カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Killing Veerappan】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2016/01/05 21:33   >>

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 南インドの森を舞台に悪名を馳せたダコイトのヴィーラッパン。彼が2004年に殺された直後からラーム・ゴーパール・ヴァルマ監督が映画化したがっているという噂があったが、それが去年辺りからシヴァラージクマール主演でカンナダ映画として具体化されそうだと知り、面白いことになりそうだと思った。なにせヴィーラッパンといえばラージクマールを誘拐し、カルナータカ州中を大騒ぎさせた人物。それを殺害する警官をシヴァラージクマールが演じるというのだから。最近、趣味的な実験風映画ばかり撮っているRGV監督だが、実録物や実録風ドラマは得意としているだけに、本作は期待が持てた。
 さて、注目のヴィーラッパンを演じるのはサンディープ・バラドワージという新人らしい。写真を見て分かるとおり、驚くほどそっくりに扮している。

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 ちなみに、ヴィーラッパンを正面から捉えたカンナダ映画にはすでにA・M・R・ラメーシュ監督の【Attahaasa】(13)があり、それとの見比べも面白そうだった。

【Killing Veerappan】 (2016 : Kannada)
物語・脚本・監督 : Ram Gopal Varma
出演 : Shivarajkumar, Sandeep Bharadwaj, Parul Yadav, Yagna Shetty, K.P. Sridhar, Sadh Orhan, Rajesh Nataranga, Gadda Viji, Ramesh Pandit, Rockline Venkatesh, その他
音楽 : Ravi Shankar, Sandy (BGM)
撮影 : Rammy
編集 : Anwar Ali
制作 : B.V. Manjunath, B.S. Sudhindra, E. Shivaprakash

題名の意味 : ヴィーラッパン殺害
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ドキュドラマ
公 開 日 : 2016年1月1日(土)
上映時間 : 2時間30分

《 あらすじ 》
 カルナータカ、タミル・ナードゥ、ケーララの3州に跨る森林地帯で白檀、象牙の密輸、殺人、要人の誘拐を繰り返すヴィーラッパン(Sandeep Bharadwaj)。タミル・ナードゥ州とカルナータカ州の警察は共同で特別機動部隊(Special Task Force)を組織し、ヴィーラッパンの逮捕/殺害を目指していたが、この10年間は徒労だった。
 この特別部隊に属していた一人の警視(Shivarajkumar)は、森林地帯でヴィーラッパンを捕縛するのは不可能と考え、彼を森の外におびき出す必要を訴えていた。上官(K.P. Sridhar)はその警視を隊長に任命し、作戦を立案させる。隊長にはヴィーラッパン捕縛に燃える特別な理由があった。それは、殉職した警官ハリクリシュナ(Rockline Venkatesh)や森林保護官シュリーニワース(Gadda Viji)の仇を討つというだけでなく、カンナダ映画界のスター俳優ラージクマール誘拐の首謀者に天罰を加えるという目的もあった。
 隊長はまず、町に暮らしていたヴィーラッパンの妻ムットゥラクシュミ(Yagna Shetty)を利用しようと考え、シュリヤー(Parul Yadav)という女性をスパイとして雇い、ムットゥラクシュミに接近させる。そして、ヴィーラッパンが夜ムットゥラクシュミと会う場所を探しているという情報を得たため、隊長は森の小屋をアレンジし、シュリヤーを通してムットゥラクシュミに紹介する。小屋の周辺には変装した特別部隊員を配置してヴィーラッパンを待っていた。しかしこの作戦はヴィーラッパン側に漏れており、彼の捕縛はおろか、特別部隊のほうが手痛い打撃を受ける。
 この作戦失敗には内部密告者がいた。隊長はチーム内のシャシという隊員が裏切り者だと見当付け、脅した結果、果たしてシャシがヴィーラッパンを支援しているタミル・テロ組織のガーンディー(Sadh Orhan)と通じていることが分かる。隊長はガーンディーを拘束し、拷問した結果、ヴィーラッパンが勢力を拡大するために人員を必要としており、その調達をマフィアのカダニ(Ramesh Pandit)に依頼していたことを知る。
 隊長はカダニに会い、協力を要請する。そして特別部隊員をカダニの手配した人員ということにして、ヴィーラッパンに接近する。果たして部隊員はヴィーラッパンと面会することに成功するが、またしても捕縛に失敗する。
 隊長は次に、ある仲介屋を通してヴィーラッパンがAK47をほしがっていることを知る。それで隊長は、元警官で今は木材商をしているクマールという男をスパイにして、ヴィーラッパンに接近させ、ムギランという武器商人からAK47が調達可能だと伝えさせる。さらにこの機会に、ヴィーラッパンがLTTEのプラバーカラン議長を非常に尊敬しており、一度会いたい希望を持っていることも知る。隊長はクマールに、ムギランがヴィーラッパンとプラバーカランの面会の場を設定し、それは(2004年)10月18日の晩だとヴィーラッパンに伝えさせる。その日はインド海軍の演習が行われる予定で、森林の警備が手薄になるからである。
 果たしてヴィーラッパンはその晩に、3人の部下と共に、(警察の用意した)救急車に乗って森を離れる。しかし行く手には特別部隊が待ち構えており、蜂の巣にされる。

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★★☆
◎ 物 語 : ★★★☆☆
◎ 脚 本 : ★★★☆☆
・なかなか面白かった。意外なことに、最近のRGV監督作品に見られるような奇を衒った演出は控えめで、堅実なドラマになっていた。もしかしたら、故人(ヴィーラッパン)に対するリスペクトといった気持ちもあるのかもしれない。

・ヴィーラッパンという実在した人物を描いたドキュメンタリー的な作品だが、冒頭でRGV監督自身が断っているとおり、あくまでも監督が知り得た事実に基づくものであり、それに映画的なフィクションも加えられているとのこと。基本的に、ドキュメンタリーよりはドラマとして見たほうがいいだろう。

・【Attahaasa】との比較では、【Attahaasa】がヴィーラッパンを中心に据え、彼の誕生から死までを年代記風にかっちりと追っていたのに対し、本作は警察サイドに視点が置かれ、終盤の「コクーン作戦」が目玉となっている。必然、【Attahaasa】のほうがヴィーラッパンを多少とも血も涙もある「人物」として描いている。

・温度差はあるが、両作品ともヴィーラッパンを残忍非情の悪党と捉えていることには変わりない。それがちょっと私には物足りない。ヴィーラッパンを美化するつもりはさらさらないが、「立派な人物だった」との証言もあり、彼が多少とも持っていたに違いないカリスマの要因は何だったのか、彼を悪業へと駆り立てた動機、こういう人物を生み出した社会的背景などにも光を当ててほしかった。実はRGV監督にはそうしたヴィーラッパン像を期待したが、逆に【Attahaasa】以上に冷酷で滑稽な人物として描かれていた。

・警察が悪党を討つという物語といっても、通常のアクション映画のような勧善懲悪ではなく、警察サイドもかなりの「悪」として描かれていた。シヴァラージクマール演じる特別機動部隊の隊長がラストで「悪魔を倒すために、悪魔にならなければならなかった」と言っているとおり、彼らの作戦には法律違反、人権侵害が何かと含まれ、そのために作戦の協力者(例えば木材商のクマール)が口封じのために警察に暗殺されるほどだった。

・上でRGV監督作品にしては「控えめ」と書いたが、この悪と悪との戦いの部分でRGVらしいグロさが見られて、安心した。

・謎なのは、このシヴァラージクマール演じる隊長の名前が映画中に一度も出て来ないこと。シュリーダル演じるその上官の名前も出て来なかった。この二人は単純に考えるとセンタマライ・カンナンとヴィジャイ・クマールに当たるはずで、こちらの記事にはシヴァンナがカンナンの役をやるみたいなことが書かれているが、カンナンと呼ばれたことはなかったと思う。本作は細かい登場人物にも固有名が付いていたから、主人公に名前がないというのは、脚本上のミスというより、あえて隠したと考えるべきだろう。

・というのも、センタマライ・カンナンもヴィジャイ・クマールもタミル人であり、この二人を英雄視することはカンナダ警察サイドから不満も出ているほどで、よってカンナダ映画の枠内では実名を使いづらかったのかもしれない(事実、【Attahaasa】では評判が悪かった)。特にシヴァラージクマール演じる隊長がヴィーラッパンの逮捕/殺害に対する動機として「ラージクマール誘拐への報復」を挙げている手前、センタマライ・カンナンという名前はおかしい(タミル人がこんなことを言うはずがない)。この辺、本作の他言語ダビング版ではどうなっているのか気に掛かる(本作はテルグ語、タミル語、ヒンディー語のダビング版が用意されている)。

・謎はまだまだあったが、あと1つ挙げると、パルル・ヤーダヴ演じるシュリヤーという女スパイの存在。【Attahaasa】でも女スパイはちらっと描かれており、実際にこういう人物がいたのだと思うが、本作では比重がすごく重く、作戦の最後の最後まで特別機動部隊と行動を共にしている。しかし、素人が警察内部でも極秘な作戦の中核にずっといるとは考えられないし、銃を持たされるのもおかしい。しかも、隊長は作戦の違法性が漏れるのを嫌い、関係者の暗殺までしているのに、シュリヤーはそんな目に遭っていない。これを説得的に説明するには、「本当にこういう人物がいた」と言うか、「特別なメッセージを込めてこういう人物を虚構した」と言うかのどちらかだと思うが、やっぱり後者だろう。

・というのも、このシュリヤーの「目」が非常に気になった。おそらくシュリヤーというのは、ムットゥラクシュミに接近した最初の作戦の女スパイだけが実在した人物で、それ以降は、「ヴィーラッパン殺害」という尋常でない出来事を目撃した複数の、公式、非公式の目撃者の「目」を抽象的に表現したものではないだろうか。悪魔のような警察の所業を確かに見ていた「目」があった、ということを言いたかったように思えた。

・用心深いヴィーラッパンがなぜ救急車に乗って森を出ようとしたかという説明に、「目の治療のため説」、「プラバーカラン議長に会うため説」、「彼はすでに死亡していて、遺体を運ぶため説」などが流れているが、【Attahaasa】では治療説、本作ではプラバーカラン説だった。しかし、ヴィーラッパンは晩年に癌の影響で左眼を失っていたという話もあるが、両作品ともそれは無視していた。

・本作では【Attahaasa】以上に、ヴィーラッパンとタミル・テロ組織(LTTEなど)との関係が強調されていた。

・本作によると、ヴィーラッパンはラージクマール誘拐のあと、ラジニカーントやカーンチプラムのスワーミの誘拐なども企んでいたようだが、実行していたらえらいことになっていた。

◎ 配 役 : ★★★★☆
◎ 演 技
・シヴァラージクマール(隊長役) ★★★☆☆
 役柄、演技ともに、渋くて良かった。各レビューでは高い評価を受けているが、私的には普通のシヴァンナのパフォーマンスに見えた。ということは、通常の娯楽アクション映画でシヴァ兄が見せている若作りダンスなどが、いかに彼の評価の足を引っ張っているかがよく分かる。

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 ところで、上の写真のように、シヴァンナがマグを右目に当てる所作がちょっとした流行になっており、真似をした画像がネット上を賑わしている。シヴァ兄が流行の起点になるとは!

・サンディープ・バラドワージ(ヴィーラッパン役) ★★★☆☆
 写真下の左が素のサンディープ・バラドワージらしいが、それがヴィーラッパンそっくりになるとは驚きだ。しかし、見かけは凄かったが、演技的にはいまいちだったように思う。

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・パルル・ヤーダヴ(シュリヤー役) ★★★☆☆
 上で書いたとおり、大切な役回りを担っていた。あるレビューに"Parul Yadav has two revelations in this film; one, she can act well and two, she looks equally beautiful without makeup"と書いてあったのには笑った。

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・ヤジナー・シェッティ(ムットゥラクシュミ役) ★★★☆☆
 短い出番だったが、きっちり仕事はしている。やっぱり実在のムットゥラクシュミよりずっと美人なのは気に掛かるが。
 (写真下: 左がムットゥラクシュミ本人。)

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・サンチャリ・ヴィジャイ
 今や「ミスター国家映画賞」と呼びたいサンチャリ・ヴィジャイが隊員役で出ていた。【Oggarane】(14)や【Naanu Avanalla...Avalu】(15)では女っぽい役をやっているので、いきなり男っぽい役で驚いたが、演技力を見せる場面はなかった。(写真下の中央。)

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◎ 音 楽 : ★★☆☆☆
◎ BGM : ★★★☆☆
・音楽はRGV監督作品らしい調子のものだったが、私は作品に溶け込んでいないように聴こえた。BGMはサンディーという人の担当で、RGV監督自身がその出来を褒めている。

◎ アクション : ★★★☆☆
◎ 美 術 : ★★★☆☆
◎ 衣 装 : ★★★☆☆
◎ メイク : ★★★★☆
◎ 撮 影 : ★★★☆☆
◎ 編 集 : ★★★☆☆
・撮影もRGV作品らしい走るカメラ、回るカメラと忙しいものだった。「森」の撮り方は、ヴィーラッパンを育んだ場として、ここから何かを捉えようとする意図の感じられるものだった。

・話題のメイクは主に北インドで活躍しているVikram Gaikwadの担当。

◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★★☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 1月2日(土),公開第1週目
・映画館 : Gopalan Cinemas (RR Nagar),15:45のショー
・満席率 : 満席
・場内沸き度 : ★★★☆☆
・備 考 : 英語字幕付き

 

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