カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Pisaasu】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2015/01/15 22:19   >>

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 私はミシュキン監督のファンであり、彼のことをインドで五指に入るほどの有能な映画監督だと思っているのだが(これは適当に言っているだけなので、他の4人は誰かと聞かないこと)、過去6作のうち映画館で観たのは【Yuddham Sei】(11)と【Mugamoodi】(12)だけだった。どうも巡り合わせが悪いようで、この新作【Pisaasu】も私の一時帰国中に公開され、鑑賞が危ぶまれたが、何とかバンガロールで持ちこたえてくれた。観逃したら観逃したで、DVDで鑑賞すればいいようなものだが、緻密な映像と音楽が売りのこのお方の作品はやはり映画館の大画面、大音響で味わっておきたい。
 ミシュキン監督はクライム・スリラーを得意としているようだが、【Mugamoodi】ではスーパーヒーロー物に挑戦し、異色なそれをものにしている(ヒットしなかったが)。そして今回はホラー映画ということで、きっとホラーがミシュキン的に料理されているのだろうと、期待が膨らんだ。

【Pisaasu】 (2014 : Tamil)
物語・脚本・監督 : Mysskin
出演 : Naga, Prayaga Martin, Radha Ravi, Kalyani Natarajan, Raj Kumar, Ashvath, Harish Uthaman, Kani Kusruti, Nimmy Raphael, その他
音楽 : Arrol Corelli
撮影 : Ravi Roy
編集 : Gopinath
制作 : Bala

題名の意味 : 亡霊
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ホラー
公 開 日 : 12月19日(金)
上映時間 : 1時間54分

《 あらすじ 》
 若きバイオリニストのシッダールト(Naga)は、ある日、轢き逃げ事故で路上に倒れている若い女性(Prayaga Martin)を見つけ、三輪タクシーで病院に運ぶ。その甲斐なく女性は死んでしまうが、彼女は息を引き取るまでシッダールトの手をつかんで放さなかった。シッダールトは落ちていた彼女の片方のサンダルを自分のアパートに持ち帰る。
 その頃よりシッダールトのアパートで奇怪な現象が始まる。彼は部屋に幽霊が取り憑いていると疑い、霊媒師(Nimmy Raphael)を呼ぶが、果たして霊媒師の振る舞いから、自分が病院に運んだ女性の幽霊がいると確信する。
 そんな時に田舎からシッダールトの母(Kalyani Natarajan)が部屋にやって来る。彼は母に幽霊の話をするが、もちろん信じてもらえない。だが、その母も事故で怪我を負い、病院に送られる。
 いたたまれなくなったシッダールトは、女性の身元を突き止めようと、一緒に病院へ行った三輪タクシーの運転手から情報を得、ある家に辿り着く。そこは製氷屋を営む家だったが、間違いなく女性の実家だった。しかし、彼は彼女の父親(Radha Ravi)と話すことができなかった。
 なおも怪奇現象が続き、恐怖に駆られたシッダールトは、女性の父に会って事情を話し、アパートまで来てもらう。父の話では、娘の名前はバワーニだった。父はなおも半信半疑だったが、そこへ入院中のシッダールトの母から電話があり、事故に遭ったとき、確かに幽霊を見たと話す。その時、バワーニの亡霊が現れ、父と交流する。
 バワーニの父は娘の轢き逃げ犯人に復讐しようと考えていたが、シッダールトが犯人探しを請け負う。彼は事故現場に居合わせた人たちの目撃証言から、ついに犯人に至り着くが、、。

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★★☆
◎ 物 語 : ★★★★☆
◎ 脚 本 : ★★★★☆
・期待どおり、ちょっと違ったホラーが出て来た。公開されていたトレイラーは見事にダミー。実際は美しく、切なく、いじらしいほどのロマンティック・ホラーだった。こういう良い映画を観た後は、ブログを書くのも楽しいなぁ。

・「ホラー映画」と言うよりは「幽霊映画」だろう。怖がらせに徹するわけでなく、純粋な情念と倫理観を追求しているように見えた。ホラー映画の先入観をいちいちひっくり返しているようにも見えるが、かといって、本作のアイデアが全く独創的というわけでもなさそう。タミル映画なら、【Eeram】(09)のような作品が似ているといえば似ている。

・本作を見ると、「善」への意志といったものを強く感じる。それは、バワーニの幽霊が現の人間に何を要求しているかということと、ミシュキン監督がストーリーに盛り込んだ轢き逃げという行為、障害者、乞食、無為な若者、仲の悪い夫婦などのエピソードから感じ取れる。

・伝統的なインド映画というのは多かれ少なかれ倫理的だと思うが、それがホラー映画になると、「幽霊」という存在が現の人間の知らない事実を知っている、何らかの超能力を持っているという点で、「神」に近いものとなり、より倫理性が高められるようだ。

・オーソドックスな「神様映画」というのはすっかり廃れてしまったが、そのスピリッツはヒーロー主体のアクション映画とホラー映画に受け継がれたのではないか? それがインドでホラー映画がブームになった一つの理由かもしれない、とも考えられる。(しかも、ホラー映画は女性を主役にしやすいという点で、より今日的だ。)

・倫理という点では、例えばカンナダ映画なら「説教」くさい表現を取るのだが、タミル映画では違っていて、シャンカル監督やムルガダース監督、ハリ監督などの作品を観れば、説教よりは「叱咤」に近いものを感じ、鑑賞後に背筋がピシッと伸びるような感覚がある。本作もそうで、そういった点でタミル映画らしい。

・本作に共感するためには次の2点で想像力を持つ必要がある。1つは、インドの保守的な女性が父、息子、兄弟、彼氏の「飲酒」と「喫煙」にいかに心を砕いているか、2つ目は、ヒンドゥー教徒等のインド人にとって、「火葬」という行為が人生においていかに重要でドラマティックなものか。一般的な日本人の感覚で見ると、誤解する。

・と、ここまでの書き方だと、本作がお堅い映画のように思われるかもしれないが、実はユーモアが効いていて、あちこちで笑える。といって、【Kanchana】(11)や【Aranmanai】(14)のようなホラー・コメディーではないのだが、本作もやっぱり「笑えるホラー」である。

◎ 配 役 : ★★★☆☆
 バワーニの父役のラーダー・ラヴィ以外、知られた俳優は出ておらず、演技面での評価は重要ではない。

◎ 演 技
・ナーガー(シッダールト役)
 新人で、バーラー監督(本作のプロデューサー)の助手をやっている人らしいのだが、詳しいことは知らない。なぜかゲゲゲの鬼太郎みたいなヘアスタイルが不気味だった。

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 しかし、前髪で顔の一部を覆うというのはミシュキン監督の好みらしい。
 (写真下:左は【Anjathe】のプラサンナー、右は【Mugamoodi】のプージャー・ヘグデ。)

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・プラヤーガー・マルティン(バワーニ役)
 別嬪さんだった。もうちょっと別嬪さんな出番を見せてほしかった。よく知らないが、この人も新人で、ケーララ人のようだ。

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・Nimmy Raphael(霊媒師役)
 ワロタ。全く知らない人だが、ケーララ出身で、古典ダンスが本業のようだ(こちら)。

◎ 音 楽 : ★★★★☆
◎ 音 効 : ★★★★☆
・どこから探してきたのか、音楽も新人のArrol Corelliという人。これが凄まじいバイオリン攻めの音楽だった。

◎ アクション : ★★★☆☆
・アクション・シーンが前半に1つあって、これが面白いアイデア。クライマックスは、【Mugamoodi】と同じく香港の梁小熊が担当しているらしい。

◎ 撮 影 : ★★★★★
◎ 特殊効果 : ★★★☆☆
◎ 編 集 : ★★★★☆
・映画ののっけからミシュキン作品らしいショットの連続だった。意味のないカットというのはほとんど見当たらなかった。ただ、前半は感性的・直感的な映像がキレていたが、後半で「犯人探し」という説明的な映像に移行したのが残念な気もする(仕方ないか)。

◎ その他(覚書)
・すっかり忘れていたが、「黄色のサリー」はなかった。

◆ 完成度 : ★★★★☆
◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★★★☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 1月11日(日),公開第4週目
・映画館 : PVR Koramangala,10:10のショー
・満席率 : 7割
・場内沸き度 : ★★★☆☆ (随所で笑いが起きていた。そしてエンディングの張り詰めた余韻。)
 

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