カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Vangaveeti】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2016/12/28 21:23   >>

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 この週末はヴィシャールとタマンナーが出演しているお目出度そうなタミル映画を観るつもりだったが、評価があまりにも低いのでやめた。代わりに、クリスマス・イブにこの流血物はどうかなぁとも思ったが、ラーム・ゴーパール・ヴァルマ監督の【Vangaveeti】を観ることにした。1970年代から80年代にかけて、アーンドラ・プラデーシュ州のヴィジャヤワーダを襲ったギャング抗争(Vijayawada Gang Warfare)を題材にした映画らしく、そう言えばRGV監督はそうした映画の準備をしているというニュースをずっと前に読んだのを思い出した。

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【Vangaveeti】 (2016 : Telugu)
物語・脚本・監督 : Ram Gopal Varma
出演 : Sandeep Kumar, Naina Ganguly, Kautilya, Shritej, Vamsi Chaganti, Vamsi Nekkanti, 他
音楽 : Ravi Shankar
撮影 : Rahul Srivastav, K. Dilip Varma, Surya Chowdhary
編集 : Siddhartha Ratholu
制作 : Dasari Kiran kumar

題名の意味 : ワンガヴィーティ(主要登場人物の家族名)
映倫認証 : A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : 政治ドラマ
公 開 日 : 12月23日(金)
上映時間 : 2時間22分

《 あらすじ 》
 1970年代初頭のヴィジャヤワーダ。ワンガヴィーティ・ラーダー(Sandeep Kumar)はチンピラだったが、野心家で、ある日、当地で勢力のあった共産党の大物政治家ウェンカタ・ラトナム(Vamsi Nekkanti)の門をくぐる。ラーダーはウェンカタ・ラトナムの下で頭角を現し、無視できない存在となるが、これを煙たく思ったウェンカタ・ラトナムは、ラーダーを軽んじ始める。これを不服としたラーダーとその部下はウェンカタ・ラトナムを暗殺する。以降、ラーダーはますます勢力を伸ばし、ヴィジャヤワーダを仕切るまでになる。
 そのラーダーの許に、デーヴィネーニ・ガーンディー(Kautilya)とデーヴィネーニ・ネヘル(Shritej)という兄弟が訪れる。二人は大学生で、学内に敵対する政治勢力が入って来るのを嫌い、ラーダーの力を借りに来たわけであった。ラーダーと兄弟は新たにUnited Independentという学生運動の団体を組織し、学内を支配する。
 共産党勢力の政治家たちが、暗殺されたウェンカタ・ラトナムの復讐として、ラーダーを殺害してしまう。だが、首領を失ったラーダーの部下たちは、すぐさまラーダーの弟ワンガヴィーティ・ランガ(Sandeep Kumar)を首領に据え、勢力を保つ。その後、ランガは気の強いラトナ・クマーリ(Naina Ganguly)という女性と結婚する。
 時が経つにつれ、ガーンディー/ネヘル兄弟はランガと対立するようになり、別の学生運動団体を組織する。ランガはこの動きを抑えるため、ガーンディーを殺害する。
 ガーンディーの弟ネヘルはラーダーと和睦するつもりだったが、もう一人の弟ムラリ(Vamsi Chaganti)が受け入れず、ランガに対する復讐心を燃やす。
 ここでヴィジャヤワーダの政治地図が変わり始める。国民会議派の幹部がランガを訪れ、彼を州会議員に仕立てる。他方、州首相の与党政党もヴィジャヤワーダでキャンペーンを行い、ネヘルを州会議員にする。ランガ一派とネヘル/ムラリ一派の対立は激化し、ムラリはランガの部下を次々と殺害する。これに手を焼いたランガはムラリを殺害する。
 さすがに温厚なネヘルも弟ムラリの殺害で切れてしまう。ネヘルは周到に準備し、ランガを殺害する。1988年12月のことであった。

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★☆☆
◎ 物 語 : ★★★☆☆
◎ 脚 本 : ★★★☆☆
・根本的なことを言うと、カルナータカ州ベンガルール在住の日本人がアーンドラ・プラデーシュ州のヴィジャヤワーダで40年も前に起きた出来事の実録風ギャング映画を観ることに、どんな意義があるのかなぁという疑問が無きにしも非ずだが、なかなか面白く鑑賞できた。

・血で血を洗うラウディズムということでは、アーンドラ・プラデーシュ州ではついラーヤラシーマに目が行くが、ヴィジャヤワーダでもこんな凄いことが起きていたんだ。噂には聞いていたが、それを(たとえ映画であれ)目にすることができただけでも、RGV監督に感謝したい。ちなみに、ヴィジャヤワーダはRGV監督の出身地であり、ついでに言うと、先日紹介した【Ekkadiki Pothavu Chinnavada】(16)でも「ラウディズムの本場」だと言及されていた。

・実はRGV監督がヴィジャヤワーダ・ギャング抗争をモチーフに映画を作るのは初ではなく、大昔に【Gaayam】(93)を撮っている。これはDVDで観たが、ずいぶん見せ方が違っており、観比べると面白い。最近のテルグ映画では【Gaayam 2】(10)と【Bejawada】(11)も同ギャング抗争を描いたものらしいが、どちらも未見。

・本作は実録風映画には違いなく、登場人物の名前も出来事のアウトラインも史実に応じているようだが、Wikipediaの「Vangaveeti Mohana Ranga」の今現在の記述を読む限り、若干違っているように見える。RGV監督が意図的に変えたのか、Wikipediaのほうが間違っているのかは分からないが、映画はやはり簡略化されているのは確かだ。少なくとも映画中にランガの逮捕、投獄というエピソードはなかった。

・まぁ、素人としては、ウェンカタ・ラトナムの暗殺が1972年、ワンガヴィーティ・ラーダーの殺害が1974年、ワンガヴィーティ・ランガの殺害が1988年ぐらいのことを頭に入れておけばいいかな。

・それと、やはり忘れてはいけないのが、ワンガヴィーティ家とデーヴィネーニ家の対立抗争が単に政治的、地場ビジネスを巡る利権的な動機によるだけでなく、根底にカースト対立の問題があるということだろう。ワンガヴィーティ家がカープで、デーヴィネーニ家がカンマらしいのだが、この違いがあの泥沼の抗争に繋がったのかなと。

・シンプルな語り口で良いのだが、史実そのものは比較的単調な復讐の応酬なので、ドラマ的にもやや退屈になってしまった感じがする。作品の大きさ、気合いの入り方という点では、【Rakta Charitra】(10)よりはぐっと落ちる。

・ギャング抗争物といっても、どこかのどかな感じがするのは、やはり出来事が3〜40年前の、銃も携帯電話も使わない時代のものだからだろう。武器といえばロング、短剣といった刃物類で、爆発系も火炎瓶ぐらいだった。しかし、そこはさすがにRGV監督、事件の凄惨さを出すために見せた殺し方が「メッタ斬り」だった。

・RGV監督の趣味といえばそれまでだが、ドラマとしてはギャングの復讐の応酬のほうに力点があり、ワンガヴィーティ・ランガら登場人物の政治家としての人間像、厚みが描かれていないのが物足りない。

・政治家といえば、NTRに相当する人物も登場するが、足元とか後頭部だけを写したもので、こんな所でバーラクリシュナがカメオ出演してくれればうれしかったが、そうも行かないのだろう。

・物語の要所で、ヴィジャヤワーダで信仰を集めているカナカ・ドゥルガー女神への関連付けがあった。神の無力、神の沈黙を言いたいのか、またはこの血の歴史さえ神の意思と言いたいのか、RGV監督の意図が気に掛かる。

◎ 配 役 : ★★★★☆
◎ 演 技
・サンディープ・クマール(ラーダー/ランガ役) ★★★☆☆
 これは掘り出し物っぽい。プラバースばりの風貌で、なかなかカッコよかったし、ワンガヴィーティ家の血の気の多いラーダーと思慮深いランガという、性格の違う兄弟をまずまず無難に演じていた。RGV監督は、映画のストーリーとか脚本とかの面では何か足りないものを感じることが多いが、無名俳優の発掘と役作りには毎度唸らされる。
 (写真下: これはラーダーのほう。)

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 ちなみに、写真下の左は実在したワンガヴィーティ・ランガで、右がサンディープ演じるランガ。あまり似ていないかな。というより、実物のほうがハンサムだぞ。

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・ナイナー・ガーングリー(ラトナ・クマーリ役) ★★★☆☆
 RGV監督作品を観る楽しみの一つは、必ず美女が登場するということだが、本作も外さなかった。昔の地方の娘役ということで、衣装やメイクは保守的なものだったが、グーグルでNaina Gangulyと検索したら、エロい画像がたくさん出てきて、ビビっちゃった。

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 ちなみに、写真下の右のオバサマが実在のラトナ・クマーリらしいが、美人だったのかな? しかし、左にいるのがおそらく娘のアーシャだと思われ、これを見る限り、RGVのキャスティングはほぼ間違っていない。

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・脇役陣もほとんど知らない顔ばかりだったが、良かった。
 (写真トップ: 左上から時計回りに、ランガ役のSandeep Kumar、ネヘル役のShritej、ムラリ役のVamsi Chaganti、ガーンディー役のKautilya。)

 参考に、写真下の左が実在のデーヴィネーニ・ムラリで、右が映画のヴァムシー・チャガンティ演じるムラリ。どことなく似ているかも。丸写真は【Happy Days】(07)出演時のヴァムシーくん。えらい変わりようだ。

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・恒例になった感があるが、RGV監督自身が上手いんだか下手なんだか分からない感じのナレーションを聞かせている。

◎ 音 楽 : ★★★☆☆
◎ BGM : ★★★☆☆
・RGV監督作品らしく、やっぱりBGMはうるさい。いくら音楽監督が変わっても、いつも同じような音作りなので、きっとRGV監督がこんなのにしてくれと要求しているんだろうね。

◎ アクション : ★★★☆☆
◎ 美 術 : ★★★☆☆
◎ 衣 装 : ★★★☆☆
◎ 撮 影 : ★★★★☆
◎ 編 集 : ★★★★☆
・ヴィジャヤワーダの街並みを上から下から思い入れたっぷりに収めた映像が良い。

・しかし、スローモーションが多すぎるのが難点。特に後半のムラリの殺害場面とランガの暗殺場面。

◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★☆☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 12月24日(土),公開第1週目
・映画館 : PVR (Forum, Koramangala),15:50のショー
・満席率 : 満席
・場内沸き度 : ★★★☆☆

 

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
カーヴェリ川さん、こんにちは。今年も楽しみに記事を拝見致しました。ありがとうございます。来年も沢山のインド映画の話題を期待申し上げます。
ちょっと前の話ですが、映画「Charlie」が、このブログを起点として日本上映と相なった経緯も判りました。日本版DVDも近日発売予定と聞きましたが、待ちきれなかったので、いま英国系のネット通販でブルーレイを取り寄せ中です。これからも映画評を参考にさせて頂きます。
ところでタマンナーさん、facebookで見ましたが、年末に強いメッセージを発してましたね。あそこまで怒ることになった経緯は存じ上げませんが、日本だったらワイドショーで1週間取り上げそうな位のインパクト。今後の仕事に影響が出ないかと心配します。
よっぴい
2016/12/29 22:47
よっぴいさん、毎度読んでくださって、ありがとうございます。励みになります。
タマンナーのメッセージ、気が付きませんでした。こちらのことですよね。
https://www.facebook.com/Tamannaah/photos/a.478823695571207.1073741828.476976269089283/1168721169914786/?type=3&theater
一体何があったのやら?
とにかく、来年もよろしくお願いします。
カーヴェリ
2016/12/31 02:45
はいそうです。新聞を読むと、何やら「Kathi Sandai」を演出したSuraj監督との間で衣装のことでトラブルが生じたようですね。27歳かー。演技力も抜群だし、若く綺麗なうちに全身をカメラに収めたいという気持ちもあったのでしょうけれど…。

それでは、良いお年を。
よっぴい
2016/12/31 10:08
なるほど。
しかし、Suraj監督なら、タマンナーのほうが力は強そう、、w

良いお年を。
カーヴェリ
2017/01/01 02:04
この抗争事件は川縁さんが書いてるようにカンマとカプーのカースト間対立が根っこにあるのですが、ワンガウェーティ・モーハン・ランガーが白昼殺害されたことをきっかけに、東西ゴーダワリ、軍トゥール、クリシュナの4県、要するにコスタ・アーンドラの全部ですが、カプーによるカンマの所有財産への広範囲にわたる襲撃があったことの方が社会的な衝撃は大きかったわけで、そういう「続編」があったことを踏まえてこの映画を見たほうがいいのでしょう。

この事件があったせいで1989年の選挙でTDP政権が敗退して下野を余儀なくされたわけで、まあカプーは代表する政党を持たず、長年レッディの会議派とカンマのTDPの間で好いようにあしらわれてきましたかね。チルさんの政界進出の野望もそういう文脈で見れば新しい関心も生まれてきます。
メタ坊
2017/01/06 00:23
つまりこの映画の出来事は、1980年代終盤以降のコースター・アーンドラにおける混乱の序曲にすぎなかったわけですね。怖いですね。なんか、憎悪の規模が違うものを感じます。
カーヴェリ
2017/01/06 09:36

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