対して本作は、迷信というのは合理的に解明できる(本作のストーリーでは、寺院の「謎」も私欲に走った犯人の行動として説明できる)、しかし、それだけでは割り切れない部分も残り、それに答えるのが宗教的信念ではないか、という中道的な解答を提示している。

・主人公カールティクの体験がまさにそうで、彼は無神論者、科学主義者を強く標榜しながらも、非合理的な出来事に動かされたりもする(例えば、ワッリに不思議な力があると感じたり)。そして、クライマックスで迷信めいた寺院の謎を合理的に解明することに成功するが、かえって理性では説明できないような体験もし、いくつかの符号から、自分が謎を解いた行為そのものが、実は寺院閉鎖という事態を解消するためにカールティケーヤ神が導いた結果にすぎないのではないか、という「神意」にも思い至り、しかしそれを完全には認め切れないところで映画が終わっている。

・「カールティク」という名前自体がカールティケーヤ神から取られたものだが、そのとおり、本作はケールティケーヤ神のモチーフで統一されている。クライマックスでカールティクが寺院に潜入する日は「カールティカ月の満月の日(Karthika Poornima)」となっていたが、カールティカ月はヒンドゥー暦の第8番目の月(グレゴリオ暦の10月から11月ごろ)で、名前のとおり、カールティケーヤ神にちなんだ月とされている。実は有名なディーパーワリはカールティカ月の新月の日(第1日目)を中心に祝われるものなので、カールティカ・プールニマはそれより2週間ほど後になる。本作が地味な映画ながらディーパーワリに公開されたのは、やはり狙ってのことだと思う。

◆ 演技陣へのコメント
・ニキル(カールティク役) ★★★☆☆
 トリウッド史上最も地味な主演級俳優の一人だと思うが、悪漢をばったばったと薙ぎ倒すわけでも、派手に歌って踊ってするわけでもなく、等身大のスマートな医科大生の役なので、特に問題は感じなかった。
 (写真下:向かって右にいるのは友人役のプラヴィーン。)

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・スワーティ(ワッリ役) ★★★☆☆
 スワーティの個性が生かされる役ではなかったが、何であれその辺にいそうな大学生をそつなく演じている。各レビューではスワーティの体重増加について言及しているが、まぁ、彼女に誕生パーティーのケーキを食べ過ぎるなと言っても無駄だろう。それにしても、歯並びの悪いスワーティに歯科大生の役を当てるのは、カージャル・アガルワールに古典ダンスが得意な女性の役を当てる(【Mr. Perfect】)のと同じぐらい皮肉なことだと思った。
 (写真下:父親役のタニケッラ・バラニと。)

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・脇役では、タニケッラ・バラニ、ラーウ・ラメーシュ、トゥラシ(カールティクの母親役)が目立っている。カンナダ俳優のキショールはこの顔で出て来たので、どんな凄いコップなのかと期待したが、殺され役だった(下)。

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◆ テクニカル面・その他(覚書)
・音楽 : シェーカル・チャンドラ ★★★☆☆
 サスペンスであれホラーであれ、遠慮なくミュージカル・シーンを入れたがる南インド映画だが、本作ではストイックなまでに地味な音楽の使い方だった。しかし、質は悪くない。1曲目の音楽シーンでちらっと【Swamy Ra Ra】をパロった場面あり。

・撮影 : カールティク・ガッタマネーニ ★★★☆☆

・ロケ地が気に掛かる。ウィキペディアにはヴィシャーカパトナム県のアラク渓谷やゴーダーワリ県サーマルコータのクマーララーマ寺院の名が挙がっているが、こちらの記事には「クンバコーナムにある寺院の近く」と書かれてある。いずれにせよ、ムードは良かった。

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◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★☆☆☆
◆ 必見度 : ★★☆☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 10月25日(土),公開第1週目
・映画館 : INOX (JP Nagar),10:00のショー
・満席率 : 5割
 

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
私は予告編見ててっきりソシオファンタジーかと思ってましたが(確かそう書いてた記事もあった)ホラーでしたか。川縁さんのシノプシス読む限り随分と面白そうなんですがね。残念です。
メタ坊
2014/10/30 18:13
確かにソシオファンタジーっぽい要素はあるんですが、監督はそれを意図して作ったのではないと思います。ちょっと自信ないですが。
あまり面白いとは思わなかったのですが、今のところ客は集めているようですね。
カーヴェリ
2014/10/31 10:09

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