カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【A Day in the City】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2015/03/02 21:40   >>

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 インド屈指のIT産業都市であるベンガルールには当然ソフトウェア技術者が多く、その存在感も大きいのだが、彼らが他の一般大衆のように当たり前の映画ファンかというと、必ずしもそうではなく、インド製映画(特に地方映画)にはクールな態度を取っている者も多い。そのせいでもないと思うが、地方映画、例えばカンナダ映画の中では逆にソフトウェア技術者の存在感は小さく、茶化しの対象になることも多い。しかし、そんなIT業界にも映画に情熱を燃やす連中がいるようで、彼ら自身の手で通常の娯楽映画とは違った映画を作ってしまうこともあり、【Software Hardware Kya Yaaron】(12)のような作品も現れた。
 今回紹介する【A Day in the City】もそれに類する異色作で、関係者のほとんどが現在IT企業に勤務するアマチュアによる作品(こちら参照)。といって、オール素人というわけではなく、プロデューサーや監督はその筋の人だし、キャストの一部にもセミプロがいるようである。
 (写真下:音楽CD発表セレモニーにて。左から2人目が監督のウェンカト・バラドワージ、右から2人目がプロデューサーのC・V・シヴァシャンカルで、実はこのお二方は親子。そして真ん中には、なぜかチャレンジング・スターのダルシャンが!)

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【A Day in the City】 (2015 : Kannada)
物語・脚本・監督 : Venkat Bhardwaj
出演 : Laxman Shivashankar, Srinivas Kappanna, Vinay Shastry, Sridharan, Manohar Ramakumar, Lokesh Chandra, Mani Maran, Raj, Deepak, Lawrence, Rajesh, Vishwanath, その他
音楽 : Shiva Satya
撮影・編集 : Vishwas Avathi
制作 : C.V. Shivashankar, Shankara
公式サイト : http://adayinthecity.in/

題名の意味 : 都会のある一日
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ドラマ
公 開 日 : 2月27日(金)
上映時間 : 1時間49分

《 あらすじ 》
 とある都市で、水が3日間来ないという出来事が起きる。雨が降らず、通常のダム、貯水池が枯渇してしまったためだ。
 この事態に対し、インド行政官のダヌシュ(Laxman Shivashankar)が解決の任に当たる。彼は州首相シュリーニワース(Srinivas Kappanna)に24時間以内の解決を約束する。
 この機に乗じ、野党党首のイェーラッパが水道事業の民営化を図ろうと、アメリカの多国籍企業と通じるバクシーという男と密談を交わす。
 ダヌシュは、地図を詳細に検討した結果、街の東方に位置するホルムズ・ダムには水があり、そこから水を供給するのがベストだと考え、州首相シュリーニワースに提言する。だがそのダムは隣州にあるため、隣州州首相の承認を得る必要があった。シュリーニワースはそれに難色を示す。
 だが、野党党首の動きを知ったシュリーニワースは、この難局を首尾よく解決し、市民に水を取り戻すことが先決だと考え、隣州州首相に連絡を入れる、、、。

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★★☆
◎ 物 語 : ★★☆☆☆
◎ 脚 本 : ★★☆☆☆
・鑑賞前は漠然とIT企業で働くインド人技術者の日常をコラージュ的に描いたものかなと予想したが、そうではなく、水問題をテーマにした堂々たる社会派映画だった。「もしインドの都市で水がなくなったら、どうなる?、どうする?」というコンセプトで脚本が書かれている。舞台の都市はあえてどことは明言されていないが、ベンガルールが想定されているのは明らかだ。

・作品の出来は、脚本面でも技術面でも演技面でもアマチュアっぽいレベルで、それが独特のテイストを出していて面白く感じられる部分もあるが、甘い部分のほうが多い。

・まず、脚本が十分構造化されておらず、意図が分かりにくい。主筋は水問題解決に向けて動くインド行政官ダヌシュの活躍なのだが、これにコラージュ的にサブプロットが絡む。しかし、その散りばめられたサブプロットと主筋のバランスが悪く、両者が効果的に、説得的に絡んでいるとは言えない。

・また、映画の冒頭では、インドの都会で暮らす人々が利己的になり、モラルを失っていることに「神が怒った」という話から、「水不足」の問題へと持って行くのだが、この両者には論理的な繋がりがない。水問題は天災か人災かというと、そりゃあ、政府が必要な措置を怠っているのなら人災にもなるが、根本的に雨が降らないことにはどうにもならない。雨が降らないのを都会人のせいにされてもなぁ、、。(ただ、この「都会罪悪観」がここまでインド人の思考の前提条件になっているかと思うと、面白い。)

・映画的にうまく提示されているかどうかは別として、面白い考え、視点はいくつかあった。例えば、水がなくなると、食堂や病院が困るだけでなく、水が不可欠なヒンドゥー教の儀礼(例えば、葬式)も行えないこと。インドはコミッション社会で、社会的営為の様々な局面に手数料を取りたがる仲介屋がおり、彼らは有事を却ってビジネス好機と捉えていること。水道事業の請負を狙う多国籍企業が存在する(かもしれない)こと、等々。

・この最後の「水道事業の民営化」の問題は、かなりフィクションっぽいが、興味深い。与党政府を打倒するために、野党リーダーのイェーラッパが政府の水政策の落ち度を突き、「水道の民営化案」を持ち出し、裏では多国籍(アメリカ)企業と手を結んでコミッションを得ようとしている。これに対し、州首相のシュリーニワースは、隣州州首相と意見を合わせ、インドの水をアメリカ企業の手から守ろうとする。

・上で書いたとおり、本作の舞台はベンガルールと特定されていないが、実質的にはベンガルールで、東方の隣州とはタミル・ナードゥ州のことになる。周知のとおり、カルナータカ州とタミル・ナードゥ州には「カーヴェーリ川取水問題」があり、本来カルナータカ州はタミル・ナードゥ州に「水をくれ」と言えない義理だし、タミル・ナードゥ州も「知ったこっちゃない」なのだが、インドの水を守るという観点から、手を結ぶ。(ああ、こんな日がいつかやって来るのだろうか?)

・というわけで、私は本作を【Kaththi】(14)、【Lingaa】(14)と並ぶ「水問題三部作」と位置づけたい。(製作費は天地の差だが!)

◎ 配 役 : ★★★☆☆
 演技者はセミプロか素人で、平日は会社勤めがあるため、土日に撮影を行ったらしい。当然スターパワーのある人はいないのだが、その割にはそれらしいツラ構えの人を揃えていた。

◎ 演 技
・ラクシュマン・シヴァシャンカル(ダヌシュ役)
 プロデューサーのC・V・シヴァシャンカルの息子で、監督のウェンカト・バラドワージとは兄弟になる。ラクシュマン自身はIT企業人で、プロの俳優ではないが、俊才のIASオフィサーの役を好演している。

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・シュリーニワース・カッパンナ(州首相シュリーニワース役)
 このお方も映画俳優というわけではなく、舞台関係の仕事をしてきた人で、「Karnataka Nataka Academy」の元会長らしい。しかし、州首相の役をそれらしく演じている。

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・監督のウェンカト・バラドワージも建築ブローカー役で出演している。こいつがなかなかのツラ構え。ツラ構えといえば、野党リーダー、イェーラッパ(この名前がイェディユーラッパを連想させる)を演じたオジサンも立派なもので、普通に南インド・アクション映画の悪役ができそうだった(写真下)。

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・しかし、私的に残念だったのは、本作には女っ気がほぼなかったことだ。せっかくIT企業の人を使うのなら、バンガロール・IT企業の名物、「ディスプレイ前のアプサラたち」をなぜ出さなかったのか、理解に苦しむ。

◎ 音 楽 : ★★★☆☆
◎ BGM : ★★★☆☆
・歌は3曲あったが、割と良かった。有名な音楽監督でなくともこうした曲が作れるところに、バラモン文化の底力を感じる。最後の曲は本ブログの名前の元となった「カーヴェーリ川」をテーマにしたものなので、動画を貼っておく。(古典ダンスを踊っている女性ダンサーはNivedita Sharma Nadigというお方。)



◎ 撮 影 : ★★★☆☆
◎ 編 集 : ★★★☆☆
・撮影も所々気の利いたことをやっている。

◆ 完成度 : ★★☆☆☆
◆ 満足度 : ★★☆☆☆
◆ 必見度 : ★★★☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 2月28日(土),公開第1週目
・映画館 : INOX (JP Nagar),12:50のショー
・満席率 : 1割
・備 考 : 英語字幕付き
 

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2015/03/24 21:23

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