カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Idolle Ramayana】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2016/10/12 20:17   >>

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 プラカーシュ・ラージは、俳優としては押しの強い大型悪役を演じることが多いが、映画監督としては不思議と繊細な小品を撮っている。このコントラストが面白い。俳優としての仕事と監督としての仕事が補完的になるよう、意図的にバランスを取っているのかもしれない。

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 そんなプラカーシュ・ラージ(カンナダ的にはプラカーシュ・ライ)の監督第4作がこの【Idolle Ramayana】。いかにもな感じだが、ジョーイ・マーテュが監督したマラヤーラム映画【Shutter】(12)のリメイク作品(プラカーシュ・ライの監督作品はこれまで全てリメイク)。この【Shutter】は未見だが、魅力があるのか、これまでにもマラーティー映画とタミル映画でリメイクされているようだ。で、今回はカンナダ・リメイクだが、周知のとおり、本作はバイリンガル映画で、【Mana Oori Ramayanam】という題名でテルグ語版も作られ、同日公開されている。
 本作は、国家レベルの賞を受賞した才人が5人――プラカーシュ・ライ、プリヤーマニ、イライヤラージャー(音楽)、シャシダラ・アダパ(美術)、シュリーカル・プラサード(編集)――も揃っているというのが売りの一つだった。

【Idolle Ramayana】 (2016 : Kannada)
物語 : Joy Mathew
脚本・監督 : Prakash Rai
出演 : Prakash Rai, Priyamani, Achyuth Kumar, Aravind Kuplikar, Rangayana Raghu, Sudha Belawadi, Teju Belawadi, Bhargavi Narayan, Ramesh Pandith, Nagendra Shah, Shivajirao Jadhav, Doddanna, その他
音楽 : Ilaiyaraaja
美術 : Shashidhara Adapa
撮影 : Mukes
編集 : Sreekar Prasad
制作 : Prakash Raj, Ramji Narasimhan

題名の意味 : なんて厄介な!
映倫認証 : U
タ イ プ : リメイク
ジャンル : ドラマ
公 開 日 : 10月7日(金)
上映時間 : 1時間51分

《 あらすじ 》
 ブージャンガイヤ(Prakash Rai)はドバイで成功したビジネスマン。彼は故郷のカルナータカ州西岸の町に帰省するが、妻(Sudha Belawadi)や長女(Teju Belawadi)にとって専横に振る舞う家長は煙たい存在だった。現にブージャンガイヤは長女を結婚させようとしていたが、当の長女は学業を続けたいために、二人の関係は険悪なものとなっていた。ブージャンガイヤはまた町の人々からそれなりに尊敬を受けていた。折しもラーマ生誕祭の時期であったが、ブージャンガイヤは祭礼を執行し、自らラーヴァナの役を演じる予定だった。
 映画監督のガルダ(Achyuth Kumar)は自ら書いた脚本を持って、ブージャンガイヤの町にやって来る。この町で撮影中の映画スターに会い、出演の交渉をするためである。ガルダはシヴァ(Aravind Kuplikar)の運転するオート三輪タクシーに乗るが、降りるときにうっかりと脚本の入ったかばんを忘れてしまう。
 ブージャンガイヤは自宅の向かいにビルを所有しており、町の商売人たちに部屋を貸していた。だが、端っこの一室だけは空けており、夜になるとそこに友人らと集まって、酒盛りするのがブージャンガイヤの楽しみだった。この飲み仲間にはオート運転手のシヴァもいた。
 その夜、ブージャンガイヤはいつものように酒盛りをするが、お開きになった後もまだ飲み足りない気分だったため、シヴァのオート三輪に乗って酒を買いに行こうとする。その途中で娼婦(Priyamani)を見かけ、それがとても魅力的だったため、彼女を買おうとオート三輪に乗せる。だが、途上で娼婦がブージャンガイヤのことを町の名士だと気付いたため、ブージャンガイヤは自分の買春行為がばれるのを恐れ、例の酒盛りに使っている一室に転がり込む。シヴァは後で食べ物を買って戻ると約束し、部屋の扉に外から鍵を掛けて、去って行く。
 ところが、途中でシヴァは映画監督のガルダに会い、かばんのことを問われる。実はそのかばんはブージャンガイヤと娼婦のいる部屋に置いたのであるが、シヴァも酔っていたため、そんなこと記憶になかった。ガルダはかばんを返してくれるよう、シヴァに酒を飲ませ、懇願する。
 だがこれが裏目に出る。ガルダを乗せたシヴァのオート三輪は警察の検問に引っかかり、飲酒運転の廉で警察署まで連行される。そのためにシヴァは部屋の鍵を開けに行けなくなり、ブージャンガイヤと娼婦は閉じ込められたままとなる、、。

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★★☆
◎ 物 語 : ★★☆☆☆
◎ 脚 本 : ★★★★☆
・【Shutter】は観ていないので、プラカーシュ・ライがオリジナルをどう料理したのか分からないが、なかなか面白い映画だった。(まさか純コピー映画だとは言わないでくれ!)

・やはりモラルや登場人物の心理的機微を描こうとしたもので、物語が主に狭い室内で進むということを考えると、映画というよりよっぽど演劇に近い。(ジョーイ・マーテュがそもそも演劇人だからそうだろうとは言わないが。)ただ、退屈ということはなく、ほんの小さな出来事がきっかけで意外な展開になるというのがなかなかのスリラーだったし、その小さな出来事が登場人物の心(良心)をがらりと変えてしまうというのも面白かった。
 (写真下: ドラマはこんな小汚い小部屋で進む。)

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・題名の「Idolle Ramayana」は、言葉上の意味は「けっこうなラーマーヤナ」だが、慣用表現で、誰かと仕事や会話をしているときに、何だか状況がややこしくなり、イライラしたときにこの表現を使うらしい。「なんて厄介な」とか「いい加減にしてくれ」みたいな意味になるようだ。ちなみに、テルグ語版の「Mana Oori Ramayanam」は「我らが町のラーマーヤナ」で、ストレートな感じ(もしやこれも慣用句かもしれないが)。

・難解と言う作品ではないと思うが、しかし本作が本当に何が言いたいかという話になると、難しいかもしれない。題名に「ラーマーヤナ」が含まれ、物語の時期も「ラーマ生誕祭(ラーマ・ナワミー)」に合わせているが、かと言って叙事詩『ラーマーヤナ』の現代的翻案ということでもなさそう。強いて言うと、ブージャンガイヤ(Prakash Rai)がラーヴァナに、娼婦(Priyamani)がシーターに比定できなくもないし、ガルダという登場人物もいるし、オート運転手のシヴァ(Aravind Kuplikar)はハヌマーン神に関連付けられていた。しかし、だからどうだという解釈は私にはできない。

・むしろ、一皮むけたときに人は平等になるという本作の人間観や、「改心」という精神の動きを考えると、キリスト教的倫理観に近いものを感じた(もちろん、私の憶測)。

・で、そう考えると重要な役回りになるのが「娼婦」だが、崇高な存在でないのに他者を善に導くという、逆説的な人物像だった。この役をプリヤーマニにさせたというのはプラカーシュ・ライ監督の大手柄だったと思う。(ちなみに、エンドロールでは彼女の役名は「スシーラ」と表示されていたが、物語中ではあえて名前を伏せていたと思う。)

◎ 配 役 : ★★★★☆
◎ 演 技
・プラカーシュ・ライ(ブージャンガイヤ役) ★★★☆☆
 町の大物、否、大物足らんとしていながら、実は小心者で、がらがらと虚栄が崩れた末に、子供のように虚心に帰るオヤジを好演している。この役の演じ方を、オリジナルと各リメイク版で比較してみるのも面白いだろう。
 (写真下: 娼婦役のプリヤーマニと。)

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・プリヤーマニ(娼婦役) ★★★☆☆
 役柄にふさわしく好演していたと思うが、残念だったのは、アフレコが付いていたことだった(ディーパという人がダビングしている)。プリヤちゃんの野太い声はこの役にぴったりだと思うのだが、バイリンガル映画ということで、仕方なかったか。

・アチュート・クマール(映画監督ガルダ役) ★★★☆☆

・アラヴィンド・クップリカル(シヴァ役) ★★★☆☆
 発見、というか、思いがけず好印象だったのがこのオート運転手を演じたお方。俳優というより書くほうが専門らしく、【Oggarane】(14)や【Devara Naadalli】(16)で脚本家として参加している。

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・「同一家族三世代共演」という割と珍しいケースがあった。ブージャンガイヤの妻を演じたのはスダー・ベラワーディだが、その母親役を演じたのはスダーの実母のバールガウィ・ナーラーヤンで、娘役を演じたのはスダーの姪のテージュ・ベラワーディ。このテージュは、スダーの兄プラカーシュ・ベラワーディの娘なので、スダーの娘サムユクタ・ホルナードの従妹となる。(以上、メモ代わり。)

◎ 音 楽 : ★★☆☆☆
◎ BGM : ★★★★☆
・マエストロの音楽は、歌よりBGMが良かった。

◎ 美 術 : ★★★☆☆
◎ 衣 装 : ★★★☆☆
◎ 撮 影 : ★★★☆☆
◎ 編 集 : ★★★★☆

◎ その他(覚書)
・映画監督のガルダが警察に「脚本の入ったかばんをなくした」と訴えたら、警官が「カンナダ映画にも脚本なんてあるんかい?」と返したので、ずっこけた。

◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★★☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 10月8日(土),公開第1週目
・映画館 : Gopalan Cinemas (Arch Mall),12:10のショー
・満席率 : 3割

 (オマケ画像: プラカっさんがこんなイラストになっていた。)

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