カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Ennu Ninte Moideen】 (Malayalam)

<<   作成日時 : 2015/10/21 21:16   >>

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 最近、マラヤーラム映画といえば、ファハド・ファーシルやドゥルカル・サルマーン、ニヴィン・ポーリらのヤングスター映画を中心に追い駆けていたので、元祖ヤングスターのプリトヴィくんを忘れていた。彼の作品を観るのは【Ayalum Njanum Thammil】(12)以来かな?(追記:去年【Kaaviya Thalaivan】を観てました。) もっとも、私が忘れていただけであって、プリトヴィくん自身は相変わらず着実に出演本数を伸ばしているし、秀作/ヒット作もある。本作も公開以来評判が高く、ヒットとなっているので、久々に拝顔することにした。(もっとも、拝顔したかったはヒロインのパールワティのほうだが。)
 本作は実話に基づいたもので、ケーララ州コーリコード近郊に暮らしていたモイディーンとカーンチャナの愛の物語がモデルとなっているとのこと。
 (写真上の左側の男女が実際のモイディーンとカーンチャナ。)

【Ennu Ninte Moideen】 (2015 : Malayalam)
脚本・監督 : R.S. Vimal
出演 : Prithviraj, Parvathi, Saikumar, Lena, Bala, Tovino Thomas, Sivaji Guruvayoor, Kalaranjini, Sudheer Karamana, Sudheesh, Sashi Kumar, その他
音楽 : M. Jayachandran, Ramesh Narayan, Gopi Sunder (BGM)
撮影 : Jomon T. John
編集 : Mahesh Narayanan
制作 : Suresh Raj, Binoy Shankarath, Ragy Thomas

題名の意味 : とわに君のモイディーン
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ロマンス
公 開 日 : 9月19日(土)
上映時間 : 2時間47分

《 あらすじ 》
 時は1960年代、ケーララ州コーリコード近郊のムッカム村にB・P・モイディーン(Prithviraj)とカーンチャナ(Parvathi)がいた。モーディーンはイスラーム教徒で、村の名家ウンニ・モイディーン・サヒーブ(Saikumar)の息子だった。父が国民会議派の支持者なのに対し、モイディーンは共産主義者で、父と対立することがしばしばだった。他方、カーンチャナはヒンドゥー教徒で、地主の娘だった。コーリコードの大学で医学を学ぶ彼女は、是は是、非は非とはっきり言える女性だった。
 幼馴染みモイディーンとカーンチャナはいつしか強く愛し合うようになる。だが、モイディーンに縁談が持ち上がったとき、彼は両親にヒンドゥー教徒のカーンチャナ以外と結婚しないと打ち明ける。この言葉に激怒した父に殺されそうになったため、モーディーンは家を出、おじの家に身を寄せる。他方、モーディーンの送った手紙が発覚したカーンチャナも、大学の寮から連れ戻され、実家の一室に軟禁されてしまう。彼女は厳格なおじ(Sivaji Guruvayoor)と兄セードゥ(Bala)の監視下に置かれる。
 だが、これで愛の潰える二人ではなかった。二人は会えなくとも、文通その他の手段で気持ちを伝え合う。モイディーンはカーンチャナに駆け落ちを提案するが、カーンチャナは妹たちの結婚に障るからと言って、同意しない。モーディーンは適切な時が来るまで待つことにする。その後、カーンチャナは見合いをすることになるが、モイディーンと結婚できないなら死んだも同じと、寡婦の白衣装を着て、見合いの席に現れる。
 ある夜、モイディーンは共産主義の同志バーシ(Sudheer Karamana)らと、カーンチャナの家の前で演劇を演じる。それは政治風刺にかこつけて、カーンチャナの家族を批判するものだった。カーンチャナの兄セードゥは激怒し、モイディーンを襲撃するが、逆に彼に諭される。
 二人が引き離されて10年が経つころ、外出を許されたカーンチャナは密かにモイディーンと会う。二人は駆け落ちする意思を固める。だが、その帰り道、モイディーンは父に刃物で刺され、入院する。この一件でモイディーンの母(Lena)は夫に愛想を尽かし、家出してしまう。モイディーンと父の間で裁判となるが、意外なことに、モイディーンが父に刺されたことを否認したため、父は無罪となる。ほどなく、人生で初めて息子に敗北したことを悟った父は、静かに息を引き取る。モイディーンは母と共に実家に戻る。
 その後、家族と一緒に映画を観に来ていたカーンチャナに対し、モイディーンは映写機を使って意思を表示する。二人は夜中の2時に駆け落ちする約束をするが、生憎とその晩にカーンチャナの親族のラーマチャンドラン(Sudheesh)が急死してしまい、駆け落ちの機を失う。
 ときに、子供の頃よりカーンチャナを想っていたアップ(Tovino Thomas)が、セードゥに、カーンチャナと一緒になりたい意思を伝える。アップはカーンチャナと見合いをするが、彼女のモイディーンに対する愛の強さを知り、身を引くことにする。
 長い歳月の末、ついにカーンチャナの家族も軟化する。モイディーンはカーンチャナを連れてアメリカへ移住しようと、パスポートを申請する。そして、できた二人分のパスポートを持って、モイディーンはカーンチャナに会うために、イルワンジ川の渡し舟に乗るのであったが、、。

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★☆☆
◎ 物 語 : ★★★★☆
◎ 脚 本 : ★★★★☆
・久々にヘビーな純愛物を観た。モイディーンとカーンチャナの愛の強さにたじろぐほどだった。なぜだか分からないが、映画開始3分で本作が秀作だと知れた。以降、安心して作品の世界に酔えた。片やイスラーム教徒、片やヒンドゥ教徒と、異宗教ゆえに引き離されるカップルという、インドではもう何万回作られたか分からないテーマの映画だが、またこうしてフレッシュな作品が現れるとは驚きだ。

・実在のモイディーンとカーンチャナの物語は知らないが、こちらの短い記事を読むだけでも興味深い。カーンチャナは1940年ごろの生まれで、モイディーンは3歳年上らしい。映画の物語の起点は彼女が大学生だった1960年ごろだと思われる。カーンチャナは現在も存命だが、モイディーンは1982年に死亡している。つまり、実に22年間もカーンチャナは家に軟禁され、会うこともままならなかったのに、それでも二人はお互いを永遠の伴侶と見なしていたことになる。

・22年という長い歳月でも、この二人が実際に会ったり、言葉を交わしたり、手を握り合ったりしたのは、たぶん数えられるぐらいの回数だろう。それでも、私が結婚するのはこの人しかいないと、殴られても、殺されかけても、辛抱強くその時を待つ。しかし、運命の悪戯で、何度かの駆け落ちの試みは実現せず、結局はモイディーンの命が奪い去られる。それでも、カーンチャナは「モイディーンの未亡人」として生きていく道を選ぶ。こんな話はもはや「ラブ・ストーリー」とは言えないだろう。「リタ(天則)」のドラマだ。大きい。

・映画本編も泣けるものだが、映画を観た後で、上にリンク付けした記事を読むと、さらにじわりと来る。映画はカーンチャナが「未亡人」になるところで終わっているが、その後の後日談も良い。

・カーンチャナとモイディーンが恋仲になる決定打は本(正確には、本を手段とした暗号ふうの告白文)だった。あらすじで書いたとおり、二人が気持ちを通じ合わせる手段は主に手紙だった。愛というのは、肌と肌が触れ合い、体の匂いや息の温もりを感じながら育まれることが多いと思うが、この二人はそれが困難だったため、全く言語を媒介として愛を強めている。こういう「文字萌え」の愛もあるんだな。

・手紙のやり取りという、映画的には退屈になりがちなストーリーを映画的にまとめるため、上手く道具立てをしている。その1つが「雨」で、雨がBGM以上に情緒を作る働きをしている。概ね恋人たちを慈しむ慈雨として現れるが、そうは問屋が卸さないところが面白い。

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・もう1つの道具立てはキャラクター造形だろう。モイディーンの父(Saikumar)もカーンチャナのおじ(Sivaji Guruvayoor)も、人というよりは、明らかにインドの伝統的な価値観を体現する何物かだった。堅く聳える伝統の壁をサーイクマールとシヴァージ・グルヴァユールが上手く演じたからこそ、モイディーンとカーンチャナの悲劇性も際立ったと思う。

◎ 配 役 : ★★★★☆
◎ 演 技
・プリトヴィラージ(モイディーン役) ★★★★☆
 このモイディーンという人物は、共産主義活動家、作家、画家、演劇人、サッカー選手と、万能型の才人だったらしい。理想主義者だが、頭が固いわけではなく、現実的な融通性も持つ人物として描かれていた。プリトヴィくんが好演している。

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・パールワティ(カーンチャナ役) ★★★★☆
 こういう文芸物では魅せるなぁ。惚れ直した。

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・サーイクマール(モイディーンの父役) ★★★★☆
 上で言及したとおり、この迫力ですからね。

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・レナ(モイディーンの母役) ★★★★☆
 ダイエットをして、銀幕外ではキラキラな一面も見せていたレナさんだが、それと銀幕上の仕事は別と割り切っているようだ。プリトヴィ演じるモイディーンの「母」を見事に演じている。

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・バーラー(セードゥ役) ★★★☆☆
 【Puthiya Mugham】(09)で見たときは良いアンタゴニストが登場したと感心したが、その後肉付きがよくなって、若いころの西田敏行になってしまった。

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◎ 音 楽 : ★★★☆☆
◎ BGM : ★★★★☆

◎ アクション : ★★★☆☆
◎ 美 術 : ★★★★☆
◎ 衣 装 : ★★★★☆
◎ 撮 影 : ★★★★☆
◎ 特殊効果 : ★★★☆☆
◎ 編 集 : ★★★☆☆
・映像は概ね良かったが、スローモーションを多用しすぎているように感じた。

◎ その他(覚書)
・映画中にカーンチャナとその家族が「Lisa」という題名の映画を見に行くシーンがあるが、たぶんこの【Lisa】(78)のことだと思う。なんとホラー映画らしい。実在のカーンチャナたちが実際にこの映画を見に行ったのか、それとも監督のアイデアなのかは、分からない。

◆ 完成度 : ★★★★☆
◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★★★☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 10月18日(日),公開第5週目(バンガロールで3週目)
・映画館 : PVR (Koramangala Classic),10:15のショー
・満席率 : 6割
・場内沸き度 : ★★★☆☆ (あちこちで拍手が起きていた。)
・備 考 : 英語字幕付き

 

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
カーヴェリ川さん、こんにちは。
【Charlie】を観たあとで、この映画のことを思い出して、改めてブルーレイで購入しました。実はまだ見ていないのですが、同時に入手した【Ann Maria Kalippilaanu】という映画が意外にもいい感じで(笑)。もしご存知でなかったらYouTubeでトレーラー等をご覧頂きたいのですが、主演の Sara Arjun がタマンナーと武井咲を足して2で割ったような「こまっしゃくれた」いい演技してました。この女優の将来が期待大です。Dulquer Salmaan も「それってもしかしたら本人役?」的に出演しています。
私の個人的な感想で言えば、ここ最近のマラヤーラム映画はタミルやテルグに比べるとチャレンジングな熱気にあふれているような気がします。ヒットするかどうかはともかく、観客を映画館にひきつける工夫をしているように思います。
よっぴい
2017/03/29 21:46
相変わらず素晴らしい嗅覚ですね。
Sara Arjunと言われてもピンと来なかったんですが、調べたら、タミル映画「Deiva Thirumagal」のあの子役ですね。あの映画は号泣しましたよ。
その後はフォローしていませんでしたが、子供は一瞬一瞬で変わっていくので、楽しみですね。
カーヴェリ
2017/03/31 09:34
返信ありがとうございます。あら!「神さまがくれた娘」の邦題で公開されたあの映画の女の子だったのですね。そんな予感もしていたのにすっかり気づきませんでした。この映画はスルーしていたので、今後何かの機会に見てみることにします。
ここ最近【James and Alice】【Anarkali】【2 Countries】等々、Amazonで買えるDVDは手あたり次第に見てましたが、面白い映画にはなかなか巡り合いません。4月から忙しくなりそうなので、そういうこともしばらく縁遠くなりそうです。
よっぴい
2017/04/02 12:26

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