カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Kavan】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2017/04/04 20:57   >>

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 タミルのK・V・アーナンド監督は、強い社会的メッセージをしっかりとインド娯楽映画のフォーマットで表現できる監督として、これまでの5作が全て面白いという、安心のブランド。そんなアーナンド監督が今やタミルのトップ個性派スターに成長したヴィジャイ・セードゥパティと組んだのが本作。楽しみの1作だった。
 (写真下: アーナンド監督近影。お顔と同様、四角張った映画を期待したい。)

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【Kavan】 (2017 : Tamil)
脚本 : K.V. Anand, Subha, Kabilan Vairamuthu
監督 : K.V. Anand
出演 : Vijay Sethupathi, T. Rajendar, Madonna Sebastian, Akashdeep Saighal, Bose Venkat, Vikranth Santhosh, Darshana Rajendran, Pandiarajan, Jagan, Five Star Krishna, Bhavani, Powerstar Srinivasan, Bhavana Aneja, Chandini Tamilarasan, R.N.R. Manohar, Nasser(特別出演), 他
音楽 : Hiphop Tamizha
撮影 : Abinandhan Ramanujam
編集 : Anthony
制作 : Kalpathi S. Aghoram, Kalpathi S. Ganesh, Kalpathi S. Suresh

題名の意味 : 投石器
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : スリラー/ドラマ
公 開 日 : 3月31日(金)
上映時間 : 2時間40分

《 あらすじ 》
 ティラク(Vijay Sethupathi)は報道の公正で倫理的な使命を信じるテレビレポーター志望の男で、大手テレビ局のZENワンTVに就職が決まる。この局には彼の元恋人のマラル(Madonna Sebastian)がすでに働いていた。マラルは映画学校時代の同級生だが、卒業作品制作を巡って仲たがいし、3年前に別れていた。
 ティラクは、テレビ局の前で起きた政治家ディーラン(Bose Venkat)に対する抗議行動と、それに端を発した暴動の様子をビデオに収める。それを局の編集主任ピッライ(Pandiarajan)に渡すが、そのビデオは尻切れトンボで報道されてしまう。それもそのはず、実はZENワンTVの社長カリヤーン(Akashdeep Saighal)とディーランは癒着しており、その暴動もカリヤーンが視聴率獲得のために煽ったヤラセだったからである。
 政治家ディーランに対する抗議行動の先頭に立っていたのはアブドゥル(Vikranth Santhosh)とその恋人カルパナー(Darshana Rajendran)だった。二人はディーランの所有する化学工場による汚染で地元民が苦しんでいるのを訴えていたのである。だが、カルパナーはディーランの手の者に性的暴行を受け、入院する。その知らせを受けたマラルは、ティラクとカメラマンのアショーク(Five Star Krishna)を連れて病院へ行き、顔を出さないという条件でカルパナーの話をビデオに収める。これはZENワンTVでスクープとして報道され、ディーランとカリヤーンは慌てる。
 ティラクはスポンサーのラクシュミ(Bhavana Aneja)に気に入られ、生放送のトーク番組の司会を担当することになる。そのトークの相手は他ならぬ政治家ディーランだった。番組を始めるにあたって、ティラクは部長のバーヴァナ(Bhavani)からディーランに不利な質問はしないようにと忠告され、それを呑む。しかし、番組開始直前にカルパナーの顔出し映像を使ったニュースが流される。それは病院での収録時にアショークが鏡に映ったカルパナーの顔をこっそりビデオ撮影したもので、内容もカルパナーを貶め、ディーランに有利になるものだった。これを見たティラクは激怒し、生放送の番組台本は無視し、番組中でディーランを攻撃する。また、ティラクはこの時のディーランの暴行をタブレットでビデオに撮る。
 この一件でティラクは会社を解雇される。すでにティラクとよりを戻していたマラルと、ジャガン(Jagan)を含む4人も退社して、彼に同行する。6人はたまたま見つけたマイナーな放送局ムッタミルTVを訪れ、そこで働くことにする。それはマイルワーガナン(T. Rajendar)という男が経営する傾きかけた局だった。ティラクらは早速この局からディーランの工場の汚染問題、カルパナーの訴える真実、そしてトーク番組でのディーランの暴行を報道し、好評を得る。
 すっかり激怒したディーランとカリヤーンは、地方長官事務所の爆破事件を起こし、それをイスラーム教徒のアブドゥルの仕業だとするばかりか、彼をテロ組織ISのメンバーだとするでっち上げニュースを作り、ZENワンTVから流す。ティラクは逃げるアブドゥルを保護し、車の中で真実の証言ビデオを撮影する。だが、ZENワンTVのアショークと警察に見つかり、追われて森の中に逃げ込む。ティラクの車は転落し、逃げるアブドゥルはアショークに捕まってしまう。しかし、これが有利に働き、ティラクは、アショークと警察がフェイクエンカウンターでアブドゥルを殺そうとする現場を撮影することに成功し、それをムッタミルTVから放送しようとする。だが、全貌が放送されないうちに、中央政府の指令によりムッタミルTVの番組が放送禁止となる。
 ここでカリヤーンとディーランはマイルワーガナンを買収しようと、ムッタミルTVの事務所にやって来る、、。

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★★☆
◎ 物 語 : ★★★★☆
◎ 脚 本 : ★★★☆☆
・紛れもないK・V・アーナンド監督の作品だった。さすがアーナンド監督、痛すぎる社会風刺を痛快な娯楽映画にまとめてくれている。

・あらすじを読んで分かるとおり、取り上げられたのはマスメディア(テレビ)の腐敗ということで、報道機関が政治家と癒着した場合の危険性が描かれている。これがかなりパワフルに描かれているものだから、化学工場の汚染の問題やイスラーム教徒への偏見といった、それだけでも十分映画1本の主題となるような社会問題がサブプロットとして霞むぐらいだった。

・このマスメディアの不正を叩くのはやはりマスメディアなのだが、それもマイルワーガナン(T. Rajendar)の経営する超マイナーな放送局が大手TVチャンネルを相手に闘うというのが面白い。ちなみに、題名の「Kavan」というのは「投石器」のことらしく、いくつかのレビューでは、旧約聖書の少年時代のダビデがペリシテ人の巨人ゴリアテを倒すときに使った武器(武器というほどのものではないが)のイメージとして言及されていた。

・ただ、何というか、みっちりと中身の詰まった2時間40分だったが、良く言えば面白すぎる、悪く言えばくどい映画でもあった。つまり、悪役(TV局社長のカリヤーンと政治家のディーラン)を叩くのにあそこまでこってりとやる必要があったか(最後は水戸黄門まで登場していた)。

・しかも、ティラク(Vijay Sethupathi)らの作戦がうまく行きすぎ。あの切羽詰まった局面で、あそこまでうまく罠は張れないだろう。もちろん娯楽映画なのだから、映画的に面白いトリックを見せてくれるのは歓迎だが、やりすぎると嘘っぽく見えてしまう。

・つまり、映画中でマラル(Madonna Sebastian)が「テレビはショービジネスなんだから」と言い聞かせる場面があったが(音楽番組でも刺激的な内容にするためにあちこちにヤラセを入れていた)、そう言い出すと、テレビと同じく映画もショービジネスなので、アーナンド監督が本作中で不正/社会悪として描いた問題がどこまで現実を反映しているのかが分からなくなるからである(つまり、映画を面白くするためにアーナンド監督が捏造した似非問題かもしれないのである)。

・だからと言って、内容にリアリティーを出すためにもうちょっと面白くない映画を作れというのもナンセンスだが、私はやはり、たとえ娯楽フィクション映画であっても、社会批判を強く打ち出したいなら、リアルさを離れてはいけないと思う(【Urvi】鑑賞記でも似たことを書いた)。少なくとも言えるのは、本作はメディア(テレビ)を扱ったドラマとしては、RGV監督のヒンディー映画【Rann】(10)ほどの説得力はない。

◎ 配 役 : ★★★☆☆
◎ 演 技
・ヴィジャイ・セードゥパティ(ティラク役) ★★★☆☆
 【Orange Mittai】(15)鑑賞記の中で、3年で30歳年を取るヴィジャイ・セードゥパティの話をしたが、それで行くと本作では70歳の老人を演じてくれるかと期待したが、まずは大学生の役だった! ちょっとキモかったけど、無理があったとは言わない(あんな大学生は普通にインドにいる)。全般的に、理想主義(頑固と言ってもいいのだが)のジャーナリストという役は彼に合っていた。
 (写真下: やっぱりキモいか。)

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・T・ラージェンダル(マイルワーガナン役) ★★★☆☆
 タミル映画界のむさ苦しいスター、シンブの親父だが、さすがにむさ苦しかった。パフォーマンスは効いていて良かったが、それでもこのお方とヴィジャイ・セードゥパティが並ぶ画面は毛深く、暑苦しかった。
 (写真下: 記者会見での写真。こういうむさ苦しいものを陳列しておいていいのか?)

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・マドンナ・セバスチャン(マラル役) ★★★☆☆
 その暑苦しさを中和するためにヒロインに期待したいところだが、その点ではマドンナは役不足。しかし、印象的なパフォーマンスだった。
 (写真: 美人の部類には入らないと思うが、可愛かった。好きだ。)

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・アーカーシュディープ・サイガル(カリヤーン役) ★★★☆☆
 どこかで見たと思ったら、K・V・アーナンド監督自身の【Ayan】(09)で悪役をやっていたのだった。あの時はダメ出しをしたが、本作ではまずまず。

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・脇役陣では、アブドゥルを演じたヴィクラントはタミルの大スター、ヴィジャイのいとこらしい(そういや、似ている)。

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・ナーサルがちょっと面白い使われ方をしていた。

◎ 音 楽 : ★★★★☆
◎ BGM : ★★★☆☆
◎ ダンス : ★★☆☆☆
・音楽は良い。ダンスという点では期待できない主役ペアだが、音楽シーンはきれいに作られていた。

◎ アクション : ★★★☆☆
◎ 美 術 : ★★★☆☆
◎ 衣 装 : ★★★☆☆
◎ 撮 影 : ★★★★☆
◎ 編 集 : ★★★☆☆

◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★★☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 4月1日(土),公開第1週目
・映画館 : Cinepolis (ETA Mall),10:15のショー
・満席率 : 2割
・場内沸き度 : ★★☆☆☆

 

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