カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Belli】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2014/11/05 00:56   >>

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 カンナダ・スターのシヴァラージクマールは、以前は「ハットトリック・ヒーロー」という通称で呼ばれていたが、近ごろでは「サンダルウッド・キング」や「サンダルウッドのSRK」と、何やらシャールク・カーンを意識した呼び方が目立つようになり、ファンの間で一層の箔付けが行われているようだ。一部の批評家からは「カンナダ映画界で最も要らない俳優」との烙印を押されたりもするが、30年近くずっとトップ俳優であり続けてきたことや、カンナダ映画史に残る秀作をいくつかものにしている事実は無視できない。私の評価は微妙に揺れているが、彼にしかできない役柄、彼にしか出せない味(くさ味)があることは重々承知している。私の知人(インド人ソフトウェア技術者)にもシヴァンナの忠実なファンがおり、私が「でも、あの人の映画はつまらないでしょう?」と聞くと、「はい、つまらないんですが、それでも観たいんです。それで観て、『やっぱりつまらなかったなぁ』と思うと、安心するんです」という答えが返ってきたことがある。何であれ「ファンに安心感を与える」というのも、インド映画スターの要件の1つだろう。

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 さて、そのシヴァラージクマールの新作がこの【Belli】。監督は【Mussanjemaatu】(08)で有名なマヘーシュ。前作の【Aenoo Onthara】(10)は当たらなかっただけに、シヴァ兄と組んで、ヒットを狙いたいところだ。

【Belli】 (2014 : Kannada)
物語・脚本・台詞・監督 : Mussanje Mahesh
出演 : Shivarajkumar, Kriti Kharbanda, Vinod Prabhakar, Venkatesh Prasad, Prashanth, Deepak, Sudharani, Padma Vasanthi, Adi Lokesh, Srinivasa Murthy, Ramesh Bhat, Mico Nagaraj, Harish Roy, Lokesh, Chi Guru Dutt, その他
音楽 : V. Sridhar
撮影 : K.S. Chandrashekar
編集 : Deepu S. Kumar
制作 : H.R. Rajesh

題名の意味 : 銀
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : アクション/ドラマ
公 開 日 : 10月31日(金)
上映時間 : 2時間27分

◆ あらすじ
 作家のニディ(Sudharani)は友人の僧侶アシュワト(Venkatesh Prasad)が寺院の門前にやって来る狂人にいつもプラサードを施しているのに気付き、理由を問う。アシュワトは最初はごまかすが、やむをえず真実を伝える。実はあの狂人は「ベッリ」ことバサワラージ(Shivarajkumar)で、暗黒街で知られたラウディーであったこと、自分も今でこそ僧侶をしているが、以前はベッリの仲間で、「プージャーリ」というニックネームのラウディーであったこと、さらに仲間としてバーブ(Vinod Prabhakar)、ラフィー(Deepak)、シュリーニワース(Prashanth)の名前を教える。ニディはベッリらの所業について本を書こうと、アシュワトの家で見た写真を基に、バーブとラフィーを見つけて、話を聞く。
 ・・・
 バサワラージは母(Padma Vasanthi)、妹と3人でマドゥワナハッリ村に暮らしていた。家は貧しく、妹もポリオ患者だったため、大学出のバサワラージに全てがかかっていた。彼は就職活動のためにバンガロールに出るが、うまく行かず、かえって映画館でダフ屋のヤクザに絡まれ、大立ち回りを演じてしまう。ところが、この様子を見ていた同郷のマフィアの男がバサワラージの腕っ節に惚れ、彼をマフィアに勧誘する。バサワラージは家族を支えるお金が必要だったため、腹を決める。彼はバーブ、プージャーリ(アシュワト)、ラフィー、シュリーニワースの案内で有力なマフィアのドン(Chi Guru Dutt)の下で働くことになる。
 このマフィアは6人組のラウディーと敵対していたが、その中には大臣(Srinivasa Murthy)と結託した悪徳政治家マンジャ(Mico Nagaraj)も含まれていた。ある日、バサワラージらが故郷のマハデーシュワ寺院にお参りに行った際に、ドンが部下の裏切りに遭い、敵の6人組に殺害されてしまう。その後、このマフィアの新たなリーダーとなったバサワラージは、復讐としてまず3人を片付ける。その中には政治家マンジャも含まれていたため、警察のプラディープ・クマールはバサワラージらの逮捕に執念を燃やす。この頃、バサワラージは「ベッリ」という通称で有名になっていた。
 そんな中で、バサワラージは教師で慈善活動家のスネーハー(Kriti Kharbanda)と出会い、一目惚れする。スネーハーもバサワラージがずっと身障者学校に寄付を行っていることを知り、彼を愛するようになり、結婚を決意する。だが、バサワラージはスネーハーが警官プラディープ・クマールの妹だと知り、彼女のプロポーズを拒否する。ちょうどその時、敵の3人に襲撃され、バサワラージは重傷を負って病院に運ばれる。
 脳のダメージからバサワラージは精神(記憶)障害者となる。プラディープ・クマールはエンカウンターの許可をもらい、バサワラージを射殺しようとするが、仏心から彼を逃がしてやる、、、。
 ・・・
 ニディは、今やインド行政官(IAS officer)になったスネーハーの式典会場に足を運ぶ。そこでシュリーニワースを目撃するが、話を聞けずに、逃げられる。この会場にたまたまバサワラージもやって来る。彼はスピーカーから聞こえるスネーハーの声で記憶を取り戻し、正気に戻るが、彼女に会うことを自粛する。
 ニディは警官プラディープ・クマールからも話を聞く。プラディープはスネーハーの式典のビデオ映像から会場にバサワラージがいたこと、そして正気に戻っていることを把握していた。そして、なおもバサワラージに未練を抱いている妹のために、一度だけ彼に会わせてやることにする、、、。

◆ ざっくりしたコメント
・これまた評価の難しい映画だ。インド映画の際立った固有性を表現するために「インド映画は映画ではない」と言う人もいるが、それに倣って、カンナダ映画のどこか浮いた特徴を表すために、私はときどき「カンナダ映画はインド映画ではない」と言いたくなることがある。本作もカンナダ映画の尺度で見れば、割とよくできていると思えるが、かといって、カンナダ映画に馴染んでいない方にはお勧めできないものを感じる。

・非カンナダ人にとって、何が躓きになりそうかと言えば、やっぱり重たい「家族センチメント」と説教くさい「モラル志向」だろう。本作は母子、兄妹のセンチメントが重要なテーマになっており、特に母子センチは【Jogi】(05)にそっくり。モラルという点では、本作全体が反ラウディーのメッセージとなっているが、これも【Jogi】または【Gooli】(08)を連想させるほど因果応報的で、痛いものだ。もう一つ、本作には身体障害者への温かい眼差しというのもあるが、これは【Mussanjemaatu】にもあったテーマなので、マヘーシュ監督の基本立場なのだろう。

・このように、本作はテーマ的に【Jogi】や【Mussanjemaatu】の焼き直しとも言えるが、形の上では【Om】(95)やタミル映画の【Sethu】(99)と【Ghajini】(05)からパクった節がある。特に精神障害を負ってからのバサワラージ(Shivarajkumar)のイメージが【Sethu】に似すぎているというのが辛い。

・しかし、そういうパクリっぽい点を大目に見れば、本作はスピーディーな緊張感のある筋運びで、回想シーンの入れ方も上手い(物語の7割が回想シーン)。アクション・シーンと音楽シーンもカンナダ映画にしてはリッチに作られている。

・しかも、ストーリーにはヒネリが加えられている。普通、この種のアクション映画はクライマックスに主人公の大規模なアクション・シーンがあり、敵を倒して終わり、となるものだが、本作のクライマックス・アクションを担当するのはバサワラージではなく、仲間の4人(バーブ、プージャーリ、ラフィー、シュリーニワース)が担っている。これは廃人同様となった兄貴分のために、一時は離散していた仲間4人が集結し、敵を討つというもので、忠臣蔵みたいな味わいだった。

・そして、バサワラージのほうにはそれとは別個の静的なクライマックスが用意されており、こちらでは己の業を悟った男が現実を受け入れ、じっと耐え忍ぶという姿が描かれている。これを演じたシヴァラージクマールにヒロイズムが感じられれば、本作は泣ける。

・欠点を言えば、本作には笑いの要素が全くないということだ。真面目すぎる嫌いがあり、気楽に楽しめないというのは興行的に致命的かもしれない。

・題名の「Belli」は「銀」という意味で、主人公バサワラージの通称ともなっているが、これは物質の銀というより、銀光りするもの、つまり刃物やバサワラージの使っていた食器を表すものだと思う。ラウディー映画らしく、本作もあちこちでナタがシンボリックに使われていたが、バサワラージの持つ5枚歯のナタにはのけ反った。

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◆ 演技陣へのコメント
・シヴァラージクマール(バサワラージ役) ★★★☆☆
 誠実な田舎の孝行息子、勇猛なラウディー、精神障害者と、一役だが三相を演じている。それぞれシヴァンナらしく演じているが、精神障害者の演技には賛否が分かれると思う。
 (写真下:シヴァンナもなぁ、こういうポーズをしなければ好い男なのだが。)

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・クリーティ・カルバンダー(スネーハー役) ★★★☆☆
 テルグ映画【Alaa.. Modalaindi】(11)や【Teen Maar】(11)に出演した頃はテルグ女優を目指しているようだったが、結局あちらでは芽が出ず、カンナダ落ち。しかし、【Googly】(13)のヒットのおかげで、カンナダではヒロインの地位を確立した模様。で、なんでカンナダかと思っていたら、どうも彼女はバンガロールで育った人らしい。

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・赤穂浪士みたいな4人衆を演じたのは写真トップの左からディーパク(ラフィー役)、ヴィノード・プラバーカル(バーブ役)、(シヴァンナを飛ばして)プラシャーント(シュリーニワース役)、ウェンカテーシュ・プラサード(プージャーリ役)。このうちヴィノード・プラバーカルは、先日【Sahodarara Savaal】(77)で紹介したタイガー・プラバーカルの息子で、主演作品もある。

・ベテラン女優のスダーラーニー(ニディ役)が久々に良い役回りをしている。ところで、本作にはグルダットもドン役で出ているが、シヴァラージクマールとスダーラーニーとグルダットは1986年公開の【Anand】でデビューした同期生。たぶんカンナダの観客はそんなことも脳裏に置きながら観ているのだろうと思う。

◆ テクニカル面・その他(覚書)
・音楽 : V・シュリーダル ★★★☆☆
 悪くはない。マハデーシュワラ寺院(Male Mahadeshwara Swamy Temple)をモチーフにした音楽シーンが賑やかで良かった。時々ゴッドファーザーのテーマが使われていたが、やらずもがなだと思った。

・撮影 : K・S・チャンドラシェーカル ★★★☆☆

・本作はラージクマール家仕様の映画だと言える。主人公バサワラージの出身村はコッレーガラ(Kollegal)にあるマドゥワナハッリ(Maduvanahalli)と設定されていたが、この地方は実はラージクマール家の出身地でもある。バサワラージがダフ屋に絡まれる映画館に掛かっていたのはプニート・ラージクマールの【Jackie】(10)だった。

◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★☆☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 11月1日(土),公開第1週目
・映画館 : INOX (Jayanagar),10:00のショー
・満席率 : 1割
 

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【Raate】 (Kannada)
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カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2015/03/24 21:23

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