カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Godhi Banna Sadharana Mykattu】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2016/06/15 21:44   >>

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 本作はアナント・ナーグとラクシト・シェッティの共演ということだけで興味を惹いたが、監督が新人なので、ちょっと様子見していたら、公開以来はなはだ評判が良い。それで、観る予定だったカールティク・スッバラージ監督の【Iraivi】は後回しにして、こちらを優先した。
 その新人監督というのはへーマント・ラーウで、ギリーシュ・カーサラワッリ監督の【Gulabi Talkies】(08)や、ジェイコブ・ヴァルギース監督の【Savari】(09)と【Prithvi】(10)で助監督をやっていた人らしい。
 ヒロインは、新傾向のカンナダ映画には欠かせない顔となったシュルティ・ハリハラン。

【Godhi Banna Sadharana Mykattu】 (2016 : Kannada)
脚本・監督 : Hemanth M. Rao
出演 : Anant Nag, Rakshit Shetty, Sruthi Hariharan, Achyuth Kumar, Vasishta N. Simha, Ravikiran Rajendran, Aruna Balaraj, Sanchari Vijay(カメオ出演), その他
音楽 : Charan Raj
撮影 : Nandakishore
編集 : Srikanth Shroff
制作 : Pushkara Mallikarjunaiah

題名の意味 : (肌は)小麦色、中背
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ドラマ
公 開 日 : 6月3日(金)
上映時間 : 2時間23分

《 あらすじ 》
 ムンバイで投資ビジネスをしているシヴァ(Rakshit Shetty)は、仕事のために4ヶ月後にアメリカへ渡る予定だった。シヴァには66歳になる父のヴェンコーブ・ラーウ(Anant Nag)がいるが、アルツハイマー病を患っていたため、バンガロールの老人医療介護施設に預けていた。父とはあまり折り合いが良くなかったため、父の世話よりも自身の仕事上の出世を優先した形だった。母のプシュパとは8年前に死別していた。
 シヴァは渡米前に父に会っておこうと、約半年ぶりにヴェンコーブの施設を訪れる。その際、担当医のサハーナ(Sruthi Hariharan)から訪問の頻度が少ないと注意される。シヴァは、衣類を買い与えるために、ヴェンコーブを連れてモールへ行く。しかし、施設に戻る際に、ちょっと目を離したすきに、ヴェンコーブが行方不明になってしまう。シヴァとサハーナは警察にも届け出をし、尋ね人のポスターも作って、ヴェンコーブを捜し始める。

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 一方、マフィアのボスが手下のランガ(Vasishta N. Simha)にある役人を殺害するよう命じる。ランガは首尾よく役人を殺し、死体遺棄のため、トラックに死体を載せて、弟分のマンジャ(Ravikiran Rajendran)と運び始める。ところが、偶然そのトラックの荷台にヴェンコーブが乗っており、彼がいきなり運転席に手を出してきたため、運転者のランガが驚いて、トラックを木にぶつけてしまう。この事故でランガは意識を失う。そこへたまたまクマール(Achyuth Kumar)という男が車で通りかかる。動転したマンジャはクマールの車にヴェンコーブと意識不明のランガを乗せ、運転し始める。途中で意識を取り戻したランガは、死体を載せていないことに気づき、マンジャを責める。彼らは急いでトラックの事故現場へ向かうが、すでに警察が捜査を始めており、何もできなかった。ボスは電話でランガに、口封じのため、クマールとヴェンコーブ、それにマンジャさえも消してしまうよう指示する。
 ランガとマンジャはクマールの家に行き、クマールとその妻(Aruna Balaraj)、息子、それにヴェンコーブも人質にして、そこに立てこもる。アルツハイマー病のヴェンコーブは無邪気にランガを息子のシヴァだと思い込む。
 シヴァとサハーナはあらゆる手を尽くしてヴェンコーブを捜すが、手掛かりが全くつかめない。電話による情報も当てにならないものばかりだった。しかし、この過程でシヴァの心に変化が生じる。彼は父に対して強い愛着を感じ始め、アメリカ行きのオファーを断る。また、シヴァとサハーナの間で心が通い始めるようになる。
 ランガは指示された全員を殺したとボスに嘘をつく。しかし、ボスはランガをも殺してしまおうと、悪徳警官のパーティールを刺客として送り込むことにする、、。

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★★☆
◎ 物 語 : ★★★★☆
◎ 脚 本 : ★★★★☆
・私事で恐縮だが、私はバンガロールに暮らし始めてから父を亡くし、ゆえに父の死に目にも会えず、また、今も認知症の母を施設に残したままこちらで生活を続けている。兄弟が多いから言い訳も立つが、そんなインド人のスタンダードからすると親不孝中の親不孝の私がこの映画に接すると、もう涙なし観られるわけがない。ヤバい映画だった。

・しかし、そういう個人的な事情を離れても、本作は出来の良い映画だった。とても新人監督の作品だとは思えない。

・何が良いと言って、本作はインド娯楽映画がこれまでこだわり続けてきた情感をそっくり保持したまま、外観は今風のシャープな作品に仕上げたことだ。南インドではタミル映画やマラヤーラム映画にこうした娯楽映画がよく作られているが、カンナダ映画にもそれ系の傑作が現れたか。

・本作の情感は3つのラインで描かれている。1つ目はヴェンコーブ(Anant Nag)とシヴァ(Rakshit Shetty)の父子センチメント。これは父がアルツハイマー患者という感動押しつけ型の設定ではあるが、シヴァが徐々に父のことを理解し始め、愛着を抱いていく過程が実に良い。

・2つ目はシヴァとサハーナ(Sruthi Hariharan)のロマンチックな展開だが、これは二人を結び付けるのが、二人のヴェンコーブに対するそれぞれの思いを介してという、特殊な構造になっている。ヴェンコーブがサハーナに語った妻プシュパとの出会いと結婚の話を、今度はサハーナがシヴァに語るというシーンは感動的。この話を受けてのエンディングも気持ちの好い終わり方だった。

・3つ目はヤクザのランガ(Vasishta N. Simha)の改心の話。まさかここでこういうドラマチックな展開になるとは思わなかった(詰め込みすぎな気もするが)。このラインはスリラーとしてもよくできている。

・この3つのラインを上手く編み上げ、混乱することなく描いた脚本は見事。映画賞のどれかで脚本賞(または監督賞)を最低1つは取るだろう。比べると、前回紹介した【Thithi】のラーム・レッディ監督などは、ああいうインテリ受けするアート系の作品を撮って行くんだろうなぁと予想されるが、このへーマント監督は娯楽映画で仕事ができるだけに、今後が非常に楽しみだ。

◎ 配 役 : ★★★★★
◎ 演 技
・アナント・ナーグ(ヴェンコーブ役) ★★★★★
 圧巻だった。強烈な演技という意味じゃなく、アルツハイマー患者の、ちょっとした仕草に上手さが光る芝居だった。実際にアルツハイマー患者があんな表情、動作をするかどうかは別として、アナント・ナーグ演じるヴェンコーブ・ラーウとしては100パーセント正解だった。いやぁ、麒麟は老いても麒麟だわ。

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・ラクシト・シェッティ(シヴァ役) ★★★☆☆
 出世作の【Simpallag Ond Love Story】(13)の気楽さとは打って変わって、【Ricky】(16)ではハンサム・ガイを演じた楽人さんだが、本作もその路線を踏んでいる。良いパフォーマンスだったが、男前の役柄の割には締まりのなさを感じたので、3つ星止まり。

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・シュルティ・ハリハラン(サハーナ役) ★★★☆☆
 すごく魅力的な女性役だった。惚れ直した。

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・ヴァシシュタ・N・シンハ(ランガ役) ★★★★☆
 掘り出し物はこの人、ヤクザのランガ役、ヴァシシュタ・N・シンハだろう。役柄が良かったおかげもあるが、野性的な風貌にイケボで、悪役を含む性格俳優として重宝されそう。

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・その他では、事件に巻き込まれた不運な市民、クマール役のアチュート・クマールもニュアンスのある芝居で良かった。

◎ 音 楽 : ★★★★☆
◎ BGM : ★★★★☆
・音楽はチャラン・ラージという初めて名前を聞いたお方。おそらく長編娯楽映画ではデビューだろう。かなりセンチメンタルな曲が多かったが、非常に良かった。

◎ アクション : ★★★☆☆
◎ 衣 装 : ★★★☆☆
◎ 撮 影 : ★★★★☆
◎ 編 集 : ★★★★☆
・撮影のナンダキショール、編集のシュリーカーント・シュロフという名前も、聞いたことがないなぁ。

◎ その他(覚書)
・ヴェンコーブが語る「人の内面には『黒い犬』と『白い犬』が棲みついていて、いつも喧嘩をしている。で、どっちが勝つか分かるか?」という、トレイラーにもあった台詞が面白い。その問いの答えは、本編を観てのお楽しみ!

◆ 完成度 : ★★★★☆
◆ 満足度 : ★★★★★
◆ 必見度 : ★★★★★

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 6月11日(土),公開第2週目
・映画館 : INOX (Mantri Mall),16:00のショー
・満席率 : ほぼ満席
・場内沸き度 : ★★★☆☆
・備 考 : 英語字幕付き

 

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