カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Rama Rama Re...】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2016/11/03 21:05   >>

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 2013年ごろからカンナダ映画界にも有能な若手監督の台頭が目立つようになり、批評的にも興行的にも成功する作品がぽつぽつ現れている。まだタミルやマラヤーラムの「ニューウェーブ」に比較し得るほどの大きな波にはなっていないし、作品の傾向もはっきりしないものがあるが、ここしばらくタミルやテルグの劣化コピーのような映画を作り続けてきたサンダルウッドにあっては、注目すべき動きだと言える。その脈は今年に入っても途切れておらず、【Thithi】【Godhi Banna Sadharana Mykattu】に続いて、またまた興味深い作品が現れた。それがこの【Rama Rama Re...】で、監督は【Jayanagara 4th Block】(13)という短編映画で注目されたD・サティヤプラカーシュ。長編商業映画ではデビューとなる。
¶ 【Jayanagara 4th Block】の全編動画はこちら。
https://youtu.be/CmK91AxPA1A

【Rama Rama Re...】 (2016 : Kannada)
物語 : D. Satyaprakash
脚本 : D. Satyaprakash, Nagendra H.S, Dhananjay Ranjan
監督 : D. Satyaprakash
出演 : Nataraj, K. Jayaram, Dharmanna Kadur, Bimbashri Ninasam, Radha Ramachandra, Priya Shatamarshan, M.K. Mutt, Sridhar, 他
音楽 : Vasukhi Vaibhav, Nobin Paul (BGM)
撮影 : Lavith
編集 : B.S. Kemaraju, Shamanna
制作 : Kannada Kolour Cinemas

題名の意味 : おお、神よ!(困ったときに、発する言葉。)
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ドラマ(ロードムービー)
公 開 日 : 10月21日(金)
上映時間 : 1時間52分

《 あらすじ 》
 死刑囚のサンダル・ラージャー(Nataraj)が中央刑務所を脱獄する。警察はサンダル・ラージャーを捕らえた者に100万ルピーの懸賞を与えると発表する。
 田舎で隠居暮らしの老人ラーマンナ(K. Jayaram)は所用で街へ行くことになり、おんぼろジープで出発する。そして、ひょんな経緯から長髪で髭面の小汚い男をジープに乗せることになるが、ラーマンナは新聞の写真からその男がサンダル・ラージャーだと気付く。サンダル・ラージャーは気付かれたと察し、逃げようとするが、ラーマンナは放さない。
 このジープに若いカップル――ダルマ(Dharmanna Kadur)とスッビ(Bimbashri Ninasam)――が乗り込んでくる。二人はカーストの違いからそれぞれの家族に結婚を反対され、駆け落ちして来たところであった。ダルマも新聞の写真から同乗している男がサンダル・ラージャーだと気付き、ラーマンナに懸賞の半分を要求する。だが、その時ダルマとスッビを探していた両家族の追っ手がやって来、カップルは走って逃げる。家族の一人はラーマンナを殴り倒すが、その際にラーマンナの手紙を見つけ、読む。それによると、ラーマンナは元絞首刑執行人で、中央刑務所の若いスタッフを教育するために街へ向かうところだと知る。家族一同は変なことに巻き込まれるのを恐れ、ラーマンナたちの元を去って行く。
 この時、老婆(Radha Ramachandra)がやって来、嫁で妊婦のガウリ(Priya Shatamarshan)を病院まで運んでくれるよう、ラーマンナに依頼する。ところが、ガウリの陣痛がいよいよ激しくなり、ジープの中で出産することになる。これにはサンダル・ラージャーも手助けする。
 スッビが現金入りのかばんをジープに忘れて来たため、ダルマとスッビはジープに戻ることにする。二人はバイクに乗っていた軍人を止め、無理に乗せてもらう。実はその軍人はナーニという名で、妊婦ガウリの夫だった。ナーニとダルマとスッビはラーマンナらと合流する。無事に出産したことを知ったナーニとその母は、サンダル・ラージャーとラーマンナに命の恩人だと感謝し、一同を自宅へ招待する。この一連の出来事を通して、サンダル・ラージャーの心に良心のようなものが芽生えてくる。
 だが皮肉ことに、翌朝、サンダル・ラージャーはラーマンナの手紙を読んでしまい、彼が死刑執行人だということを知る、、。

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★★☆
◎ 物 語 : ★★★☆☆
◎ 脚 本 : ★★★★☆
・静かな、哲学的内容を持つ映画だけど、その実コメディーという、不思議な作品だった。実に良い。

・初老の元絞首刑執行人のラーマンナがおんぼろジープで中央刑務所へ向かう途上で、自分が絞首刑をするかもしれない脱獄死刑囚のサンダル・ラージャーをジープに乗せることになり、風変わりな旅を続けるうちに、サンダル・ラージャーの内面に変化が生じるという、ロードムービー。ロード上で出会うのは駆け落ちカップルとか妊婦とかで、道具立てそのものは特別ではないが、メッセージのツボは押さえている。

・ただ、含蓄があって、単純な解釈は止したほうがいいような作品だと思う。先日紹介した【Idolle Ramayana】もそうだが、本作も『ラーマーヤナ』と『マハーバーラタ』をモチーフにしていて、それと映画のメッセージの噛み合わせがなかなか理解しにくい。

・まず冒頭で『ラーマーヤナ』の「シーターの貞操」のエピソードがテレビドラマの形で提示されるが、これが本作のテーマとどう関わるのか分からなかった。終盤では流しの楽団が登場し、『バガヴァッド・ギーター』の一節を歌うが、これは本作のテーマとよく合致しているようだった。

・本作は生と死のドラマらしく、死刑囚のサンダル・ラージャーは「死」が怖くて、死から逃げようと脱走する。しかし、図らずも一つの生命がこの世に誕生する手助けをし、その時、良心というものに目覚める。それが皮肉にも自分の非を悟らせる結果となり、絞首刑という自身の運命を受け入れる決意をする。これはまさに『バガヴァッド・ギーター』の「恐れず、ダルマに従え」だろう。

・新生児の出産に立ち会うことで、登場人物(男)の内面に変化が生じるというモチーフは、テルグ映画【Gamyam】(08)やタミル映画【Kadal】(13)でも使われていた。私的にはピンと来ないが、インド人的にはこうなのかもしれない。

・生と死を象徴するものとして、「ロープ」の使い方も面白い。このロープはそもそもラーマンナが絞首刑のためにジープに積んでいたものだが、故障して動かないトラックを牽引する(窮地にある人を救う)ためにも、新生児をあやす揺り籠の吊り紐としても使われる。

・予想に反して、写実とは正反対の超現実的な描き方だった。物語はどことも言及されない荒涼とした平原で進み、人さえストーリーに関係のある人物以外は登場しない。下手すりゃSFっぽい不思議さ。この荒野を進む故障しがちな「古ジープ」も何かを象徴していそうだが、それはもう1回観てから考えよう。

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・何だか難しい書き方をしてしまったが、コメディー映画として、ユーモアのセンスも良かった。

・とにかく本作が良いのは、知的に気取ったところが全然ないことだ。監督自身が人生の不思議さと難しさに驚き、それを素直に表現しているだけ、と言った感じだ。今のところ「○○映画祭△△賞受賞」といったドヤ顔をしていないところも良い。

◎ 配 役 : ★★★★☆
 映画俳優は使わず、すべて演劇界の役者が起用されているらしい。適材適所という感じはする。

◎ 演 技
・ナタラージ(サンダル・ラージャー役)
 心身ともに極限状態にある男の役だったので、この人の演技力については判定しにくい。役作りのために6ヵ月間苦行者のような生活をして、体重を24キロ落としたらしい。役者魂を感じる。

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・K・ジャヤラーム(ラーマンナ役)
 味のある風貌だが、台詞(ダビング)はそれほど上手いとは思えなかった。

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・ダルマンナ・カドゥール(ダルマ役)とビンバシュリー・ニーナーサム(スッビ役)
 駆け落ちカップルを演じた二人だが、【Jayanagara 4th Block】でもカップルを演じていた(実際にカップルなのか?)。男のほうの台詞回しは昔のコメディアン風で、時代錯誤を感じたが、劇団でもコメディー担当なのかもしれない。

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◎ 音 楽 : ★★★★☆
◎ BGM : ★★★★☆
・時にコミカルに、時に無機的に、時に感傷的に流れる歌が秀逸。BGMも良かった。

◎ 衣 装 : ★★★☆☆
◎ 撮 影 : ★★★★☆
◎ 編 集 : ★★★★☆
・【Jayanagara 4th Block】でもそうだったが、要所でクローズアップや長回しを使う我慢のカメラワークだったので、脚本も絵コンテもしっかり描いたんだろうなぁと思っていたら、撮影はけっこう即興が多かったらしい。

◎ その他(覚書)
・ロケは主にビジャープル近くで行われたようだが、適切な場所を見つけるために、製作チームはロケハンに8千キロも走ったらしい。

◆ 完成度 : ★★★★☆
◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★★★☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 10月31日(月),公開第2週目
・映画館 : Gopalan Cinemas (Arch Mall),12:15のショー
・満席率 : 満席
・場内沸き度 : ★★★☆☆
・備 考 : 英語字幕付き

 

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2016/11/10 20:39

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