カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Thondimuthalum Driksakshiyum】 (Malayalam)

<<   作成日時 : 2017/07/05 21:01   >>

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 ディリーシュ・ポータンは、マラヤーラム映画の主にニューウェーブ系の作品で活躍するアクの強い脇役俳優だと思っていたら、【Maheshinte Prathikaaram】(16)で監督としてデビューし、それが大成功で、たちまちに注目の映画監督になった。【Maheshinte Prathikaaram】は日本でも1ショー公開され、好評だったようだが、私はインドにいながら観逃してしまったので、この第2作はぜひ観たいと思っていた。
 主演は【Maheshinte Prathikaaram】と同じくファハド・ファーシル。これに国家映画賞俳優のスラージ・ヴェンニャーラムードが重要な役で出演するということで、クセのあるドラマになりそうなことは間違いなかった。
 (写真下: ディリーシュ・ポータン氏。)

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【Thondimuthalum Driksakshiyum】 (2017 : Malayalam)
物語・脚本 : Dileesh Pothan, Sajeev Pazhoor
監督 : Dileesh Pothan
出演 : Fahadh Faasil, Suraj Venjaramoodu, Nimisha Sajayan, Alencier Ley Lopez, Sibi Thomas, Vettukili Prakash, Srikanth Murali, 他
音楽 : Bijibal
撮影 : Rajeev Ravi
編集 : Kiran Das
製作 : Sandeep Senan, Anish M. Thomas

題名の意味 : 物証と目撃者
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ドラマ
公 開 日 : 6月29日(木)
上映時間 : 2時間15分

《 あらすじ 》
 ヴァイッカムで農業をしているプラサード(Suraj Venjaramoodu)はシュリージャ(Nimisha Sajayan)と恋仲となり、彼女の両親の反対を押し切って結婚する。だが、異カースト間結婚に起因する問題に加え、生活上の困窮もあって、二人はカーサラゴードに移り住む。
 ある日、二人がバスに乗っているとき、泥棒(Fahadh Faasil)がシュリージャの金のネックレス(婚姻の紐帯でもある)を盗む。それは二人にとって唯一価値のあるものだった。シュリージャがそれに気付いたため、泥棒はとっさにネックレスを飲み込んでしまう。バス内は大騒ぎとなり、プラサードとシュリージャ、それに泥棒は、最寄のシェーニ警察署に行く。担当となった警官チャンドラン(Alencier Ley Lopez)に対して、泥棒は名前を「プラサード」と告げ、ネックレスに関しては盗んだことも飲み込んだことも否定する。泥棒は牢に入れられ、プラサードも警察署に泊まることになる。
 翌朝、泥棒の大便をチェックしても、金のネックレスは見つからなかった。そこで病院へ行き、X線写真を撮ったところ、はっきりと金属の鎖状の物体が写っていた。
 翌朝、警察は再び大便をチェックしようとするが、泥棒は用を足した後、一瞬の隙をついて逃走する。警官たちとプラサードは泥棒を追うが、なかなか捕まらない。たまたまこの時、都市部から上官が来ていたため、シェーニ警察署の警官たちは大慌てとなる。
 結局、泥棒は捕まるが、再度X線撮影をした結果、鎖状の物体は消えていた。この失態に対して、警察はプラサードとシュリージャに責任を負わなければならなくなる、、。

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★★☆
◎ 物 語 : ★★★☆☆
◎ 脚 本 : ★★★★☆
・毎度こういう台詞は言いたくないが、仕方がないので言うと、言葉が分からないと辛い映画だった。しかし、不思議と感動できる、好い感じの作品だった。

・前作の【Maheshinte Prathikaaram】は観ていないので比較はできないが、本作はすごくリアルに徹したものだった。ほとんどインドの地方の日常を見ているようなリアルさだったが、最もそう思えたのは、舞台となった警察署と警官たちの様子だ。インド娯楽映画の警官といえば、腐敗警官か英雄かのどちらか極端な姿で描かれることが多いが、本作の場合、田舎の警察署では日頃こういう出来事を扱い、こんな問題で大慌てし、警官はこんなふうに振る舞うんだな、というのがいかにもそれらしく描かれている。

・プラサード(Suraj Venjaramoodu)とシュリージャ(Nimisha Sajayan)の若夫婦の様子と社会的背景も具体的に描かれている。

・しかし、リアルと言っても、重要な一点でリアリズムを逸脱している点が本作の面白いところ。それはつまり主人公の泥棒(Fahadh Faasil)の存在だ。この名前も分からず(本人は「プラサード」と名乗っていたが)、どこから来て、何をしているのかほとんど分からない男は、考えれば考えるほど謎な、哲学的な(つまりリアリズムから外れた)存在だ。ちょっとランジット監督の作品を想起させるものがある。

・ただ、この泥棒やプラサードとシュリージャの属性から、本作が貧困をテーマにしたものであることは分かる。確かにインドの経済発展は目覚ましいものがあり、アッパーミドルクラス、ミドルクラスが拡大してきているのは事実だが、まだまだ社会的条件(例えば、地方とか、職業とか、カーストとか)で成長から取り残された人々はいる。本作の2人のプラサード(泥棒も本当にプラサードだとして)はそうした貧困と苦闘する人々のシンボルだとも言える。

・しかし、それでも本作が良いのは、そういうインドの貧困をテーマとしながらも、全くメッセージくさくなく、悲痛な叫びも糾弾もないところだ。むしろ、貧困問題に対して、ポップで、ユーモラスな視線さえ感じる。

・その貧困に対する苦闘が最も象徴的に描かれているのが、2人のプラサードが水路の中で取っ組み合いをする場面だ(逃げようとする泥棒と、逃すまいとするプラサード)。あれはもう、ほとんど動物的、本能的なぶつかり合いだ。庶民にあの力強さとしぶとさがある限り、インドの貧困の問題は、7割がた消滅したようなもんだ、と思った。

◎ 配 役 : ★★★★☆
◎ 演 技
・ファハド・ファーシル(泥棒役) ★★★★☆
 台詞はあまりない役だったが、目、口もと、物腰による語らせ方が抜群だった。いやぁ、すごい俳優だ。

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・スラージ・ヴェンニャーラムード(プラサード役) ★★★☆☆
 騒々しいコメディアン時代を知っているだけに、この真面目な男の役には驚く。そうすると、やはり男前に見えてくる。もっとも、こういう役より笑わせる役のほうが、演技としてはよっぽど難しいと思うが。

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・ニミシャ・サジャヤン(シュリージャ役) ★★★☆☆
 新人らしい。いかにもケーララ女といった感じの顔立ち、体つき、毛髪で、この映画にがっちりはまっていた。公開前にスチルやトレイラーで見たときは、30代のように見え、この映画は若くない男女のラブストーリーなんだと予想していたが、実際に作品を見たら、若い娘さんだということが分かった。

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・アレンシャル・レイ・ロペス(警官チャンドラン役) ★★★☆☆
 【Maheshinte Prathikaaram】にも良い役で出演していたらしい。フィルモグラフィーを見る限り、見たことのある俳優のはずだが、記憶にない。

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◎ 音 楽 : ★★★☆☆
◎ BGM : ★★★☆☆

◎ 衣 装 : ★★★☆☆
◎ 撮 影 : ★★★★☆
◎ 編 集 : ★★★☆☆
・撮影はラージーヴ・ラヴィ。ヒンディー映画ですごく良い仕事をしている人だが、マラヤーラム映画的には【Annayum Rasoolum】(13)の監督と言ったほうがいいだろう。本作も一見地味に見えるが、かなり細かなところまで気を配った良い映像だった。

◎ その他(覚書)
・妊娠検査薬とか太陽光発電パネルとか、インドの田舎映画にはあまり馴染みのなかったものが割と重要な意味を持って登場する映画でもあった。

◆ 完成度 : ★★★★☆
◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★★☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 7月1日(土),公開第1週目
・映画館 : Sangeet,11:00のショー
・満席率 : 1割
・場内沸き度 : ★★☆☆☆

 

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