カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Mythri】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2015/03/04 21:13   >>

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 2013年のカンナダ映画界は、【Simpallag Ond Love Story】【Lucia】【Jatta】【6-5=2】【Dyavre】などの実験的作品が現れ、変革の時を予感させたが(この動きが去年は一服したのが悔やまれる)、わけても【Jatta】は、ヒットこそしなかったものの、強烈な内容でカンナダ映画ファンに衝撃を与えた。その【Jatta】のB・M・ギリラージ監督の新作がこの【Mythri】で、プニート・ラージクマールとモーハンラールが共演するということで早くから話題となっていたが、公開後の評判がこれまた良い。
 ちなみに、プロデューサーも【Jatta】と同じN・S・ラージクマールだが、この人は過去に【Prithvi】(10)、【Mynaa】(13)といった佳作を送り出している。

【Mythri】 (2015 : Kannada)
脚本・監督 : B.M. Giriraj
出演 : Puneeth Rajkumar, Mohanlal, Master Aditya, Atul Kulkarni, Ravi Kale, Jagadish, Archana, Sadhu Kokila, Satyajit, Sukrutha Wagle, Bhavana Menon(特別出演), その他
音楽 : Ilaiyaraaja
撮影 : Krishna Kumar
編集 : K.M. Prakash
制作 : N.S. Rajkumar

題名の意味 : 結び合い
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ドラマ
公 開 日 : 2月20日(金)
上映時間 : 2時間17分

《 あらすじ 》
 シッドゥ(シッダラーマ:Master Aditya)は母と二人でスラムに暮らす貧しい少年だったが、頭が良く、学校の成績は一番だった。彼は映画スター、プニート・ラージクマールの熱烈なファンだった。
 ある日、近くで映画撮影があり、友人たちと見物に行ったシッドゥは憧れのプニート・ラージクマール(Puneeth Rajkumar)と話す機会を得る。その際、シッドゥはプニート関連の新聞記事を切り貼りしたノートをプニートに渡す。
 だが、運命の悪戯か、その後シッドゥは少年院送りとなってしまう。彼は獄中でジョンソン(Jagadish)という、手癖は悪いが気の良い青年と親しくなる。
 プニートは、チャリティー企画として誕生日を少年院で祝うことにする。それはシッドゥのいる少年院だった。プニートは入所少年たちとお祝いをし、監守のラヴィプラカーシュ(Atul Kulkarni)と話す。だが、懲罰部屋に入れられていたシッドゥはプニートに会えなかった。
 ひどく落胆するシッドゥを見て、ジョンソンは彼にプニートが司会するクイズ番組『カンナダの億万長者』に応募するよう勧める。ジョンソンは監守ラヴィプラカーシュの携帯電話をこっそり拝借し、シッドゥに申し込みをさせる。すると、本当にテレビ局から反応があり、電話での選考にシッドゥは合格する。状況に押されて、ラヴィプラカーシュもシッドゥの番組出演を認めないわけにいかなかった。
 シッドゥはラヴィプラカーシュに伴われ、チェンナイのテレビスタジオに入る。早速収録が始まるが、シッドゥはやっと3日目になって解答権を得る。そして、順調に正答を続け、5百万ルピー獲得したところで時間切れとなり、最後の1千万ルピーの質問は翌日回しとなる。
 その夜、マハーデーヴ・ゴードケー(Mohanlal)という、かつて国防研究開発機関に所属していた科学者がプニートの前に現れ、プニートに対し、シッドゥが最後の質問に正答できないようにしてくれと依頼する。というのも、マハーデーヴの息子は殺害されていたが、シッドゥがその犯人だから、と言うのだ。プニートはこの願いを退けるが、胸中に複雑なものを感じる。
 翌日、収録が再開される。シッドゥへの最後の質問は「『数学的諸原理』を書いた科学者は?」で、答えは「アイザック・ニュートン」だったが、シッドゥは分からなかった。そこでプニートはライフラインの「テレフォン」を使うことを勧め、科学者のマハーデーヴに電話させる。その際、プニートはシッドゥに「マハーデーヴは君が息子を殺したと言っている」と伝えるが、、、。

・その他の登場人物 : ゴーリ・プラターパ(Ravi Kale),マハーデーヴの妻(Archana)

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★★☆
◎ 物 語 : ★★★☆☆
◎ 脚 本 : ★★★★☆
・難解なアート風映画の作り手だと思われたギリラージ監督が、こうも分かりやすい、ハートウォーミングな娯楽映画も作れるとは、正直、驚きだ。涙が滲み出るような良作だった。

・テーマは、一つは少年犯罪の問題で、少年がマフィアの犠牲になり、誘拐、売買、殺害されたり、または彼らがマフィアの片棒を担がされ、犯罪に手を染めたりする様が描かれている。もう一つは少年院の在り方の問題で、罪を犯した少年たちの更生は「懲罰か、教育か」ということが問われている。これらのテーマが手際よく物語化されている。

・題名の「Mythri」の意味は、上では「結び合い」としておいたが、人と人、国と国などが結び付くということで、良い意味なら「味方」や「友愛」となるが、悪い意味なら「共犯者」ということになる。たぶんギリラージ監督はどちらの意味も持たせたと思われ、意思に反してマフィアの犯罪の共犯者になっていたシッドゥ少年が、後に味方や良き理解者、庇護者を得る、というストーリーになっている。

・物語中に出てくる、プニートが司会をしているクイズ番組『カンナダの億万長者(Karunada Kotyadipathi)』は、例の『Who Wants to Be a Millionaire?』(日本版は『クイズ$ミリオネア』)のカンナダ版のことで、それから分かるとおり、本作は明らかにダニー・ボイル監督のイギリス映画【Slumdog Millionaire】(08)からインスピレーションを得ている。しかし、だからといって、本作を同作品のパクリ扱いするのは不当だろう。同じなのは「スラム出身の少年がクイズ番組に出る」という点だけで、筋立てや結末、メッセージなどはすべて違っている。

・【Slumdog Millionaire】は、私の感想では、技巧的な、よくできた映画には違いないが、インド人か、外国人なら相当なインド通でないと分からないような事柄が下敷きとなっているため、どうもダニー・ボイル監督の「俺はこんなにインド通なんだぜ」という衒いが鼻につくようで、楽しめなかった(これは監督の責任じゃなく、単に原作者がインド人だからということかもしれないが)。本来あの映画は、非インド人が観ても面白さが分かるはずがないと思うのだが、にもかかわらず、インドより外国で評価されたのは、結局は欧米人に「インドはやっぱり汚いんだ」、「悲惨な国なんだ」と再確認させ、彼らのアジアに対する優越感をくすぐったからなのだろうと思う。

・何が言いたいかというと、【Slumdog Millionaire】はあくまでイギリス映画であり、それがグラミー賞やアカデミー賞を取ったというのは単にアメリカでの出来事であり、「インドの誇り」とは直接関係がなく、実はインドの大衆層は【Slumdog Millionaire】/【Slumdog Crorepati】をさして面白く感じていなかった、ということである。となると、あの人気クイズ番組をモチーフにしたインド固有の映画が生まれるのは自然な流れであり、その一つがギリラージ監督の【Mythri】だったとしても、何の不思議はない。おそらく、【Slumdog Millionaire】がなくても、ギリラージ監督はこのストーリーを考えることができただろうと思う。

・しかも、ギリラージ監督の語り口が上手く、物語全体にノリがあって、飽きさせない。通常のカンナダ映画のフォーマットからかなりはみ出した脚本/配役/演出なのに、カンナダ人の好むテイストをぴったり押さえている。カンナダ映画もこんなふうに作れるんだと、感服した。

・ただ、不満点を挙げると、悪役のゴーリ・プラタープ(ラヴィ・カーレ演じる)がもっと南インド映画らしく冷酷に描かれていれば、クライマックスのモーハンラール(マハーデーヴ役)ももっと生きただろうと思う。

◎ 配 役 : ★★★★☆
◎ 演 技
・プニート・ラージクマール(本人役) ★★★☆☆
 プニートがプニート自身を演じている。しかし、実物のプニートはあんなに善い人ではないはずなので、結局は映画中の役を演じているわけだ。それほど難しい役柄ではなかったと思う。
 (写真下:モーハンラールと。)

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・モーハン・ラール(マハーデーヴ・ゴードケー役) ★★★☆☆
 ラルさんはカンナダ映画には【Love】(04)という作品に出演したことがあり、あれはかなり情けない役だったが、本作はそれなりにリスペクトされる役をもらっている。ただ、終盤の「変装」はもっと別の姿でもよかったと思う。あれではコメディーなのだが、もしあそこで笑わせる意図があったと言うなら、長髪のカツラを外すときに「真のカツラ」のほうもめりめりと外れ、「あらっ!」とやってほしかった。ちなみに、台詞はラルさん自身のセルフダビングで、しっかりカンナダ語を喋っている(【Love】でもそうだった)。

・マスター・アーディティヤ(シッダラーマ役) ★★★★☆
 可愛い少年でないところが良かった。

・アトゥル・クルカルニー(ラヴィプラカーシュ役) ★★★★☆
 警察官(公務員)の少年院院長とはおそらくこんなふうなのだろう。好演している。

・ジャガディーシュ(ジョンソン役) ★★★★☆
 基本、善いヤツで、コメディー面と感動面を受け持っている。印象度は高い。

・マラヤーラム女優のバーヴァナとテルグ女優のアルチャナがほとんどカメオで出演している。アルチャナは気が付いたらすっからお母様女優になっていたのね。
 (写真下:左がシッドゥ役のアーディティヤ、右がアルチャナ。)

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◎ 音 楽 : ★★★★☆
◎ BGM : ★★★☆☆
◎ ダンス : ★★★☆☆
・マエストロの音楽も良い。音楽シーンは、冒頭のスラムを少年たちが走り回る(警官に追われて)シーンが良い。

◎ アクション : ★★★☆☆
◎ 撮 影 : ★★★☆☆
◎ 編 集 : ★★★☆☆
・ド派手なアクション・シーンはない。プニート主演映画のアクション・シーンを撮っているという設定のシーンで、監督として登場していたのは、たぶん【Bachchan】(13)のシャシャーンク監督だと思う。

◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★★★☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 2月28日(土),公開第2週目
・映画館 : INOX (JP Nagar),16:15のショー
・満席率 : 8割
・場内沸き度 : ★★★☆☆
 

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
実はスラムドッグ・ミリオネアという作品が苦手だったので、どうかなあ、と思っていたのですが、カーヴェリ川さんのレビューを拝見して見てみたくなりました。
DVDが楽しみです。
それとも大ヒットで次にバンガロールに行くまでロングランしててくれるかしら。

いい人のプニートも楽しみです。
やっほー
2015/03/04 21:25
おお、やっほーさんもスラムドッグ苦手派でしたか。
なら、こちらは楽しく鑑賞できると思います。
ヒットはすると思いますが、やっほーさんが来るまで続くかなぁ、、、、
 
カーヴェリ
2015/03/05 10:16

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