カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Kahi】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2016/11/10 20:39   >>

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 先週の【Rama Rama Re...】鑑賞記の中で、カンナダ映画界の「若手監督の台頭」について触れたが、またまたそれ系の映画が現れた。

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 監督のアルウィンド・シャーストリは新人で、以前はソフトウェア技術者をやっていたらしい。トレイラーが興味を惹くものだったし、公開後、カンナダ映画界の若手映画人から称賛するコメントが相次いだので、ヤシュ主演の【Santhu Straight Forward】は後回しにして、まずこちらを観ることにした。

【Kahi】 (2016 : Kannada)
物語・脚本・監督 : Arvind Sastry
出演 : Hari Sharva, Krishi Thapanda, Matangi Prasan, Suraj Gowda, Ramesh Bhat, Kishori Ballal, Aravind Iyer, Mahesh Bung
音楽 : Midhun Mukundan
撮影 : Prashanth RS, Vinyas CK
編集 : Arvind Sastry
制作 : Rekha Venkatesh, Nagasheela Prakash

題名の意味 : 苦さ
映倫認証 : A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : スリラー
公 開 日 : 11月4日(金)
上映時間 : 1時間34分

《 あらすじ 》
 アキラ(Krishi Thapanda)は結婚して3年になるが、子供には恵まれないでいた。彼女は主婦だが、作家になるのが夢だった。しかし、書きかけた小説は一度も完結したことがなかった。
 ハリ(Hari Sharva)は詩を書くのが趣味の独身男だが、麻薬の密売をして生計を立てていた。彼はラヴィ(Aravind Iyer)というボスの仕事を請けていた。
 ラグ(Suraj Gowda)は金持ちの息子だが、変質者的傾向があり、酒や麻薬をやって夜の街に出ては、良からぬことをしているようだった。
 ヴィディヤ(Matangi Prasan)は古典ダンサーだが、店の商品を万引きする癖があった。彼女は犬のティンミを飼っており、時おりおじとおばの家に遊びに行っていた。
 不妊検査の結果、アキラには異常がないことが分かる。だがちょうどその時、夫のプラモードが事故で重傷を負い、入院してしまう。
 ハリはアパートの前を通りかかるヴィディヤを何度も見ており、惹かれるものを感じていた。ある日、ヴィディヤは服屋で万引きした際に店員に見つかり、逃げる。そこへハリがやって来、彼女をバイクに乗せて、うちまで送り届ける。
 ラグは両親の主宰するパーティーに出席するが、友人らと麻薬をやり、酩酊状態になる。彼はおじの娘ラミャを見つけ、強引に車に乗せ、夜の街に出る。
 ヴィディヤに惚れたハリは、彼女に会った際にキスしようとするが、激しく拒絶される。
 ヴィディヤの通うダンス学校に、ムンバイの有名なグループからダンス公演の誘いがかかる。だが、それに参加するには20万ルピーが必要だった。キャリアアップのためにどうしても参加したいヴィディヤは、愛人のラヴィ(ハリのボス)にお金の相談をするが、相手にされない。彼女はおじおばの家に行き、彼らの現金を盗む。そのお金でダンス公演の参加が認められ、バスの出発を待つばかりだったが、ペットのティンミが逃げ出してしまい、ヴィディヤはティンミを探しに夜の街に出る、、。
 ハリは相棒のスジャイ(Mahesh Bung)と次の密売の仕事に取り掛かるが、ブツの入ったかばんをバイクで運ぶときに警察の検問に引っ掛かり、かばんを捨てて逃亡する。そのかばんはあるバーにあるとの情報を得、ハリとスジャイは現地に向かうが、かばんの奪取に失敗した上、スジャイは射殺されてしまう。ハリはラヴィの手の者に追われることになり、夜の街を逃走する、、。
 ラグはラミャ失踪事件の件で警察の取り調べを受けるが、隙を見て逃げ出し、車で夜の街を逃走する、、。
 アキラは夫の入院する病院を後にし、美容院で髪を整えた後、夜の街を歩く、、。

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★★☆
◎ 物 語 : ★★★☆☆
◎ 脚 本 : ★★★★☆
・哲学的な香りのするスリラーで、なかなか面白かった。4人の主要登場人物――アキラ、ハリ、ヴィディヤ、ラグ――のエピソードが並行して進む型の物語だが、4人に全く関係がないわけではなく、何らかの形で緩い接点があり、何らかの形である同じ晩にまた接点を持つことになる。ストーリーはあってなきが如くで、抑揚がないが、不思議と退屈しない。

・おそらくアルウィンド監督の頭の中にははっきりとした観念があると思うが、茫洋とした描き方に留めておいてくれたおかげで、いろいろな解釈が可能な映画となっている。興味深い内容なので、あれこれ書きたくなるが、スクリーンを鏡に鑑賞者自身が各自の解釈を持つべき作品だと思うので、ここではごちゃごちゃ書かない。

・と言いながら、シンプルなことを一つだけ書いておくと、、、本作の台詞は会話だけでなく、主要登場人物4人の内面が独白的な形で何度か表白されている。この部分は面白い上に、作品のトーンも形作っている。それによると、本作のテーマは「死と生」、つまり「人生」、もっと言うと「人が生きる意味」というものになると思う。このテーマに即して、監督はアキラにギリシャ神話の「シーシュポス」の話をさせている。(これは「シーシュポスの岩」を念頭に置いていると思われるが、おそらくカミュの『シーシュポスの神話』から得たアイデアだと思う。)

・しかし、だからと言って、アルウィンド監督は「人生の意味はこうだ」とか、「だから我々はこう生きるべきだ」とか、大上段にメッセージを突き付けてこないところが良い。監督自身も生きることの謎を謎として味わっているかのようで、これは【Rama Rama Re...】もそんな感じだった。

・それで、本作はすごく観念的な映画になっている。よくこういう新感覚の映画は「リアル」という言葉で形容されるが、本作は違う。そりゃあ、車がぶっ飛ぶアクションシーンやカラフルなダンサーが50人並ぶダンスシーンがないという意味ではリアルだが、内容的には現実にあり得なさそうな世界が描かれている。

・で、これがカンナダの新世代映画の特徴なのかなと。タミルのニューウェーブ映画というのは、村落部や都市の下層生活者の問題を扱い、社会的なメッセージを含む告発調のものが多かった。マラヤーラムのニューウェーブ映画は、安定的に高齢化してしまった映画界に対して、ヤングによるヤングのための映画を作り出すということだったと思う。どちらも比較的写実的なのに対して、カンナダ・ニューウェーブはかなり違っていて、【Lucia】(13)にしても【Thithi】(16)にしても【Rama Rama Re...】にしても、非常に観念的で知的なフィクションが多いように思う。これはもしかしたら、ベンガルールがIT都市というのと関係があるかもしれない。

◎ 配 役 : ★★★☆☆
 出演者は、ラメーシュ・バット(アキラの父役)やキショーリ・バッラル(ヴィディヤのおば役)といったベテラン俳優も出ていたが、総じて知られていない顔ぶれだった。
 写真の左よりハリシャルワ(ハリ役)、スーラジ・ガウダ(ラグ役)、クリシ(アキラ役)、マータンギ(ヴィディヤ役)。

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◎ 演 技
・4人ともまずまずのパフォーマンスだったが、最も微妙なニュアンスを出していて良かったのがアキラ役のクリシ。ハリ役のハリシャルワも良かった。

・4人のうち、スーラジ・ガウダは【Maduveya Mamatheya Kareyole】(16)という主演作があるようだが、全然知らなかった。

・ヴィディヤ役のマータンギは役柄と同じく本当に古典ダンサーらしく、個人的に注目していたが、実見した限り、ヒロインとしてやっていくのは難しいと感じた。しかし、それとは別に、インドの古典ダンスで女性が体をくねくねくねらすのは、それ自身が一つのエロティシズムだと再認識した。

◎ 音 楽 : ★★★☆☆
◎ BGM : ★★★★☆
・歌は2,3曲入っていたように思うが、もちろん派手なダンスなどはない小さなもの。しかし、割と良かった。BGMはうるさい部分もあったが、良い。

◎ アクション : ★★★☆☆
◎ 衣 装 : ★★★☆☆
◎ 撮 影 : ★★★★☆
◎ 編 集 : ★★★★☆
・撮影は、夜や薄暗い室内の場面が多いにもかかわらず、照明を使わないで撮ったらしい。

◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★★★☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 11月6日(日),公開第1週目
・映画館 : Gopalan Cinemas (Arch Mall),12:10のショー
・満席率 : 2割
・場内沸き度 : ★☆☆☆☆
・備 考 : 英語字幕付き

 

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