カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Kaatru Veliyidai】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2017/04/11 20:57   >>

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 マニ・ラトナム監督について、私は最近ネガティブな発言を繰り返しているが、しかし振り返ってみると、嫌なのは【Guru】(07)と【Raavanan】(10)ぐらいで、他は概ね評価しているし、気にも入っている(大フロップだった【Kadal】さえ好きだ)。前作の【O Kadhal Kanmani】(15)が当たっただけに、この新作にも勢い期待してしまう。

【Kaatru Veliyidai】 (2017 : Tamil)
脚本・監督 : Mani Ratnam
出演 : Karthi, Aditi Rao Hydari, Delhi Ganesh, Rukmini Vijayakumar, RJ Balaji, Vipin Sharma, Shraddha Srinath, K.P.A.C. Lalitha, Harish Raj, 他
音楽 : A.R. Rahman
撮影 : Ravi Varman
編集 : A. Sreekar Prasad
制作 : Mani Ratnam

題名の意味 : 真空
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ロマンス
公 開 日 : 4月7日(金)
上映時間 : 2時間20分

《 あらすじ 》
 1999年、空軍兵士のVC(ワルン・チャクラパニ:Karthi)は戦闘機でパキスタン領空を飛行中に撃墜され、捕虜としてラーワルピンディーの刑務所に繋がれる。暗い牢獄内で拷問も受ける日々、唯一の光は元恋人リーラー・アブラハム(Aditi Rao Hydari)への追憶だった。
 ・・・
 シュリーナガルの基地に駐屯していたVCは、恋人のギリジャー(Shraddha Srinath)とデートしているさ中に事故に遭い、重症で入院する。そこへやって来た医師がリーラーだった。彼女はこの日赴任して来たばかりで、VCが初の患者だった。
 舞踏会でリーラーと再会したVCは、彼女をデートに誘う。セスナ機での空中デートの際に、VCはリーラーが亡き友人ラヴィの妹であることを知る。実はリーラーのほうは高校3年の頃からVCのことを知っていたのである。
 その後、VCは一時的にレーの空軍基地に移る。リーラーと友達のニディ(Rukmini Vijayakumar)はレーまで行く。VCはリーラーをヒマーラヤを見せに行く。この時、二人の間に強い愛が生じる。
 VCはリーラーを連れてデリーの家族の許に一次帰省する。この際に、VCの弟ディーパクがリーラーの前で、兄はこれまでも何人か女を連れて来たと言ってしまい、気まずい雰囲気となる。
 VCとリーラーの愛は深まる一方だが、同時にリーラーはVCの自己中心的な性格、男性優越主義的な考え方に傷つき、苦しむようになる。VCも彼女に対して決定的な態度を取れない。VCは結婚のためにリーラーと登録事務所へ行くことを提案するが、結局VCがその約束をすっぽかしてしまう。
 リーラーは妊娠してしまう。VCはその事実を知っても、リーラーに対して責任を負うことを拒否する。そんな時にリーラーの祖父ミトラン大佐(Delhi Ganesh)が他界する。VCは葬儀に参列しようとするが、リーラーの家族に追い出される。その夜、VCはリーラーの父(Vipin Sharma)を説得しようとするが、結局リーラー自身に追い出されてしまう。
 リーラーは医師を辞職し、シュリーナガルを去るとVCに告げる。VCは自分がリーラーを愛していること、もう一度チャンスをくれと告げるが、リーラーは去って行く。その直後のフライトで、VCは撃墜されたというわけであった。
 ・・・
 VCはリーラーにもう一度会いたい、会って謝罪をしたいという一念で、刑務所を脱獄する決意をする。VCは2人のインド人受刑者と共に首尾よく脱獄に成功し、陸路でアフガニスタンへと向かう。3人は何とか国境までたどり着くが、結局そこで逮捕され、再び収監される。しかし特赦があり、VCは釈放されてデリーに戻る。VCはどこにいるか全く情報がない中、リーラーを探す旅に出る、、。

・その他の登場人物 : 軍医イリヤース・フセイン(RJ Balaji)

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★★☆
◎ 物 語 : ★★★☆☆
◎ 脚 本 : ★★★☆☆
・巷の評価はあまり高くないようだが、私はそれなりに感動した。評価が分かれる作品だとは思う。

・トレイラーを観た時点では、カールティ演じる主人公がインド国軍の兵士で、パキスタンの捕虜となり、脱走するというストーリーだと予想されたので、【Roja】(92)みたいな内容かと思ったが、全然違っていた。もっと個人的な愛と責任をテーマにしたもので、この痛い感覚はむしろマニ・ラトナム監督のデビュー作【Pallavi Anu Pallavi】(83)に近い。マニさんは最近はすっかり「Jai Hind!」に関心を失くしているようで、それは幸いなことだと思う。

・個人的な愛と苦悩、責任をテーマにしているということで、VC(Karthi)が空軍兵士であるという設定や時代背景のカールギル紛争などは、本作のテーマと本質的に関係がない。その点、ドラマ全体としては弱いような気もするが、おかげでカシミールの美しい風景が堪能できる(実際にはカシミール以外で撮影された部分のほうが多いらしいが)。また、ヒーローとヒロインの職業が軍人と医師というのも面白い。

・「評価が分かれる」と書いたのは、本作に描かれた愛、嫌悪、苦しみの感覚というのが、多くのインド人には理解しにくいものじゃないかと思うからである。マニ・ラトナム監督というのは、90年代から2000年代まで、構えの大きな世界の中の人間というものを描いて、それがマニの世界みたいにレッテル貼りされてしまったが、本来は個人的な問題をじっくり見つめる私小説家タイプの作家じゃないかと思う。それで、おそらくマニさんの個人的な体験に根差しているであろうVCとリーラーの感情(むしろ心理)というのは、インド人の9割はこれを理解できないと思う(だって、普通のインド人のマインドって、こんな所をうろうろしていないもん)。しかし、何らかの理由で理解できる(感情移入できる)人は、それなりに本作が楽しめると思う。

・VCのキャラクターもある種の人々(そしてこれが多数派だと思うが)にとって嫌悪を抱かせるものかもしれない。多くのインド映画、特に南インド映画のヒーローに見られるような「善い人」じゃなく、「アカン奴」なのである。インド映画上では、こうした人物は評価も理解もされにくい。しかし、マニさんはあえてこういう人物を提示したかったのであり、VC自身が自分はアカン奴だと表明しており、周りの人物(例えば友人のニディ)もそれを理解している。本作はそんなVCがいかに自己の責任を自覚するかというドラマなんだと思う。

・注意しておくと、この「アカン奴」というのは、インドの娯楽映画の主人公に対して「お気楽」とか「役立たず」と規定されるようなゆるい人物像のことではなく、本当にアカン奴なのである。しかしVCの場合、自分のアカンさを自覚しており、それに対して正直であるがゆえに、映画のヒーローたり得ているのかなと。

・もう一つ評価が分かれる可能性としては、VCを演じたカールティだろう。ミスキャストとまで言い切る自信はないが、私の目にはフィットして見えなかった。なにせ、ツルツルに髭を剃ったカールティがキザな台詞を連発するものだから、その度にいすからずり落ちた。カールティの顔は基本的に善人顔なので、眼ヂカラを込めて、アカン奴を演じても、爆笑かなと。

・話変わって、マニさんの映画を観てしばしば思うことだが、やはり地域性にリアリティーがない。本作も、カールティの家族はタミル人のはずだが、何だか北インド人の家族にしか見えなかった。こういう北だか南だか分からないインド映画は嫌だな。

◎ 配 役 : ★★★☆☆
◎ 演 技
・カールティ(VC役) ★★★☆☆
 上で書いたとおり、失敗だったとは言わないにせよ、マニ・ラトナム作品の主人公にしては、ピタッと決まったものは感じなかった。誰が適役だとは言いにくいが、選べるとするなら、ダヌシュがやるべきだったろう。
 (写真下: 自身初のツルツル顔で出演というのは評価したいが。)

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 いつか書いたとおり、カールティはやっぱりこれですよ!

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・アディティ・ラーオ・ハイダリー(リーラー役) ★★★☆☆
 代わって、このアディティさんには感心した。好きなタイプの顔じゃないので、ほとんど期待もせず鑑賞したが、思いのほか笑顔が可愛らしく、また、キャリア上、このマニ・ラトナム監督作品が最後のビッグチャンスと、懸命に演じている様子が健気に見えた。

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・意外なキャスティングとして、カンナダ系の女優が2名、出演していた。1人は【Bhajaranghi】(13)で活躍したルクミニ・ヴィジャヤクマール(ニディ役)。バリバリのダンススキルをうまく生かしてもらっていた。
 (写真下: 本作のスチルではありません。)

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・もう1人は【U Turn】(16)のシュラッダー・シュリーナート(ギリジャー役)。実はかなり期待したが、冒頭限定の小さい役だった。
 (写真: マニ大老と仕事できただけでも、箔だよ箔。)

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・あともう1人カンナダから、「ジャンピングスター」の冠タイトルを持つハリーシュ・ラージが出ていたらしいが、やっぱり影が薄く、気付かなかった。

・世に「マニ・マジック」と言うが、本作最大のマニ・マジックはRJバーラージにこんなマジな役をさせたことだろう。

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◎ 音 楽 : ★★★★☆
◎ BGM : ★★★★☆
・心に染み入る良い音楽だった。

◎ アクション : ★★★☆☆
◎ 美 術 : ★★★☆☆
◎ 衣 装 : ★★★★☆
◎ 撮 影 : ★★★★☆
◎ 編 集 : ★★★★☆
・映像も美しかった。しかし、ロケ地はカシミールというより、多くはウーティやセルビアのベオグラードで撮ったらしく、騙された気分。

◎ その他(覚書)
・Wikipediaの記事では、本作はフル版の147分と編集版の140分があるらしい。私が観たのは、CBFCの認証では147分と記載されていたが、手許の時計を参照する限り、140分だった。

◆ 完成度 : ★★★★☆
◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★★★☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 4月8日(土),公開第1週目
・映画館 : Gopalan Cinemas (Arch Mall),10:00のショー
・満席率 : 1割
・場内沸き度 : ★☆☆☆☆
・備 考 : 英語字幕付き

 

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