カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Orange Mittai】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2015/08/05 21:27   >>

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 この週末はチャルミー主演のテルグ映画【Mantra 2】を観るつもりで、楽しみにしていたが、公開後の評判が最悪だったので、急遽別の映画を観ることにした。で、選んだのがこのタミル映画【Orange Mittai】。

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 それほどそそるものは感じなかったが、タミルの性格俳優ヴィジャイ・セードゥパティがプロデュースと脚本(共同)を担当し、また主演として50歳超の初老の男を演じるということなので、観ておいてもいいかなと。
 加えて、監督のビジュ・ヴィシュワナートがユニークな人で、商業娯楽映画監督というより、アート系映画作家らしく、インド諸語(タミル語、マラヤーラム語、ヒンディー語、ウルドゥー語)の他に、英語、イタリア語、アイルランド語、スワヒリ語、日本語で作品を撮っており、いくつか賞も取っているようだ。日本語作品は【Oshizemi】(09)というものらしいが、全然知らなかった(こちら参照)。
 監督がこうだからどうだというわけではないが、1時間41分というランタイムから早くも異色インド映画の香りが感じられたので、たまにはこういうのもいいかなと。

【Orange Mittai】 (2015 : Tamil)
脚本 : Biju Viswanath, Vijay Sethupathi
監督 : Biju Viswanath
出演 : Vijay Sethupathi, Ramesh Thilak, Arumugam Bala, Aashritha, Karuna Karan, Ashok Selvan, その他
音楽 : Justin Prabhakaran
撮影 : Biju Viswanath
編集 : Biju Viswanath
制作 : Vijay Sethupathi, B. Ganesh

題名の意味 : オレンジ・キャンディー
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ドラマ
公 開 日 : 7月31日(金)
上映時間 : 1時間41分

《 あらすじ 》
 サティヤ(Ramesh Thilak)はとある片田舎で救急医療士をしており、救急車運転手アールムガム(Arumugam Bala)と組んで病人・怪我人を運ぶ日々だった。サティヤにはカーヴィヤー(Aashritha)という恋人がいたが、彼女の父は自分の家業を継ぐことを条件に結婚を認める意向だった。しかしサティヤは救急医療士の仕事に誇りと愛情を感じていたので、それは飲めない条件だった。ために、二人の関係はぎくしゃくする。また、サティヤは1年前に父を亡くしていたが、孝行らしい孝行ができなかったことを今さらながら悔いていた。
 ある日、サティヤは心臓発作患者がいるのと連絡を受け、アールムガムと救命に行く。それは辺鄙な村の屋敷に独りで暮らすカイラーサム(Vijay Sethupathi)という老人だった。ところが、二人が駆け付けると、カイラーサムは全く元気だった。しかしながら、心臓に疾患があるということなので、サティヤは町の病院へ運ぶことにする。
 カイラーサムは無愛想、偏屈、傲慢を絵に描いたような人物で、サティヤとアールムガムは手を焼く。しかし、それでいて愛嬌を感じさせるところもあったため、サティヤはこの老人に興味を抱くようになる。
 カイラーサムは病院に入院することを拒む。それどころか、過去に27回も「心臓発作」で救急車を呼んだのは、孤独を紛らわすための暇つぶしらしかった。サティヤは呆れるが、カイラーサムには町で暮らしている息子(Karuna Karan)がいることを知る。サティヤはその息子に会いに行くが、息子は父を受け入れようとしなかった。
 サティヤはカイラーサムを元の屋敷に送り届ける。だが、別れ際に、カイラーサムに対して父のような愛着を感じるのであった、、。

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★★☆
◎ 物 語 : ★★☆☆☆
◎ 脚 本 : ★★★☆☆
・力強さも強烈なインパクトもないが、ほのぼのと好い気持ちで映画館を出られる小品だった。プチ佳作といったところか。

・救急医療士と孤独な老人が出会い、心が通い合うようになる2日間を描いただけのシンプルな筋立てで、エッセンスは台詞で表現される。ゆえに、言葉が分からないと本当の面白みが分からない。しかし、登場人物(主にサティヤとカイラーサム)の表情や台詞の間、南タミル(たぶん)の田舎の風景を美しく捉えた映像、爽やかな音楽などの非言語的要素も巧く用いられており、作品の意図はそれなりに伝わってくる。

・中心テーマは「父子の関係」、「老い」ということに置かれている。カイラーサムは50代中盤の男で、集落から隔たった屋敷に独居している。この屋敷の規模からすると、昔は裕福な地主だった家系の末裔なのかもしれない。彼には息子(ジャーナリストらしい)がいるが、町で独立して暮らしており、父子の関係は全く疎遠になっている。カイラーサムは傲慢に振舞っているが、それでいてやはり孤独から寂しさを感じている。他方、救命士のサティヤは、1年前に父を亡くし、「亡くして初めて気付く親の価値」をまさに痛感しているところだった。そんな二人が出会い、お互いに求めているものを相手に見出すという物語。

・意外だったのは、本作がインドの最近の「父子関係」を危機的に捉えていることだ。私の観察では、インド(少なくとも南インド)の子たちは親を非常に大切にし、都会で生活している若い世代の人たちも、住居を整えたら、田舎から親を呼び寄せて同居するというパターンが普通で、特に問題は感じられないのだが(むしろ、「もっと親離れ/子離れしろよ」と言いたくなることのほうが多い)、こういう映画が作られるところを見ると、インドでも核家族化が進み、「うち捨てられた老人」という問題が顕著になってきているのかもしれない。

・題名の「オレンジ・ミッターイ」は下のようなオレンジ・キャンディーのことで、甘くて苦い味が人生を象徴するものとして題名に使われたのだろう。物語中でも小道具として使われている。

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・ロードムービー風の作品で、小さなエピソードが順々に連なるという構成だったが、1時間41分と短い物語の中に、なお不要と思えるシーンが2,3あった。それほど優れた脚本だとは思えなかった。

◎ 配 役 : ★★★☆☆
◎ 演 技
・ヴィジャイ・セードゥパティ(カイラーサム役) ★★★☆☆
 実年齢37歳のヴィジャイ・セードゥパティが50代中盤の初老を上手く演じている。さすがヴィジャイだと思ったが、しかし、インド映画では俳優が実年齢と離れた役を演じるのは普通のことだった。さらに言うと、わざわざ若い俳優が凝ったメイクをして演じるよりも、実際に実年世代の俳優を使ったほうがリアリティーも重みもあったと思う。もっとも、プロデューサー自身が主役を演じるので、コストカットの効果はあったと思う。
 ところで、ヴィジャイ・セードゥパティといえば、2012年の【Pizza】では20代中盤のピザボーイを(写真下の左)、2013年の【Soodhu Kavvum】で40がらみの犯罪者を(同、真ん中)、そして本作では50代中盤の孤独老人を(同、右)演じたわけで、3年で30歳ぐらい年を取った勘定になる。

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 現在の素顔は下のとおり。(本作で唯一若い女性のカーヴィヤーを演じたAashrithaさんと。)

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・ラメーシュ・ティラク(サティヤ役) ★★★☆☆
 注目はこのお方。色黒で、ひょろっと背が高く、飄々とした風貌が記憶に残る脇役俳優(ラジオジョッキーのほうが本職かも)。【Soodhu Kavvum】や【Neram】(13)で見たときは小さな役しかできそうにないと思ったが、本作では実質的な主役。【Kaaka Muttai】(15)でも割と良い役をもらっており、今後もユニークな駒として重宝されるかもしれない。

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・救急車の運転手アールムガムを演じたのはアールムガム・バーラーという俳優らしい。この救急車運転手は、意識不明の病人・怪我人からこっそり金品を盗む悪癖の持ち主と設定されていたが、こういう人物は映画の中だけにしてほしい。

・もう一人、顔の歪んだ(おそらく病気で)男がオートリクシャ運転手役で出ていた。これがサシクマールのファンだと設定されており、同俳優の物まねをする場面が何気に面白かった。

◎ 音 楽 : ★★★★☆
◎ BGM : ★★★☆☆
・音楽はジャスティン・プラバーカランという全く知らない人の担当だが、気持ちの好い音楽だった。ハリス・ジャヤラージの弟子だったようだ。

◎ 衣 装 : ★★★☆☆
◎ 撮 影 : ★★★★☆
◎ 編 集 : ★★☆☆☆
・撮影と編集も監督のビジュ・ヴィシュワナート自身が担当している。編集はさておき、映像は良かった。

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◎ その他(覚書)
・1時間41分の短尺にもかかわらず、ちゃんとインターミッションはあった。それが40分ぐらいのところで来たので、「え、もう?」という感じだった。

◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★☆☆☆
◆ 必見度 : ★★☆☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 8月2日(日),公開第1週目
・映画館 : INOX (JP Nagar),17:10のショー
・満席率 : 2割

 

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
カーヴェリ川さん、こんにちは。
くだんの映画のトレーラーがYouTubeに上がっていて、断片を拝見した限りですが、景色の美しさもさることながら、救急車を呼ぶのも一苦労しそうな平原があるのですね。インドも発展を遂げる一方で、ついていけない高齢者を多数かかえることになる点では、今後日本と同じ道をたどることになる…のかも。いやむしろ宗教の関係とかも含めてより複雑になりそうな気も…。

話は変わりますが、今週たまたまネットでTV9を見ていたらShruti Haasanのインタビューがあって、(彼女は殆ど英語で回答してましたが)真面目な話しぶりや人柄に更に惹かれました。Tamannaahは良き友人らしいですね。Sonam KapoorやDeepika Padukoneも、彼女たちの今週のFaceBookとかを見るにつけ、その仕事への取り組みの真面目なさまには、心から応援したくなります。いやーインド映画は目が離せないです。

追伸:“Inimey Ippadithan”と言う映画はご覧になられましたか?予告編で拝見する限りでは、Ashna Zaveri と Akhila Kishore というダブルヒロインが何気に良さげです。(ストーリーはたいしたことないかも知れませんが…)Ashna Zaveri は Alia Bhattとタイマン張るタイプ。Akhila Kishore は Nayantara を想起させるセクシーお姉さん系でしょうか。見たいなっ、見たいなっ。
よっぴい
2015/08/07 00:02
追伸のほうに反応していますが、さらなる女優情報ありがとうございます。
「Inimey Ippadithan」は未見です(バンガロールではやらなかったように思う)。Ashna Zaveriは「Maryada Ramanna」のタミル語リメイクに出ている人ですね。これも未見ですが、トレーラー等で見て、可愛い人だとの認識はありました。Akhila Kishoreは知りませんでしたが、本当にナヤンさんを思わせますね。バンガロール出身のようなので、応援します。
 
カーヴェリ
2015/08/08 01:19

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