カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Vajrakaya】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2015/07/01 21:36   >>

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 ファラー・カーンやプラブデーワが監督として名を上げて以来、「振付師の撮る映画は面白い」という声をよく聞くようになったが、その実例となる人物がもう一人いる。

 それはサンダルウッドのハルシャだ! (て、誰も聞いてませんか。)

 ハルシャは振付師としても人気者だが、監督としては、デビュー2作は振るわなかったものの、【Chingari】(12)で化け始め、前作の【Bhajaranghi】(13)は大ヒットした。このお方も、前回紹介した【Ranna】のナンダ・キショール監督同様、カンナダ映画界に活力を蘇らせてくれそうな人材として、私は注目している。

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 さて、そのハルシャ監督が、【Bhajaranghi】と同じくシヴァラージクマールを主役に据えて撮ったのがこの【Vajrakaya】で、トレイラーを見ても凄そうで、期待の1本だった。
 題名の「ワジラカーヤ」は「ダイアモンドの体」という意味だが、ハヌマーン神の別称でもある。(「Bhajaranghi」もハヌマーン神の別称だった。)

【Vajrakaya】 (2015 : Kannada)
物語・脚本・監督 : Harsha
出演 : Shivarajkumar, Karunya Ram, Nabha Natesh, Jayasudha, Madhu Guruswamy, Avinash, Padmaja Rao, Suman, Ravi Kale, Sadhu Kokila, Chikkanna, Manjunath Gowda, Kuri Prathap, Shubra Aiyappa(特別出演), Ravichandran(特別出演), Ravi Teja(特別出演), Dileep(特別出演), Sivakarthikeyan(特別出演), その他
音楽 : Arjun Janya
撮影 : Swamy J.
編集 : Deepu S. Kumar
制作 : C.R. Manohar

題名の意味 : ダイアモンドの体
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : アクション/ドラマ
公 開 日 : 6月12日(金)
上映時間 : 2時間25分

《 あらすじ 》
 ヴィラージ(Shivarajkumar)は父アヴィナーシュ(Avinash)、母(Padmaja Rao)、弟、妹と平和な家庭に暮らしていたが、この一家の実子ではなく、彼自身もそれを知っていた。
 ある日、ヴィラージはギーター(Shubra Aiyappa)と出会い、惚れる。ところが、さて縁談という段になると、ギーターの両親はヴィラージが孤児だということを理由に、拒否する。怒りのあまり父アヴィナーシュは入院してしまうが、彼は病床でヴィラージに出生の経緯を話し、実の母と祖父がまだ生きていることを明かす。
 ・・・
 時は35年前、北カルナータカに「ジャングル・カニウェー」という村があり、「フズール」(Madhu Guruswamy)という恐ろしい族長が支配していた。フズールの娘ラクシュミ(Jayasudha)は有徳の士ヴィーラ・プラターパ・シンハ(Suman)を愛するようになるが、カーストの違いから父は結婚を認めない。やむなくラクシュミは家出をし、ヴィーラ・プラターパと結婚する。だが3年後、フズールは二人を引き離し、ヴィーラ・プラターパを殺害する。二人の間にできた赤子も命を狙われるが、アヴィナーシュが救い、息子としてバンガロールで育てたのであった。
 ・・・
 この事実を知ったヴィラージは、早速母親探しの旅に出る。教えられた村の近くで、彼はならず者に捕らわれていた村娘(Karunya Ram)を救い出す。彼女の手引きで、とある屋敷に到着するが、それはまさしく養父アヴィナーシュに教えてもらった祖父フズールと母ラクシュミのいる屋敷だった、、。

・その他の登場人物 : 「爆竹娘」パールワティ(Nabha Natesh)

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★☆☆
◎ 物 語 : ★★☆☆☆
◎ 脚 本 : ★★☆☆☆
・トレイラーの雰囲気から【Bhajaranghi】の続編かとも噂されたが、早くに製作チームが否定。そのとおり、全く続編ではなかった。主人公がハヌマーン神になぞらえられていること、彼が実は孤児で、本当の親の所縁の地に向けて旅に出ること、その目的地が北カルナータカの村であることなど、同じようなアイデアでまとめられているが、テーマは違っている。

・村のおどろおどろしい雰囲気などは両作品とも似通っているが、本作には【Bhajaranghi】のような黒魔術師や亡霊は出て来ない。しかしその分、【Bhajaranghi】のような不気味な勢いがなく、はっきり言って、【Bhajaranghi】よりはつまらない。

・ストーリーが良くない。主人公のヴィラージは母親を訪ねて旅に出るが、あまりにもあっさり見つけてしまった。もっとドラマチックなご対面になってもよかったと思う。ヴィラージの目的は、自分と母を引き離した頑迷な祖父を改心させることにあるが、その展開(クライマックス)も説得力がなかった。

・村の設定・描写は興味深い。【Rana Vikrama】(15)の鑑賞記でも触れたが、【Bhajaranghi】や【Ugramm】(14)など、最近のカンナダ映画では「北カルナータカの架空の無法地帯」というのが流行となっているようだ(理由は分からない)。本作の舞台となった「ジャングル・カニウェー(Jungle Kanive)」という村ももちろん架空のもので、バンガロールから数百キロ離れた地と設定されていた。そこは族長の「フズール」が専横的に支配する、独特の風習を持った村だと描かれている。宗教的にはヒンドゥー教徒で、ドゥルガーを信仰しているようだった。(ちなみに、「ジャングル・カニウェー」の「カニウェー」は「森の中の開けた所」や「川の中州」といった切り離された土地を意味する言葉らしく、それからすると、「ジャングル・カニウェー」というのは固有名ではなさそう。また、族長の「フズール」というのも固有名ではなく、尊称の一つ。イスラーム教徒の名前っぽく聞こえるが、そうではない。)

・さて、このどんよりした村が何の比喩になっているか考えると、要はインドの「因習社会」の否定的な側面を表したものなのだろう。カーストや共同体の維持という大義名分があるにせよ、族長は専横的に振る舞い、共同体構成員の自由を認めず、特に女性に対しては「人権」の微塵もない扱いをする。これは映画的にかなりデフォルメされたものだが、人権団体などが攻撃したがるインドの旧弊とは、結局こういうものだろう。

・この悪しき「因習」に対して、ハルシャ監督が肯定的な「伝統」として提示しているのが「家族愛」で、力ずくで盲信的な手法は取らずとも、純粋な家族愛さえあれば、インドの伝統社会は維持できる、というのが本作のテーマだったように思う。

・この家族愛を描くために、シヴァラージクマールを主役にしたのは正解だった。というより、シヴァンナとジャヤスダーの個人技だけで本作が大衆娯楽映画として成立したようなものだ。本音を言うと、シヴァンナ演じるヴィラージと、養父母、兄弟、実の母ラクシュミとの間で交わされるセンチメントの臭さは危険なレベルにまで達していて、とても一般的な日本人にはお勧めできないのだが、客観的に見て、一つの大衆文化として完成された形となっている。つまりは、インドの庶民って、こうなんです。

◎ 配 役 : ★★★☆☆
◎ 演 技
・シヴァラージクマール(ヴィラージ役) ★★★☆☆
 本作でシヴァンナは「母子センチメント」を演じさせれば重要無形文化財級であることを証明しただろう。目指せ、人間国宝。「母子センチメント」だけでなく、他にもシバ兄らしい臭さが随所にあり、この暴走ぶりの上を行くのはテルグのバーラクリシュナぐらいしか思い付かない。
 (写真下:冒頭の音楽シーンで「スター対抗・ガダー担ぎ競争」に出場したシヴァンナ。隣のタミル・スター、シヴァカルティケーヤンと比べると、ずいぶん背が低いが、定規で測ってみたら、頭のてっぺんから股間までの長さは両人とも同じだった。やっぱり短足だったんだ。)

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・ヒロインは面倒くさいのでまとめて紹介。左端は村娘役のカールニヤ・ラームさん(以前はプリヤンカという名前だった)。タヌキ顔がなかなかキュート。シヴァンナの右がギーター役のシュブラ・アイヤッパさん。3人の中では一番美人だが、一番出番が短かった。右端がラクシュミの姪(ヴィラージのいとこ)パールワティ役のナバー・ナテーシュさん。

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・このナバー・ナテーシュ演じるパールワティは、自ら「パタキ(爆竹)」と称するほどのお転婆な村娘で、ヒロインというよりはコメディー担当だった。

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 ダンスはこれですからね。(もっとも、これだけ頑張っても、シヴァ兄の臭さに圧倒されてますが。)

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・ジャヤスダー(ラクシュミ役) ★★★☆☆
 出番も台詞も少なかったが、さすがにこのお方が出ると、「映画」らしく見えた。

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・「フズール」を演じたのはマドゥ・グルスワーミという俳優らしい。気合い十分な演技だったが、このメイクのせいで、顔が分からんかったぞ。

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◎ 音 楽 : ★★★☆☆
◎ BGM : ★★★☆☆
◎ ダンス : ★★☆☆☆
・本作は音楽監督アルジュン・ジャニヤの50作目らしい。若手のホープだと思っていたが、こんなに仕事をしていたとは驚きだ。

・こちらの歌ではタミル・スターのダヌシュが歌っているのだが、全然知らなかった。
https://youtu.be/t9r7lfSIoo4

◎ アクション : ★★★★☆
◎ 美 術 : ★★★☆☆
◎ 衣 装 : ★★☆☆☆
◎ 撮 影 : ★★★☆☆
◎ 編 集 : ★★★☆☆
・アクション・シーンは良くできている。

◎ その他(覚書)
・村の場面で、馬に乗って槍を投げるという競技にヴィラージが挑戦するというエピソードがあったが、あの競技はもしかしたら北カルナータカに実際にあるのかもしれない。

◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★☆☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 6月27日(土),公開第3週目
・映画館 : Gopalan Cinemas (RR Nagar),11:30のショー
・満席率 : 6割
・場内沸き度 : ★★★☆☆

 

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