カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Temper】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2015/02/19 02:39   >>

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 プーリ・ジャガンナート監督、NTRジュニア主演の話題の新作は【Temper】。
 プーリ・ジャガンナート監督は【Pokiri】(06)以降、NTRジュニアは【Yamadonga】(07)以降、それぞれヒット作がなかったわけではないが、傑作/秀作というのはなかったと思う。それがこの【Temper】は評判が良く、例えばラーム・ゴーパール・ヴァルマ監督などは、NTRジュニアはシニアを超えたと言わんばかりのベタ褒め様だった。両人にとって久々の快心作かもしれず、期待が持てた。

【Temper】 (2015 : Telugu)
脚本・台詞・監督 : Puri Jagannadh
出演 : NTR Jr, Kajal Aggarwal, Prakash Raj, Posani Krishna Murali, Madhuurima, Pavitra Lokesh, Jayaprakash Reddy, Tanikella Bharani, Subbaraju, Raghu Babu, Ali, Sapthagiri, Vennela Kishore, Kota Srinivasa Rao, Surya, Kovai Sarala, Rama Prabha, Apoorva Srinivasan, Sonia Agarwal, Nora Fatehi, その他
音楽 : Anoop Rubens, Mani Sharma (BGM)
撮影 : Shyam K. Naidu
編集 : S.R. Sekhar
制作 : Bandla Ganesh

題名の意味 : 激情(←かなり意訳)
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : アクション
公 開 日 : 2月13日(金)
上映時間 : 2時間27分

《 あらすじ 》
 孤児の少年ダヤーは、警官が賄賂のお金をもらえる上、尊敬されているのを見、自分も警官になろうと志す。果たして警官になったダヤー(NTR Jr)は、志どおり腐敗警官の道を邁進していた。
 時に、ヴィシャーカパトナムのマフィア、ワルテル・ワース(Prakash Raj)は、内務大臣(Jayaprakash Reddy)に融通の利く警官を赴任させろと要求する。そこでお誂え向きの人物として、ダヤーがハイダラーバードからヴィシャーカパトナムに転勤となる。
 ダヤーは着任したその日に、密輸で逮捕されていたワルテルの弟ラヴィ、マニ、ワルン、サンディープの4人を釈放させる。そしてワルテルと懇意になり、高額の賄賂の見返りにワルテルの悪事を黙認していた。ダヤーの部下ナーラーヤナ・ムールティ(Posani Krishna Murali)はそんな上司を諌めるが、ダヤーは聞く耳を持たなかった。
 ダヤーは動物愛護家のサンヴィ(Kajal Aggarwal)と知り合い、ほどなく恋人関係となる。サンヴィの誕生日に、彼女は悪漢に誘拐されそうになる。それはダヤーが阻止するが、誘拐未遂犯はワルテルの一味で、彼らはラクシュミーという女性を誘拐し、殺害しようとしたところ、人違いでサンヴィを誘拐してしまったというわけだった。
 サンヴィはダヤーに、誕生プレゼントの代わりに、その命を狙われているラクシュミーをワルテルの魔手から守ってくれと要求する。ダヤーはそのとおりに、誘拐されそうになっていたラクシュミー(Madhuurima)を救い出す。ここでダヤーとワルテルの関係に亀裂が入る。
 ラクシュミーはダヤーに自分がワルテルに命を狙われている理由を説明する。それによると、彼女の妹ディープティ(Apoorva Srinivasan)がワルテルの一味に誘拐監禁され、レイプ殺害されたが、その犯行模様の録画を記録したCDをラクシュミーが持っているからだった。この話を聞いてダヤーは愕然とする。レイプ殺人の犯人は自分が不用意に釈放したラヴィ、マニ、ワルン、サンディープの4人であり、しかも、ラクシュミーの母(Pavitra Lokesh)が以前にディープティが行方不明になったと捜索願いに来たのに、ダヤー自身が「駆け落ちでもしたんだろ」と邪険に追い返した経緯があったからである。
 深く悔悟したダヤーは、マスコミにレイプ殺人犯の4人の名前を公表し、彼らを逮捕する。すぐさま裁判となるが、ダヤーが証拠として提出したラクシュミから預かったCDは不正にすり替えられ、犯罪の立証にはならなかった。ダヤーは裁判長(Kota Srinivasa Rao)に別の証拠を提出するから、1日だけ猶予をくれと要求し、それが認められる。しかし、ダヤーには別の確固たる証拠など何もなかったのである、、、。

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★☆☆
◎ 物 語 : ★★★☆☆
◎ 脚 本 : ★★★☆☆
・強烈な映画だった。「強烈」と言うのは、噴血屍縷々の映画という意味じゃなくて、インドの銀幕上の「神」が死滅しつつある今日、「ヒーロー」を思い出すためにはここまで気合いを入れなければならないならないのか、ここまで叫ばなければならないのかという、痛みを伴う驚きがあったという意味だ。

・インド映画というのは歴史的に「ヒロイズム」の生成を中心に発展してきたと思うが、しかし今のインドに、ヒロイズムを体現できるスターの属性としての「カリスマ」を持った俳優がどのくらいいるかというと、かなり心許ない。俳優だけじゃなく、ヒロイズムが描ける監督も少ない。

・インドのアクション映画のヒーローというのは「神の似姿」であるべきだと私は思うのだが、しかし今の南インドのアクション映画等のヒーローというのは、直接「神の似姿」ではなく、「アクション映画のヒーローの似姿」、つまり「神の似姿の似姿」、言い換えれば「コピーのコピー」(劣化コピー)のレベルで満足している。これだと、特定の献身的なファン・グループ以外の人々から広範に崇敬されることはあり得ないし、南インドのアクション映画は紋切り型だ、幼稚だと揶揄される原因ともなる。

・しかし、それが本作では、プリジャガ監督が久々に良いアイデアを考え、加えて元々カリスマを備えたスターであるNTRジュニアから実にうまくそのカリスマ性を引き出し、かなりの次元で「ヒロイズム」を描くことに成功している。そのアイデアというのが「腐敗警官が正義の警官になる物語」ということなのだが、こうやって一行でまとめると、有り難みがないなぁ。

・プリジャガ作品は、反マフィア、反腐敗政治家といった、社会悪を叩くものが多いが、もう一つの社会悪として、マフィアや腐敗政治家とつるむ悪徳警官というのがある。本作はそれに真っ向から取り組み、「警察は市民を守るもの」という、本来警察の在るべき姿を提示している。これは先日紹介したガウタム監督の【Yennai Arindhaal...】とぴったり一致するが、描き方が全く違っているのが面白い。ガウタム監督の警官物3部作は、頭から正しい(正しすぎるとも)警官を描いてみせることで警察の正義を表現しているが、本作の場合は、一人の警官ダヤーの内面的な改心と更生を通してヒーローとしての警官を表現している。

・その悔悟と変容の有様が強烈だった。ダヤーの悔悟を惹き起こす要因として残酷な集団レイプ殺人を持ってきたのは正解だろう。結果、市民に対する同情を確信犯的に切り捨て、ひたすら自己のために賄賂を取っていた利己的なダヤーが、善良な市民の一人に「オレを殴ってくれ」と叫び、レイプ殺人犯を滅するためには自分の死も厭わないようになる。この絶対的な自己犠牲の次元に立つに至って、遂にダヤーは正しい警官、市民の守護者、すなわち「神の似姿」として認められることになる。

・ただ、内容的には感服したものの、プリジャガ監督の語り口は相変わらず荒削りで、作品の完成度としてはどうかなぁと思った。いくつかの目を見張るシーン(例えば、クライマックスの死刑執行所でのアクション等)はあったが、欠点も多い(いちいち指摘しない。見れば分かる)。

・それに、どうしても「口撃戦」と言うか、「セリフ攻め」が多く、この部分は屁理屈や風刺が凝縮されているようで、観客はげらげら笑っていたが、その面白さは私にはさっぱりつかめなかった。

◎ 配 役 : ★★★☆☆
◎ 演 技
・NTRジュニア(ダヤー役) ★★★★★
 上に書いたとおり、本作のNTRジュニアのパフォーマンスは充実していた。ダヤーはジュニアの代表的キャラクターになると思う。ところで、制服萌えのお方には残念なことだが、警官役なのにジュニアは物語終盤になるまで制服を着ない。これは腐敗警官というダヤーのキャラクター表現というよりは、プリジャガ監督の警察に対するリスペクトの表明なんだろうと思う(つまり、悪徳警官である間はカーキーの制服を着せたくなかった)。
 (写真下:あまり好きな路線ではないが、筋肉も売りにしていた。)

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・カージャル・アガルワール(サンヴィ役) ★☆☆☆☆
 カージャルが悪いわけではない。プリジャガの脚本が悪い。どうせ出すなら、もっとはっきりとした見せ場を作ってやるべきだった。
 (写真下:このかじゃるたんは何をしたがっているのだろう?)

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・ポーサーニ・クリシュナ・ムラリ(ナーラーヤナ・ムールティ役) ★★★★☆
 このオヤジにはそう何度も来そうにない良い役なので、4つ星贈呈。

・プラカーシュ・ラージ(役) ★★☆☆☆
 ヘアスタイルがスッキリしていた。ジュニアや内務大臣役のジャヤプラカーシュ・レッディとの絡みは上手い。

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・マドゥリマー(ラクシュミー役) ★★★☆☆
 ヒロインという役回りではないかもしれないが、印象の良さではカージャルより上だった。

・もう一人のアガルワール、ソニア・アガルワールが検死医役でカメオ出演している。

◎ 音 楽 : ★★★☆☆
◎ BGM : ★★★☆☆
◎ ダンス : ★★★★☆
・アヌープ・ルーベンスの音楽は普通だが、音楽シーンはまずまずの出来。

・注目のジュニアのダンスは、前半は不発気味だが、後半の‘Temper’で欲求不満解消。

・しかし、前半のアイテム・ナンバー‘Ittage Rechchipodam’にはNora Fatehiというダンサーが出ていて、こいつが凄かった。しかも、このダンサーを真ん中にジュニアとプラカーシュ・ラージが一緒に踊るという場面もあり、これは見もの。

◎ アクション : ★★★★☆
◎ 衣 装 : ★☆☆☆☆
◎ 撮 影 : ★★★★☆
◎ 編 集 : ★★★☆☆
・上で書いたとおり、クライマックスのアクションのアイデアは面白い。

◎ その他(覚書)
・物語の舞台となったヴィシャーカパトナムはとんでもない無法の街というふうに描かれていたが、これが【Malli Malli Idi Rani Roju】(15)でポエティックに描かれていた所と同じだとはとても思えなかった。

◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★★★☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 2月14日(土),公開第1週目
・映画館 : INOX (Jayanagar),16:10のショー
・満席率 : 9割
・場内沸き度 : ★★★★☆ (あちこちで笑いが起きていた。)
 

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
ヴァイザグ・ロケやヴァイザグを舞台にした(極端な場合ハイダラがほとんど出てこない)映画増えてるような気がします。これもハイダラからの遷都を睨んで動きではないですかね。

テルグ映画の関係者と話すると、皆申し合わせたように「州を分割したって映画産業は何も変わらないよ」と笑い飛ばすのですが、誰も懸念をあらわにしないところが逆に裏で何か地滑りみたいなものが起りかけているのではと邪推させてしまいます。
メタ坊
2015/02/19 14:46
はい、確かに州分割の影響は何かとあると思います。
本作でもはっきりと2州という意識があって、ジュニアがハイダラーバードの警察署からヴァイザーグに転勤になるとき、「州が変わった!」、「シーマーンドラへ行く」というセリフがありました。この「州が変わった」というのは、単に「転勤になった」という意味だけでなく、暗に「旧AP州は変わったんだよ」というニュアンスもあると思います。(ちなみに、私は「シーマーンドラ」という語を初めて映画の中で聞きました。)
 
カーヴェリ
2015/02/19 17:21
ところで、よく知らないんですが、ジュニアはテランガーナ州(ハイダラーバード)からAP州に転属になるんですが、IPSでもない、州警察の警官が州をまたいで転勤になるってことがあるんでしょうかね? テランガーナとAPは今のところ特別なんでしょうかね?
 
カーヴェリ
2015/02/19 17:25

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