カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Irudhi Suttru】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2016/02/12 11:55   >>

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 R・マーダヴァンという俳優は、人によって好み/評価はまちまちだと思うが、私は十分評価している。なにせ、いつ消えても不思議ではない素材でありながら、北でも南でも活躍し、20年間ずっとインド映画界に残り続けている。ヒット作も多い。主人公もやれば、脇役もやるし、役柄も金持ちのぼんぼん、気の弱い旦那、チョコレートボーイ(!)から悪役までこなせる。なんともユーティリティの高い、クレバーな俳優である。(だから大スターとは呼べないのだが。)

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 本作はそんなマーダヴァンが野性味あふれるボクシング・コーチ役をやるということで、こりゃ、見ずばなるまいと思った。
 監督はスダー・コンガラー・プラサードという女性で、タミル映画では【Drohi】(10)という作品を撮っているが、有名なのは脚本を担当した【Mitr, My Friend】(02)だろう。
 話題のボクサー役はリティカー・シンという新人で、実際に格闘技の選手でもあるらしい。
 なお、本作はバイリンガル作品で、ヒンディー語版が【Saala Khadoos】という題名で公開されている。

【Irudhi Suttru】 (2016 : Tamil)
物語・監督 : Sudha Kongara Prasad
脚本 : Sudha Kongara Prasad, Sunanda Raghunathan
台詞 : Arun Matheshwaran (タミル語)
出演 : R. Madhavan, Ritika Singh, Mumtaz Sorcar, Zakir Hussain, Nasser, Kaali Venkat, Baljinder Kaur, Radha Ravi, その他
音楽 : Santhosh Narayanan
撮影 : Sivakumar Vijayan
編集 : Sathish Suriya
制作 : S. Sashikanth, C.V. Kumar

題名の意味 : 最終ラウンド
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : スポーツ・ドラマ
公 開 日 : 1月29日(金)
上映時間 : 1時間52分

《 あらすじ 》
 プラブ・セルワラージ(R. Madhavan)はインド・スポーツ協会の優秀な女子ボクシングのコーチだったが、一本気な性格が災いし、上司と対立することが多かった。上司の一人で、女子ボクシング・インド代表コーチのデーヴ(Zakir Hussain)はそんなプラブを毛嫌いし、セクハラ事件をでっち上げて、彼をチェンナイに左遷してしまう。
 チェンナイに到着したプラブは、現地の協会を預かる「パンチ」パーンディヤン(Nasser)と会い、彼の教え子のラクシュミ(Mumtaz Sorcar)の試合を見る。ところがプラブは、ラクシュミより彼女の妹のマディ(Ritika Singh)に目を留める。マディはボクシングを習っていなかったが、その闘争心とパンチ力で、必ず一級のボクサーになれると見込む。だがマディはボクシングには興味がなく、また家族を養うために魚売りの仕事のほうが大切だった。そこでプラブは一日に500ルピー支払うことを条件に、マディを練習場に来させる。
 しかし、マディは簡単にコーチに調教されるような人物ではなかった。プラブのやり方に反発したマディは、地区代表選考の試合でわざと負ける。だがその後、マディはプラブが私費を投じて自分をコーチしてくれていたことを知り、改心し、プラブの忠実な教え子となる。
 プラブはマディの両親(Kaali Venkat & Baljinder Kaur)に頼み、マディとラクシュミを代表選考の合宿に参加させる。このころよりマディはプラブに恋心を抱くようになる。代表選考会でマディは順調に勝ち進むが、嫉妬したラクシュミはマディの手に怪我をさせる。そのため彼女は決勝で負けてしまう。
 失意に沈むマディにデリーのデーヴから連絡が入り、国際交流大会に出場することになる。だが、その試合で彼女はロシアの選手に一撃でノックアウトされてしまう。その後デーヴはマディにセクハラを働くが、拒絶されたため、窃盗事件をでっち上げて警察にマディを逮捕させる。この窮状をプラブが救う。
 プラブはワイルドカードを使ってマディを世界選手権に出場させる。この大会でマディは快進撃を続け、決勝まで進む。だが、ここでデーヴの陰謀が入り、プラブはマディのコーチを辞任せざるを得なくなる。代わってデーヴがマディのコーチとなる。
 さて、決勝戦となるが、マディの相手は以前に一撃でノックアウトされたあのロシア人選手であった、、。

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★☆☆
◎ 物 語 : ★★★☆☆
◎ 脚 本 : ★★★☆☆
・私はこんなふうにブログでごちゃごちゃ書いたりしているが、実はあんまりストーリーとかメッセージとかにこだわりはなく、それらを分析してどうだ、ということでもない。第一に大切にしているのは、一般的な映画愛好家として、2時間鑑賞した後に全体としてどんな気分に浸れたか、ということだ。「気分」というのも曖昧だが、喜びや悲しみ、恐怖などのどんな感情がどの程度の強さで湧き起こったかということだが、実は「感情」とは次元が別で、もっと大切にしているのが「力」ということだ。どこかで「スクリーン自体が生命力を発しているような映画を観たい」と書いたことがあったが、そういう作品を観たときの爽快感が好きだ。そういった点で、この【Irudhi Suttru】はとても良かった。

・本作はスポ根映画と言って間違いではないが、実はスポ根映画ではない。ボクサーのマディ(Ritika Singh)が血のにじむような努力をする、砂を噛むような挫折を味わう、宿命のライバルに打ち勝つ、そんなスポ根定番の要素が本作では強調されていない。選手のマディとコーチのプラブ(R. Madhavan)が劇的な変化/成長をするわけでもない。スポーツマンシップの美しさが描かれているわけでもない。

・じゃ、本作は何を描いていたのかと言うと、結局、マディとプラブを中心とする登場人物の活きの良さ、力強さ、熱さだ。ここが本作の面白い点だ。

・本作も社会問題を扱っていないわけではない。スポーツ協会のお偉方の腐敗が描かれ、ここがメッセージ・ポイントになるのかもしれない。しかし、このデーヴ(Zakir Hussain)を中心とした協会の腐敗は紋切型に展開され、どうも監督が社会批判を第一義にしたいようには見えなかった。

・また、監督が女性で主役も女子ボクサーということで、「女性とスポーツ」ということがテーマになっているとも思えるが、それも例えば【Chak De! India】(07)のように「女性がスポーツする是非」みたいなメッセージとして提出する次元ではなく、もう賢い議論は一切省略、単に強い女が当たり前のようにスポーツするために登場する、ということになっている。ここが本作の単刀直入にカッコいいところだ。

・この、単に強い女が当たり前のように登場する、というのに感銘を受けた。インド映画もついにここまで来たか。インド女性の理想型の一つといえば、シーター妃のようにお淑やかで、守られるために存在する女性であったはずだが、もはやそれだけではないということだろう。

・ところで、本作は北チェンナイのスラムなどもある下町(港町)が舞台となっており、そこに暮らすタミル人の様子が活き活きと描かれ、当然タミル語を話していた。しかし、これはヒンディー語版【Saala Khadoos】ではどうなっているのだろう。タミルのスラム民がヒンディー語を話すとは考えられないのだが。

◎ 配 役 : ★★★★☆
◎ 演 技
・R・マーダヴァン(プラヴ役) ★★★★☆
 インド男優がムキムキになるのは珍しくないが、マーダヴァンだけはプヨプヨでいてほしかった当方の願いをよそに、キミもマッチョ党員になったか。信じがたいバルクで、しかも長髪と髭のせいで、ボクシング・コーチというより猿人の一種に見えたよ。しかし、役柄は完璧に理解し、見事に演じていた。

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・リティカー・シン(マディ役) ★★★★☆
 【Mary Kom】(14)のプリヤンカー・チョープラが筋肉隆々という感じだったのに対し、こちらは全然そんなことなく、本当に格闘技選手?と疑いたくなったが、身体能力は本当に高そうだった。ムンバイ出身らしいが、「ダヌシュ命」といった感じのチェンナイのスラム娘をそれらしく演じていた。ウマーという声優がアフレコしているらしい。

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・ムムターズ・ソルカール(ラクシュミ役) ★★★☆☆
 コールカーター出身のベンガル人で、父が有名な手品師らしい。本作中で見る限りでは、ほぼすっぴんで、体育会系の大柄な色気のない女性に見えたが、メイクを決めるとこんなゴージャス美人になるんですね。
 (写真下: オーディオCD発表会より。主演のリティカー・シンと。)

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・脇役陣では、ナーサルは「パンチ」パーンディヤンという曰くありげな名前で登場したが、要はコメディー担当だった。ネガティブ・ロールのザーキル・フセインは良かった。

・マディとラクシュミの両親を演じたのは、父はタミル人のカーリ・ウェンカト、母はパンジャーブ人のBaljinder Kaurという人だった。しかし、カーリ・ウェンカトはミスキャストだったかもしれない。実は彼はまだ20代の青年なので、どう見ても父親には見えなかった(下手すりゃ、娘のラクシュミ役のムムターズ・ソルカールより年下)。

◎ 音 楽 : ★★★★☆
◎ BGM : ★★★★☆
・毎度聴くべき音楽を提供してくれるサントーシュ・ナーラーヤナンだが、本作では純タミル映画という縛りからも自由で、すごく野心的な曲を並べていた。

◎ アクション : ★★★☆☆
◎ 衣 装 : ★★★☆☆
◎ 撮 影 : ★★★★☆
◎ 編 集 : ★★★☆☆
・アクション映画ではないので通常のアクション・シーンの興奮はないが、クライマックスでマディがロシア選手をブッ飛ばす場面はアニメみたいで良かった。

◎ その他(覚書)
・マーダヴァンが箸を使って料理を食べているシーンがあった。

◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★★★☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 2月7日(日),公開第2週目
・映画館 : Vision Cinemas,14:50のショー
・満席率 : ほぼ満席
・場内沸き度 : ★★★☆☆

 

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