カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Visaranai】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2016/02/17 21:25   >>

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 コリウッドのヴェトリマーランは怖そうな顔で目立つ存在なので、もう5,6本映画を撮っているかと思っていたら、監督としては本作が【Polladhavan】(07)、【Aadukalam】(11)に次いでまだ3作目だった。それにしては存在感が大きいのは、上記2作の成功と、プロデューサーとしても良い仕事をしているからだろう。特にダヌシュとの相性が良く、監督と出演者という関係だけでなく、プロデューサー仲間としても【Kaaka Muttai】(15)を送り出している。本作も監督がヴェトリマーラン、プロデュースがダヌシュということで、外す可能性がほぼなさそうだった。
 なお、本作のインド国内での一般公開は今月5日だったが、完成はもっと早く、昨年9月のヴェネツィア国際映画祭にも出品されている。

【Visaranai】 (2016 : Tamil)
物語 : Chandra Kumar, Vetrimaaran
脚本・監督 : Vetrimaaran
出演 : Dinesh, Aadukalam Murugadoss, Samuthirakani, Kishore, Pradeesh Raj, Silambarasan, Saravana Subbiah, Ajay Ghosh, Munaar Ramesh, E. Ramdoss, Anandhi, Misha Ghoshal, 他
音楽 : G.V. Prakash Kumar
撮影 : S. Ramalingam
編集 : Kishore Te.
制作 : Dhanush

題名の意味 : 尋問
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ドラマ
公 開 日 : 2月5日(金)
上映時間 : 1時間57分

《 あらすじ 》
 タミル・ナードゥ州出身のパーンディ(Dinesh)は仕事のためにアーンドラ・プラデーシュ州のグントゥールにやって来、小さな万屋の店員をしていた。彼は部屋代を節約するため、友人のムルガン(Aadukalam Murugadoss)、クマール(Pradeesh Raj)、アフザル(Silambarasan)と公園で野宿をして生活していた。
 ある早朝、店に出たパーンディは唐突に地元の警官に拘束される。友人のムルガンとクマールも同じく拘束されていた。警察署に到着するや、三人はいきなり拷問を受ける。翌朝、もう一人の友人アフザルも拘束されていることが分かる。実は、この町で泥棒事件が起きていたが、目撃証言から容疑者はタミル語を話していたということで、タミル人のアフザルがまず拘束され、アフザルの友人のパーンディら三人も拘束されたというわけだった。しかし、その泥棒事件はパーンディら四人には全く身に覚えのないことだった。だが、担当警官のヴィシュウェーシュワル(Ajay Ghosh)にとって、事件を「片付ける」ことが先決で、誰が犯人かはどうでもよかった。
 パーンディは容疑を認めることを拒んだが、激しい拷問の末、友人たちが肯定してしまう。しかし、裁判の場で、パーンディらは裁判官に拷問の傷あとを見せ、無実を主張する。ところが、生憎と裁判官はタミル語が分からない。そこへ、たまたま別件で裁判所に来ていたタミル・ナードゥ警察の警官ムットゥヴェール(Samuthirakani)が通訳を買って出たため、パーンディらは無罪釈放となる。
 ムットゥヴェールは、タミル・ナードゥ州の大物政治家たちの会計監査を担当するKK(Kishore)を拘束しようとしていた。そのKKは命を狙われるのを恐れ、アーンドラ・プラデーシュ州に逃げ込み、この裁判所に自首しようとしていたところだった。ムットゥヴェールはパーンディら4人に協力してもらい、KKを拘束する。そしてタミル・ナードゥに戻る際に、パーンディらも警察の車に乗せてもらうことになるが、途中でクマールだけ下車して、実家に帰る。チェンナイの警察署に到着したパーンディ、ムルガン、アフザルは、ムットゥヴェールに命じられ、警察署内の掃除をすることになる。
 さて、ムットゥヴェールは大物政治家たちのブラックマネーの情報を得ようと、KKから話を聞こうとする。だが、タミル・ナードゥ警察の高位警官(Saravana Subbiah)はKKがあれもこれも話してしまうことを恐れ、KKを拷問にかけ、脅す。その結果、KKは死亡してしまう。慌てた警官たちはKKの死を自殺に偽装する。ところが、警官らがその計画を話していた部屋のトイレに偶然パーンディらがいた、、。

・その他の登場人物 : メイドのシャーンティ(Anandhi),婦人警官シンドゥ(Misha Ghoshal),警官ラメーシュ(Munaar Ramesh),警官ラーマチャンドラン(E. Ramdoss)

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★★☆
◎ 物 語 : ★★★★☆
◎ 脚 本 : ★★★★☆
・警察や政治といった権力機構が自らを正当化するために、一般庶民をいかに虫けら、否、虫けら以下に扱うかという、恐ろしい話だった。ものすごく意図のはっきりした映画で、一見すればよく分かるので、レビューとかでごちゃごちゃ書く必要もないと思われるほどだ。よくできた映画だし、すごく面白かった。

・原作があり、現在コーヤンブットゥールでリクシャ運転手をしているチャンドラ・クマールという人が、約30年前に体験した受難(無実の罪で逮捕、拷問を受けた)を綴った小説‘Lock Up’がベースとなっているらしい(こちらの記事参照)。映画中のクマールがこのチャンドラ・クマールに当たるようだ。しかし、本作の物語には3つのソース(実話)があり、チャンドラ・クマールの‘Lock Up’は前半のパーンディらの拷問事件だけで、他に会計監査人の事件、それと警官がエンカウンターで殉職した事件が組み合わされて、本作が出来上がっているらしい。

・警察が事件を片付けるために、真犯人じゃなくても誰かを犯人にでっちあげるということは、先日公開された【Kathakali】でも扱われていた。怖い話だが、しかしこれはインドでは割と普通に行われていることらしい。

・警察による拷問というのもインド映画では定番になっており、本作でもあれやこれやのテクニックが使われていた。これもけっこう面白かった。インドのフィルム・メーカーたちは、コンスタントに映画ネタを提供してくれる残酷で腐敗した警察機構に感謝してもいいぐらいだと思う。

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・ところで、私がマラヤーラム映画の【Drishyam】(13)を高く評価するのは、庶民が警察に感じる嫌な感じ、不信感が実に上手く捉えられ、それを手痛い形で風刺しているからだ。個人的な体験を話すと、実は私も10年ほど前に、全く身に覚えのない廉で警察署に連行されたことがあり、さすがに牢獄に入れられたり、拷問されたりはしなかったが、すごく恐ろしく、気が滅入る時間を過ごし、それが今もトラウマになっている。【Drishyam】も本作もそんな警察の嫌らしさがスクリーンの端々からリアルに漂っている。表立って警察を批判するなら、これぐらいのリアリティーがないと。

・しかし、警察の腐敗や拷問などはインド映画では何度も何度も見てきたものなのに、それでも本作に感銘を受けたのは、やはり脚本と技術面(撮影、編集、BGM)が良かったからだろう。また、人物造形も冴えている。前半のアーンドラ警察のハゲの警官も憎たらしかったが、後半のムットゥヴェールの人間性が本作の悲劇性を高める上で効いていた。

・警察の冤罪、拷問以外に、否、それに先立つ問題として、経済的に困窮した者が州を越境して出稼ぎに行き、言葉が違うがゆえに当地では胡散くさい存在として差別的な扱いを受ける問題や、やはり低カースト者の問題が描かれていた。

◎ 配 役 : ★★★★☆
 本作はやはりスター不在映画で、主役というのはいないと言えるが、キャスティングがすごく良く、それぞれの出演者も上手く演じている。

◎ 演 技
・まず、痛い目に遭ったタミルの四人組だが、知っている顔は【Attakathi】(12)のディネーシュ、【Aadukalam】の(私的には【Mouna Guru】の)ムルガダースだけだった。彼らの演技については特に何か言うことはない。しかし、こういう顔がプロタゴニストとして活躍できるところが今のタミル映画の面白いところ。
 (写真下: ディネーシュ(右)とムルガダース。)

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・キショール(KK役) ★★★☆☆
 痛い目に遭った人物その2はキショールだが、あの死に方は悲哀を誘うなぁ。

・サムディラッカニ(ムットゥヴェール役) ★★★☆☆
 感銘を受けたのがサムディラッカニだった。私の中では映画監督としてのイメージが強いが、今は性格俳優、声優として良い仕事をしているようだ。

・んでもって、嫌なアーンドラ警察の警官を演じたアジャイ・ゴーシュさん。

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・キャスティングで唯一活きていなかったのはカヤル娘のアーナンディかな。

◎ BGM : ★★★★☆
・音楽はG・V・プラカーシュ・クマールの担当だが、歌というものはなく(なかったと思う)、BGMだけだが、これが良かった。

◎ アクション : ★★★☆☆
◎ 撮 影 : ★★★★☆
◎ 編 集 : ★★★★☆

◎ その他(覚書)
・前半はAP州が舞台ということで、テルグ語がしばしば出てきたが、タミル語の字幕が付いていた。しかし、私が聞いても分かるような基本的なテルグ語の台詞には字幕は付いていなかった。

◆ 完成度 : ★★★★☆
◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★★★☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 2月14日(日),公開第2週目
・映画館 : PVR (Forum, Koramangala),13:30のショー
・満席率 : ほぼ満席

 

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