カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Aatagara】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2015/09/02 21:55   >>

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 先日紹介したカンナダのサスペンス・スリラー【Rangi Taranga】が私の予想を超えた大ヒットとなっている。それは結構なことだが、どうしてあの映画がこれほどまでに受けているのか、理由が分からない。ただ、カンナダの大衆が最近サスペンスの秀作に縁がなかったというのも説明の一つになるかもしれない。(おそらく、あれがマラヤーラム映画なら、ここまで評価されなかったに違いない。)

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 さて、そのようにカンナダの大衆がサスペンスに目覚めたかもしれない好機に登場したのがこの【Aatagara】。監督は暗黒街映画の佳作【Aa Dinagalu】(07)を撮ったK・M・チャイタニヤなので、期待は持てる。

【Aatagara】 (2015 : Kannada)
脚本・監督 : K.M. Chaitanya
出演 : Chiranjeevi Sarja, Ananth Nag, Dwarakish, Meghana Raj, Parul Yadav, Achyuth Kumar, Prakash Belawadi, Balaji Manohar, Anu Prabhakar, Pavana Gowda, Sadhu Kokila, Arohitha, P. Ravi Shankar, Rohit Padaki, Sunetra Nagaraj, Veena Sundar, Petrol Prasanna
音楽 : Anoop Seelin
撮影 : Satya Hegde
編集 : Haridoss KGF
制作 : Dwarakish, Yogish

題名の意味 : プレーヤー
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : サスペンス・スリラー
公 開 日 : 8月28日(金)
上映時間 : 2時間8分

《 あらすじ 》
 麻薬密輸人のジャイ(Chiranjeevi Sarja)は取り引きに失敗し、180万ルピーの損失を出してしまう。この欠損を埋めるために、ボスはジャイにテレビの『アータガーラ(プレーヤー)』というリアリティーショー番組に出演するよう提案する。それは勝者に1千万ルピーの賞金が与えられるというものだった。ジャイはやむなくこれを引き受ける。
 この番組は10人で競うもので、ジャイの他に男4人、女5人が参加することになっていた。それはジャーナリストのヤシュワント(Achyuth Kumar)、医者のチェータン・バーガワト(Prakash Belawadi)、モデルのマッリカー(Parul Yadav)、女優のサークシ(Meghana Raj)、ファッション・カメラマンのKP(Balaji Manohar)、学校校長のサンディヤ(Anu Prabhakar)、野生動物保護活動家のアヌ(Pavana Gowda)、料理人のサードゥ・マハーラージ(Sadhu Kokila)、田舎娘のバーヴァナ(Arohitha)だった。10人は無人島にボートで渡り、番組収録の行われる無人の館で30日間の共同生活を開始する。
 ところが、2日目の朝から異変が起きる。料理人のサードゥが貯蔵庫で銃殺され、その助手をしていたバーヴァナも毒殺される。医者のチェータンは職業不詳で拳銃まで所持していたジャイを疑うが、ジャイの銃の弾とサードゥが撃たれた弾が違うことが分かる。一同に不安が募る中、外界との唯一の接点だった固定電話とテレビが不通となる。そんな中で、ヤシュワントが森で射殺され、崖から転落死したアヌも発見される。
 6人に不安が広がる中、不通だったテレビが映るようになる。それで彼らは自分たちが出ているはずの『アータガーラ』を見るが、しかし出演していたのは全く別の10人だった。そこへ電話がかかって来、匿名の男からさらなる殺人の予告を知らされる。
 医者チェータンの妻ヘーマが、自分の夫が『アータガーラ』に出演していないことに気付き、警察に届ける。警部のラヴィ・ガウダ(P. Ravi Shankar)とその部下ローヒト(Rohit Padaki)がこの事件の捜査に当たることになる。
 島では、医者チェータンが夜中にこっそり外出する。それを追ったジャイが何者かに銃撃される。ジャイは何とか館に戻るが、これで残った5人はチェータンを疑うようになる。
 5人は、番組のルールとして「コントロールルームに入ってはいけない」というのがあったのを思い出す。5人はそのコントロールルームの鍵を壊し、中に入るが、そこで思いがけない光景を目にする、、。

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★★☆
◎ 物 語 : ★★★☆☆
◎ 脚 本 : ★★★☆☆
・難しいことを言わなければ、面白いかどうかということなら、十分楽しめるスリラーだった。インド映画(カンナダ映画)らしい分かりやすいメッセージも込められていて、「これぞカンナダ流スリラー!」という印象を受けた。さすがK・M・チャイタニヤ、腕は良い。

・しかし、満足点と同じぐらい不満点も多い。まず、一見して明らかにアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』の翻案だった。それは構わないが、それならそうと、映画の冒頭かどこかで同小説の名前を挙げておくべきだったと思う。ついでに、私は未見だが、【Table No. 21】(13)というヒンディー映画との類似も指摘されている。

・『そして誰もいなくなった』の翻案ということでは、10人の男女が離島に運ばれ、1人1人殺されていくというメインプロットが同じなだけでなく、犯行の背景、トリックなども借りている。さらに、『そして誰もいなくなった』の「10人のインディアン」は「ラーヴァナの10の頭」に、「ボトルの手紙」は「ボイスレコーダー」に置き換えられている。

・割と上手く翻案(カンナダ映画化)されているとも言えるが、サスペンス・スリラーとなるとどうしても緻密さを要求してしまうので、その点では緩いものを感じた。ループホールが多い。そもそも分からないのは、犯人の犯行動機が「復讐」ということにあるのなら、ひっそりと1人1人暗殺していくほうが簡単で、何も偽装テレビ番組という大掛かりな罠を仕掛ける必要もなかったと思う。逆に、犯人の意図が被害者の過去の犯罪(社会悪)を暴き出し、世直しの手段にしたいということなら、何らかの形でプロパガンダする必要があっただろう。犯行の真相を録音したボイスレコーダーは1人の警官(ラヴィ・ガウダ)しか聞いていないので、結局、真相は闇に葬られることになり、社会的なメッセージとはならない。

・さらに、犯人(殺害者)を観客に悟らせないようにするトリックも、小説なら語り口でごまかせても、映画だとそうは行かないこともあるので、ここは映画的なひと工夫がほしかった。第一、小説とはかなり変えているとはいえ、『そして誰もいなくなった』を読んだ(またはそれの映画版を観た)人なら、比較的早い段階で犯人の見当が付いてしまうところが辛い。

・ただ、映画中で真犯人が語るメッセージは、映画中のインド市民には届かないにせよ、現実に本作を観ている観客には分かりやすい形で届く。それは「法廷で裁かれなかった犯罪を裁く」ということで、正義とは何かが問われている。そして、国家存続の基盤となる正義というものを考えるきっかけになるようにと、映画の冒頭と結末でインド国旗を映し出している。

・しかし、一見、正義のために法廷に代わって犯罪者を裁くとしながらも、よく見れば、結局、動機は「私怨(復讐)」だというのが残念だった。私怨を離れたレベルで戦ってこそ正義だと私には思えるのだが、、。『そして誰もいなくなった』の犯人は屈折した人物で、犯行動機も私怨とかではなく、それで物語自体が空恐ろしいメッセージとなっていたように思うのだが、本作はそのインパクトに遠く及ばない。

・面白かったのは、犯人の行動の基盤には正義心があるとはいえ、殺人という行為はあくまでも違法なので、映画のエンディングに字幕で「法に対する挑戦は何であれ犯罪である」という但し書きを添えていることだった。こんなことをいちいち断るインド映画も珍しいと思う。

◎ 配 役 : ★★★☆☆
・登場人物が多い上、それぞれが意味のある役割を担っていたので、一部の俳優に対するコメントは付けにくい。全体的に適材適所だっと思うし、それぞれのパフォーマンスも特に破綻はなかった。
 (写真トップ:左よりプラカーシュ・ベラワーディ、バーラージ・マノーハル、サードゥ・コーキラ、アチュート・クマール、チランジーヴィ・サルジャー、P・ラヴィシャンカル、パールル・ヤーダヴ、メーガナ・ラージ、アヌ・プラバーカル、パーワナー・ガウダ、アーローヒタ。)

・ベテラン勢が光っていたが、アナント・ナーグはカメオ出演みたいなもので、あれぐらいの存在感はあって当然なので、わざわざ賛辞を贈らない。P・ラヴィシャンカルが面白い芝居をしていた。

・メモ代わりに書いておくと、医者チェータン・バーガワト役のプラカーシュ・ベラワーディは【Oggarane】(14)に出演した女優サムユクタ・ホールナードのおじ。カメラマン、KP役のバーラージ・マノーハルは【Lucia】(13)でクスリの製造元をやっていた大男。

・女優陣はこんな感じ。

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◎ 音 楽 : ★★★☆☆
◎ BGM : ★★★★☆
・歌とBGMを比べると、BGMのほうが良い出来だが、歌のシーンも悪いわけではない。サスペンスだが、音楽シーンが3つあり、それぞれ上手く挿入されている。‘Tharamayya’という歌はカンナダ映画の伝説的スター、ラージクマール、ヴィシュヌヴァルダン、シャンカル・ナーグへのオマージュとなっており、こういう歌をサスペンス映画に練り込むあたりに技を感じた。

・歌3曲を作詞したRohit Padakiは、警官ローヒト役で出演している。

◎ アクション : ★★★☆☆
◎ 撮 影 : ★★★★☆
◎ 編 集 : ★★★☆☆
・主役というわけではないが、チランジーヴィ・サルジャーが目立つ扱いとなっており、彼を使ったアクション・シーンは良くできていた。

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◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★★☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 8月30日(日),公開第1週目
・映画館 : INOX (Jayanagar),10:00のショー
・満席率 : 9割
・場内沸き度 : ★★☆☆☆
・備 考 : 英語字幕付き

 

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【Kendasampige】 (Kannada)
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