カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Iraivi】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2016/06/22 21:19   >>

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 【Pizza】(12)と【Jigarthanda】(14)で感銘を受け、後者の鑑賞記では思わず「カールティク・スッバラシー」と呼んでしまったカールティク・スッバラージ監督の第3作(アンソロジーの【Bench Talkies - The First Bench】は除く)。
 カールティク氏が監督ということだけで期待作だったが、ヒロインがカマリニー・ムカルジーにアンジャリという、私の思うツボ。それに男優陣が凄い。S・J・スーリヤー、ヴィジャイ・セードゥパティ、ボビー・シンハーと、消化不良を起こしそうな並びである。
 いやはや、どんな作品が出てくることやら、、。

【Iraivi】 (2016 : Tamil)
脚本・監督 : Karthik Subbaraj
出演 : S.J. Surya, Vijay Sethupathi, Bobby Simha, Kamalinee Mukherjee, Anjali, Pooja Devariya, Radha Ravi, Cheenu Mohan, Karunakaran, Vadivukkarasi, Cheenu Mohan, Vijay Murugan, Kaali Venkat, Vaibhav Reddy(カメオ), その他
音楽 : Santhosh Narayanan
撮影 : Sivakumar Vijayan
編集 : Vivek Harshan
制作 : C.V. Kumar

題名の意味 : 女神
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ドラマ
公 開 日 : 6月3日(金)
上映時間 : 2時間40分

《 あらすじ 》
 アルル(S.J. Surya)は著名な映画監督だが、プロデューサーと不仲になり、新作がお蔵入りにされてしまう。それがもとでアルルはアル中となってしまう。アルルには妻のヤリニ(Kamalinee Mukherjee)と娘がいるが、ヤリニはそんな夫に辟易し、離婚も考える。しかし、一縷の愛情がそれを押し留めていた。
 ジャガン(Bobby Simha)はアルルの弟で大学生。彼はフェミニズム的な考えの持ち主だった。
 アルルとジャガンの父ダース(Radha Ravi)は神様の彫像店を経営していた。ダースの妻(Vadivukkarasi)はしばらく前から昏睡状態となり、病床に伏せっていた。
 マイケル(Vijay Sethupathi)はダースの店のスタッフで、家族同様の扱いを受けていた。彼はアルルとジャガンを敬慕しており、何はさておき、二人のために動くことを優先する男だった。マイケルには恋人のマラル(マラルウィリ:Pooja Devariya)がおり、肉体関係を持っていた。マラルは寡婦だが、マイケルのことをあくまでも友人と位置付け、結婚する意思はまるでなかった。失望したマイケルは、おじ(Cheenu Mohan)の勧めでポンニ(Anjali)と結婚する。ポンニは学生時代から幸せな結婚生活を夢見ていたが、初夜の時に、マイケルから愛しているのはマラルで、ポンニには興味がないと聞かされ、ショックを受ける。
 ヤリニはアルルにアル中から立ち直ってもらいたいと思い、彼にプロデューサーと和解するよう懇願する。それでアルルらはプロデューサーのムクンダ(Vijay Murugan)に会うが、ムクンダは映画を公開するために40万ルピーを要求する。
 アルルにはそんな金はなかったが、ジャガンが寺院の女神像を盗むことを提案する。それで、ジャガン、マイケル、それに友人のラメーシュ(Karunakaran)が某寺に忍び込み、女神像を盗み、40万ルピーに換金する。
 これでアルルの問題が解決すると思われたが、しかしプロデューサーのムクンダがアルルの映画をスタッフ、キャストを総入れ換えして作り直すことをニュースで公表する。これに憤ったアルルはムクンダの事務所に押し掛けるが、逆に縛り上げられ、命さえ落としかける。この場はジャガンとマイケルが来てアルルを救うが、怒りのあまりマイケルはムクンダを殴り殺してしまう。
 裁判の結果、マイケルは7年の懲役刑を宣告され、刑務所に入る。これを機にアルルもアル中患者更生施設に入る。
 2年後、アル中から更生したアルルは、しかし妻のヤリニが実家に戻り、アルルと離婚して別の人物と結婚しようとしていることを知る。アルルは何とかヤリニを取り戻そうとする。
 アルルとジャガンは保釈金を払い、マイケルを保釈させる。出所したマイケルは、しかし妊娠、出産したはずのポンニが田舎の実家に帰っていることを知る。ポンニを愛していることを悟ったマイケルは、彼女に会いに行き、何とかチェンナイの家に連れて帰る。
 死んだムクンダの妻と弟がアルルに会いに来、例の映画の配給権を200万ルピーで売りたいと持ちかける。だが、アルルにはそんな金はない。そこで、やはり現金を作るために、ジャガンとマイケルとラメーシュがケーララ州の某寺に忍び込み、女神像を盗もうとする。だがこの時、なぜかマイケルは酩酊状態となり、寺院内で寝込んでしまう。
 翌朝、目が覚めるやマイケルは警察に逮捕される。女神像は盗まれた後だった。マイケルはちょっとした隙を見て警察の車から逃走する。そして、ラメーシュを見つけ出すが、話を聞いて愕然とする。マイケルは罠にはめられていたのである、、。

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★★☆
◎ 物 語 : ★★★★☆
◎ 脚 本 : ★★★★☆
・いやはや、やはり驚きの作品だった。ただ、驚きの質が事前の予想とは全然違っているのに驚いた。まず、【Pizza】と【Jigarthanda】ではトリッキーなストーリーを持つ虚構性の強い映画を撮っていたカールティク監督が、このような感情の機微のあるドラマも作れるんだという驚き。マニ・ラトナムか?と思った(ほとんどの評者はK・バーラチャンダルの作品との類似性を指摘している)。

・それでこけていたら元も子もないが、脚本もしっかり書けているので、この監督にはライターとしての才能もあることが分かった。もっとも、【Pizza】や【Jigarthanda】のような刺激性はなく、地味な作り方なので、物足りなさは感じる。しかし、その地味さが却って怖い。やはりカールティク監督は逸材だ。

・テーマは、ほとんどのレビューで「フェミニズム」だと言われているので、そういうことにしておこう。しかし、ここで注意したいのは、フェミニズムといっても日本人が普通に想起するそれではなく、インド型のフェミニズムだということ。つまり、西洋的な基本的人権思想に基づく男女平等や女性の自由、社会制度/日常生活上の権利拡張を主張するものではないということ。

・おそらく今のインド映画界は女性中心の映画がブームとなっており、フェミニズム的な作品もよく作られていると思うが、南インドでも【How Old Are You?】(14)や【Rani Padmini】(15)などが現れた(どちらもマラヤーラム映画だが)。しかし、本作はそうした作品とは趣を異にしている。つまり、そうした作品から感じられるような「メッセージ性」というか、「うるささ」が感じられないのである。

・じゃ、本作の提示するインド型フェミニズムとは何かというと、それは非常に単純で素朴なこと。カールティク・スッバラージ監督は本作で何も理論的なこと、小うるさいメッセージは示していない。彼が言わんとしていることは、端的に本作の題名「Iraivi」、すなわち「女神」に集約されている。つまり、「女性(多くの場合、「母」として表象される)は女神であり、女神は邪険に扱われるべきではなく、崇敬されなければならない」ということ。

・本作の主要登場人物の男性たち――アルル(S.J. Surya)、マイケル(Vijay Sethupathi)、ダース(Radha Ravi)――は、それぞれ自分の配偶者を邪険に扱い、結果、その報いを受けることになる。それは、彼らの「女神を盗む」という罰当たりな行為に象徴されている。興味深いのはジャガン(Bobby Simha)で、彼はフェミニストで女性を虐待するということはないのだが、そもそも女神を盗む計画の発案者であることから、彼のフェミニズム的思想が嘘っぱちだということが分かり、結局は彼も哀れな末路を迎える。上の男たちは、インドの男性なら割と普通な女性の扱い方をしているだけなのだが、それでも各自が滅んでいく、つまり、本作はインドの男性性が女性性に屈服するという、非常に珍しいインド映画だと言える。

・対して本作の女性たち――ヤリニ(Kamalinee Mukherjee)、ポンニ(Anjali)――は、結婚生活の絶望の果てに、最終的には自由と再出発の決意を手に入れる。一人、マラル(Pooja Devariya)はユニークな存在で、彼女は愛と結婚について自由で大胆な考えを持ち、マイケルをセフレのように扱うが、最後には保守的な女性の一面も見せる。

・その女たちの気持ちを象徴するものとして、「雨」が効果的に使われている。雨というのはインド人の大好きなものであり、母なる大地を潤し、すべての生き物に命を与え、再生の象徴となるもの。本作で雨は冒頭とエンディングで使われ、女たちは雨に触れることで再出発を決意し、映画が終わる。

・さて、インドにおけるフェミニズムの命運を考えると、私は結局インドには西洋型フェミニズム思想は根付かないのではないかと思う。フェミニズム思想の根幹となる「女性観」が全く違うからである。そうなると、本作の「女性=女神観」というのは、インドのフェミニズムの在り方を考える上で、興味深いかなと。

・こんなふうに書くと、本作はアートフィルムっぽい小賢しい作品だと思われるかもしれないが、実際には娯楽タミル映画ならではのダンスシーンとか、タミル人しか思いつかないようなジョークとかもあり、そこが私の感動のツボの一つだった。(ただ、ここは評価が分かれるかもしれない。少なくともボリウッドの作家ならこういう作り方はしないはず。)

◎ 配 役 : ★★★★☆
◎ 演 技
・S・J・スーリヤー(アルル役) ★★★★☆
 監督、脚本家、俳優、プロデューサー、音楽監督、歌手をこなすマルチタレントだが、どうも私とは縁遠く、【Kushi】(00)を作った人という印象しかない。しかし、本作のパフォーマンスは気合いが入っていた。

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・ヴィジャイ・セードゥパティ(マイケル役) ★★★☆☆
 うぬぬ、良いのか良くないのか分からないパフォーマンスだったが、相変わらず髭は濃かった。インパクトのある役回りだが、やはり主役の座はS・J・スーリヤーに譲った感はある。

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・ボビー・シンハー(ジャガン役) ★★★☆☆ バービ・シンハー
 思えば、この人が国家映画賞俳優の肩書を持つのもカールティク・スッバラージ監督のおかげなのであった。本作ではまず大学生役として現れ、濃さも薄めだったが、堅実な演技だった。

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・カマリニー・ムカルジー(ヤリニ役) ★★★★☆
 【Anand】(04)、【Godavari】(06)、【Happy Days】(07)、【Gamyam】(08)と、ゼロ年代はテルグ映画で私を魅了してくれたカマリンだが、久しぶりに見どころのある彼女を見せてくれた。もはや「きれいなお姉さま」とは呼べず、腰回りもがっちりした若妻役なのだが、私にはそれで十分。気が動転してしまったので、何だかよく分からないが4つ星贈呈。

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・アンジャリ(ポンニ役) ★★★★☆
 私がアンジャリを好むのは、二の腕や腹回りの皮下脂肪ゆえではなく、よくドラマに馴染む、特に薄幸の女性役がピタッと決まる顔だからであるが、本作も良かった。泣けた。下の赤ん坊を抱いたシーンも、これぞ南インドのローワークラスの若妻といった感じで、すごく良い。

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・プージャー・デーワーリヤー(マラル役) ★★★☆☆
 掘り出し物っぽいのがこのお方。しゃくれた感じの顔立ちだが、なかなか良い女だった。初めて見たと思っていたが、どうも【Mayakkam Enna】(11)にも出演していたらしい。映画よりも演劇のほうが本業のようだ。

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◎ 音 楽 : ★★★☆☆
◎ BGM : ★★★☆☆
◎ ダンス : ★★★☆☆
・上で書いたとおり、音楽/ダンスはタミルくさいやつが入っていた。私的には好きだが、あまり出来が良いという印象はない。

◎ 美 術 : ★★★☆☆
◎ 衣 装 : ★★★★☆
◎ 撮 影 : ★★★★☆
◎ 編 集 : ★★★☆☆

◎ その他(覚書)
・終盤でマイケルたちが女神像を盗みに行くケーララの寺院が、悪魔に取り憑かれた女にお祓いを施す凄まじい寺院なのだが、あれ、どこなのかなぁ?

◆ 完成度 : ★★★★☆
◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★★★☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 6月18日(土),公開第3週目
・映画館 : PVR (Forum, Koramangala),16:00のショー
・満席率 : 8割
・場内沸き度 : ★★★☆☆

 

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