本ブログは「南インド映画日記」ということだが、ボリウッド映画でも南インドと関係のあるものなら、例えば南インド映画のリメイクとか、監督や主演クラスの俳優が南インドのタレントとか、物語の舞台の多くが南インドとかなら、ぜひ書く方針だった。しかし、【Chennai Express】(13)を最後にヒンディー映画はご無沙汰だった。それ以降も南がらみの映画はいくつか観ていたが、北と疎遠になるにつれ、書くのが億劫になってしまったわけである。 なのに、この【Akira】を取り上げたのは、これがタミル映画【Mouna Guru】(11)のリメイクだということ。たぶん、【Mouna Guru】と【Akira】のどちらも映画館で鑑賞した日本人は私だけだと思うので、変な使命感に駆られて、簡単な見比べ評でも残しておこうと思った。加えて、監督がタミルのA・R・ムルガダース、主演がソーナークシーだというのも押し要因だった。 【Akira】 (2016 : Hindi) 物語 : Santha Kumar 脚本 : Santha Kumar, A.R. Murugadoss 台詞 : Karan Singh Rathore 監督 : A.R. Murugadoss 出演 : Sonakshi Sinha, Anurag Kashyap, Konkona Sen Sharma, Ankita Karan Patel, Amit Sadh, Lokesh Vijay Gupte, Smita Jaykar, Teena Singh, Urmila Mahanta, Mishiekka Arora, Raai Laxmi(特別出演), Atul Kulkarni(特別出演), 他 音楽 : Vishal-Shekhar 撮影 : R.D. Rajasekhar 編集 : A. Sreekar Prasad 制作 : A.R. Murugadoss, Fox Star Studios 題名の意味 : アキラ(主人公の名前) 映倫認証 : U/A タ イ プ : リメイク ジャンル : スリラー 公 開 日 : 9月2日(金) 上映時間 : 2時間18分 《 あらすじ 》 アキラ(Mishiekka Arora)はジョードプルに暮らす11歳の少女。正義心が人一倍強く、地元の不良たちの悪事を警察に証言したため、復讐にナイフで顔を切られる。聾唖学校の教師をしている父(Atul Kulkarni)はそんなアキラに武術を習わせる。すっかり強くなったアキラは例の不良に仕返しをするが、相手を負傷させてしまった廉で3年間少年院に送られる。 14年後、成人したアキラ(Sonakshi Sinha)はムンバイに暮らす兄夫婦に呼ばれ、母(Smita Jaykar)と共に引っ越す。兄はアキラを地元の大学に編入させるが、アキラは兄嫁(Ankita Karan Patel)に歓迎されていないのを悟り、寮に入ることにする。ムンバイでの大学生活でもアキラの一本気な性格は災いし、不良学生たちとのトラブルが起きる。 警視監のラーネー(Anurag Kashyap)は3人の部下と共に悪事に耽る腐敗警官だったが、ある日、国道で自動車事故に遭遇する。その車には大金が積まれていたため、ラーネーはまだ生きていた運転者を撲殺し、その現金をネコババする。しかし、ラーネーがその様子を電話で話していたところを愛人のマーヤー(Raai Laxmi)がビデオで盗撮する。マーヤーは2人の友人にその動画を見せ、ラーネーをゆすろうと持ちかけるが、友人は協力しない。だが、そのビデオカメラも何者かに盗まれ、ラーネーは電話で脅迫されることになる。ラーネーはマーヤーを疑い、誤って殺してしまう。 ビデオカメラを盗んだのはアキラの通っている大学の学生らしかった。ラーネーの部下はなぜかビデオカメラの入ったかばんをアキラの部屋で見つけ、彼女を拘束する。だがアキラには全く身に覚えのないことだった。ラーネーの部下3人はマーヤーの2人の友人とアキラを森まで運び、抹殺しようとするが、アキラは警官の混乱に乗じて逃走する。だが再び捕まり、密かに精神病院へと送り込まれる。 一方、女警官のラービヤ(Konkona Sen Sharma)は、国道上での男の事故死とマーヤーの死に不審なものを感じ、精力的に捜査していた。そして、ビデオカメラの盗難とアキラへの罪の転嫁に関しても真実を得る。 アキラは、患者の一人ラーニーに協力してもらい、精神病院を脱走する。彼女はラーネーの部下の1人を拉致し、大学の倉庫に監禁する。そして、身の潔白を晴らすために大学の式典の機を利用しようとするのであったが、、。 ・その他の登場人物 : シッダールト(Amit Sadh),不良女子学生(Teena Singh),学長の娘アンナ(Urmila Mahanta) * * * * ◎ テーマ : ★★★☆☆ ◎ 物 語 : ★★★☆☆ ◎ 脚 本 : ★★★☆☆ ・始めに言っておくと、オリジナルの【Mouna Guru】も含めて、好きなタイプの映画。暗くて重い作品だが、できれば多くの人に観てほしい。 ・しかし、ムルガダース監督にしては上手くない、という印象はある。同監督の作品らしい展開力(テンポ、爆発力)が弱いし、リメイク映画の枠を乗り越えきっていない。 ・私がリメイク映画を見ない/見たくないというのはこの点で、もともとスター本位で映画を観るタイプじゃないので、ラヴィ・テージャ主演の作品をウペンドラがやったからといって、それが観る動機にはならない。内容本位で行きたいので、オリジナルとそっくり同じコピー映画なら、観るのは時間のムダだし、内容を変えたら変えたで、変えた部分と変えていない部分の齟齬が気になって、気色悪く感じる。見比べて、どっちがどうだというのも、さして重要じゃないように思える。だからリメイクは観ない。 ・それでも本作を観たのは、ムルガダース監督なら創造的なことをやってくれるだろう、【Mouna Guru】の主人公を男から女に変えただけでもすごいアイデアじゃないか、と思えたからだが、この点では期待外れだった。 ・要は、なんで主人公を女性に変えたのかがピンと来ない。本作の序盤はアキラの少女時代が描かれており、こういうのはオリジナルにはなかった。そこでアキラは酸攻撃の被害に遭った女性のために行動し、武術も習うという話になっており、女性の問題をテーマに押し出した作品になるのかなとも期待したが、そこから後は【Mouna Guru】とほぼ同じ展開で、「酸攻撃」はアキラに武術を習わせるためのきっかけでしかなくなっていた。で、結局本作のテーマは【Mouna Guru】と全く同じの警察等の腐敗ということに行きつき、女性を主人公にしなければならない必然性というのは感じられなかった。増築・改築のリメイク映画が齟齬をきたした一例で、ムルガダース監督もその壁を越えられなかったかと。 ・ただ、ソーナークシーのパフォーマンスが良いので、必然性とか齟齬とか考えないで、たんに女ヒーローによるスリラー映画として見るならば、満足はできる。 ・【Mouna Guru】鑑賞記でも書いたが、やっぱり最後の「肉を切らせて骨を断つ」戦法は好きだな。クライマックスからエンディングでは泣けた。 ・主人公の名前「Akira」はサンスクリット語で、「graceful strength」という意味らしい(いや、この英語の意味が分からないのだが)。ちなみに、テルグ・スター、パワン・カリヤーンの息子アキラ・ナンダンは黒澤明から取ったものだとどこかで読んだ。 ◎ 配 役 : ★★★★☆ ◎ 演 技 ・ソーナークシー・シンハー(アキラ役) ★★★★☆ ソーナークシーと言えば、ボリウッド女優のうち、私が蕁麻疹の出ない数少ない女優の一人。それですごく楽しみだったが、概ね期待に応えてくれた。怒り顔に萌え。(そう言えば、先日何かの拍子で【Dabangg 2】を観たが、あのソーナークシーは別嬪だったなぁ。) ・アヌラーグ・カシヤプ(ラーネー役) ★★★★☆ こいつが大の見どころ。脚本家としても監督としても冴えているが、悪役俳優としてもこれぐらいのことができるのね。ただし、オリジナルのジョン・ヴィジャイのほうが醜怪。 ・コーンコナー・セーン・シャルマー(ラービヤ役) ★★★☆☆ 身重の婦人警官を好演しているが、オリジナルのウマー・リヤーズ・カーンの渋さには敵わないと思った。 ・アトゥル・クルカルニーがものすごく楽な、それでいて好印象な役を、楽しそうに演じていた。 ・ラーイ・ラクシュミがひょっこり出ていて、私的にサプライズだった。 ・学長の娘アンナ役の女優に見覚えがあったが、調べたら、タミル映画【Vazhakku Enn 18/9】(12)で主演したウルミラー・マハーンターさんだった。 ◎ 音 楽 : ★★★☆☆ ◎ BGM : ★★☆☆☆ ・積極的に歌の入る作品でもないが、感じのいい音楽が入っていた。"Rajj Rajj Ke"という曲ではソーナークシーが歌っているらしいが、例によって知らなかったし、気付きもしなかった。 ・BGMはひっきりなしにある感じで、うるさかった。 ◎ アクション : ★★★☆☆ ◎ 衣 装 : ★★★☆☆ ◎ 撮 影 : ★★★★☆ ◎ 編 集 : ★★★☆☆ ・ソーナークシーのアクションは申し分なかったが、やっぱりマーラーシュリーの迫力には勝てないと思った。 ◆ 完成度 : ★★★☆☆ ◆ 満足度 : ★★★☆☆ ◆ 必見度 : ★★★☆☆ ◆ 鑑賞データ ・鑑賞日 : 9月4日(日),公開第1週目 ・映画館 : INOX (Magrath Rd),10:15のショー ・満席率 : 1割 ・場内沸き度 : ★☆☆☆☆ |
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カーヴェリ川長治の南インド映画日記 2017/03/21 20:45 |
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