カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Babruvahana】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2016/04/27 22:22   >>

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 先週末の【Raja Nanna Raja】に続いて、この週末もラージクマールの【Babruvahana】がリバイバル公開されたので、またまた【Theri】とアッル・アルジュンの新作【Sarrainodu】を先送りにして、観て来た。【Raja Nanna Raja】と違って、今回はそれなりにデジタル・リマスタリングしてある模様。
 この【Babruvahana】のリバイバル公開についてはずいぶん前からニュースがあって、ずっと楽しみにしていた。というのも、この1作を以って、私は完全にラージクマールに落ちたからである。
 良い機会なので書いておくと、今でこそラージクマールのファンだと公言している私だが、実は初めて故人の作品を観たのはずっと遅く、ベンガルールに来て10年後ぐらいだったと思う(つまり、10年間は無視していた)。現地人から「面白いよ」とは聞いていたものの、何だか真面目くさった感じだし、「権威」みたいな重たさも感じたので、敬遠していた。ところが、ある事情でラージクマールの神様映画を観る必要が生じ、デビュー作の【Bedara Kannappa】(54)から始めて1つ1つDVD鑑賞しているうちに、さすがに面白さに気付いた。そんなところへ【Babruvahana】に出会い、もうドクター・ラージの顔が脳裏を離れなくなり、つまり憑かれてしまったわけである。
 本作はそれほど私にとって重要な作品なので、観る前にやたら緊張した。

【Babruvahana】 (1977/2016 : Kannada)
脚本・監督 : Hunsur Krishnamurthy
出演 : Rajkumar, B. Saroja Devi, Kanchana, Ramakrishna, Jayamala, Vajramuni, Thoogudeepa Srinivas, Shakti Prasad, B. Jaya, Shani Mahadevappa, Bhatti Mahadevappa, Rajanand, 他
音楽 : T.G. Lingappa
撮影 : Srikanth
編集 : P. Bhaktavatsalam
制作 : K.C.N. Chandrashekhar

題名の意味 : バブルワーハナ(主要登場人物の名前)
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : 神話
公 開 日 : 4月22日(金)
上映時間 : 2時間40分

《 あらすじ 》
 あるバラモン僧の牛が強盗団に盗まれる。助けを求められたアルジュナ(Rajkumar)は牛を取り戻すが、この件でパーンダワ五兄弟の間で交わした掟(兄弟の誰か一人が共通の妻ドラウパディーと二人きりでいるときに、他の兄弟はその邪魔をしてはいけない)を破ってしまい、罰として自ら12年間の追放の旅に出る。
 アルジュナはマニプラという王国に至り、当地のチトラセーナ王の娘チトラーンガダー(Saroja Devi)と出会う。チトラーンガダーはすっかりアルジュナに惚れてしまい、結婚を望む。だがある日、ガンガーで沐浴をしている際に、アルジュナは河中に引き込まれ、地下のナーガ族の宮殿に拉致される。ナーガ族カウラヴィヤ王の娘ウルーチ(Kanchana)の仕業だった。アルジュナに惚れていたウルーチは熱烈に求愛する。当初は躊躇していたアルジュナも、ウルーチとしばし床を共にする。しかし、クリシュナ(Ramakrishna)の力により、アルジュナは地上に戻され、チトラーンガダーと結婚する。失恋した形のウルーチだが、潔くアルジュナとチトラーンガダーを祝福する。
 そんな折に、ドゥワーラカーではクリシュナの妹スバドラー(Jayamala)の結婚問題が持ち上がっていた。クリシュナの兄のバララーマはスバドラーをクル家のドゥルヨーダナと結婚させようと考えたが、当のスバドラーが嫌がったため、クリシュナはガトートカチャを遣ってマニプラにいるアルジュナを呼び寄せ、スバドラーと結婚させる。
 夫を失ったチトラーンガダーは嘆き悲しむ。彼女はアルジュナとの子バブルワーハナを出産するが、ウルーチが養育を担当することになる。
 時は過ぎ、バブルワーハナ(Rajkumar)はウルーチの許で立派に成人し、マニプラの武勇に秀でた王となっていた。そんな折に、クルクシェートラの戦いに勝利したパーンダワ家はアシュワメーダ(馬祀祭)を敢行することにし、アルジュナが指揮に当たる。アルジュナはアシュワメーダの途上で、対抗して来たマヘーシュマティプラのニーラドゥワジャ王(Shakti Prasad)と交戦し、屈服させ、王子を殺害する。これに憤った王妃のジュワーレーはガンガー女神を呼び出し、アルジュナに復讐するよう祈願する。ガンガー女神は息子ビーシュマをアルジュナに殺された経緯があったため、アルジュナに呪いをかける。また、ジュワーレーはコブラに噛まれて死んでしまうが、魂は矢に変容し、バブルワーハナの手に渡る。
 マニプラの近くまでアルジュナが進行して来る。母チトラーンガダーよりアルジュナこそが自分の父だと知ったバブルワーハナは、父に会いに行く。だが、アルジュナは記憶を消されていたため、バブルワーハナが自分の息子だと認識できず、却ってバブルワーハナの母を娼婦だと侮辱する。憤ったバブルワーハナはアルジュナと戦争することにする。そして、ジュワーレーの矢でアルジュナの命を取る。
 父を殺したことを深く悔いたバブルワーハナは自殺を考えるが、ウルーチが現れ、アルジュナを蘇生させる方法を教える。彼は地下のナーガ国へ行き、不思議な力を持つ宝珠を授かって来る。そしてクリシュナの力もあって、アルジュナは息を吹き返す。この時には呪いも解け、アルジュナはバブルワーハナを息子だと認識し、抱擁する。

   *    *    *    *

◎ テーマ : (採点せず)
◎ 物 語 : (採点せず)
◎ 脚 本 : ★★★★☆
・言わずもがな、叙事詩『マハーバーラタ』のアルジュナとバブルワーハナ父子のドラマチックなエピソードを映画化したもの。これは過去にテルグ映画でも1942年と1964年に映画化され、特に後者はNTRが主演し、名作に数えられているようだ。しかし、カラーで豪華なのはこのカンナダ版で、大衆的人気も高い。本作は映画としての出来も良く、すごく有名なので、私は「バブルワーハナ」という神話上の登場人物も超有名だと思っていたが、インド人に聞いてみたら、そうでもないらしい。どうも『マハーバーラタ』は「クルクシェートラの戦い」以降の話はあまり親しまれていないらしく、バブルワーハナを知らないインド人はかなり多いらしい。

・しかしそれは、バブルワーハナの名は映画によって大衆的に知られるようになったということを意味するわけだから、インドで映画がどれほど重要な社会的役割を果たしているかが分かって、興味深い。

・今回映画館で再見してみて、やはり面白い。映画が面白いというより、『マハーバーラタ』という叙事詩自体が改めて凄いと思った。因果応報、必然と予定調和、ダルマとカルマの世界、まるで神々の視座からちっぽけな地上の出来事を見ているようで、深くて大きい。やっぱり『マハーバーラタ』は、人類が書き遺した文学作品のうちの最高傑作だな(といって、サンスクリットで読むなどという芸当はできないのだが)。

・本作はランタイムが2時間40分と、当時の神話映画にしてはやや短めとも言えるが、その割にはアルジュナの若い時からクルクシェートラ以後までの長い時代を描いており、詰められたエピソードも多い。そのせいか、脚本が大雑把な印象を受けた。現地人ならすんなり分かるのかもしれないが、異国の異教徒の目には背景とか人物関係に分かりにくいところがあった。

・上で『マハーバーラタ』は「まるで神々の視座から見ているようで」と大げさな書き方をしたが、本作自体はさすがインド娯楽映画のフォーマットを踏んでおり、情感の表し方が大衆演劇的で、高踏的といった印象はない。基本となる情感はアルジュナとバブルワーハナの父子センチメントだが、チトラーンガダーとバブルワーハナの母子センチメントも効いている。
 (写真下: 「バブルワーハナ!」、「アッパー!」、、、とは言わなかったが。)

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・参考に、【Bengaloored】(10)という作品は、父に「バブルワーハナ」と名付けられた主人公がこの名を嫌い、父との関係が疎遠になってしまうが、後に和解するという物語だった。

・私的に、親子のセンチメント以上に本作の面白さだと思える点は、「男っぽさ」が目立つ『マハーバーラタ』にあって、本作は「女っぽい」要素が重要なパートを占めている点だろう。二度も愛するアルジュナに去られたチトラーンガダーの悲哀も見どころだが、やはりウルーチ(ウルーピとも)の存在が大きい。アルジュナ争奪戦ではチトラーンガダーに敗れたが、却って潔く恋敵を祝福し、その子の養母まで務め、さらには死んだアルジュナを蘇生させるのに一役買うという、なかなか健気な女性像だった。

◎ 配 役 : ★★★★☆
◎ 演 技
・ラージクマール(アルジュナ/バブルワーハナ役)
 父子の二役を完璧に演じている。ラージクマールが一人二役をやるのは珍しくないが、音楽シーンではラージクマールが五役で登場するというファンサービスもある。アルジュナとバブルワーハナが戦闘前に見栄を切り合う「歌合戦」のシーンは、再見しても鳥肌が立った。

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・サロージャー・デーヴィ(チトラーンガダー役)
 当時35歳ぐらいのはずだが、もう一段老けて見えた。前半の若きお姫様役はやや苦しかったが、後半の母親役はさすがに上手い。

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・カーンチャナー(ウルーチ役)
 実はサロージャー・デーヴィより目立っていたのがウルーチ役のカーンチャナーさん。役回りの重要性については上に書いた。当時38歳ぐらいで、女の色気むんむんな上に、凛々しかった。

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・ラーマクリシュナ(クリシュナ役)
 本作のクリシュナは、神々しさも貫録もないが、しかし妙に爽やかなイケメン俳優が演じており、誰かと思っていたら、今も父親役などで時おり見かけるあのラーマクリシュナさんだということが分かった。これはビックリだが、下の写真を見てみると、やはり同一人物だということが分かる。当時23歳ぐらい。最近では【Bachchan】(13)や【Jessie】(16)に出演している。

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・ジャヤマーラー(スバドラー役)
 当時18歳ぐらいで、可愛らしかった(写真下の右)。

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 それにしても、腕も腰も細く、華奢なこの小娘が、ン十年後には下の様になろうとは、クリシュナ神さえ予想できなかっただろう。

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◎ 音 楽 : ★★★★☆
◎ BGM : ★★★☆☆
◎ ダンス : ★★★★☆
・音楽シーンは、ラージクマールが3人のヒロインと歌い、踊る趣向だが、それぞれ別種の趣がある。ウルーチ(ウルーピ)とのシーンはコブラを模したダンスで、面白い。お姫様チトラーンガダーとのシーンは優雅。スバドラーとのシーンは聖者に変装したアルジュナがさらに楽師に変容するというもので、すごく楽しい。これはたぶん【Daari Tappida Maga】(75)のこの音楽シーンの元ネタになったものだろうと思われる。

◎ アクション : ★★★☆☆
◎ 美 術 : ★★★★☆
◎ 衣 装 : ★★★★☆
◎ 撮 影 : ★★★☆☆
◎ 編 集 : ★★★☆☆
・テルグ映画の【Baahubali】(15)をくさすわけではないが、本作は壮大な戦闘シーンもCGもない割には、【Baahubali】以上にカッコいいものを感じた。これを以って私が【Baahubali】に物足りなさを感じた要因の一つが分かった。要はヒーロー映画に大切なのは、全体的な箱よりも、その箱の中に誰が立っているか、だ。

・神話映画の定番、「矢合戦」は何度見ても面白い。

◎ その他(覚書)
・映像はデジタルリマスタリングし、音声も7.1サラウンドにしたというのに偽りはなさそうだった。画面アスペクト比も横長に調整していた。

◆ 完成度 : ★★★★☆
◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★★☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 4月23日(土),公開第1週目
・映画館 : Gopalan Cinemas (RR Nagar),12:15のショー
・満席率 : 3割
・場内沸き度 : ★★☆☆☆

 

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