カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Lingaa】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2015/01/14 02:44   >>

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 すっかり出涸らしみたいになってしまったが、やはり映画館で観ておかないと。というのも、【Kaththi】(14)に続いてタミル映画の超話題作で「水問題」をテーマにしているということで、カルナータカ州在住の身として関心を向けざるを得なかったからである。周知のとおり、カルナータカ州とタミル・ナードゥ州との間には長年のカーヴェーリ川取水問題があり、【Kaththi】でも暗にカルナータカ州批判を感じただけに、K・S・ラヴィクマールのオヤジもちくちくやってるのかなと、チェックしたかった。

【Lingaa】 (2014 : Tamil)
物語 : Pon Kumaran
脚本・台詞・監督 : K.S. Ravikumar
出演 : Rajnikanth, Anushka Shetty, Sonakshi Sinha, Jagapati Babu, K. Viswanath, Ilavarasu, Vijayakumar, Radha Ravi, R. Sundarrajan, Santhanam, Karunakaran, Ponvannan, Dev Gill, Jayaprakash, Manobala, Brahmanandam, Madhan Bob, William Orendorff, Lauren J. Irwin, その他
音楽 : A.R. Rahman
美術 : Sabu Cyril
撮影 : R. Rathnavelu
編集 : Samjith Mhd
制作 : Rockline Venkatesh

題名の意味 : リンガー(主人公の名前)
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ドラマ/アクション
公 開 日 : 12月12日(金)
上映時間 : 2時間55分

《 あらすじ 》
 タミル・ナードゥ州のソーレイユール村にイギリス統治時代に建造されたダムがあったが、当地の国会議員ナーガブーシャン(Jagapati Babu)は私腹を肥やすためにダムの建て直しを企んでいた。だが政府の役人による検査ではダムの強度は十分で、再建の必要はなかった。ナーガブーシャンはその事実が報告されるのを嫌い、その役人(Ponvannan)を殺害してしまう。ダムの脇には長らく閉鎖されているヒンドゥー寺院があったが、役人はいまわの際に村の長(K. Viswanath)に「寺院の門扉を開けろ」と言って息を引き取る。
 村の長は寺院を再開する決意をするが、それはこのダムと寺院を建立したマハーラージャー、リンゲーシュワランの子孫によってのみ開扉されるべきであった。そこで長の孫娘ラクシュミー(Anushka Shetty)はリンゲーシュワランの孫リンガー(Rajnikanth)を探し出し、接触する。
 リンガーは宝飾品を狙うコソ泥だった。ラクシュミーはリンガーに村に来るよう誘うが、子孫に一銭も残さなかった祖父を憎んでいたリンガーは拒否する。だがリンガーは自らの泥棒事件で逮捕の危機が迫ったため、避難のためラクシュミーと共にソーレイユール村へ行く。
 リンガーはその寺院の本尊シヴァリンガが高価な貴石でできていることを知り、夜中に寺院に侵入して、それを盗んでずらかろうとするが、村人たちに知られ、とっさにプージャーをしているふりをする。奇しくも門扉が再開された形となり、村の長はリンガーや村人たちに対し、私財を投げ打ってまで村人のためにダムを建造したマハーラージャー、リンゲーシュワラン(Rajnikanth)の偉業を語って聞かせる、、、。

・その他の登場人物 : 村娘バーラティ(Sonakshi Sinha),バーラティの父(Radha Ravi),サーミピッライ(Ilavarasu),徴税官(William Orendorff),徴税官の妻(Lauren J. Irwin),裏切り者(R. Sundarrajan),フリーダム・ファイター(Dev Gill)

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★★☆
◎ 物 語 : ★★☆☆☆
◎ 脚 本 : ★★☆☆☆
・泣いた。いや、感動の涙じゃなくて、ラジニも老いた、K・S・ラヴィクマール監督も終わった、という嘆きだ。

・こういう書き方をすると、ダイハードなラジニ・ファン、【Muthu】(95)や【Padayappa】(99)を愛しているファンの癇に障るかもしれないが、私もラジニカーントとKSRをリスペクトしている一人。だからこそ言わせてもらうと、本作はラジニ映画、KSR映画としては凡作だ。面白くないし、何の驚きもなかった。

・本作のラジニカーントに金の輝きはない。それでも銀の輝きは放っているが、それまで。タミルの衆もそろそろラジニにスーパースターを期待するのは止め、けれんみなくインド人の心を演じられる役者としての道を歩ませてやるべきだ。

【Dasavathaaram】(08)を最後にあまり良い作品を作っていないラヴィクマールも、これだけのスター、有能なスタッフ、潤沢な予算を使って、この手の映画しか撮れないなら、もう監督は廃業し、その面構えを活かして性格俳優にでも転向すべきだ。

・本作はアクション映画とのみ見なされるべきではないが、アクション映画として観るならば、こんなにだらだらと緊張感のないアクション映画も珍しい。大規模なアクション・シーンは2度しかなかったと思うが、どちらもアイデア的にはKSR&ラジニ作品らしく面白いのに、出来は悪い。

・緊張感がないといえば、テーマ的にも脚本の緩さが目立つ。「水問題」を描くに当たって、【Kaththi】でムルガダース監督はまるで詰め将棋のように着々と詰めを行っており、結果的に緊張感のあるドラマとなっていたが、本作の水問題の描き方にはどこか真剣味が感じられない。

・というか、本作のテーマは「水」じゃなく、ダム建設を通してインドの民が一つになるという、ナショナリズムの表現だったのだろう。イギリス人徴税官の妨害に屈せず、建設中のダムの上に立ち、インド国旗(当時はまだ国旗ではなかったが)を背に、リンゲーシュワランが村人に「宗教もカーストもない。インド人は一つじゃないか」とスピーチする場面でのラジニのカリスマはさすがで、ここは萌えポイントだった。

・さらに良い点を書いておくと、リンゲーシュワランが村を追われる場面と、貧者となったリンゲーシュワランが知らずにやって来た村人たちに食事を供する場面は泣き(感涙)ポイントだった。

・本作が緊張感を欠く原因として、もう1点、悪役のまずさがあると思う。というより、本作に悪役と呼べる登場人物がいたか? 

・さて、ラヴィクマール監督が水問題でカルナータカ州をちくちくやっているかどうかという点では、私が見る限り、そういうことはないようだった。むしろ、プロデューサーはカンナダ映画界のロックライン・ウェンカテーシュだし、冒頭にアンバリーシュとスディープに対する謝辞があったり、カルナータカ州内で大規模にロケが行われていたりと、むしろ友好的なムードだったと思う。

◎ 配 役 : ★★★☆☆
◎ 演 技
・ラジニカーント(リンガー/ラージャー・リンゲーシュワラン役) ★★★★☆
 とは言っても、雄大なダムの上で仁王立ちになり、「インド人」に号令できる千両役者はラジニだけなんです。
 (写真下:このサツマイモとラジニの場面は私のお気に入り。)

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・アヌシュカー・シェッティ(ラクシュミー役) ★★☆☆☆
 精彩を欠く。地味に役をこなしているという感じだった。
 (写真下:ワロタ。)

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・ソーナークシー・シンハー(バーラティ役) ★★★★☆
 素晴らしい。本作でラジニと並んで作品に活力を吹き込んでいた。表情が良い。二の腕の脂肪も良い。こんなジューシーな村娘のいる地がなんで水不足かという疑問はさて置くとしよう。

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・ジャガパティ・バーブ(ナーガブーシャン役) ★★☆☆☆
 ジャガパティ・バーブが悪いというよりも、これだけ出番が少ないと、何もできない。

・私的にツボだったのは、フリーダム・ファイター役のデーヴ・ギル。私はかねてからこの人は悪役向きではなく、善い兄ちゃん役向きだと思っていた。

◎ 音 楽 : ★★☆☆☆
◎ 音 効 : ★★★☆☆
◎ ダンス : ★★★☆☆
・もの凄い豪華なセットでラジニやヒロインたちの妄想ソングを作っていたが、いくつかの曲ではあまり効果を上げていなかった。シャンカル監督の【Sivaji - The Boss】(07)や【Enthiran】(10)とコンセプトはそう変わらないと思うのだが、この差はなぜ?

◎ アクション : ★★★☆☆
◎ 美 術 : ★★★★☆
◎ 衣 装 : ★★★☆☆
◎ 撮 影 : ★★★☆☆
◎ 特殊効果 : ★★★☆☆
◎ 編 集 : ★★☆☆☆
・撮影に使われたダムはカルナータカ州にあるLinganamakki Damらしい。この近くにあるJog Fallsもロケに使われている。

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◎ その他(覚書)
・実際にあるのなら、あのルドラクシャ型USBメモリーがほしい。

◆ 完成度 : ★★☆☆☆
◆ 満足度 : ★★☆☆☆
◆ 必見度 : ★★★☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 1月10日(土),公開第5週目
・映画館 : PVR Rajajinagar,12:45のショー
・満席率 : 1割
・場内沸き度 : ★☆☆☆☆ (意外なことだが、マルチプレックスでこの入りなら。)
 

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
あのダムの話はケーララとの州境にあって(建築は英領時代)老朽化していつ倒壊しても不思議ないのでケーララ側がやいのやいの言ってもジャヤ様がこれはタミルの財産だと主張して放置し続けたせいで最高裁判決まで行ったなんちゃらダム(名前忘れた)のことをアリュージョンしてるのではありませんか。確かマラヤーラム語映画でダムが崩壊してイドゥッキまで水没というのが制作されたはず。私のマラヤーリーの友人はみなそれでジャヤ様のことを怒ってますよ。
メタ坊
2015/01/14 10:15
なるほど、そういう背景があったんですね。カルナータカちくちくではなかったんですね。
そのなんちゃらダムについては、ラルさんのこの映画でも風刺されていたように記憶しています。
http://en.wikipedia.org/wiki/Peruchazhi
 
カーヴェリ
2015/01/14 14:53

>貧者となったリンゲーシュワランが知らずにやって来た村人たちに食事を供する場面

私もここで泣きました。
粗末な家に住むラジャの姿をまのあたりにして揃って眼に涙を浮かべる村のおっちゃん達。
このようなおっちゃん達を観るのがわたくしの生き甲斐です。

フリーダム・ファイターと列車で格闘するシーンは、かつてのバリバリだったラジニさんのアクションで観たかったです。
あいや〜
2015/01/15 12:41
>このようなおっちゃん達を観るのがわたくしの生き甲斐です。

安心してください。インド映画で仮にラジニ・タイプのスターが生滅したとしても、インドのおっちゃん達は不滅です。
 
カーヴェリ
2015/01/15 14:22

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