カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Thani Oruvan】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2015/10/07 21:19   >>

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 本作は8月末に公開されたもので、公開直後から評判が良く、観たい1作だったが、巡り合わせが悪くてずっと先送りになっていた。やっと観られてうれしい。
 監督はモーハン・ラージャーで、主演は弟のジェイヤム・ラヴィ。実はこの2人はテルグ映画等のリメイク作品で稼いでいた人たちで、私も【Santhosh Subramaniyam】(08)鑑賞記で「コピー屋ラージャー」、「猿まねラヴィちゃん」と揶揄したことがある。しかし、ラージャー監督はその後【Velayudham】(11)というかなり面白い作品を撮り、「化けたかな」と思わせたところで、この【Thani Oruvan】の成功である。なんと、本作は他言語のプロダクションからリメイク権の争奪戦が行われているらしく、「リメイク専門のラージャー監督が、今やリメイクされるようになった」とちょっと話題になっていた。
 本作のもう一つの話題は、【Roja】(92)や【Bombay】(95)でお馴染みのアルヴィンド・スワーミが悪役をやっていることだろう。
 (写真下:M・ラージャー監督近影。)

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【Thani Oruvan】 (2015 : Tamil)
物語・監督 : M. Raja
出演 : Jayam Ravi, Arvind Swamy, Nayantara, Thambi Ramaiah, Nasser, Ganesh Venkatraman, Rahul Madhav, Harish Uthaman, Sricharan, Vamsi Krishna, Nagineedu, Saiju Kurup, Madhusudhan Rao, Mugdha Godse, Abhinaya, Jayaprakash, Junior Balaiah, Sriranjini, Anil Murali, その他
音楽 : Hiphop Tamizha
撮影 : Ramji
編集 : Gopikrishna
制作 : Kalpathi S. Aghoram, Kalpathi S. Ganesh, Kalpathi S. Suresh

題名の意味 : 独りの男
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : スリラー
公 開 日 : 8月28日(金)
上映時間 : 2時間39分

《 あらすじ 》
 センガルワラヤン(Thambi Ramaiah)は15歳の息子パラニを連れて支持政党のリーダー(Nasser)に会いに行く。ところが、二人はそのリーダーが誤ってライバル政党の政治家を殺してしまうところを目撃する。リーダーはセンガルワラヤンに自分の代わりに殺したことにしてくれと懇願する。しかし、意外なことに、息子のパラニが自ら罪を被ることを申し出、代わりに父を代議士にするよう要求する。
 ・・・
 15年後。IPSのミトラン(Jayam Ravi)は4人の同僚――シャクティ(Ganesh Venkatraman)、ジャナルダン(Rahul Madhav)、スーラージ(Harish Uthaman)、カディレーサン(Sricharan)――と極秘に捜査活動を行い、いくつかの手柄を立てていた。しかし、ミトランの同僚たちは、せっかく逮捕した犯罪者が実は内務大臣と結託しており、すぐさま釈放されたのを見て、憤りを感じる。ミトランは仲間に対し、これまで捜査してきたいくつかの事件は医療・薬品業界を巡る巨大犯罪ネットワークと関係していると説明する。それには医療・薬品業界の大物実業家アショーク・パンディヤン(Nagineedu)、天然資源開発業者のチャールズ・チェッラドゥライ(Saiju Kurup)、ランドマフィアのペルマール・スワーミ(Madhusudhan Rao)が絡んでいるとのことだった。またミトランは、それらの犯罪者たちの真のリーダーはシッダールト・アビマンニュ(Arvind Swamy)だと説明する。シッダールトは実は15年前に少年院入りしたパラニであり、今やパドマシュリーを戴くほどの科学者となっていた。しかし、彼は科学を私腹を肥やすことに利用していた。また、今や厚生大臣となっていた父のセンガルワラヤンを傀儡として利用していた。
 スイスの薬品会社社長アンジェリーナは、貧困者のためのジェネリック薬品の製造をインド政府と提携することになっていた。しかし、薬品の特許を保持したいシッダールトはこれを阻止しようと、刺客にアンジェリーナを殺害させる。この時、護衛に付いていたミトランも撃たれてしまう。ミトランを強力なライバルだと見抜いていたシッダールトは、医者に命じて、ミトランの胸にGPSと盗聴器を組み込んだ超小型発信装置を埋め込ませる。これでシッダールトはミトランの言動を完璧に把握する。
 ときに、シッダールトは海藻から糖尿病治療薬を作る技術を開発しており、特許を取って大儲けしようとしていたが、共同開発者のマニメーガライ(Abhinaya)はそれに反対していた。それでシッダールトは手下のヴィッキー(Vamsi Krishna)に命じて、マニメーガライを殺害させる。しかし、マニメーガライはその際の様子をビデオに撮影し、それを記録したSDカードを恋人のクマールに渡していた。ヴィッキーはクマールからSDカードを奪おうとするが、それはミトランの同僚ジャナルダンの手に渡る。だが、ミトランの会話からジャナルダンの足取りをつかんだシッダールトは、ジャナルダンを殺害するが、SDカードは見つからなかった。
 ミトランは自分の胸に発信装置があることに気付き、それがシッダールトの仕業だと悟る。彼は逆にその装置を利用し、シッダールトを追い詰めていく、、。

・その他の登場人物 : マヒンマ(Nayantara),シルパ(Mugdha Godse)

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★★☆
◎ 物 語 : ★★★★☆
◎ 脚 本 : ★★★★☆
・ラージャー監督は、リメイク元の作品に応じて、いろいろなタイプの映画を撮ってきたし、前作の【Velayudham】(11)は漫画チックなヒーロー中心アクション映画だったが、本作は一転してリアルタッチなクライムスリラー。この辺はやっぱりラージャー監督の一貫性のなさを感じるが、何はともあれ、本作は面白かった。

・脚本、テーマ、キャラクター設定、技術のすべての点において良い。ストーリーと脚本はたぶんスバー(Suresh & Balakrishnan)との共同だと思うが、9ヶ月ぐらいかけて書いたらしい。

・際立って良いのはキャラクター設定で、ヒーローのミトラン(Jayam Ravi)はむしろ地味なぐらいだが、悪役の科学者シッダールト・アビマンニュ(Arvind Swamy)が光っている。ヒロインのマヒンマ(Nayantara)も通常のお色気担当とは違い、後半に入ってから渋い働きを担わされている。息子のおかげで大臣にまでなれたセンガルワラヤン(Thambi Ramaiah)は、タミル映画ではめったにお目にかかれないコメディアン像を見せている(演じたタンビ・ラーマイヤが上手い)。

・テーマが医療・薬品業界を巡る悪のネットワークというのも空恐ろしくて良い。取り上げたモチーフがジェネリック薬品というのも今風で良い。

・個人的に、シッダールトが「海藻」から糖尿病治療薬を開発するというのが面白いと思った。実はインド人というのは海藻を嫌う人々で、海苔なんかも食べようとしない。動物系食材じゃないので、ベジタリアンに勧めても、まず食べない。そういう材料から医薬品(しかも、インド人を悩ませている糖尿病治療薬)を作るという発想が意外だった。

・全般的によくできた映画だと思うが、難を言えば、テンポがとろい。タミル映画の特徴だとも言えるが、もうちょっと巻きを入れてもよかったと思う。

・それと、「おのれの器量はおのれの敵によって知れる」をモチーフに、正義の警官ミトランと悪の華シッダールトががっぷり四つに組む感じが良かったが、しかし、映画はシッダールト(パラニ)の生い立ちから始まり、シッダールトの爽やかな最期で終わっていたので、もしや本作の主人公はシッダールトだったのか?という気もなきにしもあらず。

◎ 配 役 : ★★★☆☆
◎ 演 技
・ジェイヤム・ラヴィ(ミトラン役) ★★★☆☆
 スーパーヒーローというのじゃなく、冷静で地に足着いたIPSを好演している。ただ、皮下脂肪がかなりついていて、颯爽とした感じはなかった。【Dhaam Dhoom】(08)や【Peranmai】(09)の頃の体型でやったら、もっとカッコよかったと思う。
 (写真下:ヒロインのナヤンターラーと。)

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・アルヴィンド・スワーミ(シッダールト・アビマンニュ役) ★★★★☆
 上で書いたとおり、この人の悪役像が効いている。これまでもっぱら「善い人」を演じてきた俳優なので、悪役ができるのか心配だったが、知能が高く、エゴイスティックで貪欲な悪役を恐ろしく演じていた。こういうダンディーな悪役はラグヴァラン以来じゃないだろうか。(もっとも、このお方が今後も悪役を続けるとは考えられないが。)

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・ナヤンターラー(マヒンマ役) ★★★☆☆
 堅物のヒーローになかなか愛してもらえないヒロインを健気に演じている。この人は台詞に必ず吹き替えが付くので、フェイス・エクスプレションとボディー・ランゲージだけの評価になるが、やっぱり上手い。それに、大人の色気が良い。

・タンビ・ラーマイヤ(センガルワラヤン役) ★★★★☆
 上で書いたとおり、息子の傀儡の厚生大臣を滑稽に演じている。

・ミトランの同僚4人の中にガネーシュ・ウェンカトラーマンもおり、活躍を期待したが、ひげ剃り跡が黒々している以外、特に印象に残らない働きだった。むしろ、ジャナルダン役のラーフル・マーダヴのほうが、「早く楽にしてやれよ」と叫びたくなるぐらい可哀そうな殺され方をし、記憶に残る。

・私的にうれしかったのは、聾唖の美女アビナヤさんが出ていることだった(マニメーガライ役)。しかし、出番は超限定的。白衣を着て顕微鏡を覗くシーンなんかもあったら、もっとうれしかったのに。

・もう一人、シッダールトの愛人シルパを演じたムグダー・ゴードセーは、単なる飾りかと思いきや、終盤でかなり重要な役回りをしていた。ヒンディー映画【Fashion】(08)のジャネット役が記憶に残っているが、本作でもまだまだセクシーだった。

◎ 音 楽 : ★★★★☆
◎ BGM : ★★★☆☆
◎ ダンス : ★★☆☆☆
・音楽はヒップホップ・タミラーというデュオの担当。カッコいい音楽だった。

◎ アクション : ★★★☆☆
◎ 美 術 : ★★★☆☆
◎ 衣 装 : ★★★★☆
◎ 撮 影 : ★★★★☆
◎ 編 集 : ★★★★☆
・映像は、場面によって色調や画質を変えるというまめなことをやっていたので、てっきりデジタルだと思っていたら、なんとフィルムで撮影されたものだった。私的には、映画はやっぱりデジタルよりフィルムのほうが好きだな。

◎ その他(覚書)
・ロケ地の1つにウッタラーカンド州のマスーリーがあり、そこでミトランたちの訓練が行われるという設定だったが、実際に当地にIPSの訓練所があるようだ。

◆ 完成度 : ★★★★☆
◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★★★☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 10月3日(土),公開第6週目
・映画館 : INOX (JP Nagar),18:50のショー
・満席率 : 9割
・場内沸き度 : ★★★☆☆

 

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