カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Kanche】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2015/10/28 21:22   >>

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 テルグのクリシュ監督は好きな監督だし、評価していたが、よせばいいのに、わざわざボリウッドに赴いて【Gabbar Is Back】(15)というヒンディー映画(古いタミル映画【Ramanaa】(02)のリメイク)でひと儲けするという不可解な動きをしたため、私的には疑問符の付く監督となってしまった。しかし、一応この新作は注目していたが、トレイラーを見るなり、ハリウッドか?ボリウッドか?という、勿体ぶった映画っぽかったので、観る気が失せた。にもかかわらず観たのは、たまには鉄兜物もいいかと、、。

【Kanche】 (2015 : Telugu)
脚本・監督 : Krish (Radhakrishna Jagarlamudi)
台詞 : Sai Madhav Burra
出演 : Varun Tej, Pragya Jaiswal, Nikitin Dheer, Srinivas Avasarala, Gollapudi Maruti Rao, Showkar Janaki, Ravi Prakash, Posani Krishna Murali, Satyam Rajesh, Singeetam Srnivasa Rao, その他
音楽 : Chirantan Bhatt
美術 : Sahi Suresh
撮影 : Gnanashekhar
編集 : Suraj Jagtap, Rama Krishna Arram
制作 : Saibabu Jagarlamudi, Y. Rajeev Reddy

題名の意味 : 垣根
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ドラマ(戦争)
公 開 日 : 10月22日(木)
上映時間 : 2時間6分

《 あらすじ 》
 英領インド時代の1944年、南インドのデーワラコンダ村出身のドゥーパーティ・ハリ・バーブ大尉(Varun Tej)は、英領インド軍の兵士として、ナチス・ドイツ軍と戦うためにイタリア戦線にいた。ハリ・バーブと同じ部隊にはイーシュワル大佐(Nikitin Dheer)やダース(Srinivas Avasarala)ら多数のインド人兵士が従軍していた。ハリ・バーブとイーシュワルは同村の出身で、二人の間には深い確執があった。
 ・・・
 遡ること数年、ハリ・バーブは床屋の家系で貧しかったが、聡明だったため、マドラスの大学で学ぶことを許されていた。同じ大学には同じデーワラコンダ村の大地主の娘シーター・デーヴィ(Pragya Jaiswal)も学んでいた。やがて二人は恋仲になる。
 村に帰省した二人は結婚を考える。しかし、カーストと家柄の差は抗いがたく、家族から反対される。なかんずく、シーターの兄イーシュワルは激しく妹からハリ・バーブを引き離そうとした。また、この村では異カースト間の対立が長年続いており、それも状況をややこしくしていた。そんなこんなの中で、イーシュワルもハリ・バーブも兵士として世界大戦に従軍することになる。
 ・・・
 ハリ・バーブとイーシュワルの英国部隊がナチス・ドイツ軍に急襲され、激しい戦いの末、敗北し、降伏することになる。英軍の将校はジュネーブ条約に基づく捕虜の保護を求めるが、ドイツ側はかまわず処刑し、イーシュワルを含む3名だけを捕虜として移送する。ハリ・バーブを含む5人の兵士は本隊とはぐれていたため助かる。ハリ・バーブらは捕虜となった3名の救出に動く。
 ハリ・バーブら5人は、移動中の町でナチスによるユダヤ人の迫害・私刑の現場を目撃する。ハリ・バーブらはその町の住民を救出する。そして、彼らを安全な地区まで搬送することにする。
 その途上で、ハリ・バーブらは捕虜となっていた英軍3名を輸送するドイツ軍の車列と遭遇する。ハリ・バーブらは激しい銃撃戦の末、イーシュワルを含む3名を救出する。
 その後、ハリ・バーブらは河に出る。彼らのミッションは町の住民を河の向こうまで運ぶことだったが、生憎とその河原にはドイツ軍がキャンプを張っていた。ハリ・バーブはそのドイツ軍を殲滅して、渡河を強行する作戦を考える、、。

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★★☆
◎ 物 語 : ★★★☆☆
◎ 脚 本 : ★★★☆☆
・「たまには鉄兜物もいいかと」と気楽な気持ちで観に行ったが、よくよく考えれば、インド映画で戦争物は珍しいし、第二次世界大戦のヨーロッパ戦線を舞台にしたものはさらに珍しいはずなので、貴重な映画体験ができたと言うべきだ。

・物語は、ハリ・バーブ(Varun Tej)とイーシュワル(Nikitin Dheer)が送り込まれたイタリア戦線での出来事が現在時で、それにインドでのハリ・バーブとシーター(Pragya Jaiswal)のロマンスが回想という形で細かく挿入される。上手い絡み合わせだったが、少し分かりづらいところもあった。

・上で、トレイラーを見て「ハリウッドか?ボリウッドか?」と思った、みたいな書き方をしたが、クリシュ監督はかなりテルグ語映画に踏み止まろうとした節がある。イタリアの戦場のシーンとインドのマドラスのシーン以外は、デーワラコンダというテルグ語圏の村が舞台で、ここはかなりインド臭がした。(もっとも、スタイル全体は通常のテルグ娯楽映画とは全然違った印象を受けるが。)

・デーワラコンダ(Devarakonda)というのは、テランガーナ州に同名の町があるが、そこのことなのかどうかは分からない。テランガーナ州のデーワラコンダなら、当時はニザーム領で、英領インド・マドラス管区には属していなかったはずなので、シーターのようにマドラスの大学に学び、イギリス風の生活を謳歌する半貴族がいたのかどうか、疑問に思う。

・戦場の場面は、1943年にイタリア王国が降伏し、ナチス・ドイツが占領した後のイタリアのどこか、、、場所がどこかは分からなかったが、たぶん北イタリアの国境辺りだろう。イタリア戦線に限らず、第二次世界大戦中に250万人以上のインド人兵士が英領インド軍として戦ったらしい。

・クリシュ監督というのはメッセージ色のある知的な映画を撮っているが、割と素直で、メッセージに向かって一直線という傾向がある。本作もそうで、題名の「Kanche(垣根)」が示すとおり、人と人が垣根を作って争うことの虚しさを描いている。それを、インド人にとっては切実なカースト差別と、ナチス・ドイツのユダヤ人差別とをオーバーラップさせて描き、カースト差別がユダヤ人差別と同じぐらい不条理だと訴えている。

・で、戦争という極限的な状況で、人と人が戦うのに、人が人を救うのに、カーストも民族も関係ないじゃないか、と言えるなら、平時の日常社会でも差別はおかしいという、平等主義に話を持っていっている。こうした考え方はクリシュ監督の基本思想らしく、姿かたちは違えど、【Gamyam】(08)と【Vedam】(10)でも似たようなことが言われていた(【Krishnam Vande Jagadgurum】(12)はずいぶん違っているが)。

・Wikipediaの本日の記述によると、製作費は2億1千万ルピーらしい。これは決して安くないが、大型とは言えない金額。その予算の制限内でこれだけの映像を作ったのは、大健闘と言える。(参考に、【Baahubali】は本日のWikipediaの記述では12億ルピー。)

・ただ、肝心の面白さだが、真面目に作られた良い映画だとは思うが、退屈だったよ。

◎ 配 役 : ★★★☆☆
◎ 演 技
・ワルン・テージ(ハリ・バーブ役) ★★★☆☆
 好印象。デビュー作の【Mukunda】(14)はさっぱりだったらしいが、本作を見る限り、頼もしい若手が現れたという感じだ。いとこのラーム・チャランを上回る人気スターになるとは考えられないが、おじのチランジーヴィの若いころのワイルドさはチャランよりこのワルン・テージのほうがよく似ている。ラーナー・ダッグバーティみたいな線では行けそうだ。

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・プラギャー・ジャイスワール(シーター役) ★★★☆☆
 登場するなり、「わぁ、きれい」という声が出るほどきれいに見えたし、英領インド時代の名家のお嬢さまをエレガントに演じてもいた。しかし、それ以上のコメントはない。

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・ニキティン・ディール(イーシュワル役) ★★★☆☆
 【Chennai Express】(13)で南インドでもお馴染みのこのお方がアンタゴニストだった(悪役ってことではなかったが)。
 (写真下:クリシュ監督(右)に演技指導を受けるニキティン。)

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・シュリーニワース・アワサラーラ(役) ★★★☆☆
 重い戦争物にあって、息抜き担当としてキャスティングされたのかもしれないが、こんなインテリっぽく、ヘルメットの似合わない男でも戦場に立つという、戦争の不条理を描く上では適役だった。

◎ 音 楽 : ★★★☆☆
◎ BGM : ★★★☆☆
◎ ダンス : ★★☆☆☆

◎ アクション : ★★★★☆
◎ 美 術 : ★★★★☆
◎ 衣 装 : ★★★★☆
◎ 撮 影 : ★★★★☆
◎ 特殊効果 : ★★★☆☆
◎ 編 集 : ★★☆☆☆
・英領インド時代のマドラスの見せ方はタミル映画【Madrasapattinam】(10)のほうがよくできていた。

◎ その他(覚書)
・イタリア戦線の場面はグルジアで撮影されたらしい。

◆ 完成度 : ★★★★☆
◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★★☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 10月25日(日),公開第1週目
・映画館 : INOX (JP Nagar),13:00のショー
・満席率 : 2割
・場内沸き度 : ★☆☆☆☆

 

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2017/01/25 21:12

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