カーヴェリ川長治の南インド映画日記

アクセスカウンタ

zoom RSS 【Pasanga 2】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2015/12/28 21:31   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 0

画像

 パーンディラージ監督の子供映画【Pasanga】(09)は、良い映画だと本ブログでも評価しておいたが、まさか国家映画賞まで取るとは思わなかった。その【Pasanga】のパート2、、ということかどうかはさて置き、同じ題名を冠した【Pasanga 2】が公開されたので、観て来た。これは【Pasanga】、【Marina】(12)と併せて、パーンディラージ監督の「子供映画三部作」の完結編になるらしい。(残念ながら【Marina】は未見。)
 上の点だけですでに注目作だったが、スーリヤが制作・出演するということで、さらに注目度を増していた。カメオ出演ということだが、トレイラーを見る限り、スーリヤはかなり気合いを入れているようだ。

【Pasanga 2】 (2015 : Tamil)
脚本・監督 : Pandiraj
出演 : Suriya, Amala Paul, Master Nishesh, Baby Vaishnavi, Master Aarush, Karthik Kumar, Bindu Madhavi, Ramdoss, Vidya Pradeep, Jayaprakash, Vinodhini, Rekha Haricharan, (以下、カメオ出演)Samuthirakani, Imman Annachi, Soori
音楽 : Arrol Corelli
撮影 : Balasubramaniem
編集 : Praveen K.L.
制作 : Pandiraj, Suriya

題名の意味 : 子供たち・2
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ドラマ
公 開 日 : 12月24日(木)
上映時間 : 2時間7分

《 あらすじ 》
 カヴィン(Nishesh)もナーヤナ(Vaishnavi)も活発すぎる小学2年生で、落ち着きがなく、すぐ気が散り、教室内で問題を起こすことも多かった。それで、何度も転校を余儀なくされ、カヴィンの両親(Ramdoss & Vidya Pradeep)にとっても、ナーヤナの両親(Karthik Kumar & Bindu Madhavi)にとっても、可愛い我が子は同時に頭痛の種でもあった。親たちは何度か子供を医者に診せるが、適切な診断、アドバイスは得られなかった。
 ある日、カヴィンの暮らすアパートにナーヤナの家族が引っ越して来る。カヴィンとナーヤナは一目見るなり似た者の気配を感じ、すっかり意気投合する。そして、共謀してアパートで大規模な悪戯をした結果、住人は大混乱。その責任を取って、両親たちはカヴィンとナーヤナを学校の寮に入れることにする。
 寮で寂しさを味わったカヴィンとナーヤナだが、やはり問題行動を起こしたため、寮も追い出され、家に戻る。そして、同じアパートに暮らす小児精神科医のタミル・ナーダン(Suriya)に出会う。タミルはアビマン(Aarush)とカーマークシの2児の父で、妻のヴェンバー(Amala Paul)は新コンセプトの学校「The Dream Unschool」で教員をしていた。タミルはカヴィンとナーヤナの両親に、子供たちは「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」だが、これを否定的に考える必要ななく、むしろ彼らが持っている積極的な能力に目を向けるべきだと説得し、2人をヴェンバーの学校に入校させる。
 カヴィンとナーヤナは水を得た魚のように活発さを取り戻す。そして、「子供技能コンテスト」が行われる際に、カヴィンは「ダンス」で、ナーヤナは物語の「語り」で、タミルの息子アビマンは「絵」でそれぞれ出場することにする、、。

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★☆☆
◎ 物 語 : ★★☆☆☆
◎ 脚 本 : ★★★☆☆
・子供映画と一口に言っても、例えば、@純粋に子供の世界を描いたもの、A社会のある出来事/側面を一般的な大人目線でなく子供の視線で描いたもの、B子供を取り巻く環境(例えば貧困や教育制度)のせいで子供が苦しむ様を描いたもの、C何らかの問題(発達障害や身体障害など)のある子供と周囲の関係を描いたもの、等、いろいろなタイプがあるが、本作はCに入ると思われる。【Pasanga】が田舎の2家族の関係を子供を中心に描いたもので、Aに入ると思われるので、本作はそのパート2と言うより、全然違ったアプローチの子供映画になっている。

・本作で取り上げた子供の問題は「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」で、日本ではすっかりお馴染みだが、インドではまだ認知度が低いとされていた。この障害を持つ子は注意が散漫だったり、落ち着きがなかったりして、学級活動に悪影響を及ぼすとして、邪魔者扱いされることが多いが、本作では、まず周囲の人間(親や教員)がこの障害に関して正しい理解を持ち、こうした子供を否定的に捉えず、むしろ何らかの突出した才能を持っているかもしれないスーパーキッズだと考えるべきだと、小児精神科医のタミル・ナーダン(Suriya)の口を通して語られる。(この辺は予想どおりの展開。)

・何らかの障害を持つ子を描いたインド映画では、何と言ってもヒンディー映画の【Taare Zameen Par】(07)が有名だが、本作はそれよりもずっと娯楽映画的に、緩く作られている。しかし、そのことは本作が【Taare Zameen Par】より劣っていることを意味しない。私は【Taare Zameen Par】が好きではないのだが、その理由は、イシャーン少年が写生コンテストで優勝してしまうからである。コンテストに勝つということは、勝者の裏には必ず敗者がおり、1位、2位、3位と序列化されるわけで、これは受験競争社会と構造的に変わらず、それに勝つという、あるいは勝ったからどうだという展開には胡散臭いものを感じてしまう。その点で本作は、カヴィン、ナーヤナ、アビマンはコンテストに出場し、見事なパフォーマンスを披露するのだが、ここでヒネリがあって、上の胡散臭さを回避している。

・本作でADHDでありながら社会的に成功した人の例として、ビル・ゲイツ、マイケル・ジャクソン、トム・クルーズ、ウォルト・ディズニー、プラブデーヴァ、アインシュタイン、リンカーンなど、大勢の名前が挙げられていた(たぶんADHDだけでなく、アスペルガー症候群やディスレクシアも含めていると思われる)。これは障害を持ち、否定的に捉えられている児童に希望を与える意味では良いと思うが、こうした障害を持つ子がすべて成功するわけではないので、ちょっと景気よく名前を挙げすぎた思う。

・子供がADHDのような障害を持つ原因として、胎児期の環境(胎教)、親の性向(遺伝)などが影響するというふうに捉えられているようだった。

・また、子供の障害を描くだけでなく、教育制度や親の教育観も風刺的に語られていた。例えば、教育熱心のあまり胎児の段階で教育相談を受けるとか、子の面接のために親が朝の5時から学校に並ぶとか、ランキング重視とか、子の将来に過度の期待をかけるとか、英語媒介学校とタミル語媒介学校の違いとか。

・このパーンディラージ監督の子供シリーズや【Thanga Meenkal】(13)、【Kaaka Muttai】(15)、古くはマニ・ラトナム監督の【Anjali】(90)など、タミル映画には子供映画の秀作が多いような気がするが、たぶんこれも偶然ではないのだろう。チェンナイは南インドの政治的・経済的中心地というだけでなく、宗教・思想面でも存在感が大きく、教育思想でもジッドゥ・クリシュナムールティの伝統がある。そうした精神的風土が映画作りにも反映されているように思える。ちなみに、本作でヴェンバー(Amala Paul)の勤めている学校(The Dream Unschool)はクリシュナムールティ所縁の「ヴァリー・スクール」を彷彿させるものだった。

・ちなみに、このドリーム・アンスクールでの最初の授業は「笑う練習」だった。

・本作の題名は「Pasanga 2: Haiku」とも表記されているが、この「Haiku」はやっぱり「俳句」のことらしい。しかし、本作と俳句にどんな関係があるかは分からなかった。ちなみに、俳句はラビンドラナート・タゴールによってインドで広められ、2008年にはバンガロールで「World Haiku Festival」も行われている。

◎ 配 役 : ★★★☆☆
◎ 演 技
・スーリヤ(タミル・ナーダン役) ★★★☆☆
 いかなる作品でいかなる役を演じようと、気合いを入れて取り組むのがスーリヤだが、本作でも顔面芸、声芸 物真似芸などを誠実に披露している。児童精神科医の役柄は良かったが、良すぎる嫌いもあった。
 (写真下: ティラノサウルスになり切るスーリヤ・シヴァクマールさん、40歳。)

画像

・アマラ・ポール(ヴェンバー役) ★★★☆☆
 実生活でも人妻となり、気が付いたら若妻役までやるようになったマイナー・ガールだが、本作はストレスのない役を伸び伸びとやっていて、良かった。気に掛かったのはアフレコで、あまり良くなかったが、もしかしたらセルフダビングかもしれない。
 (写真下: アマラさんも顔面芸。やっぱ目が大きい。)

画像

・子供を使わせれば本当に上手いパーンディラージ監督だが、本作も子供の面白さを上手く引き出している。カヴィン役はニシェーシャ、ナーヤナ役はヴァイシュナヴィという子役らしい。
 (写真下: 右側がヴァイシュナヴィちゃん、左側がニシェーシュくん。左端は監督のパーンディラージ。)

画像

・カヴィンの両親を演じたのはラームダースとヴィディヤー・プラディープ。ラームダースは「盗癖」のある銀行支店長を面白く演じていた。ヴィディヤー・プラディープは若妻らしく見えた。

画像

・ナーヤナの両親を演じたのはカールティク・クマールとビンドゥ・マーダヴィ。この二人は【Veppam】(11)でもカップルを演じていた。ビンドゥも若妻をやる年齢になったんだ。

画像

◎ 音 楽 : ★★★★☆
・聞き慣れない名前だったが、調べたら、【Pisaasu】(14)でもの凄い音楽を聞かせていた音楽監督だった。本作も良かった。

◎ 美 術 : ★★★☆☆
◎ 撮 影 : ★★★☆☆
◎ 特殊効果 : ★★★☆☆
◎ 編 集 : ★★★☆☆

◎ その他(覚書)
・子供たちが「じゃんけん」をやっている場面があり、驚いた。じゃんけんはインドではほとんど知られていないと思っていた。ちゃんと「石、紙、ハサミ」と言っていた。

◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★★☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 12月25日(金),公開第1週目
・映画館 : INOX (JP Nagar),13:00のショー
・満席率 : 3割

 

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
【Kathakali】 (Tamil)
 クアラルンプールで観るタミル映画は、【Kathakali】か【Rajini Murugan】かで迷ったが、結局前者にした。理由は、【Rajini Murugan】が日本で自主上映されたというのもあるが、トランジットの限られた時間内で観るには、ランタイムが35分も短い【Kathakali】のほうが有り難いというのが大きかった。 ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2016/02/04 21:02

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
【Pasanga 2】 (Tamil) カーヴェリ川長治の南インド映画日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる